サバ

mackerel

青魚の中でトップクラスの栄養素を持つサバ。DHAやEPAという人間の体内ではつくれない不飽和脂肪酸を豊富に含みます。日本各地で水揚げされ、旬は秋で「秋サバ」が有名です。ビタミンB2、たんぱく質、脂質などを含み、生活習慣病の予防にも効果的な魚です。

サバとは?

●基本情報
サバはサバ科サバ属に分類される魚の総称で、日本近海ではマサバ・ゴマサバ・タイヘイヨウサバなどの種類がみられます。日本各地で水揚げされるサバは秋が旬で「秋サバ」と呼ばれます。通年捕れますが、脂ののった秋サバはとくに美味で、通常サバに含まれる脂質は12%程度ですが、10月~12月には20%を超えます。脂質には不飽和脂肪酸EPADHAが豊富に含まれ、とくにDHAの含有量は同じ青魚のイワシやサンマよりも多く、たんぱく質も青魚のなかでトップを誇ります。イノシン酸などのうま味成分も豊富に含み、血合い肉にはビタミンAビタミンB1ビタミンB2が多く含まれます。

●サバの生態
サバの全長は約50cmで、背側は青灰色、腹側は銀白色をしています。日本海、太平洋海、東シナ海の3系統に分かれており、それぞれの生活圏で群れをなして生息することが特徴です。水温15℃前後を好む回遊魚で、水温の変化にともなって夏に北上、冬に南下します。

●主なサバの種類
・マサバ
全長約50cmで世界中の温帯から熱帯の沿岸域に分布します。日本の各海域に分布し、ほぼ1年中漁獲されます。

・ゴマサバ
全長約50cm。本州中部からオーストラリアやニュージーランドまでの西部太平洋と北東太平洋に分布します。年間を通じてほとんど味が変わらないことが特徴です。

・タイヘイヨウサバ
全長約50cm。北東大西洋や地中海、黒海に分布します。ノルウェーサバという名で市場に出回ります。

●サバの旬
サバの旬は9月~11月頃が旬で、この時期のマサバを特に「秋サバ」と呼びます。ちょうどこの頃は産卵を終えた後で、冬に備えてたくさんエサを食べている時期で、脂ののりが非常に良くなっています。またゴマサバはもともと脂質が少ないので、一生を通してあまり味は変わりません。しかしマサバの味が極端に落ちる春から夏にかけて、このゴマサバが重宝されます。

●サバの選び方
サバは、「サバの生き腐れ」といわれることもあるほど鮮度の落ちが激しい魚です。新鮮なものは腹にツヤと弾力があり、金色のスジ模様があります。また、調理の際にも酒や酢、しょうがで臭みを消したり、みそと一緒に調理して臭みを吸着させると良いでしょう。

●サバに含まれる成分と性質
サバは良質なたんぱく質と不飽和脂肪酸が豊富です。特にDHAとEPAが豊富で、細胞の老化予防や脳機能の改善、血液サラサラ効果などが期待されます。また、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB12などが多く、細胞の再生の促進にも役立ちます。

サバの効果

●血流を改善する効果
サバに含まれるEPAは、健康に欠かせない必須脂肪酸で、体内の血液のめぐりをスムーズにします。国際的にはIPA(イコサペンタエン酸)と呼ばれることもあります。血液の流れが滞ると、酸素と二酸化炭素、栄養分と老廃物などの交換がうまく行われなくなり、体のいたる部分に不具合が出ます。血流が悪くなると体の機能が低下するとともに、血圧が上昇し、血管がつまったり、破裂したりするリスクが高まります。そのような症状を阻止するのがEPAです。【1】【2】
またDHAは、青魚に多く含まれている不飽和脂肪酸で、体内ではEPA(エイコサペンタエン酸)からつくられます。冷たい海に住んでいる魚の脂で、低温状態においても固まらない性質を持ちます。DHAには、血管壁の細胞膜を柔らかくする働きがあるため、血流を改善する効果があります。また、勢いよく血液が流れた際に血圧が高くなるのを防ぐ働きもあります。同時に赤血球の細胞膜も柔らかくするため、血流が改善され血液がサラサラの状態になるため、血流を改善する効果があります。

●記憶力や学習能力を高める効果
DHAは脳を構成する約140億個の脳細胞の膜に存在し、脳内でも特に記憶や学習に関わる海馬に多く集まっています。DHAは脳を活性化する働きがあるため、海馬のDHA量が頭の良さに関わっているといわれており、脳の栄養素とも呼ばれています。
脳には、有害なものが外部から入らないようにするフィルターのようなものがあり、脳内に入れる成分と入れない成分を選別しています。DHAはそのフィルターを通過することができる成分で、神経伝達物質の量を増やし、情報伝達の能力を向上させる働きがあります。
またDHAは神経細胞の発育を活性化させ、機能維持に重要な役割を果たしています。DHAは記憶や学習能力を向上させるために必要不可欠な成分です。
未熟児で生まれた赤ちゃんにDHAを含まない粉ミルクで育てた場合と、DHAを含む母乳で育てた場合では、母乳で育てた方が、知能指数がはるかに高いということが明らかとなっており、子どもの脳細胞の発育には、赤ちゃんがお腹にいるときから、母親がDHAを摂るようにすること、粉ミルクの場合でもDHA配合の製品を選ぶことが大切です。また、成長後の子どもでもDHAを摂取させると、学習能力が向上し、集中力が高まることもわかっています。このことから生まれた時から一生を通じてDHAは大切な栄養素であるといえます。それらのことからも、サバに含まれる成分が脳の機能を改善する効果があることがわかります。【5】【6】

