シリマリン

silymarin

シリマリンとはヨーロッパに自生するキク科の二年草、ミルクシスル(マリアアザミ)の有効成分のことです。古くから肝障害の治療に民間療法として利用されてきたミルクシスルの種子に多く含まれているフラボノイド混合物であり、肝臓疾患の治療薬として活躍します。

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シリマリンとは

●基本情報
シリマリンは「ミルクシスル(マリアアザミ)」の種子に多く含まれているフラボノイド混合物で、傷ついた肝細胞の修復を助けるとされています。ミルクシスルは地中海沿岸、ヨーロッパ全土、北アフリカ、アジアに分布しており、日本においても帰化植物として分布しています。
キク科オオアザミ属の植物で二年草であり、薄い紅紫色の花を咲かせることが特徴です。高さが1m以上あり、トゲを持ち、白いまだら模様を持っている大きな葉がついています。
ヨーロッパでは2000年以上前からハーブとして利用されてきました。道ばたに生えている植物ですが、観葉植物として育てている人もおり、そのまま食べることも可能です。
損傷を受けた肝臓の細胞を修復し保護する働きから、ヨーロッパでは肝硬変など肝臓疾患の治療薬として使われており、日本でも二日酔い対策のサプリメント成分として知られ、化粧品成分として利用の際は抗シワ作用も確認されています。
シリマリンは細かく分類するとシリビニン、イソシリビニン、シリクリスチン、などといった成分に分類され、これらはフラボノリグナン類と呼ばれます。

<豆知識①>ミルクシスルとは
ミルクシスルという植物は、葉に白いまだら模様があるのが特徴で、ミルクがこぼれたようにみえるため「ミルクシスル」といいます。シスルはアザミの意味です。ミルクを聖母マリアに由来するものとして「マリアアザミ」の別名があります。

●シリマリンの用途
シリマリンを含むミルクシスルの種子はヨーロッパにおいて古くから肝障害の治療に民間療法として利用されてきました。ローマでは肝臓薬として勧められています。
近年では肝細胞保護作用や肝機能改善作用の効果が科学的に証明されており、欧米ではシリマリンの含まれるマリアアザミは、最も人気の高いメディカルハーブとして有名です。

●シリマリンを摂取する際の注意点
シリマリン自体の安全性や副作用の記述はありませんが、シリマリンが含まれたミルクシスル(マリアアザミ)には安全性や過剰摂取による副作用についての指摘があります。
妊娠中・授乳中の方や、キク科植物のアレルギーのある方は注意が必要です。

シリマリンの効果

●肝機能を高める効果
シリマリンには肝炎、肝硬変などの肝障害予防と改善の効果があります。栄養を吸収して毒素を排出し、解毒作用のある肝機能を高め、胆汁の分泌を促すため、アルコール性肝障害、肝炎、肝硬変などの病気治療にも用いられます。またタバコやアルコールから胃や肝臓を守り、悪酔いを防ぐとともに、二日酔いの回復をサポートします。損傷を受けた肝臓の細胞を修復するため、肝機能障害など肝臓が陥ってしまう様々なトラブルに効果を発揮します。【1】【5】【6】

●細胞(肌や唇)を若々しく保つ効果
シリマリンには抗酸化作用があり、体の細胞を酸化させ老化を早めたり、変質させてガンを誘発する活性酸素の働きを抑えるなどして免疫力を高めます。【2】

●肌の調子を整える効果
シリマリンは、シリビニンまたはシリビン、シリジアニン、シリクリスチンと呼ばれるフラボノイド類から成ります。その中のシリビンは真皮のコラーゲンを増やし、繊維構造を正常化する作用を持つため、シワを改善します。また体内で成長ホルモンの分泌を促し、細胞の老化を防ぎます。【2】

●生活習慣病の予防・改善効果
シリマリンは体内で合成される抗酸化物質グルタチオンの生成を促すことや、ガンや老化、動脈硬化、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの原因になる活性酸素を抑制する効果から、生活習慣病の予防、改善効果があります。欧米で人気の高いメディカルハーブとして支持される理由もこの強力な抗酸化作用が関係しています。【3】

シリマリンは食品やサプリメントで摂取できます

シリマリンを多く含む食品

○ミルクシスル(マリアアザミ)

こんな方におすすめ

○肝臓の健康を保ちたい方
○いつまでも若々しくいたい方
○肌のハリや弾力を保ちたい方

シリマリンの研究情報

【1】Ⅱ型糖尿病患者51名を対象に、シリマリンを1日あたり600mg (200mg×3回) の量で4ヵ月間摂取させたところ、糖化ヘモグロビン、空腹時血中グルコース、コレステロール、GOTならびにGPTの状態が改善したことから、シリマリンは糖尿病予防効果ならびに肝臓保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17072885

【2】皮膚ガンマウスを対象に、シリマリン種子抽出物を摂取させたところ、紫外線による皮膚障害が緩和されたことから、シリマリンは皮膚保護作用、抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15586237

【3】アロキサン誘発糖尿病ラットを対象に、シリマリンを20日間摂取させたところ、抗酸化酵素の低下を軽減したことから、シリマリンは糖尿病予防効果ならびに抗酸化作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14659454

【4】薬物投与-遺伝子変異によって発がんするラットに対し、シリマリン投与によって大腸がんの発生が有意に減少したことが分かりました。このことから、シリマリンは大腸保護作用を持つと考えられています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110008512890

【5】シルマリンはアルコール肝疾患や肝硬変患者に対する知見があり、タンパク質合成や肝細胞再生促進、抗炎症作用ならびにグルクロン酸促進、グルタチオン減少を予防することが知られており、シリマリンは肝臓保護に有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17213517

【6】肝硬変併発糖尿病患者を対象に、シリマリンを3ヵ月または5ヵ月間摂取させたところ、血中アルブミンならびに血糖値およびGOTおよびGPTに改善が見られたことから、シリマリンは肝臓保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22025861

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参考文献

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・Jose MA, Abraham A, Narmadha MP. 2011 “Effect of silymarin in diabetes mellitus patients with liver diseases.” J Pharmacol Pharmacother. 2011 Oct;2(4):287-9.

・Katiyar SK. 2005 “Silymarin and skin cancer prevention: anti-inflammatory, antioxidant and immunomodulatory effects (Review).” Int J Oncol. 2005 Jan;26(1):169-76.

・Soto C, Recoba R, Barron H, Alvarez C, Favari L. 2003 “Silymarin increases antioxidant enzymes in alloxan-induced diabetes in rat pancreas.”Comp Biochem Physiol C Toxicol Pharmacol. 2003 Nov;136(3):205-12.

・村松 美那、豊田 尚美、安井 由美子、増村 健一、高宗 万希子、山田 雅巳、田中 卓二、太田 敏博、能美 健彦 2010 “gpt deltaトランスジェニックラットを用いたシリマリンとカプサイシンの化学予防効果の検討” 日本環境変異原学会大会プログラム・要旨集 (39), 145, 2010-10-29

・Pradhan SC, Girish C. 2006 “Hepatoprotective herbal drug, silymarin from experimental pharmacology to clinical medicine.” Indian J Med Res. 2006 Nov;124(5):491-504.

・Huseini HF, Larijani B, Heshmat R, Fakhrzadeh H, Radjabipour B, Toliat T, Raza M. 2006 “The efficacy of Silybum marianum (L.) Gaertn. (silymarin) in the treatment of type II diabetes: a randomized, double-blind, placebo-controlled, clinical trial.” Phytother Res. 2006 Dec;20(12):1036-9.

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