カツオとは
●基本情報
カツオは、サバ科カツオ属に属する魚であり、世界に広く分布しています。日本には冬から春にかけて北上し、秋には南下します。全長は約1mであり、体は海を高速で泳ぐために適している紡錘(ぼうすい)形です。
泳ぐ速度は時速100kmにも達するともいわれており、昼も夜も休まず一生泳ぎ続けるという特徴があります。
カツオは、古くからカツオ節として利用されるほか、缶詰に加工される事がほとんどでしたが、近年では生で食されることも多くなっています。
また、カツオの名前の語源は、堅魚・勝魚・松魚などいくつかの説があるといわれています。
●カツオの旬の時期
カツオの旬の時期は初夏から秋にかけての期間です。特に、日本の伊豆や房総沖で初夏に水揚げされる「初ガツオ」や、秋に三陸や銚子沖で水揚げされる「戻りガツオ」が季節の味として知られています。
初ガツオはさっぱりとした味わい、戻りガツオは脂がのった濃厚な味わいが特徴です。
●カツオに含まれる成分と性質
カツオには、筋肉や臓器をつくるもととなる良質なたんぱく質が豊富に含まれています。
特に血合(ちあい)[※1]の部分には、ビタミン・ミネラルをはじめとする栄養素が豊富に含まれています。特に、ビタミンB12の含有量は魚肉の中でもトップクラスといわれています。ミネラルでは鉄が多く含まれています。2種類のアミノ酸がつながったイミダゾールペプチドの一種であるアンセリンも含んでおり、疲労時の栄養補給に良い食材です。
また、不飽和脂肪酸の一種であるDHAやEPAのほか、うまみ成分であるイノシン酸やナイアシンも含まれています。
<豆知識>カツオ節
古くからカツオは主にカツオ節として利用されていました。
主な産地は鹿児島県の枕崎や、指宿(いぶすき)市山川、静岡県の焼津(やいづ)であり、この3つの生産地が全国のカツオ節生産量のうち約95%を占めるといわれています。
新鮮で適度に脂がのったカツオがカツオ節に向くとされており、加工方法によって「荒節(あらぶし)」と「枯節(かれぶし)」に分類されます。カビ付けを施した枯節は、特に旨みの強いだしが取れるといわれています。
また、関西ではすっきりした旨みが出る荒節、関東では枯節が好まれるという傾向があります。
[※1:血合とは、魚の背骨近くにある暗赤色の部分です。]
カツオの効果
●生活習慣病の予防・改善効果
カツオには不飽和脂肪酸であるEPAが含まれており、EPAには血栓[※2]をつくられにくくすることで血液をサラサラの状態に保つ働きのほか、善玉(HDL)コレステロール[※3]を増やし、悪玉(LDL)コレステロール[※4]を減らす働きを持つことから、動脈硬化などの生活習慣病の予防効果が期待できます。【3】
●記憶力や学習能力を高める効果
カツオはDHAを多く含む魚です。DHAには脳の細胞を発達、活性化させる働きがあり、記憶力や学習能力を高める効果があるといわれています。【4】
●貧血を予防する効果
カツオに含まれている鉄は、赤血球を構成する成分であるため、貧血を予防する効果があります。
また、ビタミンB12には赤血球の生成を促す働きを持つことから、貧血予防に役立つといわれています。
●疲労回復効果
カツオに含まれるビタミンB12には、エネルギー代謝を活発にさせる働きがあるため、疲労回復の効果が期待されています。
また、イミダゾールペプチドの一種であるアンセリンも含んでおり、疲れの原因である乳酸の分解を促し、持久力を高める働きがあります。長時間運動をする時に、運動能力が向上するといわれています。
●骨の健康を保つ効果
カツオにはビタミンDが含まれており、カルシウムの吸収を助けることによって強い骨をつくる効果があるといわれています。
ビタミンDの働きは、骨粗しょう症[※]の予防にも効果的です。【5】
[※2:血栓とは、血液中の血小板などが固まってできる塊のことです。動脈硬化や脳梗塞の原因にも成り得るといわれています。]
[※3:善玉(HDL)コレステロールとは、血管壁に溜まった余分なコレステロールを抜き取って、肝臓に運ぶ機能がある物質です。動脈硬化などを防ぐ役割があります。]
[※4:悪玉(LDL)コレステロールとは、肝臓から血管にコレステロールを運ぶ機能を持った物質です。悪玉(LDL)コレステロール値が高くなると、動脈硬化の原因になるといわれています。]
[※5:骨粗しょう症とは、骨からカルシウムが極度に減少することで、骨の内部がスカスカになった症状であり、非常に骨折しやすくなることで知られています。高齢者に多い症状で、日本では約1000万人の患者がいるといわれており、高齢者が寝たきりになる原因のひとつです。]
カツオは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○生活習慣病を予防したい方
○貧血でお悩みの方
○疲れやすい方
○骨や歯を強くしたい方
カツオの研究情報
