セージ

Sage
ヤクヨウサルヴィア  コモン・セージ(Common Sage)
Salvia officinalis

セージとは、シソ科の植物でハーブの一種です。古くから「長寿のハーブ」と呼ばれ、ハーブティーとして飲用することでのどの痛みや口内炎の予防、月経痛などの女性特有の悩みに働きかける効果、消化を促進する効果、美肌効果などがあります。また、葉から採れる精油にはリラックス効果が期待されており、アロマテラピーなどに利用されています。

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セージとは?

●基本情報
セージには様々な種類がありますが、一般的にセージというとコモン・セージを指します。
セージとは、シソ科サルヴィア属の植物で丈が30~70㎝程になる多年草です。
葉の色が白がかった独特な緑色をしており、この色はセージグリーンとも呼ばれています。毎年春から夏にかけて薄紫やピンク色の花を咲かせ、茎はシソ科の特徴である四角形をしています。
セージは、ヨーロッパの南部や地中海沿岸の石灰質の日当たりのよい斜面に自生しており、高温多湿に弱く、寒さに強い性質を持つことから、乾燥していれば-15℃程度の環境下でも生育できるといわれています。
セージは古くからハーブとして親しまれており、ハーブティーとして飲むことで、のどの痛みや口内炎の予防、月経痛の緩和、消化促進など様々な効果があるといわれています。
また、セージの葉から抽出した精油[※1]にはリラックス効果があるとして、アロマテラピーに利用されてきました。

●セージの歴史
セージの歴史は古く、紀元前300年に著されたテオフラストスの「植物誌」で紹介されています。その後、紀元後77年にはプリニウスやディオスコリデスによって書かれた「プリニウス博物誌」の「植物薬剤編」にも記録があるといわれています。プリニウス博物誌では、セージには野生種と栽培種がある、ブドウ酒とともに飲むと遅れている月経を促進する、煎じ汁を飲むと月経過多を止める、セージの葉そのものを傷口に貼ると出血を抑える、蛇に噛まれたときには毒消しになることなどが記載されています。

セージがヨーロッパ南部や地中海沿岸地方からイギリスに渡ったのは1世紀頃といわれており、ローマ軍がイギリスでの行軍中、道の両脇にセージの種を蒔いて進んだといわれています。10世紀には医学の中心地であったイタリアのサレルノでセージの薬効がたたえられ、疫病の薬として利用されていました。12世紀のドイツでもセージは万能薬と考えられていました。
17世紀に入ると、イギリスのニコラス・カルペッパーが「造血の効果があって肝臓によい」「記憶力を強くするのに非常な能力があって、感覚を暖め敏感にする」と述べています。また、ヨーロッパに中国のお茶が伝わると、セージとお茶を混ぜた飲料が飲まれるようになり、イギリスでは多量のセージがオランダから輸入されるようになりました。
また、歯磨き粉ができる以前は、歯を白くし歯茎を丈夫にするものとしてセージが利用されていました。

日本にセージが渡来したのは、明治12年頃だといわれています。かつては薬用植物園で見られましたが、現在では、その香りの良さから葉を乾燥させてハーブティーとして飲用されるようになり、ハーブ・ガーデンやハーブ専門店で見られるようになりました。料理にも利用されるようになり、主にソースなどの付香料として利用されたり、肉の臭み消しとして重宝されています。
また、セージの苗や種子も販売されるようになり、今では全国に普及しています。

<豆知識①>セージと人々の生活との関わり
セージは昔から長寿のハーブとして親しまれてきました。中国やペルシャには「庭にセージを植えれば、老いることなし」、イギリスには「長生きしたい者は5月にセージを食べよ」という古いことわざがあります。
17世紀の中国では大変珍重され、オランダ商人は1枚のセージの葉と大箱3箱の最高級中国茶を取引していたそうです。古代ローマでは、あらゆる儀式で捧げられる神聖なハーブであったともいわれています。
セージは、薬用としての利用のほか、料理にも使われます。昔は、肉の防腐のためにソーセージにセージを一緒に練りこんだといわれています。これは、防腐目的だけでなく肉の臭みを抑える香りづけの意味を持っています。 このことからソーセージという名前は、セージが語源であるという説があります。
セージは料理の他にも、ガーデニングやフラワーアレンジメント、ドライフラワー、リース、染色、入浴剤、石けん、シャンプーやトリートメントなど、その利用範囲は多岐に渡り多くの人々に親しまれています。

