プルーン

PRUNE
西洋スモモ
Prunus domestica 

プルーンは欧米で「ミラクルフルーツ」と呼ばれ、ミネラル類やビタミン類、食物繊維などを豊富に含んでいる果物です。乾燥させたドライプルーンは、葉酸やポリフェノールの一種であるネオクロロゲン酸を豊富に含むため、貧血予防や生活習慣病予防、骨の健康改善など多岐に渡る効果が期待されています。

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プルーンとは

●基本情報
プルーンとは、バラ科サクラ属の落葉高木植物[※1]で西洋スモモの一種です。英語でスモモはプラムと呼ばれ、中でもドライフルーツに適しているプラムをプルーンと呼びます。
3~4月頃には木全体に梅に似た白い花を咲かせます。7月~9月頃に旬を迎えるプルーンは、赤ちゃんのこぶし程の大きさで、果肉が厚く、芳しい香りを放ちます。

プルーンは、新鮮なものは生のままでも食べられますが、多くは半生状のドライフルーツや、ペースト状のプルーンシロップ、ジャムなどに加工されて食べられています。

プルーン(PRUNE)の語源は、フランス語でプルーンの木を指す「プルノー(PRUNEAU)」に由来します。
プルーンの発祥の地であるコーカサス地方では「命の果実」、欧米では「ミラクルフルーツ(驚異の果物)」と呼ばれています。

●プルーンの生産地
世界におけるプルーンの4分の3は、アメリカのカリフォルニア州で生産されています。
雨により劣化しやすいプルーンは、日本の中でも比較的雨の少ない長野県や青森県、北海道などの地域で生産されています。全生産量の約6割は長野県で占められており、主に生食用として生産されています。

●プルーンの歴史
プルーンの歴史は紀元前まで遡り、健康で長寿の人が多いことで有名なカスピ海沿岸のコーカサス地方が発祥の地です。隊商の携帯食としてヨーロッパにドライプルーンが持ち込まれ、その後、南フランスで盛んに栽培されるようになり、広く愛されるようになりました。
19世紀中頃には、フランス人のルイ・ペリエがカリフォルニアにプルーンを移植後、長い年月をかけて行われた品種改良の末、現在のカリフォルニアプルーンが誕生しました。豊かな陽光や肥沃な土壌などがプルーンの栽培に適していたことから、カリフォルニアでのプルーン栽培が定着していきました。現在では、世界最大のプルーン生産地として知られています。
日本には、明治時代初期にヨーロッパやアメリカから伝えられました。プルーンは伝来当初、東日本で栽培されましたが、気温が高く雨の多い日本の環境は、栽培に向かなかったため、あまり定着しませんでした。

●プルーンに含まれている成分と性質
プルーンには、鉄やカリウム、カルシウムなどのミネラル類、β-カロテンやビタミンB群、ビタミンCなどのビタミン類、水溶性食物繊維であるペクチンなどがバランスよく含まれています。

これらの成分は乾燥させてドライプルーンにすることで、より効率的に摂取できるようになります。
さらに、アメリカにおける近年の研究により、ドライプルーンには、ネオクロロゲン酸などの強力な抗酸化作用を持つポリフェノールが豊富に含まれていることが明らかとなっています。

ポリフェノールやビタミンC、β-カロテンが持つ抗酸化作用とは、紫外線や喫煙、ストレスなど生活の様々な場面で発生する活性酸素[※2]を除去し、体が酸化することを防ぐ働きのことです。
人間の体内に活性酸素が過剰に発生し酸化が起こると、病気や老化、肌トラブルが引き起こされます。プルーンに含まれる抗酸化物質が体内で強い抗酸化力を発揮して酸化から体を守ることで、病気や老化、肌トラブルを予防することができます。
数ある果物や野菜類の中でもドライプルーンが持つ抗酸化力は、群を抜いて強いといわれています。

また、プルーンに含まれるβ-カロテンは、体内で必要な量だけビタミンAに変換され、ビタミンAとして働きます。ビタミンAは脂溶性のビタミンであるため、その性質上、過剰摂取に対し注意が必要な成分ですが、β-カロテンは体内で必要な量しかビタミンAに変換されないため、過剰摂取の心配がありません。

