プロポリス

propolis
合成ミツロウ 蜂脂 ミツロウ酸

プロポリスとは、ミツバチが樹脂に蜜ロウや唾液などの自らの分泌物を混合して生成する物質です。「天然の抗生物質」とも呼ばれるプロポリスは、フラボノイドやアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの天然成分を含み、免疫力を高める効果や、炎症を抑えるなどの様々な効果が期待されている成分です。

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プロポリスとは?

●基本情報
プロポリスとは、ミツバチが樹木から集めた樹脂に、ミツロウや唾液などの自らの分泌物を混合して生成する物質です。プロポリスの含有成分は、原産地の樹木やミツバチの種類によって異なりますが、主にフラボノイドアミノ酸ビタミンミネラルなどの天然成分です。中でも、フラボノイドは40種類以上も含まれ、血管を強化することで動脈硬化を予防したり、免疫力を高める作用があります。プロポリスという名前はミツバチが巣の入り口を守るために用いることから、「前」という意味の「Pro(プロ)」、「都市・巣」という意味の「Polis(ポリス)」に由来しています。
ミツバチは巣の壁の隙間に、強い抗菌効果を持つプロポリスを塗り、腐敗や微生物の害から巣を守っています。巣の密度や湿度が高いにも関わらず、カビが生えないのはこのためであるといわれています。ミツバチがつくりだすプロポリスは、1つの巣箱から年間150g~200gほどと採取できる量が極めて少なく、大変貴重なものとされています。
プロポリスは「蜂脂(ハチヤニ)」とも呼ばれ、水に1滴垂らすと、ヤニ特有のにおいが広がります。

●プロポリスの歴史
プロポリスは古代エジプトでミイラの腐敗防止に用いられ、古代ギリシャ、ローマでは皮膚の疾患や感染症予防に活用されていたという記録が残されています。
また、アリストテレスは著書の中でプロポリスは皮膚疾患、切り傷、感染症に効果があると記述しており、長い歴史を持つ成分であることがわかります。
古来よりヨーロッパやブラジルでは、プロポリスをやけどやニキビ、イボなどの治療薬として用いていました。
日本でプロポリスが注目されたのは、1985年と歴史は浅く、国際養蜂会議において、関節炎や感染症に効果的だと報告されたことをきっかけに、その後プロポリスの持つ様々なパワーが解明されています。

●プロポリスを使用する際の注意点
プロポリスはまれに発疹やかゆみ、胃腸障害などの症状が起こる場合があります。また近年ではプロポリスが配合された化粧品や入浴剤などを直接皮膚に付け、かゆみやかぶれなどの接触性皮膚炎を起こすケースが報告されています。
プロポリスにはミツバチの体液などが含まれているため、ハチアレルギーの方は使用を控える必要があります。

●原産地で異なるプロポリスの成分
プロポリスの含有成分は、原産地の樹木やミツバチの種類によって異なり、原産地は主にヨーロッパや中国、ウルグアイなどの「ヨーロッパタイプ」と、ブラジル産の「ブラジルタイプ」に大別できます。
ヨーロッパタイプのプロポリスには、フラボノイドが多く含まれており抗酸化作用が非常に強いといわれています。
ブラジルタイプのプロポリスには、テルペン類[※1]などヨーロッパタイプにほとんど見られない成分が含まれ、それぞれの成分が複合的に効果を発揮します。
また、ユーカリやポプラなどの抗菌効果や抗炎症作用、免疫力を高める効果を持つ成分を多く含む植物や、針葉樹林などの外傷や皮膚炎に効果的な樹木によっても含有成分に差異がみられます。
日本では、栄養成分が豊富なブラジル産のプロポリスが一般的に使われています。

●プロポリスに含まれるフラボノイドの働き
プロポリスには、約40種類ものフラボノイドが含まれます。
フラボノイドは、4000種類以上も存在するポリフェノール類の黄色系色素の総称で、植物の発芽や成長に関与している成分です。
フラボノイドはビタミンP[※2]とも呼ばれ、セロリパセリ玉ねぎなどの野菜類や大豆緑茶、かんきつ類の皮、そばなどに多く含まれています。
フラボノイドは抗酸化作用を持つため、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を抑えて動脈硬化を予防したり、血液の流れを良くしてドロドロ血を防ぐなど生活習慣病の予防に効果的です。
また、フラボノイドは毛細血管を強化し、血圧や血糖値を正常に保ちます。
プロポリスは、このような働きを持つフラボノイドを含み、健康効果をもたらす働きがあります。