●セージに含まれる成分と性質
セージの葉から採取される精油には、ツヨン、シネオール、ボルネオール、カンファーなどが含まれています。この精油はごく少量でも効果を発揮するといわれ、アロマテラピーとして利用されています。
ツヨンはメントールの様な香気を持つ精油で、強い抗菌効果や防腐効果を持っています。
シネオールは心地よい芳香と味を持つことから、食品添加物や香料、化粧品、口中清涼剤、咳止めなどに配合されています。副鼻腔炎の治療に効果があるほか、炎症や痛みを和らげる効果もあるといわれています。
ボルネオールには、アロマテラピーでの効果として、抗うつ、穏やかな鎮痛、抗ウイルス、副腎皮質刺激、全身および心臓強壮作用などがあるとされます。
カンファーとは、一般的に樟脳と呼ばれる物質でカンフルとも呼ばれています。カンファーには、血行促進作用や鎮痛作用、消炎作用などがあり、主に外用医薬品の成分として使用されています。医薬用以外でも、香料の成分として使用されたり、衣類や人形などの防虫剤、防腐剤として使われることもあります。

セージには他にもタンニン、フラボノイド、サルビン酸、カルノシン酸、フェノール酸などが含まれ、様々な健康に対する効果があるといわれています。
特に、収れん作用[※2]を持つタンニンは月経過多や多汗を抑える目的で用いられています。

<豆知識②>セージの空間を清める力
セージには空間を清める力があると考えられており、現代でもカナダなどでは新しい引越し先でセージを焚いて部屋を清めたり、アロマキャンドルなどと一緒に引越し祝いとしてプレゼントしたりします。
また、セージを煮たあとの水をスプレーすると抗カビ、殺菌効果があるとされています。

[※1:精油とは、植物の花や葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などから抽出した有効成分を高濃度に含有した100%天然の揮発性の芳香物質です。各植物によって特有の香りと機能をもち、アロマテラピーに利用されています。]
[※2:収れん作用とは、縮こませたり、引き締めたりする働きを指します。]

セージの効果

セージには、精油に含まれるツヨンをはじめ、タンニンなどの有効成分が含まれており、以下のような健康に対する効果が期待されています。

●のどの痛みや口内炎を予防する効果
セージには優れた抗菌効果に加え収れん作用があるため、風邪や熱の症状、のどの痛みを抑える効果があるといわれています。また、扁桃腺(へんとうせん)炎や気管支炎といった呼吸器系感染症の初期に服用すると効果があるといわれています。
また、主成分のツヨンやタンニンには、歯肉炎や口内炎などの口腔内粘膜の炎症やのどの腫れなどを防ぐ効果が期待されています。セージの葉をハーブティーとして飲用する他、ハーブティーで1日に2~3回うがいをすることで、これらの症状が予防できるといわれています。【8】
●リフレッシュ効果​​
とても鋭くクリアな香りを持つセージの精油は非常に強い作用があり、ごく少量でもその効果を発揮します。セージの香りは、気分が落ち込んでいる時などに使われます。また、頭をすっきりとさせたい時にも役立つ香りとして、勉強部屋や仕事中の芳香浴にも利用されます。神経疲労にも効果を発揮し、ストレスに対処する能力を高める効果が期待されています。

●女性特有の悩みに働きかける効果
セージには血行を促進する効果があるため、月経痛の緩和や過小月経、稀揮発月経、無月経などの月経不順に対して働きかけるといわれています。また、セージには女性ホルモンであるエストロゲンに似た作用もあるため、更年期特有の異常発汗やホットフラッシュと呼ばれるほてりやのぼせをはじめ、めまい、耳鳴り、肩こり、不眠、疲労感などの症状に対する効果があるといわれています。【4】

●消化を促進する効果
セージには、消化薬としても優れた効果があるといわれています。セージの精油には消化器系の平滑筋を弛緩させる効果があり、苦味とともに食欲を刺激し、消化を助けるといわれています。さらに消化を促進する消化酵素と胆汁の分泌を促進し、胃の働きをサポートします。また、セージのハーブティーを飲むと胃腸内のガスを排出する効果があるといわれています。消化不良や下痢、大腸炎や肝臓病に有効だとされ、さらに殺菌作用があるため胃腸炎などの感染症を改善する効果が期待されています。

●美肌効果
セージには収れん作用があるため、肌を引き締め、炎症を抑える効果があるといわれます。皮膚の一番外側の表皮に含まれるケラチンを変成させ、緻密(ちみつ)なバリアを張ると同時に引き締めるため、毛穴の広がりを抑えたり、傷などの出血を止める働きがあります。そのため近年では、セージが化粧品にも利用されるようになりました。【7】