さらにプルーンに含まれる糖質のほとんどは、体内で素早く吸収されエネルギーとなるブドウ糖と果糖によって占められています。

[※1:落葉高木植物とは、定期的に葉を完全に落とし、樹高が4.0m以上の植物のことです。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]

プルーンの効果

プルーンには、ミネラル類やビタミン類、ペクチン、ポリフェノールなど様々な有効成分が豊富に含まれており、これらの成分には、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●貧血を予防する効果
栄養素の中でも鉄は吸収されにくく、体内の鉄が不足すると、めまいや立ちくらみなどの貧血症状を引き起こすことがあります。貧血は過激なダイエットや偏食などが原因としてあげられ、特に若い女性に多い症状です。
プルーンには、赤血球のもととなる鉄や銅、造血に必要な葉酸やビタミンB₆などのビタミンB群、ビタミンCなどの成分がバランスよく含まれており、鉄が赤血球として働くことをサポートできるため、貧血の予防や改善に効果があります。
1993年にアメリカで行われた研究では、プルーンは貧血改善効果が高いといわれるホウレンソウよりも優れた効果を発揮したことが報告されています。

●便秘を解消する効果
欧米でプルーンは、便秘解消の妙薬として知られています。
プルーンには水溶性食物繊維であるペクチンが豊富に含まれています。ペクチンは腸内で善玉菌[※3]のエサとなり、腸内環境を整える働きがあります。また、マグネシウムなどのミネラル類の複合作用もあるため、便秘の予防・改善に効果があります。アメリカの病院などでは、妊婦にプルーンジュースを飲ませて便秘や貧血の予防にに役立てているとのことです。

●動脈硬化を予防する効果
プルーンが動脈硬化の発症を抑えるという研究が報告されています。プルーンは悪玉(LDL)コレステロールを低下させる働きがあり、また、ポリフェノールの持つ抗酸化作用によってコレステロールの酸化も抑えられます。そのため、動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果があると考えられています。

●高血圧を予防する効果
プルーンにはカリウムが豊富に含まれています。
味の濃い食事などによって過剰に塩分を摂り続けると血液中のナトリウムが増え、高血圧を引き起こす原因となります。カリウムは体内でナトリウムとバランスを取り合って存在しており、ナトリウムを体外に排泄する働きがあるため、プルーンは高血圧の予防・改善に効果が期待できます。

●骨の健康を保つ効果
破骨細胞により古い骨が吸収され、骨芽細胞により新しい骨が形成されることで、骨は常に古い骨から新しい骨に生まれ変わっています。この2つの細胞は女性ホルモンによってバランスが保たれています。この吸収と形成のバランスが崩れると、骨量が減少し骨はもろくなってしまいます。特に閉経後の女性は、女性ホルモンが乱れがちになることから骨の吸収と形成のバランスが崩れることで、骨が弱くなる傾向があるといわれています。
プルーンに含まれているカルシウムやマグネシウムは、骨の構成成分であり、骨の形成に効果があります。さらに、アメリカの学会でプルーンの摂取が閉経後の女性の骨の健康に効果的であるという研究成果が発表されています。そのため、プルーンには、女性ホルモンの乱れから骨がもろくなることを抑制する効果があると期待されています。【1】【2】

●感染症を予防する効果
プルーンはβ-カロテンが豊富に含まれています。
そのため、プルーンには免疫力を高め風邪などの感染症を予防したり、病気の回復を早める効果があるといわれています。【3】

●むくみを予防・改善する効果
プルーンに含まれるカリウムには、体内の余分な水分を排出する働きがあります。そのため細胞間に溜まる水分が原因で起こるむくみの予防・改善に効果を発揮するといわれています。

●疲労回復効果
プルーンには、体内に吸収されやすい単糖類であるブドウ糖や果糖が豊富に含まれています。ブドウ糖や果糖は摂取後、体内で素早くエネルギーに変換されるため、即効性のある優れたエネルギー源になると考えられています。そのため、疲労の蓄積が抑えられ、疲労回復に素早く効果を発揮するといわれています。

[※3:善玉菌とは、ヒトの腸内に住む細菌の一種です。健康に役立つ働きを行っており、もともと大腸に住んでいる腸内ビフィズス菌や乳酸菌、腸球菌などが善玉菌といわれます。]

プルーンはこんな方におすすめ

○貧血でお悩みの方
〇便秘でお悩みの方
○動脈硬化を予防したい方
○高血圧を予防したい方
○骨粗しょう症を予防したい方
○風邪をひきやすい方
○手足のむくみが気になる方
○疲労を回復したい方

