霊芝(れいし)

マンネンタケ 仙草 吉祥茸

漢方として古くから珍重されてきた「幻のキノコ」。中国では紀元前200年から記述がみられる、歴史の古い生薬の一つです。

霊芝(れいし)とは?

●基本情報
霊芝とは、サルノコシカケ科に属するキノコの一種です。別名でマンネンタケとも呼ばれています。湿気のある山林などに自生していますが、梅やナラ、クヌギなどの古木10万本中に2~3本程の確率でしか採取されない稀少品です。霊芝の胞子を包んでいる殻がたいへん硬く、発芽しにくいためであると考えられています。
中国では霊芝を見つけたら、親や兄弟にも内緒にしたり、村をあげてお祝いする程貴重なものとして考えられていたといわれています。
霊芝は古くから中国医学における上薬に分類されています。上薬とは病気を治す治療薬ではなく、副作用が無いため長期に渡って服用が可能であり、いつまでも若々しく元気に年をとるための不老長寿のための薬、すなわち常時服用して病気にならない健康な体を保つための薬のことです。
霊芝は、煎じて飲まれたり、サプリメントなどで摂取されています。霊芝自体は非常に硬く噛み切れないため、食用には適しません。

●霊芝の歴史
霊芝の薬物としての歴史は古く、紀元前1~2世紀に成立したといわれる中国最初の薬物書『神農本草経』に収載され、最上級の薬物として珍重されていました。日本でも『日本書紀』に「芝草」という名で記載されています。
このように貴重な霊芝を人口栽培しようと古くから研究が行われて、1972年以降に中国で安定した人工栽培ができるようになりました。
その後、日本においても霊芝の人工栽培に成功し、昔に比べ霊芝が身近な存在となっていきました。

●霊芝の種類
『神農本草経』や『本草網目』に記されている霊芝の種類は以下の通りです。
・赤芝(せきし)
・黒芝(こくし)
・青芝(せいし)
・白芝(はくし)
・黄芝(おうし)
・紫芝(しし)
赤芝が現在栽培されている最も一般的な霊芝であるといわれています。

<豆知識>10万本に1本の鹿角霊芝
自然界には霊芝の変異体で、10万本に1本程度しか発生しない、極めて貴重な鹿角霊芝(ろっかくれいし)と呼ばれる霊芝が存在します。鹿角霊芝はその名の通り鹿の角のような形をした霊芝で、なかなか傘を開かず胞子が放出されないため、栄養素が特に豊富に含まれているといわれています。

●霊芝に含まれる成分
霊芝にはアミノ酸やβ-Dグルカン、カルシウムやリン、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどのミネラル類が含まれており、体内のバランスを正常に戻し、血液を浄化する働きが期待されています。
霊芝にこれ程多くのミネラル類が含まれる理由は、寄生する原木また原木の生えた土状に豊富にミネラルが含まれているためであると考えられています。
現代の日本人は食生活が欧米型に変化し、肉類や脂肪、塩分、糖分などの摂りすぎや加工食品の利用頻度が上がったことなどにより、食生活が乱れがちであるといわれています。
そのため、血液と血管に関係のある脳血栓症や心筋梗塞、狭心症、動脈硬化、高血圧、高脂血症、肥満といった病気が圧倒的に増加しています。
実際に、現在日本人の命を奪う病気の原因の第1位はガンであり、第2位は心臓系の疾病、第3位は脳血管系の疾病です。(平成23年 厚生労働省調査結果)
霊芝の働きは霊芝に含まれる成分全体の効果によるものであるといわれ、霊芝は含まれる成分の種類や配合比率が極めて優れたものであると考えられています。霊芝の効果を最大限に引き出すには、霊芝そのものを使用した粉末や抽出エキスを摂取することが大切です。

