ローズマリー

rosemary
マンネンロウ シーデュー メイテツコウ
Rosmarinus officinalis

ローズマリーは、家庭でも様々な用途で用いられ、その育てやすさからキッチンハーブの中でも人気のハーブです。飲料やスパイスとしても、また外用薬としても幅広く効果が期待されるハーブです。
ローズマリーは、抗酸化作用や血行促進作用、アンチエイジング作用など様々な効果を持ち、ローズマリーに含まれる香り成分は、頭をすっきりさせ明るい気持ちにし、集中力や記憶力を向上させる効果があります。

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ローズマリーとは

●基本情報
ローズマリーは、シソ科マンネンロウ属の植物で、ハーブの中でも1、2を争うほど、美しい花を咲かせることで知られています。ローズマリー(rosemary)という名前は、ラテン語のros marinus(海のしずく)を意味しており、海岸にごく近い所に育つことに由来します。ローズマリーは60㎝~150㎝の高さに育つ灌木[※1]です。その葉は細い針に似ていて、上のほうは暗緑色で下のほうは白っぽい色をしています。生葉もしくは乾燥葉をオリーブ油やワインビネガーにつけたり、葉をそのままもしくは粉末にし、料理のスパイスとして使います。甘い香りとほろ苦さが魚や肉料理の香りづけに良く合います。特にラム肉との相性が良いです。
ローズマリーはヨーロッパにおいて好まれるハーブの1つで、肉料理の下処理や加熱調理時に添えることで、風味を整えると同時に、料理を長持ちさせることが知られており、天然の酸化防止効果や抗菌効果をもっています。食品の油脂の酸化は人体に好ましくないなか、ポテトフライのアクリルアミドの低減にもつながることが分かっています。
扇状の小さな青、あるいは白い花はミツバチを引きつけハチミツが採れます。また、ローズマリーは香水を作るためにも使用され、様々な軟膏やせっけん、シャンプーの香りづけのための基本材料であるともいわれています。幅広く使用されているローズマリーは駆風[※2]や精神の安定にも効果的とされており、心身に対する効果が数多くあるハーブです。

●ローズマリーの歴史
ローズマリーは薬効ゆえに、古代から使われてきました。古代ローマ人やエジプト人を含む文明圏では、ローズマリーは万能薬であると考えられていました。ヨーロッパでは魔除けの聖木として古くから知られており、花嫁が一枝身につけるという習慣もありました。古代ギリシャでは、頭の働きをよくするハーブとされ、受験を迎えた学生たちは、髪にローズマリーの花輪を飾って好成績を祈っていました。また、ハンガリーの女王が若さを保つためにローズマリーを使用していたという伝説もあり、現代でも若返りのハーブとして人気があります。日本には、江戸時代に渡来し、現在は観賞用、調味料、香料用に各地で栽培されています。
また、ローズマリーにはポリフェノールの一種であるロスマリン酸(rosmarinic acid)が含まれています。ロスマリン酸は、このローズマリーより発見されたことに由来して、ロスマリン酸(ロズマリン酸とも呼ばれる)と名づけられました。

●ローズマリーの生産地
ローズマリーは地中海沿岸地域の、特にフランス、ユーゴスラビアの西部海岸地方の石灰質の丘陵上に広く分布している多年草[※3]の常緑樹[※4]です。花期は5月~6月で、全草を採集します。

●ローズマリーを摂取する際の注意点
食物に含まれる量を摂取するのは安全ですが濃度を調節していないオイルを使用するのは安全性は確認されておりません。特に精油を使用する場合、妊婦の方、高血圧の方、てんかんの方は使用をお控えください。

●ローズマリーの香り成分と性質
ローズマリーの葉には、香りのもととなる精油成分が豊富に含まれています。ローズマリーの精油には、抗菌作用のあるシネオールや、活性酸素[※5]を抑制するカルノシン酸(ロスマリネシン)、カルノソール、ロスマノールなどのジテルペンが含まれています。ローズマリーの香りは持続性が高く、樟脳に似ています。調理に使う場合は他の材料の味や香りを隠してしまうほど強いため、控え目に使用してください。

●ローズマリーに含まれる健康成分
ローズマリーの葉には、香り成分の他にもロスマリン酸やタンニン、ルテオリン、ゲンクワニン、カフェ酸などのポリフェノールやジオスミンなどのフラボノイドが含まれています。

