スクワレン

squalene

スクワレンは、サメ類の肝油から精製される不飽和脂肪酸の一種です。
体内で酸素を補給する働きを持ち、「酸素の運び屋」とも呼ばれています。
新陳代謝を活性化する効果や、血液を浄化する効果、美肌効果などが期待されています。

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スクワレンとは?

●基本情報
スクワレンは不飽和脂肪酸の一種で、サメ類の肝臓から採取される肝油に多く含まれており、深海鮫エキスとも呼ばれています。
不飽和脂肪酸とは、種類によって様々な働きを示す、人間の体に必要な脂肪酸です。
サメは軟骨魚類からエイ、ギンザメ類を除いたものの総称であり、今から4億年前に地球上に出現し、現代までその姿形をほとんど変えることなく生き抜いてきた、生物学上極めて興味深い魚類です。
恐竜やマンモスが絶滅してしまった氷河期も、サメは深海に生息地を移すことでその姿を変えることなく生き抜くことができたと考えられています。
水深1000mを超える深海は、海面からは光も届かない暗闇の世界であり、高水圧と低酸素による過酷な環境です。
スクワレンは、深海鮫がそのような過酷な環境の中で生き抜くために、体重の25%もある巨大な肝臓につくり出した成分であるといわれており、鮫の強靭な生命力の源となっています。
スクワレンは、体に摂り入れることで、体内にある水を還元して水素を取り込み、酸素を発生させる性質があります。
このような働きを行うスクワレンが、極めて酸素濃度の低い深海で生息する深海鮫の肝油に存在することから、スクワレンは深海鮫が必要とする酸素を、体内で補給する役割を担っているのではないかと考えられています。

●スクワレンの歴史
スクワレンは、1906年に、油脂化学を研究していた辻本満丸博士によって発見され、スクアル(油ザメ)科のサメの肝油に多く含まれていることから名づけられました。
1931年、スイス・チューリッヒ大学のカーラー教授によってスクワレンの化学構造式が明らかになり、化学反応のプロセスや働き、その効果などが次々と解明されました。
スクワレンはその効果が明らかになった当初、皮膚への浸透性などの特性が注目され、高級化粧品など主に外用[※1]での利用から始まりましたが、今ではその機能性の高さから、内服用のサプリメントなどにも利用されるようになりました。

●スクワレンの働き
スクワレンは、酸素を補給する働きを持っています。
スクワレンは体内に摂り込まれると、体内の(H2O)から水素(H2)を取り込み、スクワランへと変化します。その際に、スクワレンは酸素(O)を発生させます。
スクワレンがスクワランへと変化した際に発生した酸素は、血液によって体中をめぐり、酸素が不足している細胞に行き着き、酸素を補給します。
この働きから、スクワレンは「酸素の運び屋」とも呼ばれています。
また、スクワレンは人間の体内でも生成される油性物質で、特に皮膚、リンパ節、骨髄などに多く存在しています。
しかし、体内におけるスクワレンの量は25歳頃から加齢とともに減少していくといわれており、その影響で細胞は酸素不足に陥りやすくなります。酸素不足を起こした細胞が増えると、新陳代謝などの働きが衰え、肌ではシミ、しわ、たるみなどの老化が現れるようになるのです。
さらに、スクワレンは皮膚細胞への湿潤性や浸透性は特に優れており、外用としてはもちろん、内服することで炎症などを起こしている粘膜にも働きかけるといわれています。

●スクワレンを摂取する方法
スクワレンを多く含むサメの肝油の中でも、特に良質であるといわれているのが、深海性のアイザメです。アイザメの肝油に含まれているスクワレンの量は、約70~85%と特に多く、他の深海鮫と比べても非常に優れた含有量であるといえます。
スクワレンは、深海鮫の肝油だけではなく、オリーブオイルやアボカド油、綿実油などにも含まれており、食品からも摂取が可能です。
しかし、食品から摂取できるスクワレンの量はアイザメの肝油には到底及ばない量であり、純度の高いスクワレンのサプリメントによる摂取が効果的であるといわれています。
サプリメントとしてのスクワレンは、天然の肝油を採取した後に減圧蒸留処理[※2]を行い、精製したものをソフトカプセルや錠剤にしたものが一般的です。
また、外用としてのスクワレンは栄養・美容クリーム、口紅、ファンデーション、医療用軟膏や座薬などに配合され、様々な用途で利用されています。