霊芝(れいし)の効果

霊芝には、カルシウムやリン、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどのミネラルの他、β-Dグルカンなどの有効成分が豊富に含まれており、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●免疫力を高める効果
霊芝に含まれるβ-Dグルカンには、免疫力を高める効果があるといわれています。
ウイルスなどの異物が体内に侵入してきた際には、免疫機能が働きます。
体内の異物は、白血球[※1] であるマクロファージにより有益なものか有害なものかが判断されます。
霊芝はβ-グルカンが豊富に含まれています。β-Dグルカンはナチュラルキラー細胞やマクロファージなどの免疫細胞を活性化させるはたらきを持つほか、TNF-α[※2]やIL-10[※3]などのサイトカイン[※4]の産生を促進することが知られています。
そのため、霊芝には免疫力を高める効果があると考えられます。【1】【2】

●ガンを予防および抑制する効果
ガンには様々な要因があるといわれていますが、血液の汚れもその一因であるといわれています。
ガン患者は血液の粘度が高く、採血した血液が凝固しやすい傾向があります。状態が改善すると血液の粘度は低下し、サラサラになります。
霊芝を摂取することで血液の粘度が低下するため、脾臓の働きを改善する効果もあると期待されています。
脾臓の機能が維持されることによって免疫力も維持でき、さらにβ-D-グルカンによるマクロファージへの直接の作用の組み合わせは、ガンを予防するために力を発揮すると考えられています。【2】

●生活習慣病の予防・改善効果
肉類や高脂肪食の摂取によって、コレステロールや中性脂肪等の脂質がたんぱく質と結合して血中に過剰に溶け込み、高脂血症となります。正常な人の血中コレステロール値は130~230mg/㎗程ですが、高脂血症になると血中コレステロール値が300mg/㎗前後になります。
血中の脂質が増えると、動脈硬化や高血圧、脳卒中、心臓病、肥満、肝臓病等の生活習慣病につながります。
また、高脂血症は於血(おけつ)[※5]を誘発し、肩こりや不眠、イライラ、目まい、疲労感、手足の冷え等の不定愁訴(ふていしゅうそ)を招きます。人体の各組織へ必要な酸素や栄養素を送る役割を持つ血液が滞ることにより、末梢組織が酸素不足と栄養失調になり、抵抗力や免疫力が低下します。また、血液には末梢組織の新陳代謝によって生じた老廃物を静脈を通って腎臓へ運び、尿として排出するという重要な役割がありますが、瘀血の場合は十分に老廃物が排出できず溜まってしまいます。
特に、毛細血管が多く集まっている顔の皮膚や目、歯ぐきなどで瘀血が起こると、肌の色が悪くなったりシワやシミができやすくなります。
霊芝には、血行を促進する作用があることが実験により証明されています。
4日間、高脂肪食のみを与えたラットと高脂肪食と霊芝を与えたラットを20日間にわたり飼育したところ、高脂肪食と霊芝を摂取したラットのコレステロール値と中性脂肪値は、正常に保たれていることが確認されました。また、肝臓の機能も調べたところ、高脂肪食のみを与えたラットに対し霊芝を与えたラットは、高脂肪食による脂肪肝の生成やGOT[※6]、GPT[※7]の上昇が抑制されていました。この結果より、霊芝には肝臓での脂質の代謝を促成し、腸からの余分な脂質の吸収を阻害する働きがあると考えられています。
また、高血圧患者10人に霊芝のエキス(1日7.5g相当)を2週間に渡り連続で与え、血圧の安定化作用をみるとともに血中の脂質の変動を調べたところ、コレステロール、中性脂肪などの数値が正常値に近づきました。さらに、全員の瘀血による倦怠感や肩こり、頭痛といった不定愁訴の自覚症状が改善されました。
また、霊芝を2ヵ月以上摂取し続けることにより、歯槽膿漏(しそうのうろう)やいぼ痔の解消につながることが臨床的に認められています。【3】【4】【5】【8】

●高血圧・低血圧を改善する効果
世界保健機構(WHO)による高血圧の基準は最高血圧[※8]が139以上、最低血圧[※9]が89以上の人を高血圧とし、最高血圧が100以下の人を低血圧としています。
霊芝は最高血圧と共に、下げることが困難といわれている最低血圧を下げることができる特徴を持っています。また、霊芝には低すぎる血圧を正常に戻す働きもあります。
ラットを使用した研究によると、霊芝は投与後5時間で血圧を急速に降下させるように働き、その後2週間程かけて血圧をゆっくりと安定させ、正常に保つという結果が得られました。【8】

