紫いも

Purple sweet poteto

紫いもは青紫色のアントシアニンを豊富に含んでいるさつまいもの一種です。
紫いもにはアントシアニンに加え、さつまいも本来の成分であるビタミンCやビタミンE、β-カロテン、食物繊維などの成分が豊富に含まれており、健康に幅広く働きかけます。

紫いもとは?

●基本情報
紫いもとは、中まで紫色をしているさつまいもの一種です。さつまいも本来の成分に加え、紫いもにはブルーベリーや赤ワインなどに含まれる青紫色をしたポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富に含まれています。アントシアニンには目の健康を守る効果や強い抗酸化作用、免疫力向上などの効果があります。

●紫いも(さつまいも)の歴史
紫いもはさつまいもの一種です。さつまいもの原産地ははっきりとは分かっていませんが、メキシコ中央部からグアテマラにかけてが有力であるといわれています。紀元前3000年以上前からメキシコで、すでに栽培が始まっていたとされる歴史の古い野菜です。紀元前2000年頃に南アメリカに伝わり、その後コロンブスによってヨーロッパ、そして世界へと広まりました。日本へは17世紀の初めに中国から沖縄に伝えられ、その後薩摩に伝えられました。薩摩で栽培が始まったことから「薩摩いも」と呼ばれるようになりました。土壌を選ばず、やせ地でも栽培が容易であったため、飢饉を救う救荒食[※1]として重要視されていきました。
1735年に蘭学者の青木昆陽が薩摩から種芋を取り寄せ、江戸の小石川薬園でさつまいもを試作栽培したことがきっかけで、東日本各地にも栽培が広がっていきました。第二次世界大戦下では、食糧不足からさつまいもの栽培が大いに奨励されました。
アントシアニンが豊富な紫いもは詳細な来歴は不明ですが、沖縄県や鹿児島県では特産として広く普及しており、戦後様々な品種改良を行う中でよりアントシアニンの濃い品種がつくられるようになりました。

●紫いもの品種
紫いもには食用や加工用、また品種改良による新品種など様々な品種があります。

・パープルスイートロード
焼き芋やふかし芋などの青果用の紫いもとして育てられた新品種です。程よい甘みがあり、栽培しやすい特徴を持ちます。

・アヤムラサキ
紫いもの特徴であるアントシアニン色素が非常に豊富に含まれており、色素用や加工用として使われている品種です。ベニイモペースト生産などに利用されます。

・山川紫(やまかわむらさき)
海外から導入された品種で、鹿児島県山川地方で栽培されています。濃い紫色を活かして、アイスクリームや芋あめなどの着色料として利用されています。糖分が少ないため、青果用には不向きとされています。

・えいむらさき
鹿児島県頴娃(えい)町で栽培されている紫いもです。紫色が濃く、さっぱりした甘さがあり、天ぷらや蒸し芋、菓子などの原料に使われます。

・こがねむらさき
種子島で古くから栽培されている紫いもで、皮色は灰白色、肉色は薄紫色で、熱を通すと濃紫色に変わります。緻密(ちみつ)な肉質で、上品な和菓子のような甘さがあります。天ぷらやふかし芋、焼き芋に適しています。生産量が少ないことから、幻のさつまいもともいわれ珍重されています。

・種子島むらさき
種子島で栽培されている在来種の紫いもです。強い甘みを持ち、でんぷん質が多く含まれているため、菓子加工用としてだけではなく、焼き芋や蒸し芋などでも美味しく食べることができます。また、紫いも独特の上品な甘さが引き立つ焼酎にも加工されます。

・種子島ゴールド
1999年に種子島むらさきから品種選抜して栽培された新品種の紫いもです。紫いもの中では甘みが強く、焼き芋やふかし芋、天ぷらなどに適しています。また、和洋菓子の原料としても利用されています。

・種子島ロマン
種子島むらさきから品種選抜して育成された新品種で、皮は赤紫色、中は淡紫色をしています。ふかし芋、天ぷらなど食用に向いています。

・紅芋(べにいも)
沖縄特産のきめが細かく、程よい甘さを持つ紫いもです。焼き芋やふかし芋の他、菓子やソフトクリームなどにも加工されます。

●紫いも(さつまいも)の選び方
紫いも(さつまいも)は皮の色が均一で鮮やかなもの、さらにつやがあり、傷や斑点がないものが良品です。ずんぐりとした太さで、でこぼこしていないものを選びましょう。また、硬いひげ根を持つ紫いも(さつまいも)は避けるようにします。