セージは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

◎のどの痛みや口内炎でお悩みの方
◎ストレスをやわらげたい方
◎リフレッシュしたい方
◎女性特有の症状でお悩みの方
◎消化を促進したい方
◎美肌を目指したい方

セージの研究情報

【1】セージは、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、枯草菌、エンテロバクター・クロアカ、肺炎桿菌およびプロテウス・ミラビリスなど病原菌に対する抗菌作用を持っています。この働きにより、セージは抗菌作用の他、食中毒性下痢の予防にも役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22594260

【2】健康なラットおよび糖尿病ラットに、セージ抽出物および精油を投与したところ、インスリンを介することなく、血糖値の上昇が抑制されました。セージが糖尿病予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16125023

【3】急性炎症ラットに、セージを投与したところ、免疫細胞の白血球細胞と単球細胞、マクロファージが活性されるとともに、一酸化窒素が減少したことから、セージに免疫向上作用と抗炎症作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17595884

【4】更年期障害女性71名を対象に、セージの葉を1日1回の量で8週間摂取させたところ、更年期症状ホットフラッシュが減少したことから、セージが更年期障害改善効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21630133

【5】健康な女性6名を対象に、セージティーを4週間摂取させたところ、HDLコレステロール値、LDLコレステロール値および総コレステロール濃度における脂質状態の改善が見られました。さらに、リンパ球Hsp70発現および赤血球中の抗酸化酵素SODおよびカタラーゼ活性が高まりました。セージに高脂血症予防効果や免疫力向上効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19865527

【6】胃病変マウスに、セージ抽出物を摂取させたところ、胃潰瘍および総酸度が減少しました。セージは胃酸分泌関連物質プロトンポンプを阻害することで、セージに胃潰瘍保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19481590

【7】アトピー性皮膚炎マウスに、セージを含むハーブエキス(ゲンノショウコ、ホップ、ローズマリーおよびセージ)を投与したところ、皮膚病変が緩和したことから、セージが抗炎症作用ならびに抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21467798

【8】咽頭炎患者154名を対象に、エキナセア/セージのスプレーを2時間ごとに吸入させたところ、のどのはれが治まったことから、セージに抗炎症作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19748859

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参考文献

・リエコ・大島・バークレー 英国流メディカルハーブ 説話社

・林真一郎 メディカルハーブの事典 東京堂出版

・アン・マッキンタイア 女性のためのハーブ自然療法 産調出版

・桐原春子 桐原春子のハーブを楽しむセージブック ほるぷ出版

・ワンダーセラー アロマテラピーのための84の精油 フレグランスジャーナル社

・ハーブ スパイス館 小学館

・三上杏平 カラーグラフで読む精油の機能と効用 フレグランスジャーナル社

・fanović OD, Stanojević DD, Comić LR. 2012 “Synergistic antibacterial activity of Salvia officinalis and Cichorium intybus extracts and antibiotics.” Acta Pol Pharm. 2012 May-Jun;69(3): 457-63.

・Eidi M, Eidi A, Zamanizadeh H. 2005 “Effect of Salvia officinalis L. leaves on serum glucose and insulin in healthy and streptozotocin-induced diabetic rats.” J Ethnopharmacol. 2005 Sep 14;100(3): 310-3.

・Oniga I, Pârvu AE, Toiu A, Benedec D. 2007 “Effects of Salvia officinalis L. extract on experimental acute inflammation.” Rev Med Chir Soc Med Nat Iasi. 2007 Jan-Mar;111(1): 290-4.

・Bommer S, Klein P, Suter A. 2011 “First time proof of sage’s tolerability and efficacy in menopausal women with hot flushes.” Adv Ther. 2011 Jun;28(6): 490-500.

・Sá CM, Ramos AA, Azevedo MF, Lima CF, Fernandes-Ferreira M, Pereira-Wilson C. 2009 “Sage tea drinking improves lipid profile and antioxidant defences in humans.” Int J Mol Sci. 2009 Sep 9;10(9): 3937-50.

・Mayer B, Baggio CH, Freitas CS, dos Santos AC, Twardowschy A, Horst H, Pizzolatti MG, Micke GA, Heller M, dos Santos EP, Otuki MF, Marques MC. 2009 “Gastroprotective constituents of Salvia officinalis L.” Fitoterapia. 2009 Oct;80(7): 421-6.

・Takano N, Inokuchi Y, Kurachi M. 2011 “[Effects of ethanol extracts of herbal medicines on dermatitis in an atopic dermatitis mouse model].” Yakugaku Zasshi. 2011 Apr;131(4): 581-6.

・Schapowal A, Berger D, Klein P, Suter A. 2009 “Echinacea/sage or chlorhexidine/lidocaine for treating acute sore throats: a randomized double-blind trial.” Eur J Med Res. 2009 Sep 1;14(9):406-12.

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