●神経機能を正常に保つ効果
年齢とともに中枢神経[※10]や自律神経[※11]の働きが崩れることにより、肩こりや不眠、イライラ、目まい、疲労感、手足の冷え等の様々な症状が現れます。
霊芝には、神経機能を正常に保つ効果があるという報告がされています。

●アレルギー症状を緩和する効果
霊芝には免疫機能を正常にする働きがあるため、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、じんましん、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などのアレルギー症状を緩和する効果があると期待されています。【6】【7】

●便秘を解消する効果
病気の大半は腸の働き具合によって決定されるといわれる程、腸はあらゆる病気と密接に関係しています。特に毒物の解毒作用が十分働かないと血液が汚れ、肝臓や腎臓、脾臓(ひぞう)[※12]に負担がかかり、病気の原因となります。
霊芝の摂取により腸の働きが良くなることで腸内細菌のバランスが整い、体調の改善や免疫機能の向上などに期待ができます。

[※1:白血球とは、血液に含まれる細胞のひとつです。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する役割があります。]
[※2:TNF-αとは、主にマクロファージにより産生される、ガンに対して出血性の壊死を生じさせるサイトカインのことです。]
[※3:IL-10(インターロイキン-10)とは、免疫機能に関わるサイトカインの一種です。様々な病気の患者のIL-10が低値であることが認められることから、病気との因果関係が研究されています。]
[※4:サイトカインとは、細胞から分泌されるたんぱく質のことです。]
[※5:於血とは、血の流れが滞り、血液がスムーズに流れなくなった状態のことです。]
[※6:GOTとは、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼの略称で、哺乳動物の臓器に含まれる酵素のことです。急性肝炎など、肝臓疾患の時に血液中での濃度が増加します。]
[※7:GPTとは、アラニンアミノトランスフェラーゼといわれる人体の重要な構成要素であるアミノ酸をつくる働きをしている酵素のことです。特に肝細胞の変性や壊死に鋭敏に反応するので、肝臓・胆道系の病気の診断の際に使用されます。]
[※8:最高血圧とは、心臓が縮まって血液を送り出した時の圧力のことです。]
[※9:最低血圧とは、心臓が最大に広がった時にかかる圧力のことです。血管には最も弱い圧力がかかっているのですが、血圧が高いということは血管の柔軟性が失われ、血液の粘度が高く常に高い圧力がかかり続けているということです。]
[※10:中枢神経とは、脳と脊髄のことで、感覚、運動、意思、情緒、反射 呼吸など、体のあらゆることに関するコントロールしています。]
[※11:自律神経とは、無意識下で体全体を調整する神経です。]
[※12:脾臓とは、左の上腹部にある免疫機能や造血機能、血液の破壊、血液の貯蔵などの働きをする臓器のことです。]

霊芝(れいし)は食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○風邪をひきやすい方
○ガンを予防したい方
○高脂血症を予防したい方
○血圧が気になる方
○イライラしやすい方
○アレルギー症状を緩和したい方
○便秘でお悩みの方

霊芝(れいし)の研究情報

【1】マウスに霊芝を1日当たり500mg/kg 、14日間摂取させたところ、脾臓におけるマクロファージとT細胞が活性され、IFN-γの産生が増加しました。このことから、霊芝には免疫力向上効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15118318

【2】進行性がん患者34名に霊芝由来の多糖類を1日当たり1800mg 、食前に12週間摂取させたところ、T細胞のはたらきを示すPHA反応が増強し、免疫細胞NK細胞の増加が確認されたことから、霊芝には進行性がん患者での免疫向上効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12916709

【3】Ⅱ型糖尿病マウスに霊芝の機能性成分プロテオグリカンを投与したところ、血中HDLコレステロールが増加し、遊離脂肪酸やトリグリセリドおよび総コレステロールとLDLコレステロールが減少したことから、霊芝には抗糖尿病効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22428467

【4】Ⅱ型糖尿病ラットにおいて、霊芝を摂取させると、筋肉におけるインスリン活性化の指標であるチロシンリン酸化が促進され、HDLコレステロール値の上昇、および遊離脂肪酸やトリグリセリド、総コレステロールならびにLDLコレステロールが減少したことから、霊芝には抗糖尿病効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17549387

