白樺とは
●基本情報
白樺とは、カバノキ科カバノキ属の落葉高木の一種で、シラカンバとも呼ばれています。カバノキ科の植物の総称を「樺(カンバ)」と呼び、白樺は樹皮が白いことからその名前がつきました。
かつて白樺の木は、そのやわらかい材質が活かされ、爪楊枝や箸、櫛などに利用されていました。近年では、その樹液や葉のエキスが持つ有効性に注目が集まっています。
白樺の樹液は、幹に小さな穴を空けるだけで簡単に採取することができます。白樺の樹液は、水のように透き通り、ほんのりとした甘みを持ちます。白樺の樹液は糖質やアミノ酸、リンゴ酸、ミネラル類など豊富な栄養を含みます。そのためリウマチや便秘、痛風に効果的で、利尿作用、健胃・整腸作用なども持ちます。また、最近ではストレスをやわらげる効果もあると考えられています。そのため、白樺の樹液は古くから世界各国で健康飲料として愛されているのです。
さらに、白樺の葉には多くのミネラルが含まれているため、新陳代謝を促進する働きがあります。また、老廃物を排出する働きもあり、腸や腎臓、肝臓の働きを活性化させ、生活習慣病予防や便秘にも効果があります。
白樺には、お菓子やガムなどに多く配合されているキシリトールの原料であるキシランが含まれています。キシリトールは虫歯予防に効果的な成分であるため、白樺には虫歯を予防する効果も期待できます。
また、白樺の樹皮にはベチュリン[※1]と呼ばれる抗菌効果を持つ物質が含まれており、倒木して材は腐っても樹皮は残るという特徴があります。ベチュリンは抗菌効果のほか、殺シロアリ効果、ヘルペスウイルス[※2]の増殖抑制効果などを持っています。白樺は明るい高原のイメージをつくることから「高原の白い貴公子」とも呼ばれており、白樺の樹皮は「貴公子の衣」にあたりますが、その特徴から外敵から身を守る鉄壁の鎧とも考えられています。
<豆知識①>白樺樹液の採取方法
白樺は主に3月下旬から4月上旬の間、芽吹く準備をするために水を多く吸い上げます。
この時期の白樺にドリルで深さ2cm程の穴をあけ、そこにビニール管を差し込むと樹液が流れ出してくるため、空のビンなどにその樹液を溜めます。
樹液が止まったら、その穴に同じような木材を詰め込みます。すると1年も経たずその穴は塞がります。
白樺は別名「ウォーターツリー」ともいわれ、豊富に水分を含んでいることも特徴のひとつです。
<豆知識②>白樺に寄生するチャーガ
チャーガとは、キノコの一種で、和名をカバノアナタケといいます。
チャーガは白樺やダケカンバ[※3]などカバノキ科の幹に寄生します。白樺の木2万本に対して、たった1本しかないといわれるほど、希少価値の高い幻のキノコといわれています。
ロシアの民間療法として古くから利用され、お茶のようにして飲むと胃腸の働きを整える効果があると考えられてきました。1950年以降、本格的にロシアで研究が進められ、ロシア赤十字ではチャーガを主成分とした抗ガン剤が販売されるほど、優れた効果を持つことが明らかとなっています。
チャーガは、ロシアで魔法の樹といわれる白樺の樹液の栄養成分を吸って生長し、さらにキノコ本来が持つ成分に優れているため、健康や美容など様々な効果があると考えられています。
●白樺の原産地と特徴
白樺の原産地は、東アジアの温帯北部で、温帯から亜寒帯に広く分布しています。
日本では、本州中部より北の地域に多く見られ、特に北海道には多く生育しています。日本で見られる樹木の中では、最も幹が白くなり、特に高原などでは白さが増します。
白樺は、白い樹皮と三角形に近い形の葉が特徴で、高さは20~30m程になります。明るい場所を好んで生育し、白樺の陰など暗い場所を好むブナ[※4]などの樹木にとって代わられてしまうため、人間がこれらを伐採しない限り、白樺は通常、一代限りで消えてしまいます。
白樺は、北・中央ヨーロッパや北アメリカなどにも広く生育していますが、暖かい地方では病害虫の発生が多いため、育ちにくく、寒い地方では生長が早いという特徴を持ちます。
白樺はフィンランドにおいて、国の自然を代表するシンボルとして挙げられており、国の木としても扱われています。また、日本では長野県の県木に指定されています。
●白樺の樹皮や葉エキス、樹液に含まれる成分と働き
・白樺の樹皮、葉エキス
白樺の樹皮や葉エキスには、タンニンやサポニン、フラボノイド(ケルセチン、ルテオリン)、ビタミンCなどが含まれています。
肌に塗ることでスキンケア効果があり、肌の引き締めや制汗効果、血行促進効果、殺菌効果、消炎効果、保湿効果などがあります。
日本では化粧水や薬用石けん、美容液、シャンプーなどに利用されています。また、ヨーロッパでは、皮膚病や外傷の治療に古くから使用されています。
・白樺樹液
白樺の樹液は、糖質やアミノ酸、リンゴ酸、ミネラル類など様々な成分を含んでいます。また、お菓子やガムなどに配合されている虫歯予防の効果で有名なキシリトールの原料であるキシランも含まれています。
