ごま

sesamum indicum

必須アミノ酸をバランス良く含むたんぱく質や不飽和脂肪酸を含む万能食品の種実。ゴマリグナンの一種「セサミン」が注目されています。肝臓内で脂肪を利用しやすい形に変え、酵素を活発化させるため肝臓の働きを高めることが期待されています。

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ごまとは

●基本情報
ごまの種子が食用となったアフリカ原産の食品。リノール酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸を約50%含み、また必須アミノ酸をバランス良く含んだたんぱく質を約20%含みます。ビタミンやミネラルの栄養素が1粒にぎっしりと詰まっており、さらにセサミンという脂溶性の抗酸化成分を含みます。

●ごまの歴史
紀元前3世紀の古代エジプトでごまが健康に良いことや薬用に使われていたことが象形文字で記載されていました。日本でも縄文時代の遺跡からごまが出土しており、奈良時代にはごま油がつくられました。
平安時代の『延喜式』にはごまは料理や菓子に、ごま油は食用、薬用、灯火用に使われていたことが記されていることから、ごまは古来より利用されてきたことがわかります。

●ごまの栽培
ごまの草丈は約1mになり、薄紫色の花をつけ実の中に多数の種子を含みます。ぎっしり詰まった種子が熟成すると開裂し種子が飛散します。収穫する時は開裂する前に刈り取り、立てかけて乾かしてから逆さにしてたたいて種子を収穫します。
ごまは栽培地を選ばず、手間をかけることなく栽培できる特徴があり、一番の収穫時期は9月頃になります。

●ごまの産地
日本では鹿児島県、茨城県、栃木県などで生産されています。
また世界ではアフリカ、インド、中国での生産が盛んです。

●ごまの旬と種類
ごまの旬は9月~10月です。
ごまにはその形や色から小粒で油の含有量が多い白ごま、大粒だが油の含有量は低い黒ごま、油の含有量は多いが生産量が少ない茶ごま、粒の色が金色に近い金ごまの4種類があります。黒ごまはアントシアニンの抗酸化作用が免疫力を高め、ごま油の原料となる白ごまにはコレステロール値を下げる不飽和脂肪酸のリノール酸が多く含まれています。また、ごまに多く含まれるセサミンという成分は抗酸化作用のあるビタミンEとともに過酸化脂質[※1]ができにくくする働きがあります。しかし、ごま油は非常にエネルギー量が高いため肥満につながりやすく、またリノール酸も過剰に摂り過ぎると過酸化脂質の原因になりやすいので注意が必要です。

<豆知識>ごまの食べ方
ごまは外皮が固く、生で食べるのは消化に良くありません。生では種皮が固く香りも良くないのでごまを食べる際は通常はフライパンなどで炒ったもの(炒りごま)を用います。また切りごまやすりごまといった薬味の他、ごまだれ、ごま油、練りごまなど様々な方法も用いられます。リノール酸やオレイン酸は空気に触れると酸化しやすくなるので、使う直前に用意する方が良質な脂肪酸を摂取できます。炒ったり、すりごまなどの調理法はごまの栄養をしっかり摂るための昔ながらの知恵です。

[※1過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪といった脂質が性酸素によって酸化されたものの総称です。]

ごまの効果

ごまの成分の約1%がゴマリグナン(ごまに含まれる脂溶性の抗酸化成分の総称)ですが、セサミンはその中に含まれており、とても貴重な成分です。
セサミンは体内で過酸化脂質が増えることを抑制します。また動脈硬化の原因となる悪玉(LDL)コレステロールの増殖を防ぎ、強い抗酸化作用で肝機能を高める効果があります。
セサミンの摂取目安量は1日10mgで、ごま3000粒分になります。

●肝機能を高める効果
セサミンは強い抗酸化力を持ち、体内の酸化を防ぎます。
中でも活性酸素が多く発生する肝臓において抗酸化作用を発揮し、肝臓の活性酸素を取り除いて細胞が傷つくことを防ぎます。
また肝臓のアルコール分解を助ける働きがあるので、お酒を飲む前にごまを少し食べておくと二日酔いや悪酔いの防止が期待されます。【1】【2】