●生活習慣病の予防・改善効果
サバはビタミンB2、ビタミンB12、たんぱく質、脂質などを含み、動脈硬化・脳卒中・肝臓病の予防、口内炎の改善に効果があるとされています。特に人間の体内ではつくられない不飽和脂肪酸であるEPAとDHAが豊富なため中性脂肪の低下を促し、DHAは善玉コレステロールを増やし悪玉コレステロールを減らします。しかもサバの脂肪はカロテン吸収率を高める働きもあるので、緑黄色野菜を一緒に摂取すると抗酸化作用が得られ、生活習慣病の予防に効果を発揮します。【3】【4】

サバはこんな方におすすめ

○血流を改善したい方
○脳の健康を維持したい方
○生活習慣病の予防したい方

サバの研究情報

【1】EPAとDHAは血液循環器系のリスクを下げるとされています。100グラム当たりEPAとDHAが8.82g含まれるサバを食べさせたところ、リスクの改善が見られました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19260945

【2】魚や魚油にはオメガ3脂肪酸が含まれています。オメガ3脂肪酸には人の健康を保つとされており、魚や魚油に含まれるω-3系脂肪酸を1回の食事あたり2.7~7.5グラムと十分に摂取することで、心臓病のリスクが減少したということが報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14623484

【3】軽度から中程度の高血圧症の男性患者12人にサバ缶を2週間食べてもらった結果、血清中の脂肪やリポプロテインの量や血圧についての改善が見られました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3026412

【4】軽度から中程度の高血圧症の男性患者14人に鯖とニシンを2週間食べさせるクロスオーバー試験を行いました。その後、血清を調べたところトリグリセリド、総コレステロール、LDLコレステロール、LCATの値がそれぞれ大きく下がったことが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3000395

【5】脳の認知機能にはグルタミン酸、及びグルタミン酸を神経細胞に輸送するグルタミン酸輸送体が重要な役割を果たしています。apoE4というタンパク質はこれらを傷害し、認知機能低下をもたらします。DHAを摂取すると、apoE4の働きを抑制することで、DHAには認知機能や痴ほう症予防の効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22057027

【6】生後6ヵ月~24ヵ月の小児では必須脂肪酸の摂取は不可欠で、特にDHAが不足すると網膜機能や認知機能に影響を及ぼします。特にDHAや、DHAに変換されるα-リノレン酸は母乳が一番の摂取源であるため、粉ミルクなどで育てる場合、発育障害の問題が指摘されています。そこで、粉ミルクなど人工食などには、α-リノレン酸を添加する強化栄養食品が販売されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21929635

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参考文献

・則岡孝子 あなたに必要な栄養成分と食べ物 河出書房

・吉田企世子・松田早苗 あたらしい栄養学 高橋書店

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社

・吉田企世子 安全においしく食べるためのあたらしい栄養学 高橋書店

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・de Berrazueta JR, Gómez de Berrazueta JM, Amado Señarís JA, Peña Sarabia N, Fernández Viadero C, García-Unzueta MT, Sáez de Adana M, Sanchez Ovejero CJ, Llorca J. (2009) “A diet enriched with mackerel (Scomber scombrus)-derived products improves the endothelial function in a senior population (Prevención de las Enfermedades Cardiovasculares: Estudio Santoña–PECES project).” Eur J Clin Invest. 2009 Mar;39(3):165-73.

・Bourre JM. (2005) “Effect of increasing the omega-3 fatty acid in the diets of animals on the animal products consumed by humans” Pharmacol Biochem Behav. Med Sci (Paris). 2005 Aug-Sep;21(8-9):773-9.
・Sidhu KS. (2003) “Health benefits and potential risks related to consumption of fish or fish oil.” Pharmacol Biochem Behav. Regul Toxicol Pharmacol. 2003 Dec;38(3):336-44.

・Ako H, Ota E, Ogasawara A. (1994) “Omega-3 fatty acids in Hawaii seafood.” Hawaii Med J. 1994 May;53(5):142-5.

・Singer P, Berger I, Lück K, Taube C, Naumann E, Gödicke W. (1986) “Long-term effect of mackerel diet on blood pressure, serum lipids and thromboxane formation in patients with mild essential hypertension.” Atherosclerosis. 1986 Dec;62(3):259-65.

・Singer P, Wirth M, Voigt S, Richter-Heinrich E, Gödicke W, Berger I, Naumann E, Listing J, Hartrodt W, Taube C. (1985) “Blood pressure- and lipid-lowering effect of mackerel and herring diet in patients with mild essential hypertension.” Atherosclerosis. 1985 Aug;56(2):223-35.

・Kariv-Inbal Z, Yacobson S, Berkecz R, Peter M, Janaky T, Lutjohann D, Broersen LM, Hartmann T, Michaelson DM. 2012 “The isoform-specific pathological effects of apoE4 in vivo are prevented by a fish oil (DHA) diet and are modified by cholesterol.” J Alzheimers Dis. 2012;28(3):667-83.

・Huffman SL, Harika RK, Eilander A, Osendarp SJ. 2011 “Essential fats: how do they affect growth and development of infants and young children in developing countries? A literature review.” Matern Child Nutr. 2011 Oct;7 Suppl 3:44-65.

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