ルイボスとは?
●基本情報
ルイボスとは、マメ科アスパラトゥス属の針葉樹で、主にルイボスティーとして使用されているハーブの一種です。
ルイボスは赤い枝を持ち、針形の緑の葉は落葉するときに赤褐色に変化します。
ルイボスは、南アフリカ共和国の喜望峰の北に位置するセダルバーグ山脈一帯の山野にのみ自生しており、学名を「Aspalathus linearis(アスパラサス・リネアリス)」といいます。
この名称は、現地語で「赤い潅木(かんぼく)[※1]」という意味を持ち、ルイボスの葉を発酵・乾燥させたものをお湯で煮出す茶(ルイボスティー)の色が赤いことから、このような名前が付けられました。
ルイボスティーは、ルイボスの細かな落葉を発酵・乾燥させたものです。
ルイボスティーは鮮やかな赤色のお茶で、渋味が少なく、緑茶や紅茶に含まれる成分であるカフェインが含まれていないことが特徴です。
近年では、発酵前の緑色の「グリーンルイボス」に注目が集まっています。
グリーンルイボスは抗酸化物質であるアスパラチンというフラボノイドが豊富に含まれており、メタボリックシンドロームの予防に効果的であるという研究もされています。
●ルイボスの歴史
ルイボスは、古くから先住民が不老長寿、万病平癒のために葉を煎じて飲んでいたといわれており、現地では「魅惑の健康茶」、「不老長寿のお茶」と呼ばれています。
古くから南アフリカの先住民が日常的な飲み物として飲んでいたルイボスティーを、18世紀後半にスウェーデンの植物学者が世界に紹介したことから、ルイボスは世界で注目されるハーブとなりました。
1930年頃には、現地の開業医・ノーティエ博士がルイボスの原種に改良を加え、人工栽培による農産物化に成功し、現在では南アフリカ共和国の一大産業として、大規模な栽培が行われています。
<豆知識①>ノンカフェインのルイボスティー
ルイボスティーの大きな特徴のひとつは、カフェインが一切含まれていないことです。
カフェインには覚醒作用があるため、眠気や倦怠感に効果的な成分ですが、就寝前などに飲むと寝つきが悪くなる場合があるとされています。
また、カフェインは脳神経系に作用する成分でもあるため、多くの幼児や妊婦の方などには摂取を制限される場合があります。
ルイボスティーはカフェインを含まないため、就寝前にも飲むことができたり、幼児・年配の方・妊婦の方などの幅広い年齢層が摂取することができる、機能的なハーブであるといえます。
●ルイボスに含まれる成分と性質
ルイボスは強力な抗酸化力[※2]を持つとされ、研究結果によると、その力は緑黄色野菜の数倍~数十倍にも及ぶといわれています。
また、ルイボスの抗酸化力は活性酸素[※3]を除去する作用だけではなく、体内に備わっている抗酸化力を持った酵素であるSOD酵素を活性化させる作用も持っており、糖尿病などの生活習慣病を予防する効果、美肌を保つ効果などが期待されています。
ルイボスには、強力な抗酸化力を持つフラボノイドが豊富に含まれており、リン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの主要なミネラル類も多く含んでいます。
また、食品に含まれているリンとカルシウムの割合は、血液中に存在しているリンとカルシウムの割合と同じ1:1が理想とされており、この割合でリンとカルシウムを摂取すると、カルシウムの吸収を促進する作用があります。ルイボスティーに含まれているリンとカルシウムは1:1と理想的な割合です。
さらに、ルイボスに含まれているカルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどは人間の体液を組成している比率と酷似しているため、ルイボスに含まれているミネラル成分は体に馴染みやすく、全身の細胞を活性化させ、生体の機能を正常に保つ作用が期待されています。
<豆知識②>効果的なルイボスティーの飲用方法
ルイボスティーから抗酸化力を効率良く引き出すためには、水から煮出すのが効果的です。2.5g程度のルイボスの茶葉が入ったティーバッグを1.5ℓほどの水に入れてから沸騰させ、10分以上煮出します。
また、冷めてからティーバッグを取り出す方が、より抗酸化作用が強くなることも明らかになっています。
ルイボスティーの1日の摂取量は500mℓが目安とされています。
[※1:潅木とは、植物学の用語で、成長しても樹高が約3mまでの木のことです。]
[※2:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
ルイボスの効果
●糖尿病を予防する効果
ルイボスの持つ強力な抗酸化作用には、糖尿病を予防する効果があると考えられています。
糖尿病とは、血糖値が病的に高い状態を指し、この病名は、血中の糖濃度が高すぎる場合、尿とともに糖質が排泄される現象に由来しています。