●紫いも(さつまいも)の保存方法
紫いも(さつまいも)は生きているため、なるべく早めに食べることがおすすめです。保存する場合は新聞紙で包むか、ダンボール箱に入れて、湿度が高く、日の当たらない風通しの良い場所で保存します。温度は13~15℃、湿度は85~90%が紫いも(さつまいも)の保存に理想的であるといわれています。紫いも(さつまいも)は寒さに弱いので、冷蔵庫での長期保存は腐れの原因になります。

●紫いもに含まれる成分と働き
紫いもにはさつまいも本来の成分であるビタミンCやビタミンE、β-カロテン、食物繊維などに加え、アントシアニンが豊富に含まれています。アントシアニンとは青紫色をしたポリフェノールの一種で、ものを見るときに必要なロドプシンと呼ばれるたんぱく質の再合成を助ける働きがあり、目の疲れの解消に働きかけます。
紫いもにはりんごの約5倍以上といわれる程多くのビタミンCが含まれ、美肌効果があると期待されています。また紫いもに含まれているビタミンCは、同じく豊富に含まれているでんぷんによって守られるため、加熱しても壊れにくい特徴を持ちます。
紫いもには食物繊維が豊富に含まれ、その量はじゃがいもの約2倍です。食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2つに分類され、紫いもにはそのどちらの食物繊維も含まれています。
不溶性食物繊維とは水に溶けない食物繊維で、腸のぜん動を刺激し、腸内に溜まった有害物質の排出を促す作用があります。肥満や便秘の解消、腸の病気予防などに効果があります。水溶性食物繊維とは水に溶ける食物繊維で、腸内で水分を含みヌルヌルとしたゲル状となり、有害な成分を吸着して排出させます。糖尿病や動脈硬化、高血圧の予防に効果があります。
紫いもに含まれるアントシアニンやビタミンC 、ビタミンE、β-カロテンはともに強い抗酸化力[※2]があるため、体内での活性酸素[※3]の発生を抑える働きがあり、老化防止や生活習慣病予防などにも良いとされています。

[※1:救荒食とは、飢饉などの食糧不足の際に利用される食物、またそれに備えて備蓄される食物のことです。]
[※2:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い抗酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化の原因になるとされます。]

紫いもの効果

紫いもにはアントシアニンやビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、食物繊維などが豊富に含まれており、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●視機能を改善する効果
紫いもには青紫色の天然色素で、ポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富に含まれています。アントシアニンには、ものを見るときに働くロドプシンの再合成を助ける働きがあります。ものを見ると、目に入ってきた映像が網膜に映し出され、網膜にあるロドプシンが分解され電気信号として脳に伝えられることで「目が見える」と感じます。分解されたロドプシンは再合成され、再び光の情報を受け取ることができるようになりますが、疲れなどによってロドプシンの再合成能力は衰えます。アントシアニンはロドプシンの再合成を助けるため、疲れや年齢からくる目のショボつきやかすみを予防できるといわれています。また、これまでに行われた数多くの試験では、夜間視力や疲れ目の改善などの働きが知られています。

●美肌・美白効果
紫いもに豊富に含まれるビタミンCはでんぷんに守られているため、加熱しても壊れにくいことが特徴です。ビタミンCの働きによってシミやそばかすを予防し、ハリのある若々しい肌を保つ効果が期待できます。
日光に当たり続けると、紫外線の刺激を受けてチロシンと呼ばれるアミノ酸から皮膚の色素細胞であるメラニン色素が生成されます。このメラニン色素が皮膚に沈着することで、シミ・そばかすが現れます。
ビタミンCはチロシンをメラニンに変換するチロシナーゼという酵素の働きを抑え、メラニン色素の沈着を防ぐことで、シミ・そばかすを予防すると考えられています。
また、ビタミンCにはコラーゲンの合成を促進する働きがあります。
コラーゲンには細胞と細胞をつなぐ結合組織を丈夫にする働きがあります。ビタミンCによってコラーゲンの合成が活性化されるため、細胞と細胞がしっかりと結びつき肌のハリが保たれます。
また紫いものアントシアニンには紫外線を吸収する働きも報告されており、紫外線による皮膚トラブルの予防にも役立つと考えられています。【2】