そのため白樺樹液は、便秘や痛風に対する効果や、利尿作用、健胃・整腸効果、虫歯予防効果を持つとして、古くから親しまれています。
[※1:ベチュリンとは、白樺の外樹皮に含まれる物質で、日焼け止めや紫外線をカットする効果を持ちます。]
[※2:ヘルペスウイルスとは、皮膚や粘膜の炎症、脳炎を引き起こすウイルスです。]
[※3:ダケカンバとは、カバノキ科カバノキ属に属する落葉広葉樹の一種です。白樺とよく似た形態を持ちます。]
[※4:ブナとは、ブナ科ブナ属に属する落葉広葉樹の一種です。温帯地域に生育し、比較的暗い場所を好みます。]
白樺の効果
●美肌効果
白樺の葉や樹皮は、ビタミンCやタンニン、サポニン、フラボノイドなど、美肌に対して効果的な成分を含んでいます。
ビタミンCは肌のハリを保つコラーゲンの生成を促進する上、強い抗酸化力を持つため、活性酸素を除去する力に優れています。活性酸素は、本来人間の体にとって必要な物質ですが、ストレスや紫外線など様々な要因によって増えすぎてしまうことで、正常な細胞を攻撃し老化を促進させたり、疾病の原因になったりしてしまいます。活性酸素が肌に過剰に発生することで、肌の老化を促進させ、しわなどの原因となります。
ビタミンCはそのような活性酸素を除去する働きを持ちます。
また、白樺に含まれるタンニンには、収れん作用[※5]があり、肌を引き締め毛穴を目立たなくする効果があります。
サポニンは若返り効果で知られており、血管を健康にし血流を改善する効果があります。また、フラボノイドもサポニンと同様に血流を改善する効果を持ちます。
白樺の樹液は、表皮のターンオーバー[※6]に働きかけ、新陳代謝を促進しながらアミノ酸などの皮膚の潤いを保持する機能に優れた角層を形成する働きがあります。
白樺の樹皮や葉、樹液に含まれる様々な成分が相互に作用することで、肌を引き締め、柔軟性を保ったり、肌の炎症を抑制し保護したり、血行を促進することでくすみをなくしたりと美肌に対して効果を発揮します。【1】【2】
●デトックス効果
デトックスとは、体内に蓄積した老廃物を体外に排出することをいいます。不要な老廃物を体外に排出することで、肌荒れやむくみを防ぐ効果が期待できます。また、この効果は痛風にも効果的です。
白樺の樹液には、便秘を解消したり、尿の分泌を促進したりと、体内に溜まった老廃物を体外に排出するデトックス効果があります。
●虫歯を予防する効果
白樺にはキシリトールの原料であるキシランが含まれています。
キシリトールは、ガムなどに多く配合されている甘味料の一種で、虫歯予防に役立つとして有名な成分です。ヨーロッパ歯科医師会でも推奨されている成分で、特にフィンランドでは、食事の後と寝る前に必ずキシリトール配合のガムを噛むことが習慣となっており、フィンランド人に虫歯が少ないのはこのためだといわれています。
虫歯は、口の中に棲むミュータンス菌が原因です。ミュータンス菌は、歯の間などに残った糖をエサとして、酸をつくり出します。つくり出された酸によって、歯の表面のエナメル質が溶かされて虫歯となってしまうのです。
キシリトールは、虫歯の原因であるミュータンス菌のエサにならないため、虫歯を予防する効果があるといわれています。【3】
●リウマチや関節炎の症状を緩和する効果
白樺には、リウマチや関節炎など免疫系疾患に対する効果も期待されています。
リウマチとは、骨や関節、筋肉などの体を支え動かす運動器官が自己の免疫によって炎症を起こしてしまう病気で、膠原病(こうげんびょう)[※7]の一種です。自己の免疫が関節などを侵食し攻撃してしまうことによって、関節が腫れたりゆがんだりしてしまうのです。
リウマチを完治させる治療法はまだ見つかってはいませんが、治療には炎症を抑制する薬が使用されます。
白樺には、炎症を抑制する効果があるため、リウマチなど免疫系疾患に効果があると考えられています。【2】【5】
[※5:収れん作用とは、縮こませたり、引き締めたりする働きを指します。]
[※6:ターンオーバーとは、肌が生まれ変わる周期のことです。ターンオーバーは20歳頃までは28日前後で生まれ変わるといわれていますが、ターンオーバーは年齢とともに遅れていき、40歳を過ぎると40日以上かかるようになります。年齢とともに肌の透明感やハリが失われる原因のひとつです。]
[※7:膠原病とは、血管壁や関節、靭帯や腱、各臓器の膜などが炎症を起こす病気のことです。]
白樺はこんな方におすすめ
○肌荒れでお悩みの方
○美肌を目指したい方
○体内の毒素を排出したい方
○手足のむくみでお悩みの方
○虫歯を予防したい方
○リウマチなどの免疫系疾患でお悩みの方
白樺の研究情報
【1】老齢ラット24匹において、10%白樺の有効成分(キシリトール)を添加した餌を20カ月間摂取させたところ、皮膚の厚みが増加し、コラーゲンの構成成分である酸可溶性ヒドロキシプロリンが増加していました。この結果より、白樺の有効成分(キシリトール)には皮膚コラーゲンの合成を促進し、肌の健康機能を促進することが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15832042
