キナ酸

quinic acid

キナ酸とは、アカネ科の樹木キナから発見された成分で、クランベリーの実やコーヒーの種子に含まれています。キナ酸が体内に入ると馬尿酸に変化し、尿を酸性に保ちます。そのため膀胱炎や尿路感染症を予防する効果が期待できます。

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キナ酸とは?

●基本情報
キナ酸とは水溶性の非フェノール性のカルボン酸のことで、かすかな酸味が特徴的な、ファイトケミカルの一種です。南アメリカ原産のアカネ科の樹木キナから発見され、キナノキの皮やクランベリーの実、コーヒーの種子などに含まれます。コーヒーの生の豆にもキナ酸が含まれていますが、焙煎をすることでより多くのキナ酸が発生します。

●キナ酸の歴史
キナ酸はキナ皮から発見され、19世紀のフランスの農学者であるルイ・ニコラ・ヴォークランによって単離されました。キナノキは古くから薬用に用いられており、マラリアの薬となるキニーネやキニジンの原料とされてきました。
キナ酸の研究は世界中で行われており、尿路感染症予防に関する研究論文は20世紀後半ごろから発表されています。

●キナ酸を含む食品とその働き
キナ酸はキナノキの皮やクランベリー、グレープフルーツ、コーヒーの種子に含まれています。キナノキの皮は、かつては多くの薬に医薬品として配合されていましたが、アレルギーなどの問題があり日本では現在使われていません。最近ではクランベリーを中心素材としたサプリメントからキナ酸を摂取することが多くなっています。
キナ酸は体内で代謝を受けて、馬尿酸[※1]という酸性の物質に作り替えられます。そして尿を弱酸性に保ち、細菌の繁殖を防ぎます。また近年、キナ酸にコーヒー酸が結合してできるカフェオイルキナ酸という化合物にアルツハイマーなどを予防する効果があるということが研究されています。

<豆知識>コーヒーに含まれるキナ酸
キナ酸はコーヒーの種子にも多く含まれています。コーヒー中のキナ酸はポリフェノール類のコーヒー酸と結合し、クロロゲン酸という形で存在します。ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸は、抗酸化作用[※2]が強いことで知られています。傷や紫外線などにさらされると、活性酸素[※3]が生じることによって組織が傷つきます。クロロゲン酸が持つ抗酸化作用によって、植物はこのダメージから身を守ることができます。また、近年ではクロロゲン酸が脂肪の蓄積を抑える働きに注目が集まっており、ダイエット時のサポート食品の素材などとして利用されています。
また、キナ酸の持つかすかな酸味がコーヒーにシャープな酸味を与えます。

[※1:馬尿酸とは、馬などの草食動物から発見された酸性の物質です。]
[※2:抗酸化作用とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。ストレス、紫外線、喫煙などの要因によって体内で過剰に発生した場合、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。​]

キナ酸の効果

●尿路感染症を予防する効果
キナ酸には膀胱炎や尿路感染症を予防する効果があります。尿は通常弱酸性に保たれていますが、アルカリ性になると細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎や腎盂炎を引き起こす可能性があります。キナ酸は体内に入ると腸管で吸収され血液に入り、肝臓で代謝され安息香酸となり、最終的には馬尿酸に変化します。馬尿酸は尿を酸性に保ち、細菌の増殖を抑えます。クランベリージュースを飲むと膀胱炎や尿路感染症にかかりにくくなるという報告がされていますが、これは、キナ酸が変化した馬尿酸によって尿のpHが弱酸性に保たれるからです。キナ酸は尿路感染症や尿管結石にも有効とされています。尿路感染症の再発経験のある女性を対象にキナ酸を豊富に含むクランベリージュースを摂取させると、尿路感染症の再発が抑えられたという研究が数多く報告されています。【1】【2】

●アルツハイマー病を予防する効果
キナ酸の一種であるカフェオイルキナ酸にはアルツハイマー病[※4]の予防効果があります。アルツハイマー病とは進行性の記憶障害や認知障害などの症状がみられる進行性神経変性疾患です。現在、認知症の患者数は高齢化とともに増加しています。認知症には脳血管性とアルツハイマー型の2種類がありますが、脳血管性認知症は、診断精度の向上や生活習慣病の予防や治療の発展によって患者数の上昇は緩やかになってきています。一方、アルツハイマー型認知症は、現時点で予防法や根本的な治療法がなく、高齢になればなるほど発症割合は上昇するため、高齢化が進むにつれて患者数が増加しています。
カフェオイルキナ酸はアミロイドβによる神経細胞の欠損から細胞を守ります。アミロイドβとはたんぱく質の一種で、脳内で過剰に生産され蓄積すると、老人斑とよばれる固まりが形成されます。この老人斑はアルツハイマー型認知症の患者の脳に多数みられるため、アルツハイマー病の原因物質と考えられています。カフェオイルキナ酸はこのアミロイドβによる神経細胞の欠損から細胞を保護し、アルツハイマーの予防に働きかけてくれます。また、キナ酸にはパーキンソン病[※5]や低酸素から神経細胞を守るたんぱく質の発生を促す働きもあります。これらの働きによりキナ酸はアルツハイマー病の予防効果があると考えられます。【3】【4】【5】