●便秘を解消する効果
紫いもには便通を促すセルロースなどの食物繊維が含まれ、有害物質の排泄や栄養素の吸収、腸内環境の正常化に働きかけます。また、切り口からにじみ出るヤラピンと呼ばれる樹枝状の白い液には、便を柔らかくする作用があります。食物繊維の働きとともに、便秘の解消に効果的です。

●生活習慣病の予防・改善効果
紫いもに含まれる食物繊維は、血液中のコレステロール値を低下させる作用や血糖値をコントロールする働きがあるため、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病の予防や改善に効果的です。
また紫いものアントシアニンには、高脂血症や糖尿病を予防する効果も報告されており、生活習慣病予防にも役立つと考えられています。【1】【4】【5】

●老化や病気から体を守る効果
体内で発生した活性酸素は細胞をサビつかせ、病気や老化、肌トラブルなどの要因となります。
紫いもに豊富に含まれるアントシアニンやビタミンC、ビタミンE、β-カロテンは共に強い抗酸化力を持っているため、活性酸素の発生を抑制し、血管や血液を若々しく保つ働きがあります。そのため、紫いもには病気や老化、肌トラブルを予防する効果が期待されています。
また紫いもに含まれるアントシアニンには、激しい運動による酸化ストレスから体を守る働きもあることが報告されており、体のサビつきを防ぐ働きが期待されています。【3】

●免疫力を高める効果
紫いも葉抽出物には、免疫細胞であるNK細胞や単核球細胞を増加させる働きも報告されており、免疫力を高める効果が期待されています。【6】

●肝機能を高める効果
紫いもに含まれるアントシアニンには、肝炎などによる肝臓への障害をやわらげ、肝臓を保護する働きも報告されており、肝機能を高める効果が期待されています。【7】

紫いもは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○目の健康を維持したい方
〇美肌を目指したい方
〇腸内環境を整えたい方
〇便秘でお悩みの方
〇コレステロール値が気になる方
〇生活習慣病を予防したい方
〇肝臓の健康を保ちたい方

紫いもの研究情報

【1】紫いもアントシアニンを含む化粧用クリーム(0.61mg/100g) には、紫外線吸収作用が知られており、紫外線予防化粧品として有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20939973

【2】高脂肪食摂取マウスに、紫いもアントシアニンを1日あたり200mg/kg の量で4週間摂取させたところ、肝臓中の脂肪代謝酵素であるAMPKおよびアセチルCoAカルボキシラーゼが活性化され、肝臓中のトリグリセリドや血中脂質が改善したことから、紫いもが抗肥満作用をもつと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22153515

【3】健常男性を対象に、紫いもアントシアニンを7日間摂取させたのち、激しい運動をさせたところ、運動疲労による酸化ストレスや血中の炎症物質IL-6 の増加が抑制されました。紫いもに運動疲労予防効果や抗炎症作用予防効果が期待されています
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20864555

【4】紫いもアントシアニンは高い抗酸化力を持っており、酸化ストレス物質であるMDAの増加を抑制し、マクロファージへの酸化LDLコレステロールの取り込みが阻害する働きを持つことから、紫いもには高脂血症予防、糖尿病予防効果とともに動脈硬化予防効果が期待されます
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20136441

【5】健常成人16名を対象に、紫いもアントシアニンを902mg を1週間摂取させたところ、赤血球中のLDLコレステロールとグルタチオン濃度が改善され、遺伝子損傷の指標である尿中8-OHdG が減少したことから、紫いもアントシアニンには高脂血症状予防と抗酸化作用による遺伝子保護作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18818160

【6】バスケットボール選手15名を対象に、紫いも葉抽出物を1日あたり200g を2週間摂取させたところ、血中の免疫細胞であるNK細胞や単核球細胞およびインターフェロンが増加したことから、紫いもに免疫力向上効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18042519

【7】健常成人48名を対象に、紫いもアントシアニンを200.3mg を含む飲料を8週間摂取させたところ、肝臓障害の指標となるγ-GTPが改善したことから、紫いもには肝臓保護作用をもつことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17299464

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参考文献

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・本多京子 食の医学館 小学館

・野間佐和子 旬の食材 秋‐冬の野菜 講談社

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