[※1:テルペン類とは、みかんやグレープフルーツなどに含まれる香りや苦みの成分です。]
[※2:ビタミンPとは、ビタミン様物質と呼ばれる、ビタミンと似た働きを行う物質の一種で、ヘスペリジン、ルチン、ケルセチンなどの総称です。]

プロポリスの効果

●免疫力を高める効果
プロポリスには免疫機能をつかさどる細胞を活発にし、免疫力を高める効果があります。
プロポリスを摂取することで体内の免疫力が高まり、風邪やインフルエンザにかかりにくい強い体を生み出します。
また、プロポリスが持つ抗菌作用によって、ブドウ球菌[※3]、大腸菌[※4]などの菌の増殖が抑えられ、食品に対しては防腐剤のような働きをします。
このような作用を持つことから、プロポリスは「天然の抗酸化物質」といわれています。【5】【7】

●炎症を抑制する効果
プロポリスには痛みや腫れ、熱をともなう炎症を抑制する効果があります。
頭部白癬(とうぶはくせん)[※5]や癜風(でんぷう)[※6]のどちらかの症状を持つ子ども242名にプロポリスを28日間患部に塗布した所、かゆみが抑えられ、皮膚の発疹やただれが改善されたという報告もあります。
またプロポリスをうがいで用いると、痛みや炎症を抑える効果があり、口腔内の形成手術後の治癒に有効だといわれています。
プロポリスの抗菌効果が口内を清潔に保ち、炎症を抑える働きによって、口内炎の予防が期待されています。【3】

●花粉症を予防する効果
プロポリスは花粉症の原因となるヒスタミンなどの物質の放出を抑制し、花粉症を予防する効果
があります。
軽度のスギ花粉症と診断された30人に花粉が飛散する前の1月から12週間に渡りプロポリスを
摂取し、摂取していないグループと比較すると、プロポリスを摂取したグループのほうが花粉症
の治療薬を使用した人が少なかったことが判明しました。それだけではなく、花粉症の治療薬を
使用した人の中でも、使用頻度が軽減したということもわかっています。
プロポリスは花粉症の原因となるヒスタミンなどの物質の放出を抑制し、花粉を予防する効果
があります。【1】【2】

●糖尿病を予防する効果
プロポリスには糖尿病を予防する効果があるといわれています。
糖尿病とは血糖値をうまくコントロールできず、血糖値が高くなり動脈硬化や手足の壊疽などの深刻な合併症を引き起こす病気です。
糖尿病の初期の症状では、血糖値を抑えるインスリンが効きにくい状態になり、全身の血圧や臓器の働きに影響します。
このような、糖尿病の初期の状態になったラットにプロポリスを与えると、その初期症状が大幅に軽減することが分かっています。【4】

●美肌効果
プロポリスには肌の生まれ変わりを促進し、肌の若々しさを保つ効果があります。また、プロポリスには肌の老化を促進する活性酸素を抑える効果があるため、シミやそばかすの発生を抑制します。
さらにプロポリスには抗菌効果、炎症を抑える効果があるため、ニキビ予防に効果を発揮します。
また紫外線のダメージから肌を守る研究も報告されており、肌に対する健康機能が期待されています。

●抜け毛を予防する効果
プロポリスには、抜け毛を予防し、発毛を促進する効果があるといわれています。
毎日プロポリスを含む軟膏、または液体を頭部に深く擦り込んでマッサージを続けると、抜け毛の防止に効果があったとの報告もあります。また、動物実験においても毛髪再生の効果があり、さらには白髪を黒くする効果も期待されています。

●口臭を予防する効果
プロポリスには口臭の原因となる菌を殺菌し、口臭を予防する効果があるといわれています。
抗菌効果を持つプロポリスは歯磨き粉にも配合され、虫歯や歯槽膿漏(しそうのうろう)の予防、口臭予防に効果を発揮します。【7】

[※3:ブドウ球菌とは、人間や動物の腸内に存在し、増えすぎることで下痢などの症状を引き起こす細菌のことです。]
[※4:大腸菌とは、人間や動物の腸内に存在し、増えすぎることで下痢などの症状を引き起こす細菌のことです。]
[※5:頭部白癬とは、頭皮がはがれ落ちるなどの症状を持つ白癬菌による感染症です。]
[※6:癜風(でんぷう)とは、上半身に円形の褐色斑が現れる癜風菌による感染症です。]