プルーンの研究情報

【1】乾燥プルーンの卵巣摘出ラットモデル(Ovx)の骨粗鬆症に対する作用について検討しました。Ovxに5%乾燥プルーンまたは15%乾燥プルーンを与えました。乾燥プルーンを投与したOvxの大腿骨の骨密度の増加が認められました。このことから、乾燥プルーンは骨重量減少がすでに起こった後、脛骨の骨梁(こつりょう)の微細構造を改善することが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16278620

【2】乾燥プルーンが閉経後女性の骨減少に対する影響を調べました。閉経後女性236名に対して乾燥プルーンを与えた結果、尺骨および脊髄の骨密度を回復させました。乾燥プルーンは骨代謝回転速度の低下した閉経後女性で骨密度を改善すると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21736808

【3】プルーンの熱水抽出物の免疫調節作用について調べたところ、プルーンに含まれるクロロゲン酸およびカフェイン酸がIFN-γ(+)CD49b(+)およびIL-12(+)CD11b(+)細胞の数を増殖させました。この研究により、プルーンに含まれるいくつかのポリフェノールおよび多糖類がハツカネズミ中の免疫系を刺激することが示唆されました。

【4】明暗試験、高架式十字迷路およびサービス探査実験を用いて不安マウスモデルに対するクロロゲン酸(果物抽出物)の抗不安作用を調査しました。クロロゲン酸(20 mg/kg)は、抗不安様作用が不安関連行動での減少をもたらしたことが分かりました。クロロゲン酸は、フルーツで最も豊富なポリフェノールの1つです。プルーンやリンゴなどの果実は抗不安作用を促進する可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17698084

【5】プルーンエキスのプロアントシアニジンを分画しました。プルーンエキスにはエピカテキンが含有されていることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18540093

​【6】プルーンは多量のフェノールを含有し、高い抗酸化活性を示します。プルーンが比較的高い量の4-O-カフェオルキナ酸を含むことがHPLC分析によって定量化されました。プルーンに含まれる全28成分について分析したところ、ヒドロキシ桂皮酸、安息香酸、クマリン、リグナンおよびフラボノイドを含む高いORAC値を示す成分を含有していることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15630217

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参考文献

・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社

・本多京子 食の医学館 小学館

・原山 建郎 久郷 晴彦 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・五訂増補 日本食品成分表

・Kimura Y, Ito H, Kawaji M, Ikami T, Hatano T. (2008) “Characterization and antioxidative properties of oligomeric proanthocyanidin from prunes, dried fruit of Prunus domestica L.” Biosci Biotechnol Biochem. 2008 Jun;72(6):1615-8. Epub 2008 Jun 7.

・Bouayed J, Rammal H, Dicko A, Younos C, Soulimani R. (2007) “Chlorogenic acid, a polyphenol from Prunus domestica (Mirabelle), with coupled anxiolytic and antioxidant effects.” J Neurol Sci. 2007 Nov 15;262(1-2):77-84. Epub 2007 Aug 14.

・Kayano S, Kikuzaki H, Yamada NF, Aoki A, Kasamatsu K, Yamasaki Y, Ikami T, Suzuki T, Mitani T, Nakatani N. (2004) “Antioxidant properties of prunes (Prunus domestica L.) and their constituents.” Biofactors. 2004;21(1-4):309-13.

・Karasawa K, Uzuhashi Y, Hirota M, Otani H. (2011) “A matured fruit extract of date palm tree (Phoenix dactylifera L.) stimulates the cellular immune system in mice.” J Agric Food Chem. 2011 Oct 26;59(20):11287-93. Epub 2011 Oct 3.

・Deyhim F, Stoecker BJ, Brusewitz GH, Devareddy L, Arjmandi BH. (2005) “Dried plum reverses bone loss in an osteopenic rat model of osteoporosis.” Menopause. 2005 Nov-Dec;12(6):755-62. Epub 2005 Nov 8.

・Hooshmand S, Chai SC, Saadat RL, Payton ME, Brummel-Smith K, Arjmandi BH. (2011) “Comparative effects of dried plum and dried apple on bone in postmenopausal women.” Br J Nutr. 2011 Sep;106(6):923-30. Epub 2011 May 31.

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