[※4:アルツハイマー病とは、脳の神経細胞が少なくなり脳が萎縮する病気のことです。記憶障害、失見当識、視空間失認などの症状が現れます。]
[※5:パーキンソン病とは、脳の神経細胞が次第に減少し、その神経が働くときに使うドーパミンという物質が減ることによって起こる神経変性疾患です。10万人あたり100~150人の方がこの病気にかかっているといわれています。50~65歳に発症することが多く、高齢になるにつれて患者は増える傾向にあります。]

キナ酸は食事やサプリメントで摂取できます

キナ酸を含む食品

○クランベリー
○コーヒー
○グレープフルーツ
○キナノキ
キウイフルーツ
リンゴ
モモ

こんな方におすすめ

○膀胱の感染を予防したい方
○泌尿器系の病気を予防したい方
○記憶力が気になる方
○物忘れが多い方

キナ酸の研究情報

【1】キナ酸を多く含む製品を飲用した結果、尿中のトリプトファン及びニコチンアミドの数値が上昇しました。また、キナ酸から馬尿酸がつくられることも分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21104945

【2】キナ酸は、消化管からつくられるトリプトファンやニコチンアミドの合成をサポートします。キナ酸を飲用した被験者と飲用しなかった被験者の尿中の馬尿酸を比較したところ、キナ酸を飲用した被験者の方から有意に多くの馬尿酸が検出されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18844285

【3】キク科の植物から抽出したキナ酸類の内、メチル-5-カフェオイルキナ酸は有意にグルタミン酸に誘発される神経細胞死から神経細胞を保護することが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18608779

【4】ブラジル産プロポリスに含まれる3,4ジカフェオイルキナ酸及び3,5ジカフェオイルキナ酸が酸化ストレスに伴う神経保護作用に努めることが報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17046025

【5】神経細胞であるSH-SY5Y細胞に、カフェオイルキナ酸を添加したところ、アミロイドβ誘発による神経細胞死が抑制されました。また、老化促進マウス(SMAP8マウス)へカフェオイルキナ酸を投与し、モリスの水迷路試験を行ったところ、マウスの記憶力や学習能力が向上したことが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20570715

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参考文献

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・吉川敏一 辻智子 医療従事者のための機能性食品(サプリメント)ガイド―完全版 講談社

・石原 茂正 編 機能性ハーブの生理活性 (株)常盤植物化学研究所

・中嶋洋子 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・独立行政法人国立栄養研究所 “「健康食品」の安全性・有効性情報 「健康食品」の素材情報データベース”

・Pero RW, Lund H. (2011) “Dietary quinic acid supplied as the nutritional supplement AIO + AC-11® leads to induction of micromolar levels of nicotinamide and tryptophan in the urine.” Phytother Res. 2011 Jun;25(6):851-7. doi: 10.1002/ptr.3348. Epub 2010 Nov 22.

・Pero RW, Lund H, Leanderson T. (2009) “Antioxidant metabolism induced by quinic acid. Increased urinary excretion of tryptophan and nicotinamide.” Phytother Res. 2009 Mar;23(3):335-46. doi: 10.1002/ptr.2628.

・Chung IM, Kim MY, Park WH, Moon HI. (2009) “Quinic acid derivatives from Saussurea triangulata attenuates glutamate-induced neurotoxicity in primary cultured rat cortical cells.” J Enzyme Inhib Med Chem. 2009 Feb;24(1):188-91. doi: 10.1080/14756360802051230 .

・Nakajima Y., Shimazawa M., Mishima S. and Hara H. (2007) “Water extract of propolis and its main constituents, caffeoylquinic acid derivatives, exert neuroprotective effects vis antioxidant actions.” Life Sci. 2007 Jan 2;80(4):370-7. Epub 2006 Sep 23.

・Han J, Miyamae Y, Shigemori H, Isoda H. (2010) “Neuroprotective effect of 3,5-di-O-caffeoylquinic acid on SH-SY5Y cells and senescence-accelerated-prone mice 8 through the up-regulation of phosphoglycerate kinase-1.” Neuroscience. 2010 Sep 1;169(3):1039-45. doi: 10.1016/j.neuroscience.2010.05.049. Epub 2010 Jun 4.

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