<豆知識>スクワレンとスクワラン
スクワレンは非常に酸化しやすい性質を持っているため、主にサプリメントに配合されています。
スクワランはスクワレンに水素を添加して生成された成分で、比較的安定した性質であるため、美容クリームなど外用の化粧品に使用されています。
スクワランはスクワレンの持つ浸透性の高さや湿潤効果はそのままでありながら、空気中で酸化することがない優れた性質を持ちます。
両者はその性質の違いから、用途を分けられ利用されます。

[※1:外用とは、直接皮膚に塗ることを指します。]
[※2:減圧蒸留処理とは、常圧では高い沸点を持つ物質を、減圧により沸点を下げて蒸留する処理方法を指します。]

スクワレンの効果

●新陳代謝を活発にする効果
スクワレンの酸素を全身へ行き渡らせる作用は、新陳代謝を活発化するといわれています。
新陳代謝とは、人間の体を構成している約60兆個の細胞がDNARNAの働きによって、一定の周期で生まれ変わることを指します。
新陳代謝が正常に行われることで、人間は健康を維持できますが、酸素が不足すると、新陳代謝を正常に行うことができません。
スクワレンが持つ、酸素を補給する働きによって細胞の酸素不足の状態を改善させ、生まれ変わりを促進できるため、新陳代謝を活発にする効果があります。
また、スクワレンの働きは、健康な細胞の新生にも効果があると考えられています。

●美肌効果
スクワレンを摂取することにより、美肌に対する効果が期待されています。
スクワレンの作用によって新陳代謝が活性化されると、ターンオーバーとも呼ばれる、肌細胞の生まれ変わりも活発になります。
肌の生まれ変わる周期は、20歳前後は28日であるといわれていますが、その周期は年齢を重ねるに伴い段々と長くなることで知られており、30~40歳になると45日程度かかるようになるといわれています。
スクワレンがターンオーバーを促進することで、シミ、くすみ、しわやたるみの予防につながるといわれているため、スクワレンを経口摂取[※3]することで、美肌効果が期待できます。
また、スクワレンはその浸透性の高さからも肌への効果が期待されており、スクワランとして化粧品や美容クリームなどに湿潤効果の高い成分として配合されています。【3】【6】

●肝機能障害を改善する効果
スクワレンには、肝機能障害を改善する効果があるといわれています。
肝機能障害は、肝臓が様々な原因で衰退し、その機能が悪化する病気です。
自覚症状が出にくいといわれている病気ですが、進行すると全身倦怠感、食欲不振、黄疸などが症状として現れるようになり、そのまま放置すると肝炎[※4]、肝硬変[※5]、肝臓ガンなどに進行する恐れもあります。
スクワレンの酸素を補給する作用は、各臓器の機能を高める効果にもつながり、特に肝細胞に豊富な酸素が供給されることによって、肝臓の活動が活発化し、肝機能の回復や強化をはかることができます。

●免疫力を高める効果
スクワレンは免疫機能を向上させる効果があると考えられています。
免疫機能とは、人間が外から侵入したウイルスや細菌から自らの身体を守るために、リンパ節や脊髄、副腎、肝臓などに備わっている機能です。
免疫機能はそれらに存在する免疫細胞の働きによって細菌やウイルスと戦い、互いに細胞間で連絡を取り合って戦っています。
スクワレンには、それらの免疫細胞の働きを活性化する作用があるため、免疫機能を向上させることができると考えられています。

●血液を浄化する効果
スクワレンには、汚れた血液を浄化する働きがあると考えられています。
汚れた血液は、水素イオン(H+)が多量に混合している状態であり、糖尿病患者の血液には水素イオンが多いという報告もあります。
スクワレンは血中の過剰な水素イオンを血液から取り除くことができるため、血液中の水素イオンを減少させることができるとされています。
水素イオンの減少によって血液が浄化され、血流の改善につながる可能性が示されています。