[※1:灌木(かんぼく)とは、成長しても樹高が3m以下の木のことです。]
[※2:駆風(くふう)とは、腸管内にたまったガスの排除をいいます。]
[※3:多年草とは茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する草のことです。]
[※4:常緑樹とは、幹や枝に一年を通じて葉がついていて、一年中緑の葉がみられる植物のことです。]
[※5:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]

ローズマリーの効果

●記憶力を高める効果
私たちが一般的に使う「記憶」という言葉には、さらに細かく分類すると「短期記憶」と「長期記憶」の2種類に分けられます。短期記憶とは、例えば目の前に書かれた電話番号を目で見て覚えて電話をかけるなど、ものの数分間だけ覚えている記憶のことで、物事が終われば一般的には忘れてしまいます。一方で長期記憶とは、文字通り長期間覚えている記憶のことで、家族や知人の名前や誕生日を忘れず覚えていたり、昨日の夕食の献立や特別な日の出来事を覚えていたり、あるいは自転車の乗り方やスポーツの動きを長年覚えているなど、年の単位で覚えている記憶です。一般的に「記憶力が高い」という言葉の多くは、長期記憶のことを指します。
長期記憶力は、年齢が高まるにつれて低くなってしまい、記憶を引き出す反応時間も遅くなることが分かっています。
ローズマリーの香りには、長期記憶力を高める効果があることが研究により分かっています【1】。
また、ローズマリーに含まれるロスマリン酸には、記憶力の低下を引き起こす認知症の原因物質を脳に溜まらないよう抑える働きがある他、同じくローズマリーに含まれるカルノシン酸やカルシノールは、記憶力に関わる脳の神経細胞において、神経成長因子(NGF:Nerve growth factor)の量を増やすことから、記憶の形成を高めることが期待できます【2】【3】。

●注意力や集中力を高め、精神を安定させる効果
ローズマリーの香りのもとは、葉や茎に含まれる精油成分です。この香りには、頭をすっきりさせ、注意力や集中力を高める働きがあります。また、ローズマリーの刺激的な香りは、神経を刺激して脳の働きを促し、頭の中をクリアにしてくれます。その他にも、気分をはれやかにして精神を安定させ、神経系の調和をとる働きもあるため、うつ病の予防にも繋がると期待されています【4】【5】。

●老化を防ぐ効果
ローズマリー葉から得られるジテルペンは酸化物の生成や脂質過酸化も抑制する働きがあります。また、カルノシン酸は酸化的ストレスから生物組織を保護するという働きがあり、体のサビつきや動脈硬化を予防する効果が期待されています。【6】

●体調を整える効果
ローズマリーのジオスミンというフラボノイド類の成分は、弱った血管を強くし、体の血行を促進することで代謝を良くしてくれます。また、ローズマリーには、駆風作用、胆汁の分泌促進作用があるので、食欲不振や消化不良に有効で体調を整えてくれます。

●リウマチや関節炎の症状を緩和する効果
ローズマリーの抽出液を塗り、痛み止めとして使用されています。湿布や塗り薬として用いられることが多く、リウマチや神経痛の痛みを抑えることにも役立つと言われています。

●肌を引き締める効果
ローズマリーは化粧品としても肌の毛穴を引き締める効果があります。
収れん作用[※6]で毛穴をひきしめ炎症を抑えてくれます。特に、脂性肌の方のケアに向いているといわれています。

[※6:収れん作用とは、縮こませたり、引き締めたりする働きを指します。]

ローズマリーは食事やサプリメントから摂取できます

こんな方におすすめ

○記憶力を維持したい方・高めたい方
○集中力や記憶力を向上させたい方
○心を落ちつかせたい方
○老化を防ぎたい方
○体調を整えたい方
○新陳代謝を活発にしたい方
○肝臓の健康を保ちたい方
○リウマチを予防・改善させたい方
○美肌を目指したい方

ローズマリーの研究情報

【1】144名をローズマリーの香り、ラベンダーの香り、香りなしの3グループに分け、記憶力や認知機能に対する効果を測定した研究にて、ローズマリーの香りを嗅いだグループは、香りなしのグループと比べて長期記憶力が高くなりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12690999

