シアル酸

sialic acid

シアル酸はムチンから得られる酸性の糖で細胞と細胞の情報伝達に関わります。人の細胞にも含まれ母乳や卵などにも存在し、ツバメの巣から摂られることで有名です。ウイルスや細菌などが細胞に感染することを防ぎ、免疫力を高める働きが期待されます。

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シアル酸とは

●基本情報
シアル酸は細胞表面の情報伝達に欠かせない糖鎖の成分です。ツバメの巣などから得られるほか、人間の体内にも存在します。
また唾液に含まれる糖とたんぱく質が結合してできた多糖類の一種であるムチンから得ることもでき、細胞表面の糖鎖末端に存在する糖の一種で酸性の糖です。
私たちの体の細胞表面に存在している糖鎖の構成成分として細胞の表面に何かが付着したときに情報を伝える働きをしています。

●シアル酸の歴史
シアル酸は生物発生の歴史と共に存在したものですが、その存在が明らかになり発見されたのは1940年頃だといわれています。
ツバメの巣からとれることが有名です。人の母乳や自然のパーフェクトフードと呼ばれるローヤルゼリーにもシアル酸が含まれていますが、ツバメの巣のシアル酸は量が豊富です。

●シアル酸の特徴
シアル酸は人において母乳、脳の神経細胞、生殖器官などに多く存在しています。
免疫力や内臓器官などの各器官を強化するほか、自然治癒力の向上などに関わると考えられています。
人の母乳中のシアル酸は、出産後10日までの初乳において含有量が多いことが報告されています。
これは新生児の未発達な免疫機能を補うことをはじめ、下痢などの諸症状の主な原因として考えられているウイルスに対して感染を防いだり、乳幼児の健康維持を保つなど重要な役割を果たすためです。
さらにシアル酸は脳の発達にも関わり、脳や中枢神経に多く含まれ、その含有量は乳幼児が最も多いといわれています。
糖鎖は核酸やたんぱく質に次ぐ生体物質として知られ、細胞の働きを正常に保つとともに、免疫機能を整えてウイルスや菌などから体を守ります。
普段の食事から糖鎖栄養素を補うことは難しいですが、ツバメの巣には糖鎖栄養素が豊富に含まれているため、ツバメの巣を食べることでシアル酸を補うことができます。

●シアル酸の抽出
シアル酸は細胞表面の糖鎖末端に存在する糖の一種として人の母乳や唾液、牛の唾液に含まれます。特にシアル酸が多く含まれるものにツバメの巣があげられます。
多岐にわたる用途が期待されるシアル酸を製造するには、主に動物を起源とした天然物であるツバメの巣、牛乳、鶏卵からの抽出方法が主流です。
なかでもツバメの巣は古くから高級食材として中国などで珍重され、美容や健康維持のために食されてきました。限られた地域でしかとれず、手間と時間がかかることから高級といわれています。

<豆知識>世界三大美女も食したシアル酸
中国では、古くからシアル酸が含まれるツバメの巣には若返りと美容の効果があるという言い伝えがあり、主に宮廷の女性や上流階級の婦人たちなどがツバメの巣を食していました。
歴史に残る美女として知られている楊貴妃も永遠の美貌と若さを手に入れるため、ツバメの巣を喜んで食していたと伝えられています。
その他にも明の時代の皇帝など中国の歴史に残る人物の間でツバメの巣が愛用されていました。
このことからシアル酸が昔から健康や美容に役立てられていたことがわかります。

シアル酸の効果

●免疫力を高める効果
シアル酸にはウイルスや菌と結合する働きがあります。そしてシアル酸の働きによって感染症を予防することができます。病原体が体内に侵入してくると即座に見つけ出し、免疫細胞にそれらを除去する指令をします。この働きによりシアル酸はウイルスや菌の侵入から体を守るのです。
またインフルエンザウイルスにシアル酸が有効であるという研究結果も報告されていることもわかっています。
インフルエンザウイルスは細胞表面のシアル酸に結合し増殖します。このため、インフルエンザウイルスを吸着し、感染を予防するシアル酸化合物の研究も進んでいます。
免疫力を高める効果が期待されるとともに、体の免疫システムを正常に機能させていく役割が期待されます。【1】【2】【4】

●美肌効果
シアル酸は細胞と細胞をつなぎ情報伝達器のように連絡係として働きシミ、シワ、たるみなど体内の酸化を防ぎます。
またシアル酸は美肌の司令塔として、コラーゲンやヒアルロン酸が必要な所へと誘導してくれることから美肌効果があります。
昨今、美容食品やサプリメントとして動物の唾液が使用されているのは、シアル酸の含まれるツバメの巣とローヤルゼリーが有名です。

●育毛を促進する効果
シアル酸には神経刺激作用があり、育毛効果があるという報告があります。
育毛剤などの開発にもシアル酸が使用され、育毛効果が期待されます。【3】

シアル酸は食事やサプリメントで摂取できます

シアル酸を含む食品

○ツバメの巣
○牛乳
○鶏卵

こんな方におすすめ

○免疫力を向上させたい方
○美肌を目指したい方
○健やかな髪を保ちたい方

シアル酸の研究情報

【1】シアル酸分解酵素(ノイラミニダーゼ)を用いて、免疫細胞であるB細胞およびT細胞を活性化させる研究が10年以上継続されていることから、シアル酸は免疫系細胞にはたらきかけ、免疫活性化効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10024664

【2】インフルエンザウイルスはシアル酸に結合することが知られていることから、インフルエンザウイルス感染予防に役立つシアル酸誘導体の開発が進んでいます。
http://ci.nii.ac.jp/naid/10009280835/

【3】薄毛の男性10名を対象に、シアル酸を毎日一回頭皮に塗布したところ、育毛効果がみられました。シアル酸は神経刺激作用を通じた、育毛効果を有すると考えられています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/40016866029/

【4】シアル酸結合免疫グロブリン(シグレック)は、炎症誘発性サイトカインに暴露した細胞のアポトーシスを誘導することから、シアル酸は免疫力調節機能を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16581967

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参考文献

・シアル酸 研究会
http://www.sialic.jp/sialic01.html

・食品バイオ研究センター
http://www.j-fla.com/foodbio/rd/sialic_acid/sialic_acid.html

・Bagriaçik EU, Miller KS. 1999 “Cell surface sialic acid and the regulation of immune cell interactions: the neuraminidase effect reconsidered.” Glycobiology. 1999 Mar;9(3):267-75.

・鈴木 隆, 鈴木 康夫 2002 “見えてきたグライコテクノロジーの実用への道 : パラインフルエンザウイルス感染を阻害する新規シアル酸誘導体の開発” Bioscience & industry, 2002, 60(7), 22-25,

・岡嶋 研二 2009 “唾液成分シアル酸の育毛効果–その発現メカニズムと薄毛治療への応用 (特集 最近の脱毛メカニズム研究と育毛剤の開発)” フレグランスジャーナル, 2009, 37(10), 43-47

・von Gunten S, Simon HU. 2006 “Sialic acid binding immunoglobulin-like lectins may regulate innate immune responses by modulating the life span of granulocytes.” FASEB J. 2006 Apr;20(6):601-5.

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