【2】アトピー性皮膚炎に悩む方17名に白樺の有効成分(キシリトール)5% 及びファネソール0.02% 含有のスキンケアクリームを1週間塗布したところ、皮膚炎を引き起こす黄色ブドウ球菌の比率が減少しており、皮膚表面の水分の状態を示す皮膚コンダクタンスの値も改善が見られました。この結果より、キシリトールはアトピー性皮膚炎予防に役立つスキンケアとして有益であることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15927814
【3】虫歯に悩むエストニアの小学校12校の学童(10歳)740名を対象に、白樺の有効成分(キシリトール)を1日5g を摂取し、その後2~3年間の虫歯にかかるリスクを確認したところ、白樺の有効成分(キシリトール)を摂取したこどもでは、リスクが35~60% 軽減されました。この結果より、白樺の有効成分(キシリトール)に虫歯予防のはたらきがあると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10830649
【4】敗血症のラットに白樺の有効成分(キシリトール)を摂取させると、免疫細胞のひとつである好中球が活性化され、免疫力が高まり、ラットの生存日数が高まりました。この結果より、白樺の有効成分(キシリトール)には免疫力を高める力があると示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18334022
【5】マウスに白樺樹皮の機能性成分ベツリン酸を1日当たり0.25, 0.5, 1.0mg/kg 、14日間摂取させたところ、免疫細胞であるリンパ球やマクロファージが活性化されたことから、白樺樹皮には免疫力向上効果があることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21113099
参考文献
・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社
・Alanen P, Isokangas P, Gutmann K. 2000 “Xylitol candies in caries prevention: results of a field study in Estonian children.” Community Dent Oral Epidemiol. 2000 Jun;28(3):218-24.
・Renko M, Valkonen P, Tapiainen T, Kontiokari T, Mattila P, Knuuttila M, Svanberg M, Leinonen M, Karttunen R, Uhari M. 2008 “Xylitol-supplemented nutrition enhances bacterial killing and prolongs survival of rats in experimental pneumococcal sepsis.” BMC Microbiol. 2008 Mar 11;8:45.
・Mattila PT, Pelkonen P, Knuuttila ML. 2005 “Effects of a long-term dietary xylitol supplementation on collagen content and fluorescence of the skin in aged rats.” Gerontology. 2005 May-Jun;51(3):166-9.
・Katsuyama M, Kobayashi Y, Ichikawa H, Mizuno A, Miyachi Y, Matsunaga K, Kawashima M. 2005 “A novel method to control the balance of skin microflora Part 2. A study to assess the effect of a cream containing farnesol and xylitol on atopic dry skin.” J Dermatol Sci. 2005 Jun;38(3):207-13.
・Yi JE, Obminska-Mrukowicz B, Yuan LY, Yuan H. 2010 “Immunomodulatory effects of betulinic acid from the bark of white birch on mice.” J Vet Sci. 2010 Dec;11(4):305-13.