【2】アルツハイマー病を自然に発症するマウスに対し、ロスマリン酸を含む餌を摂取させ続けたところ、摂取していないマウスでは脳内にアミロイドベータの沈着が診られたのに対し、ロスマリン酸摂取によりアミロイドベータの沈着が抑えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19893028

【3】ローズマリーから抽出して得たカルノシン酸、カルノソールをヒト由来神経膠芽細胞腫細胞T98Gに加えたところ、細胞において神経成長因子(NGF:nerve growth factor)の発現量が増加した。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14600414

【4】ローズマリー葉の抽出物から、抗酸化物質として、カルノシン酸、カルノソール、ロスマール、エピウロスマノールを分析・単離しました。これらの成分は、脂質過酸化を抑制しました。そのため、ローズマリー葉には酸化ストレスから生体組織を保護する働きがあることが分かりました。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007408539

【5】35名の健康なボランティアにローズマリーオイルを肌に塗布して香りを嗅がせた結果、ローズマリーオイルは呼吸数、収縮期血圧、拡張期血圧を増加させ、自律神経の覚醒を増加させました。また、被験者は注意深さや敏感さが増し、気分が明るくなりました。従って、ローズマリーオイルの刺激は、うつ病の予防やストレスの軽減に繋がることが示唆されました。
http://www.aromaticscience.com/simultaneous-aromatherapy-massage-with-rosemary-oil-on-humans-2/

【6】20名の健康なボランティアにローズマリーオイルを吸入させた結果、吸入後に血圧、心拍数、呼吸数が増加するとともに、被験者は活発になり新鮮な気分を感じると答えました。また脳の前部領域にてベータ波(13-30Hz)の増加が認められました。これらのことから、ローズマリーオイルには、脳波や自律神経系の活動および気分に影響を与えることが示唆されました。

【7】円形脱毛症の87名 (試験群43名、38.9±14.6歳) を対象とした二重盲検無作為化比較試験において、ローズマリー、タイム、ラベンダー、シダーウッド含有エッセンシャルオイルを用いて7ヵ月間マッサージを行ったところ、44%の対象者に髪の毛の生育の回復が見られました。ローズマリーは毛髪の健康に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9828867

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参考文献

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・内田正宏 芦沢正和 花図鑑野菜 星雲社

・本多京子 食の医学館 小学館

・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社

・アースプランツリサーチオーガニゼーション HERB BIBLE 双葉社

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

​・ワンダ・セラー 著 アロマテラピーのための84の精油 フレグランスジャーナル社

​・佐々木 薫 ハーブティー事典 池田書店

​・林真一郎 編 メディカルハーブの事典 東京堂出版

​・ヴィクトリア・ザック ハーブティーバイブル 東京堂出版

​・小黒晃 監修 初めてのハーブ作り 世界文化社

​・世界食材事典 柴田書店

​・原口 博行、斉藤 崇、岡村 信幸、八木 晟 (1996) “ローズマリー葉のジテルペンによる過酸化脂質及び活性酸素の生成抑制” 福山大学薬学部研究年報 14, 91, 1996

​・中杉 徹、駒井 功一郎 (1996) “ローズマリー葉に含有される抗変異原性物質” 生薬學雜誌 50(5), 354-357, 1996-10-20

​・Mark M, et al. “Aromas of rosemary and lavender essential oils differentially affect cognition and mood in healthy adults.” Intern J Neuroscience, 2003, 113: 15-38.

​・Hamaguchi T, et al. “Phenolic compounds prevent Alzheimer’s pathology through different effects on the amyloid-beta aggregation pathway.” Am J Pathol, 2009, 175: 2557-65.

​・Kosaka K, et al. “Carnosic acid, a component of rosemary (Rosmarinus officinalis L.), promotes synthesis of nerve growth factor in T98G human glioblastoma cells.” Biol Pharm Bull, 2003, 26: 1620-2.

​・Tapanee H, et al. “Simultaneous aromatherapy massage with rosemary oil on humans.” Scientia Pharmaceutica, 2009, 77: 375-387.

​・Sayorwan W, et al. “Effects of inhaled rosemary oil on subjective feelings and activities of the nervous system.” Sci Pharm, 2013, 81: 531-42.

​・Hay IC, et al. “Randomized trial of aromatherapy. Successful treatment for alopecia areata.” Arch Dermatol, 1998, 134: 1349-52.

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