糖尿病は症状にも個人差があり、一般的には激しい喉の渇き、大量の尿を排泄する状態などの症状が現れます。
糖尿病の進行によっては昏睡状態や死に陥ることもあるため、「死の四重奏[※4]」のひとつとしても知られている病気です。
糖尿病の発症には、加齢や遺伝など様々な要因が存在しますが、体内で発生する活性酸素によっても、糖尿病が発症するリスクは高まるといわれています。
ルイボスに特有のアスパラチンというフラボノイドは、糖尿病の原因となる高血糖の予防効果があるという研究報告がなされています。【4】【5】
●美肌効果
ルイボスの強力な抗酸化力は、美しい肌づくりに効果を発揮します。
一般的な肌に起こるトラブルとしてシミ、しわ、たるみなどが挙げられ、これらにはすべて過剰に発生した活性酸素が深く関与していることが明らかとなっています。
肌のシミは、体内で生成されたメラニン色素が皮膚の表面に現れたものです。
活性酸素はメラニン色素の生成を促す作用があるため、シミの大きな原因のひとつであるといわれています。
また、活性酸素が体内で増加することによって、肌に存在しているヒアルロン酸、エラスチン、コラーゲンなどの構成成分などが体内から減少し、コラーゲンにいたっては固く変性して弾力を失います。
ルイボスが持つ強力な抗酸化作用によって、肌のハリや弾力が衰える原因となる活性酸素を取り去ることができるため、ルイボスには、美しく健康な肌を保つ効果があるといえます。
●アトピー性皮膚炎を改善する効果
なお、ルイボスにはアレルギー性の皮膚炎を抑制する効果もあるといわれており、アトピー性皮膚炎の患者に、1日あたりルイボスの葉15gに相当する抽出物を経口投与した結果、重症のアトピー性皮膚炎患者の約半数に症状の改善が見受けられたと報告されています。
さらに、ある研究では、アトピー性皮膚炎やかゆみを伴う皮膚炎、ニキビなど様々な皮膚疾患の患者をルイボスのティーバッグを入れた風呂に入浴させた所、大半の症状が改善されたという報告もあります。
ルイボスがアレルギー症状にどのように作用するのかは未だ解明できていませんが、ルイボスティーを飲むことによっても、同様の効果が期待できます。
●動脈硬化を予防する効果
ルイボスの持つ強力な抗酸化力は、動脈硬化を予防する効果があるといわれています。
動脈硬化とは、本来は弾力を持つ動脈の内壁に、悪玉(LDL)コレステロールが付着することで、動脈が硬くなったり、動脈内壁が厚くなったりする症状であり、血管の老化現象とも呼ばれています。
動脈硬化は特に40歳以上の人に多く見られる病気で、動脈硬化によって血流が悪くなると脳や心臓などの臓器に悪影響を及ぼし、進行によっては脳梗塞、心筋梗塞、高血圧の原因になります。
動脈硬化の原因である悪玉(LDL)コレステロールは、血液中の中性脂肪やコレステロールが活性酸素と結びつくことで増加するとされているため、血液中で活性酸素が増加すると、その分動脈硬化が発症するリスクが高まるといわれています。
ルイボスの抗酸化作用によって、活性酸素の増加を抑制することができるため、動脈硬化を予防する効果が期待されています。【2】
●生活習慣病の予防・改善効果
ルイボスの抗酸化作用によって、生活習慣病のひとつである高脂血症を予防することができるとされています。
高脂血症とは、血液中に溶けている脂質の値が以上に高い状態を指し、ほとんどの場合において自覚症状がないのが特徴です。
高脂血症である状態が長期間続くと、心筋梗塞や狭心症などの心臓病を発病する恐れがあります。
高脂血症の原因となる物質は、血液中に増加した悪玉(LDL)コレステロールであり、活性酸素には悪玉(LDL)コレステロールの生成を促進する作用があります。
ルイボスの持つ強力な抗酸化作用によって、体内の活性酸素を除去することは、悪玉(LDL)コレステロールの増加を抑制し、高脂血症を予防することにつながるのです。
またルイボスは、血圧上昇酵素アンジオテンシン変換酵素(ACE)のはたらきを抑制することによる血圧低下作用も報告されており、高血圧予防効果も期待されています。【1】【2】
[※4:死の四重奏とは、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症の4つの病気を表す言葉です。これらの生活習慣病は動脈硬化や心筋梗塞などの病気の進行を、著しく高めるものであるという意味を持ちます。]
ルイボスは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○糖尿病を予防したい方
○美肌を目指したい方
○動脈硬化を予防したい方
○生活習慣病を予防・改善したい方
ルイボスの研究情報
【1】ルイボスは、血圧上昇酵素アンジオテンシン変換酵素(ACE)のはたらきを阻害することにより、血圧降下作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22095883