[※3:経口摂取とは、口を経て体内に取り入れることを指します。]
[※4:肝炎とは、肝臓が炎症を起こし、発熱、黄疸、全身倦怠感などの症状をきたす疾患の総称です。]
[※5:肝硬変とは、肝臓が固くなり、本来の機能がきわめて減衰した状態のことです。]

スクワレンは食事やサプリメントで摂取できます

スクワレンを含む食品

○肝油

こんな方におすすめ

○新陳代謝を活発にしたい方
○美肌を目指したい方
○肝臓の健康を保ちたい方
○免疫力を向上させたい方
○血流を改善したい方

スクワレンの研究情報

【1】年齢と性別によって、肌表面の脂質には違いがあることがわかっています。20歳代を過ぎると肌の皮脂量は男女ともに減少し、なおかつ女性のほうが男性より急激に減少するという報告があります。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/448170

【2】スクワレンはコレステロール合成の中間代謝物として生体内に存在しています。マウスに対する経口投与の実験では、非特異的免疫(自然免疫)の上昇がみられ、また、コレステロールと中性脂肪のトリグリセリドを減らす効果も認められています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9988781

【3】50歳以上の40名の女性に対し、90日間スクワレンを13.5g/日もしくは27g/日投与させた結果、Ⅰ型コラーゲン前駆体を増やし、ヒトの肌でUVによって誘導されるDNAのダメージを抑え、光老化肌に対してアンチエイジング効果が得られたという報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19522983

【4】スクワレンは肌表面の主要な構成油脂として存在しており、軟化剤や抗酸化剤としての性質を示します。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19169201

【5】スクワレンは独特な物性と機能性を持ち、抗酸化機能と酸素運搬機能を持ちます。高コレステロール血症や心血管の疾患を抑えるとされ、生体内及び生体外でのスクワレンの機能性研究が進んでいます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20874681

【6】スクワレンはヒトの肌表面で一重項酸素を消失させ、脂質の過酸化を抑える機能を持ちます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7742356

【7】ラットにエサとして2%のスクワレンを45日間与えると、LDLコレステロール値を低下させ、HDLコレステロール値を高めるという報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17201641

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参考文献

・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・山口武津雄 深海ザメエキスの効用 ヘルス研究所

・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・Nazzaro-Porro M, Passi S, Boniforti L, Belsito F. 1979 “Effects of aging on fatty acids in skin surface lipids.” J Invest Dermatol. 1979 Jul;73(1):112-7.

・Kelly GS. 1999 “Squalene and its potential clinical uses.” Altern Med Rev. 1999 Feb;4(1):29-36.

・Cho S, Choi CW, Lee DH, Won CH, Kim SM, Lee S, Lee MJ, Chung JH. 2009 “High-dose squalene ingestion increases type I procollagen and decreases ultraviolet-induced DNA damage in human skin in vivo but is associated with transient adverse effects.” Clin Exp Dermatol. 2009 Jun;34(4):500-8.

・Huang ZR, Lin YK, Fang JY. 2009 “Biological and pharmacological activities of squalene and related compounds: potential uses in cosmetic dermatology.” Molecules. 2009 Jan 23;14(1):540-54.

・Bhilwade HN, Tatewaki N, Nishida H, Konishi T. 2010 “Squalene as novel food factor.” Curr Pharm Biotechnol. 2010 Dec;11(8):875-80.

・Kohno Y, Egawa Y, Itoh S, Nagaoka S, Takahashi M, Mukai K. 1995 “Kinetic study of quenching reaction of singlet oxygen and scavenging reaction of free radical by squalene in n-butanol.” Biochim Biophys Acta. 1995 Apr 28;1256(1):52-6.

・Farvin KH, Anandan R, Kumar SH, Shiny KS, Mathew S, Sankar TV, Nair PG. 2006 “Cardioprotective effect of squalene on lipid profile in isoprenaline-induced myocardial infarction in rats.” J Med Food. 2006 Winter;9(4):531-6.

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