【1】カツオを脱脂したものから加水分解物のタンパク質について抗酸化および機能性について調べました。その結果、カツオは抗酸化作用を含め、多様な機能性を有していることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22980906
【2】カツオ筋肉可溶性抽出物およびカルノシン、アンセリン、ヒスチジンは、消化酵素ペプシン様プロテアーゼ作用を有することから、カツオは栄養代謝に有益であると期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21130891
【3】日本国において魚の消費量が多い市民(EPAとして1日2.5g 摂取)と魚の消費量の少ない市民(EPAとして1日0.9g 摂取) の血小板凝集能を比較したところ、魚の消費量が多い市民の方が、血小板凝集能が低いことが知られています。カツオはEPAを豊富に含むことから、血小板凝集能抑制やそれに伴う、血液流動性の改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6107739
【4】平均年齢69歳の女性854名の赤血球中のDHA量と脳の加齢障害との関係を調べたところ、赤血球中のDHAの量が少ないと、脳の萎縮及び血管障害が多いことから、赤血球中のDHAの量と脳の加齢との関係が示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22371413
【5】高齢女性120名において、カルシウムを1日1,200mg または、カルシウムを1日1,200mg とビタミンDを1日1,000 IUを5年間摂取させたところ、カルシウムとビタミンDを併用すると、加齢に伴う、骨量減少、骨形成の指標となるアルカリホスファターゼの増加、骨吸収マーカーの指標の尿中PDP/Cr値の増加が抑制されました。カツオはビタミンDを豊富に含むことから、骨粗鬆症の予防に役立つことが期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18089701
参考文献
・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社
・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社
・池上保子 食べもの栄養事典 日本文芸社
・則岡孝子 栄養成分と食べ物 河出書房新社
・吉田企世子 安全においしく食べるためのあたらしい栄養学 高橋書店
・Intarasirisawat R, Benjakul S, Visessanguan W, Wu J. (2012) “Antioxidative and functional properties of protein hydrolysate from defatted skipjack (Katsuwonous pelamis) roe.” Food Chem. 2012 Dec 15;135(4):3039-48.
・Kihara M, Igarashi M, Suzuki T, Itou F, Kozeni S, Toyomane M, Nakano J, Yamai I. (2011) “Stimulative effect of skipjack tuna soluble extract on pepsin-like protease in the stomach of rockfish (Sebastes schlegelii) using an in vitro perfusion method.” Comp Biochem Physiol A Mol Integr Physiol. 2011 Apr;158(4):444-9.
・Hirai A, Hamazaki T, Terano T, Nishikawa T, Tamura Y, Kamugai A, Jajiki J. (1980) “Eicosapentaenoic acid and platelet function in Japanese.” Lancet. 1980 Nov 22;2(8204):1132-3.
・Tan ZS, Harris WS, Beiser AS, Au R, Himali JJ, Debette S, Pikula A, Decarli C, Wolf PA, Vasan RS, Robins SJ, Seshadri S. (2012) “Red blood cell ω-3 fatty acid levels and markers of accelerated brain aging.” Neurology. 2012 Feb 28;78(9):658-64.