●コレステロール値を下げる効果
ごまの持つ不飽和脂肪酸(リノール酸、オレイン酸)には、血中のコレステロールを減らす作用があり、血管を浄化して血行を良くします。またゴマに含まれるビタミンEやセサミンにも同様の効果があるため、ごまは健康な血管を保つのに良い食材です。【3】【4】

●肌や髪の健康を保つ効果
ごまには、ビタミンB1、ビタミンB2、カルシウム、鉄、マグネシウムなどのビタミンやミネラル類が1粒の中に詰まっています。豊富なカルシウムは骨を丈夫にする働きが期待できますし、その他のミネラル類との相乗効果によって肌や髪につやを与えます。またビタミンB1は糖質の代謝にも役立ちます。

こんな方におすすめ

○肝臓の健康を保ちたい方
○コレステロール値が気になる方
○髪の潤いを保ちたい方

ごまの研究情報

【1】薬物肝障害ラットを対象に、ごま油抽出物を摂取させたところ、肝障害によるグルタチオンや抗酸化酵素の低下、酸化ストレスの指標TBARSの上昇、肝臓内のLDH、ASTおよびALTの活性低下などの肝臓障害が緩和されたことから、ごま油抽出物が肝臓保護作用を有すると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22428892

【2】ラットを対象に、ごまを1日当たり200 g/kg の量で試料に添加したところ、ごま油摂取ラットでは、肝臓内の脂肪酸酸化酵素の活性を増加させるから、ごまに肝臓保護作用を持つことが期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11368649

【3】高血圧患者15名を対象に、黒ゴマ粉末カプセル2.52g を4週間摂取したところ、収縮期血圧と血漿中過酸化脂質濃度の上昇が抑制されたことから、ごまは高血圧予防効果などの健康機能性が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21827664

【4】高コレステロール血症患者を対象に、ごまの健康成分であるセサミンを1日あたり 32.4mg の量で4週間、その後 64.8mg の量で4週間、計8週間摂取したところ、総コレステロール値およびLDLコレステロール値の上昇が緩和したことから、ごまに高脂血症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8724120

【5】男子大学生を対象に、ごまの健康成分であるセサミン36mg を1回摂取させたところ、運動負荷後の過酸化脂質の上昇が抑制されたことから、ごまに健康機能性が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15630196

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参考文献

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・吉田企世子 松田早苗 あたらしい栄養学 高橋書店

・原山建郎 久郷晴彦 サプリメント大事典 昭文社

・工藤秀機 蒲池桂子 栄養を知る事典 日本文芸社

・則岡孝子 あなたに必要な栄養成分と食べ物 河出書房

・Abdou HM, Hussien HM, Yousef MI. 2012 “Deleterious effects of cypermethrin on rat liver and kidney: protective role of sesame oil.” J Environ Sci Health B. 2012;47(4):306-14.

・Sirato-Yasumoto S, Katsuta M, Okuyama Y, Takahashi Y, Ide T. 2001 “Effect of sesame seeds rich in sesamin and sesamolin on fatty acid oxidation in rat liver.” J Agric Food Chem. 2001 May;49(5):2647-51.

・Wichitsranoi J, Weerapreeyakul N, Boonsiri P, Settasatian C, Settasatian N, Komanasin N, Sirijaichingkul S, Teerajetgul Y, Rangkadilok N, Leelayuwat N. 2011 “Antihypertensive and antioxidant effects of dietary black sesame meal in pre-hypertensive humans.” Nutr J. 2011 Aug 9;10:82.

・Hirata F, Fujita K, Ishikura Y, Hosoda K, Ishikawa T, Nakamura H. 1996 “Hypocholesterolemic effect of sesame lignan in humans.” Atherosclerosis. 1996 Apr 26;122(1):135-36.

・Kiso Y. 2004 “Antioxidative roles of sesamin, a functional lignan in sesame seed, and it’s effect on lipid- and alcohol-metabolism in the liver: a DNA microarray study.” Biofactors. 2004;21(1-4):191-6.

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