プーアール茶

puerh tea
普洱茶

プ―アール茶は、中国茶の黒茶に分類される代表的なお茶で、製造工程で茶葉を微生物の力で発酵させることによってつくられます。脂肪を分解する作用があり、ダイエット茶としても注目されています。中国では一般的なお茶として親しまれています。

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プーアール茶とは

●基本情報
プーアール茶は、製造工程で微生物や黒麹菌を茶葉に繁殖させてつくるお茶で、様々な形に固めた固形茶や散茶があります。独特の熟成された味わいと香りが特徴です。名前の由来は中国雲南省の普洱(プーアル)地区を集散地[※1]とすることによります。プーアール茶は雲南省の雲南大葉種という品種から採れる茶葉を後発酵してつくられます。プーアール茶は、発酵という特徴的な工程を経ることにより脂肪の分解や消化促進の働きがあり、油分の多い食事の後に飲むと最適だと注目されています。

●プーアール茶の歴史
プーアール茶をはじめとする中国茶は紀元前から人々に飲まれていたといわれています。後漢時代の書物『神農本草経』にも、すでにお茶の持つ薬効については記載があります。
プーアール茶はかつて、固形茶として普及していました。プーアール茶は雲南省からさまざまな辺境の地に輸出されるため、利便性を考えてこの形で広まりました。しかし、1940年代の中国国内での戦争による混乱によってお茶づくりどころではなくなってしまった時代に、固形茶にする前の茶葉が自然と発酵して黒茶になったものが普洱散茶(プーアールサンチャ)の始まりです。
この時代には、お茶のソムリエのような人がいて、固形茶を毎朝ほぐしてお客様に出す準備をしていました。偶然生まれた普洱散茶(プーアールサンチャ)は、茶葉をほぐす手間がかからないこともあり、散茶へのニーズが高まりました。
現在のプーアール茶は散茶のままある程度発酵させたものや、緑茶に後発酵した茶葉を混ぜたものを固めてつくるものが多くなっています。

●プーアール茶の種類
プーアール茶の形状は大きく分けると散茶と緊圧茶(固形茶)に分けられ、さらに緊圧茶には、餅茶(びんちゃ、または、へいちゃ)、沱茶(だちゃ)、磚茶(たんちゃ)、竹筒茶、方茶などがあります。「散茶」は、茶葉を固めずにそのまま仕上げたものです。日本でも一番よく見かけ、馴染みがあるのがこのタイプです。中華料理店で出されるプーアール茶もこのお茶です。後発酵特有のまろやかな甘みと深いセピア色の色味が特徴です。
「餅茶」は大きさによって大餅・中餅・小餅があり茶葉を円盤型に緊圧形成したものです。その他コイン状の小さいものなどは「豆」と呼ばれたりします。まろやかな味でブランデーのような芳香を持つものもあります。つくられてからの年月が長いものは希少価値がつくこともあります。「沱茶」は、お椀型に緊圧形成したもので、ナイフなどで削って入れます。小さいものは小沱茶と呼びます。菊花をブレンドした菊普洱小沱茶もあり、さっぱりとした口当たりが特徴です。「磚茶」は、レンガ状に緊圧形成したものです。意外と歴史は浅く、実はこのような形に形成されるようになったのは1957年以降のことです。「方茶」は正方形に緊圧形成したものです。「竹筒茶」とは、香竹と呼ばれる香りの良い竹の筒に入れたもので、「竹殻茶」と呼ばれるは粉茶を竹の子の皮に団子状に包んだものなどもあります。

●プーアール茶の製造方法
プーアール茶は中国茶の中でも後発酵でつくられる黒茶の一種です。黒茶は茶葉に熱を加えて酸化酵素の働きを止める「殺青(さっせい)」の作業を行った後、茶葉を手でもんで成形する「揉捻(じゅうねん)」という作業を行います。この後、水分を含んだ多湿状態に茶葉をさらし、微生物や菌を繁殖させる渥堆(あくたい)という作業を行います。
渥堆の時の作業場や工場の環境によって空気中の微生物の種類が異なるため、プーアール茶はつくられた環境によって風味が異なるといわれています。
渥堆が済んだ茶葉は乾燥させ、プーアール茶が完成します。