【5】高脂血症ラットにおいて、霊芝の機能性成分多糖類を800mg/kg 、30日間摂取させたところ、血中総コレステロールやトリグリセリド、LDLコレステロールが減少し、HDLコレステロールが増加し、血液中の抗酸化酵素SODやGSH-Px が向上しました。このことから霊芝には抗酸化効果、高コレステロール血症予防効果が示唆されています
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16323548

【6】鼻炎アレルギーモルモットに霊芝を8週間摂取させたところ、副鼻腔の閉塞が抑制され、アレルギー関連物質ロイコトリエンの産生が抑制されました。霊芝に抗アレルギー作用があることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21698671

【7】アレルギー誘発マウスに霊芝を300mg/kg 投与すると、抗アレルギー作用を示しました。このはたらきに、ヒスタミンや肥満細胞との関わりは見られなかったことから、霊芝は、ヒスタミンや肥満細胞とは別の作用による抗アレルギー作用を持つと考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20948166

【8】高血圧ラットに霊芝を摂取させると、摂取5時間後には血圧降下作用が確認され、この効果は20日間効果が持続しました。このため、霊芝には高血圧予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3236086

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参考文献

・木崎国嘉 霊芝の効用 ヘルス研究所

・有地滋 林輝明 霊芝で現代病を予防する ヘルス研究所

・久保道德 アレルギーに効く霊芝 ヘルス研究所

・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・本多京子 食の医学館 小学館

・金子今朝夫 驚異の食薬 霊芝健康法 東洋健康新書

・Kohguchi M, Kunikata T, Watanabe H, Kudo N, Shibuya T, Ishihara T, Iwaki K, Ikeda M, Fukuda S, Kurimoto M. 2004“Immuno-potentiating effects of the antler-shaped fruiting body of Ganoderma lucidum (Rokkaku-Reishi).” Biosci Biotechnol Biochem. 2004 Apr;68(4):881-7.

・Gao Y, Zhou S, Jiang W, Huang M, Dai X. 2003 “Effects of ganopoly (a Ganoderma lucidum polysaccharide extract) on the immune functions in advanced-stage cancer patients.” Immunol Invest. 2003 Aug;32(3):201-15.

・Teng BS, Wang CD, Zhang D, Wu JS, Pan D, Pan LF, Yang HJ, Zhou P. 2012 “Hypoglycemic effect and mechanism of a proteoglycan from ganoderma lucidum on streptozotocin-induced type 2 diabetic rats.” Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2012 Feb;16(2):166-75.

・Teng BS, Wang CD, Zhang D, Wu JS, Pan D, Pan LF, Yang HJ, Zhou P. 2012 “Hypoglycemic effect and mechanism of a proteoglycan from ganoderma lucidum on streptozotocin-induced type 2 diabetic rats.” Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2012 Feb;16(2):166-75.

・Chen WQ, Luo SH, Ll HZ, Yang H. 2005 “Effects of ganoderma lucidum polysaccharides on serum lipids and lipoperoxidation in experimental hyperlipidemic rats” Zhongguo Zhong Yao Za Zhi. 2005 Sep;30(17):1358-60.

・Mizutani N, Nabe T, Shimazu M, Yoshino S, Kohno S. 2012 “Effect of Ganoderma lucidum on pollen-induced biphasic nasal blockage in a guinea pig model of allergic rhinitis.” Phytother Res. 2012 Mar;26(3):325-32

・Andoh T, Zhang Q, Yamamoto T, Tayama M, Hattori M, Tanaka K, Kuraishi Y. 2010 “Inhibitory effects of the methanol extract of Ganoderma lucidum on mosquito allergy-induced itch-associated responses in mice.” J Pharmacol Sci. 2010;114(3):292-7.

・Kabir Y, Kimura S, Tamura T. 1988 “Dietary effect of Ganoderma lucidum mushroom on blood pressure and lipid levels in spontaneously hypertensive rats (SHR).” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 1988 Aug;34(4):433-8.

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