かぼちゃの種

pumpkin seed

かぼちゃの種には、植物ステロールやリグナン類、ミネラル類が豊富に含まれています。
ドイツでは薬用としても利用され、主に過敏性膀胱炎や頻尿など、排尿トラブルに効果的です。
緑黄色野菜の代表でもあるかぼちゃは、果肉だけではなく種にも健康成分がたっぷり詰まっているのです。

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かぼちゃの種とは?

●基本情報
かぼちゃは食材として一般的に使うのは果肉部分ですが、かぼちゃの種は非常に栄養価の高い食材として、特に欧米で食用に利用され、日本でも健康食品として多く利用されています。漢方では、かぼちゃの種を南瓜仁(なんかにん)といい、低血圧の改善や回虫駆除に用いられています。

かぼちゃはウリ科カボチャ属の野菜で、世界各国の温暖な地域で栽培されていますが、日本で見られるかぼちゃは、主に日本かぼちゃ、西洋かぼちゃ、ペポカボチャの3種類です。
食用などに利用されているかぼちゃの種は、ペポカボチャの種子であることがほとんどだといわれています。
通常、かぼちゃの種は硬い外殻に包まれているため、調理・加工をするためには殻を剥かなくてはなりません。
しかし、ペポカボチャからとれるかぼちゃの種は、外殻が存在せず、そのまま炒って食したり、胚油を絞ることが可能です。
日本での栽培はまだ少ないペポカボチャですが、南欧やアメリカでは重要な野菜として栽培されています。
薬用ハーブの先進国ドイツでは、ペポカボチャを「薬用かぼちゃ」と呼び、果肉部分は食用、種子を薬用として病気の予防や治療に古くから用いられてます。

●かぼちゃの種に含まれる成分と性質
かぼちゃの種は血中コレステロール値の上昇を抑える作用を持つリノール酸をはじめ、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。
また、かぼちゃの種は、良質なたんぱく質を31~46%の割合で含んでいます。
さらに、かぼちゃの種には「若返りのビタミン」とも呼ばれているビタミンEや各種ミネラル類、植物ステロール、リグナン類やカロテノイドも含まれています。

<豆知識>かぼちゃの種の選び方
おいしい野菜の見分け方があるように、かぼちゃの種にも良し悪しを見分けるポイントがあります。
それは、かぼちゃの種の形です。ふっくらと丸みを帯びているかぼちゃの種には、栄養も旨みもたっぷり詰まっているといわれています。

かぼちゃの種の効果

●女性の排尿障害を軽減する効果
かぼちゃの種には、過敏性膀胱や頻尿など、女性の排尿障害を軽減する効果があります。
過敏性膀胱とは、急に尿意が起こったり、我慢できすに尿が漏れてしまう症状で、頻尿とは排尿の回数が通常よりも多い症状です。
このような排尿障害は、いずれも高齢の女性に多く見られる症状であり、加齢による女性ホルモンのバランスの乱れが原因のひとつであるといわれています。
かぼちゃの種には、リグナン類が含まれています。ポリフェノールの一種であるリグナン類は、ごまに含まれるゴマリグナンや、亜麻に含まれる亜麻リグナンが広く知られており、抗酸化作用や炎症を抑える働きを持ちます。
さらに、リグナン類には女性ホルモンのバランスを整える作用もあるため、リグナン類を豊富に含むかぼちゃの種を摂取することで、過敏性膀胱や頻尿などの排尿障害を軽減する効果が期待できます。【1】

●前立腺肥大を抑制する効果
かぼちゃの種を摂取することで、男性の前立腺肥大症を改善する効果が得られるといわれています。
前立腺肥大症とは、前立腺[※1]が肥大する症状です。この症状によって尿道が圧迫され、尿が出にくくなったり、排尿の回数が増える病気も存在します。
この病気の原因は諸説ありますが、明確にはなっていないといわれています。
しかし、かぼちゃの種に含まれる植物ステロールやリグナン類は、前立腺肥大症に働きかけ、その症状を緩和するといわれています。かぼちゃの種のエキスを継続的に摂取することが病気の予防に効果的です。【4】

