ムラサキゴジアオイとは
●基本情報
ハンニチバナ科に属するムラサキゴジアオイは地中海沿岸に自生する植物で、ヨーロッパでは古くから薬用植物やお茶、精油、嗜好品として用いられてきました。ムラサキゴジアオイは芳香常緑[※1]灌木[※2]で、最大1mほどまで成長します。特に地中海沿岸では肌の調子を整え、炎症を抑えるハーブの一種として古くから親しまれてきた植物です。また、ハーブとしての優れた効能を認められております。
ムラサキジゴアオイは別名「美の植物」とも呼ばれることがあります。ムラサキゴジアオイは、ポリフェノールを豊富に含まれており、抗酸化力に優れ、日焼けを予防する効果があるといわれており、化粧品や抗炎症剤としても利用されています。
●ムラサキゴジアオイの歴史
ムラサキゴジアオイは古くから皮膚の調子を整え、炎症を抑える作用があるとして、民間で使用されてきました。ムラサキゴジアオイの葉や枝から作られる樹脂は香りが良いと言われ、嗜好品として重宝されてきました。また去痰 [※3]剤、切り傷の際には軟膏としても治療に使われることがあったと言われています。
その後1999年にはヨーロッパの薬用植物研究会で自然環境とヒトの健康を守るハーブとして「herb of Europe」に選出されるほど、注目されるハーブです。
[※1:常緑樹とは、葉の寿命が1年以上あり年中葉をつけている樹木です。]
[※2:灌木とは、植物学の用語で、成長しても樹高が約3mまでの木のことです。]
[※3:去痰とは、気管や気管支にたまった痰を除去することをいいます。]
ムラサキゴジアオイの働き
●美肌・美白効果
ムラサキゴジアオイには、美肌・美白効果があるといわれています。シミは皮膚に紫外線があたることによって活性酸素[※4]がたまり、メラノサイトが作り出したメラニン色素[※5]の粒が皮膚内にたまることにより黒く見えることが原因です。ムラサキゴジアオイはメラニンの生成を抑制するほか、メラニンを作り出すメラノサイトが活性化するのを抑制することが研究で報告されています。これらのはたらきによりメラニンの生成が抑制され、美肌や美白効果が期待されています。
●炎症を抑制する効果
ムラサキゴジアオイの精油には強い抗炎症作用があることが知られています。これはムラサキゴジアオイに含まれるヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ[※6])のはたらきを阻害する作用が関係していると言われています。通常、炎症は肥満細胞などから放出されるヒスタミン[※7]などの化学伝達物質が炎症部位を移動し起こると言われています。ヒアルロン酸は細胞の組織を安定させ、脂肪細胞が遊離するのを防いでいます。しかしヒアルロン酸分解酵素がはたらくと、ヒアルロン酸が分解され、結果脂肪細胞が遊離して、炎症を引き起こすと言われています。ムラサキジゴアオイはヒアルロン酸分解酵素のはたらきを抑えることで、肥満細胞やヒスタミンが炎症を起こすのを防ぐと考えられています。【1】
●風邪を予防する効果
ムラサキジゴアオイは抗菌、抗ウイルス作用を持っています。ライノウイルスやアデノウイルスに対する抗ウイルス作用があると言われており、ムラサキジゴアオイは風邪の予防に役立つと考えられています。
[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]
[※5:メラニン色素とは、シミの原因になるものです。メラニン色素の蓄積によってシミは形成されます。]
[※6:ヒアルロニダーゼとは、ヒアルロン酸を分解する酵素です。]
[※7:ヒスタミンとは、アレルギー反応や炎症の原因となる化合物のことです。体内の細胞で合成され、外部からの刺激により放出されます。これにより、炎症やアレルギーという症状が現れます。]
こんな方におすすめ
○美肌を目指したい方
○シミ、そばかすが気になる方
○肌のハリや弾力を保ちたい方
○あせもや湿疹を予防したい方
○体調を整えたい方
○風邪をひきやすい方
ムラサキゴジアオイの研究情報
【1】風邪の患者160人を対象にしたムラサキゴジアオイ抽出液のヒト臨床試験を行ったところ、炎症マーカーであるC反応性蛋白の有意な減少が認められました。従って、ムラサキジゴアオイは抗炎症作用を有すると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19828122
【2】ムラサキゴジアオイからヘキサンを使い、2種類のラブダンタイプのジテルペンを抽出し、ヒトの白血病細胞を使い細胞増殖抑制作用と細胞障害活性を確認したところ活性が認められました。従って、ムラサキジゴアオイは白血病予防などに有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11582537
参考文献
・Kalus U, Grigorov A, Kadecki O, Jansen JP, Kiesewetter H, Radtke H. (2009) “Cistus incanus (CYSTUS052) for treating patients with infection of the upper respiratory tract. A prospective, randomised, placebo-controlled clinical study.” Antiviral Res. 2009 Dec;84(3):267-71.
・Demetzos C, Dimas K, Hatziantoniou S, Anastasaki T, Angelopoulou D. (2014) “Cytotoxic and anti-inflammatory activity of labdane and cis-clerodane type diterpenes.” Planta Med. 2001 Oct;67(7):614-8.