●プーアール茶に含まれる成分と性質
プーアール茶は茶葉特有の後発酵の働きにより、脂肪分解酵素であるリパーゼ[※2]が発生し、余分な脂肪分を分解、排出する効果が期待されています。さらに、プーアール茶に含まれる熟成茶重合カテキンには、脂肪吸収を抑える効果が知られており、ダイエットのリバウンドを抑制する効果があると注目されています。他にも、リパーゼを活性化する必須アミノ酸や、エネルギー代謝を促進する鉄なども含まれます。
また、水分の排出を促してむくみを予防したり、発汗作用による風邪の予防にも効果が期待されます。

[※1:集散地とは、生産地から産物を集めて、様々な消費地へ送り出す地点のことです。]
[※2:リパーゼとは、脂質を分解し、体内に吸収しやすくする消化酵素です。]

プーアール茶の効果

●生活習慣病を予防する効果
プーアール茶の後発酵の効果により、脂肪分解酵素であるリパーゼが発生し、とりすぎた脂肪分やコレステロールを分解、排出する効果があります。そのため、肥満や糖尿病を防ぐ効果があります。【1】

●脂肪の吸収を防ぐ効果
脂肪分解酵素であるリパーゼの働きに加えて、熟成茶重合カテキンが脂肪の吸収を防ぐため、体重増加のリバウンドを防ぐ効果も注目されています。【2】

●むくみを予防・改善する効果
むくみは体内に水分が異常に溜まると起こります。塩分や脂肪分の摂りすぎはミネラルのバランスを崩してむくみを引き起こすことが多いです。プーアール茶は水分の排出を促し、むくみの解消効果が期待できます。プーアール茶の脂肪吸収抑制作用は、塩分や脂肪分の摂りすぎもコントロールするといわれています。

●その他の効果
ビタミンやミネラル、鉄・マグネシウムなどなど、体に良い成分を豊富に含んでいるため、血圧を下げ、血液循環を良好にし、快眠、便通の改善、風邪予防、花粉症などのアレルギー体質の改善効果など、幅広い効果が期待されます。【3】

プーアール茶の研究情報

【1】アジアの発酵食品では特にコチュジャン、甜面醤、プーアール茶で抗トロンビン活性が高いことが確認されたことから、プーアール茶には生活習慣病予防効果が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004867466

【2】鶏膵臓を用いてリパーゼ活性に及ぼす茶の影響を調べたところ、プーアール茶はリパーゼ活性を向上させるはたらきが確認されたことから、プーアール茶に抗肥満作用が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110005001066

【3】プーアール茶は、重症急性呼吸器症候群(SARS)のウイルスの増殖関連物質、C3様プロテアーゼ(宿主細胞に侵入するための酵素)を他のお茶よりも抑制することがわかりました。このことから、プーアール茶は、風邪などの呼吸器疾患予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15937

参考文献

・榮 昭博 (2005) “茶およびにがりが膵リパーゼ活性に及ぼす影響” 桐生短期大学紀要 16, 13-17, 2005-12-06

・野田 裕子(2005) “発酵食品における血液関連生理活性物質について” 一宮女子短期大学紀要 44, 11-17, 2005-12-21

・大森正司 ワイド版 日本茶紅茶中国茶健康茶 日本文芸社

・菊地和男 香り高き中国茶を愉しむ-中国茶入門 講談社

・町田勢 編集 元気な体応援団 お茶の健康パワーでやせる!キレイになる 株式会社学習研究社

・青野眞也 編集 交通公社のMOOK 味覚シリーズ1 お茶の旅 日本交通公社出版事業部発行所

・Chen CN, Lin CP, Huang KK, Chen WC, Hsieh HP, Liang PH, Hsu JT. (2005) “Inhibition of SARS-CoV 3C-like Protease Activity by Theaflavin-3,3′-digallate (TF3).” Evid Based Complement Alternat Med. 2005 Jun;2(2):209-215. Epub 2005 Apr 7.

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