●骨粗しょう症を予防する効果
かぼちゃの種に含まれているリグナン類は、骨粗しょう症の予防にも効果的だといわれています。
骨粗しょう症とは、骨の中に細かい穴がたくさん空き、骨がもろくなってしまう病気です。
この病気は、年配の方に起こりやすいことで知られていますが、特に閉経後の女性に多い傾向にあります。
骨粗しょう症の大きな原因のひとつが、女性ホルモンのバランスの乱れです。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨の中のカルシウムが必要以上に溶け出すことを防ぐ役割を担っており、女性ホルモンの減少は、骨の密度に深く関与しています。
閉経後の女性は、女性のホルモンのバランスが著しく減少するため、カルシウムが骨から溶け出しやすくなり、骨粗しょう症へとつながりやすくなります。
かぼちゃの種に含まれているリグナン類には、女性ホルモンのバランスを整える作用があるため、骨粗しょう症の予防に効果的です。
また、かぼちゃの種には骨づくりに重要なカルシウムなどのミネラルやたんぱく質が含まれており、丈夫な骨づくりにも有効であるといえます。

●体力を増強する効果
かぼちゃの種に含まれる豊富なミネラルは、体全体の機能を高め、体力の増強に効果的です。
かぼちゃの種にはリン、カルシウム、カリウムセレン亜鉛といった複数のミネラルが存在しています。
ミネラルは五大栄養素のひとつとして、体全体の機能維持や増強、疲労の抑制、体温保持や抵抗力、免疫機能の向上などの様々な生命活動に関与しています。
かぼちゃの種を積極的に摂取することは、疲労の抑制や体力の増強に直結します。

●新陳代謝を活発にする効果
かぼちゃの種には、血流を良くすることで、新陳代謝を促進させる効果があります。
かぼちゃの種に含まれる多量の良質なたんぱく質は、弾力があってしなやかな血管をつくることができるので、血行の改善につながります。
末梢血管の血行が良くなると、全身の細胞に栄養や酸素が行き届きやすくなります。
人間の体は約60兆個もの細胞で構成されており、そのひとつひとつの細胞が日々生まれ変わりを繰り返すことで、人間は健康を維持することができています。
しかし、血行不良により、栄養や酸素がすみずみの細胞まで行き届かなくなると、細胞の活動は衰退し正常に素早く生まれ変わることが困難になります。
かぼちゃの種は、血流改善に働きかけることで、全身の細胞に栄養や酸素を行き届かせるため、細胞が元気になり、新陳代謝を活発にします。

●コレステロール値を下げる効果
かぼちゃの種に含まれているリノール酸には、血中のコレステロールをコントロールする作用があるため、かぼちゃの種の摂取は、血中コレステロール値を低下させる効果があるといえます。
ただし、リノール酸は摂りすぎるとコレステロール値を上げる原因にも成り得るため、摂りすぎには注意が必要です。

●老化や病気を予防する効果
かぼちゃの種は、老化や病気の原因となる活性酸素[※2]を撃退する働きを持っています。
その働きを担っているのは、かぼちゃの種に豊富に含まれているビタミン類やβ-カロテン、セレンなどの抗酸化作用[※3]を持った栄養素です。
増えすぎた活性酸素は細胞を傷つけるため、アトピー性皮膚炎、シミやしわなどを誘発し、老化現象を促進することにつながります。
また、活性酸素は血液中のコレステロールに反応して悪玉(LDL)コレステロールを増加させたり、血管壁を傷害し、血管の健康に支障をきたす恐れもあります。
その結果、血液の流れる通路が狭くなると、動脈硬化などのあらゆる生活習慣病を招く危険性が高まります。
抗酸化作用を持つかぼちゃの種を摂取することで、体内の活性酸素を除去するため、老化や病気の予防につながると考えられています。

[※1:前立腺とは、男性特有の器官です。膀胱の出口に、尿道を取り囲むようにして存在しています。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素です。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化の原因になるとされます。]
[※3:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]

食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○排尿でお悩みの方
○泌尿器系の病気を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○生活習慣病を予防したい方

かぼちゃの種の研究情報

【1】閉経後および更年期の35名の女性を対象にかぼちゃ種子油(21名)もしくは小麦胚芽油(14名)を1日1回2g、12週間投与しました。かぼちゃ種子油を摂取したグループは、HDLコレステロール値が上昇し、拡張期血圧が減少しました。さらに、ほてりや頭痛、関節痛の有意な軽減も見られました。これらのことから、かぼちゃ種子油は閉経後の女性に対し、コレステロールおよび更年期障害の主要症状の改善に働くことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21545273