プロポリスは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○免疫力を向上させたい方
○疲れやすい方
○花粉症の方
○美肌を目指したい方

プロポリスの研究情報

【1】軽度のスギ花粉症患者において、プロポリスを1日当たり300mg 、花粉飛散時期の事前に12週間にわたり摂取させたところ、花粉症治療薬を服用した方の割合が減少したことから、プロポリスには花粉症軽減効果があることが示唆されました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/10027443403/ja/

【2】アレルギー性鼻炎患者の末梢白血球にプロポリスを投与すると、アレルギー関連物質であるロイコトリエンとヒスタミンの放出が抑制されました。この作用にはプロポリスに含まれるアルテピリンという成分が関与していることがわかり、プロポリスに抗アレルギー作用や花粉症予防効果が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/10028211889

【3】頭部白癬や癜風小児患者305名を対象に、グリーンプロポリスを1日50mg/mL 、28日間塗布したところ、皮膚の発疹やただれなど皮膚病変の改善が見られたことから、プロポリスは皮膚保護作用を持つと考えられています。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1876382011001594

【4】Ⅱ型糖尿病ラットにプロポリスを摂取させると、糖尿病による空腹時血糖値や血中トリグリセリドの上昇が抑制され、インスリン抵抗性の改善が見られました。プロポリスには血糖値や脂質代謝を調節し、インスリン感受性を改善することにより、抗糖尿病効果を示します。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21716678

【5】プロポリスは、抗菌作用(黄色ブドウ球菌、大腸菌)ならびに抗真菌作用(カンジダ菌)、抗ウィルス作用(インフルエンザウィルス)を持つことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10363838

【6】マウスに紫外線を照射した後、プロポリス10-200mg/kg を皮膚に塗布したところ、日焼けによる浮腫が軽減し、紫外線照射によるIL-10やIL-12の生成が抑制されたことから、プロポリスには皮膚保護作用を持つことが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20016191

【7】プロポリスに唾液に含まれる細菌、歯肉炎の原因菌である口腔レンサ球菌やむし歯の原因菌であるミュータンス菌の増殖を抑制するはたらきが確認されたことから、プロポリスには虫歯や歯槽膿漏や口臭の予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9545875

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参考文献

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・Takeuchi Hiromi, Kitano Hiroya, Okihara Kiyoshi, Hashimoto Ken, Enomoto Tadao 2012 “Efficacy and Safety of Propolis Supplement on Management of Japanese Cedar Pollinosis : A Randomized Double-Blind, Placebo-Controlled Trial in 2005” Pharmacometrics, 75(5), 103-108, 2009-01-31

・Nlandu Roger Ngatu, Takao Saruta, Ryoji Hirota, Masamitsu Eitoku, Basilua Andre Muzembo, Tomomi Matsui, Luzitu Severin Nangana, Muaka Anselme Mbenza, Naoko Kumagai, Narufumi Suganuma 2011 “Antifungal efficacy of Brazilian green propolis extracts and honey on Tinea capitis and Tinea versicolor” European Journal of Integrative Medicine. 2011; 3(4):e281-7

・Li Y, Chen M, Xuan H, Hu F. 2011 “Effects of encapsulated propolis on blood glycemic control, lipid metabolism, and insulin resistance in type 2 diabetes mellitus rats.” Evid Based Complement Alternat Med. 2012;2012:981896.

・Kujumgiev A, Tsvetkova I, Serkedjieva Y, Bankova V, Christov R, Popov S. 1999 “Antibacterial, antifungal and antiviral activity of propolis of different geographic origin.” J Ethnopharmacol. 1999 Mar;64(3):235-40.

・Cole N, Sou PW, Ngo A, Tsang KH, Severino JA, Arun SJ, Duke CC, Reeve VE. 2010 “Topical ‘Sydney’ propolis protects against UV-radiation-induced inflammation, lipid peroxidation and immune suppression in mouse skin.” Int Arch Allergy Immunol. 2010;152(2):87-97.

・Steinberg D, Kaine G, Gedalia I. 1996 “Antibacterial effect of propolis and honey on oral bacteria.” Am J Dent. 1996 Dec;9(6):236-9.

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