【2】健常人40名において、ルイボスティーを1日当たり6杯、6週間摂取させたところ、酸化ストレスの指標である過酸化脂質が減少し、抗酸化酵素グルタチオンの減少が抑制されました。また血中HDLコレステロールの増加とLDLコレステロール、トリアシルグリセロールの減少が見られたことから、ルイボスは抗酸化作用と高コレステロール予防効果による心血管保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20833235
【3】ルイボスティーは緑茶などと違い、鉄分の吸収の妨げにならずに飲めるのが利点です。栄養として、マグネシウム、リン、ナトリウム、やカリウムを豊富に含んでいます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/462276
【4】糖尿病ラットに、ルイボスティーを8週間摂取させたところ、糖尿病による最終糖化産物(AGEs) や酸化ストレスの指標であるマロンジアルデヒドの増加を抑制しました。ルイボスには糖尿病合併症の予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15910170
【5】Ⅱ型糖尿病マウスにおいて、ルイボスの有効成分であるアスパラチン(aspalathin)を0.1-0.2% を含む餌を5週間摂取させたところ、空腹時血糖値の増加が抑制され、糖耐性が改善されました。アスパラチンは膵臓β細胞によるインスリン分泌を促進し、筋肉へのグルコース取り込みを促進させるはたらきをもつことから、ルイボスは糖尿病予防効果をもつことが示唆されました
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19188054
参考文献
・本多京子 食の医学館 小学館
・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・石原 茂正 編 機能性ハーブの生理活性 (株)常盤植物化学研究所
・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館
・Yamakoshi J, Sano A, Tokutake S, Saito M, Kikuchi M, Kubota Y, Kawachi Y, Otsuka F. 2004 “The pharmacological mechanism of angiotensin-converting enzyme inhibition by green tea, Rooibos and enalaprilat – a study on enzyme kinetics.” Phytother Res. 2004 Nov;18(11):895-9.
・Marnewick JL, Rautenbach F, Venter I, Neethling H, Blackhurst DM, Wolmarans P, Macharia M. 2011 “Effects of rooibos (Aspalathus linearis) on oxidative stress and biochemical parameters in adults at risk for cardiovascular disease.” J Ethnopharmacol. 2011 Jan 7;133(1):46-52.
・Hesseling PB, Klopper JF, van Heerden PD. 1979 “The effect of rooibos tea on iron absorption.” S Afr Med J. 1979 Apr 14;55(16):631-2.
・Ulicná O, Vancová O, Bozek P, Cársky J, Sebeková K, Boor P, Nakano M, Greksák M. 2006 “Rooibos tea (Aspalathus linearis) partially prevents oxidative stress in streptozotocin-induced diabetic rats.” Physiol Res. 2006;55(2):157-64.
・Kawano A, Nakamura H, Hata S, Minakawa M, Miura Y, Yagasaki K. 2009 “Hypoglycemic effect of aspalathin, a rooibos tea component from Aspalathus linearis, in type 2 diabetic model db/db mice.” Phytomedicine. 2009 May;16(5):437-43.