【2】糖尿病のラットは総コレステロール、トリグリセリド、血漿および肝臓脂質の増加が確認でき、血漿および肝臓において、カタラーゼやSODなどの抗酸化酵素活性の有意な減少を確認できます。しかし、糖尿病ラットのえさに亜麻およびかぼちゃ種子混合物を与えると、抗酸化酵素活性およびグルタチオン量の回復、過酸化脂質濃度の低下が確認されました。加えて、糖尿病誘発性の血漿中酵素の増加を抑制し、正常時に相当する回復が見られました。これらのことから、亜麻およびかぼちゃ種子混合物はラットにおいて糖尿病合併症を予防する可能性があると示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21106396

【3】ラットに高脂肪食を与えると、血清および肝臓における総コレステロール、総脂質およびトリグリセリドの大幅な増加を引き起こしました。さらに、アテロームや腎機能、免疫に関わる物質の濃度が有意に増加します。このラットにかぼちゃ種子と亜麻種子の混合物もしくはかぼちゃ種子とスベリヒユ種子の混合物を与えると、脂質パラメーターおよび免疫物質の濃度の改善が見られました。このことから、亜麻仁/かぼちゃ種子混合物およびスベリヒユ/かぼちゃ種子混合物には抗アテローム、抗高脂血症および免疫機能調節効果がある可能性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22362450

【4】普通の食事を与えたラットに比べ、ひだつきかぼちゃ(Telfairia occidentalis Hook f.)種子を含む試験食群では前立腺重量、前立腺タンパク量および前立腺酸性フォスファターゼの減少が見られました。このことから、試験食品群では良性前立腺肥大症の誘導が阻害され、エストラジオール(エストロゲンのひとつ)濃度調節機能が示されました。つまり、かぼちゃの種は前立腺肥大を予防する可能性を持つことが考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21709398

【5】タイの20名の男子(2〜7歳)を対象にシュウ酸結晶尿と尿組成に対するかぼちゃの種の効果を調べました。かぼちゃの種をより長く摂取する程、尿中のシュウ酸カルシウム結晶の発生およびカルシウム濃度は低下し、リン、ピロリン酸、グリコサミノグリカンおよびカリウム値は増加しました。かぼちゃの種は膀胱結石症のリスクを減らす可能性を持つことが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3799495

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参考文献

・小野倫一 著 尿もれ・頻尿・前立腺肥大症にペポカボチャ種子 ハート出版

・西崎統 鈴木園子 専門医がやさしく教える食品成分表 PHP研究所

・吉田企世子 松田早苗 あたらしい栄養学 高橋書店

・Gossell-Williams M, Hyde C, Hunter T, Simms-Stewart D, Fletcher H, McGrowder D, Walters CA. 2011 “Improvement in HDL cholesterol in postmenopausal women supplemented with pumpkin seed oil: pilot study.” Climacteric. 2011 Oct;14(5): 558-64.

・Makni M, Fetoui H, Gargouri NK, Garoui el M, Zeghal N. 2011 “Antidiabetic effect of flax and pumpkin seed mixture powder: effect on hyperlipidemia and antioxidant status in alloxan diabetic rats.” J Diabetes Complications. 2011 Sep-Oct;25(5): 339-45.

・Barakat LA, Mahmoud RH. 2011 “The antiatherogenic, renal protective and immunomodulatory effects of purslane, pumpkin and flax seeds on hypercholesterolemic rats. ” N Am J Med Sci. 2011 Sep;3(9): 411-7.

・Ejike CE, Ezeanyika LU. 2011 “Inhibition of the experimental induction of benign prostatic hyperplasia: a possible role for fluted pumpkin (Telfairia occidentalis Hook f.) seeds.” Urol Int. 2011;87(2): 218-24.

・Suphakarn VS, Yarnnon C, Ngunboonsri P. 1987 “The effect of pumpkin seeds on oxalcrystalluria and urinary compositions of children in hyperendemic area.” Am J Clin Nutr. 1987 Jan;45(1): 115-21.

・Arjmandi BH. 2001 “The role of phytoestrogens in the prevention and treatment of osteoporosis in ovarian hormone deficiency.” J Am Coll Nutr. 2001 Oct;20(5 Suppl):398S-402 S

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