プロリンとは
●基本情報
プロリンは、たんぱく質などを構成するアミノ酸の一種です。
アミノ酸とは、筋肉や内臓をつくるたんぱく質のもととなる成分で、アミノ酸のうち体内で合成できるものは非必須アミノ酸 [※1]、体内で合成できないものは必須アミノ酸 [※2]と呼ばれます。プロリンは体内で合成できるため非必須アミノ酸のひとつに分類されており、グルタミン酸からつくられます。
また、プロリンはコラーゲンの主要構成アミノ酸のひとつです。コラーゲンとは、丈夫な血管や筋肉、骨、肌をつくるたんぱく質の一種で、体の組織をしっかりと結び付ける接着剤のような働きを担っています。
コラーゲン内のプロリンの約半分は、水酸化 [※3]されたヒドロキシプロリンに変換されたものが存在しています。ヒドロキシプロリンがつくられることで、コラーゲンの構造が安定するといわれています。また、プロリンにはコラーゲンの合成を促進したり、表皮の細胞の増殖を促進する働きがあることを示す報告もあります。しかし、分子量が小さいアミノ酸であるプロリンの方が他のアミノ酸に比べ体内への浸透率は高いといわれています。
●プロリンの過剰症・欠乏症
プロリンは過剰摂取による副作用が確認されていないため、多少摂りすぎても影響はないと考えられています。
しかし、1種類のアミノ酸を1日に10g以上摂取すると、ショック症状を引き起こす危険性があるといわれているため、偏った摂取には注意が必要です。
主に体内で合成できる非必須アミノ酸のプロリンですが、たんぱく質の摂取が少ない食生活を送っていると不足してしまいます。そのため、サプリメントなどから補う必要があるといわれています。プロリンが不足すると、体内のコラーゲンの量が減少し、皮膚にできた傷の治りが遅くなったり、膝や腰などの関節に痛みを感じやすくなるなど体に悪い影響が出る場合があります。また、肌のハリが低下し、しわができやすくなる、紫外線によるシミ・そばかすが消えにくくなるなど、肌の老化を促進させる原因にもなります。
その他、プロリンは心筋の合成に関わるアミノ酸でもあるため、不足しすぎると心筋の生まれ変わりがうまくいかず、心筋梗塞を引き起こす原因になる可能性もあります。
<豆知識>食品中コラーゲン量の算出方法
たんぱく質の一種であるコラーゲンは、アミノ酸が鎖状につながった構造を持っています。この構造が繊維状や膜状の形をつくっています。
たんぱく質は、構成するアミノ酸の種類によって組成が異なるため、食品中の特定のたんぱく質やアミノ酸の量を分析することは困難です。そのため、食品中のコラーゲンそのものの量を測定することはできないと考えられています。
食品中のコラーゲン量は、ヒドロキシプロリンの量を目安として算出されています。コラーゲンを構成するアミノ酸はその種類と数に特徴があり、一般的なたんぱく質には含まれないヒドロキシプロリンやヒドロキシリジン [※4]と呼ばれるアミノ酸を含んでいます。ヒドロキシプロリンは、コラーゲンとコラーゲンに似たたんぱく質にしか含まれない特殊なアミノ酸です。また、コラーゲン中のアミノ酸の約10%を占めていることから、ヒドロキシプロリン含量を目安として、大体のコラーゲン量を測定することができます。
ただし、コラーゲンの中でも種類によって構成するアミノ酸が異なるため、正確なコラーゲン含量を算出することは困難であるとされています。
[※1:非必須アミノ酸とは、体内で合成することができるアミノ酸のことで、人体を構成するものとして11種類あります。アルギニン、グリシン、アラニン、セリン、チロシン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸です。]
[※2:必須アミノ酸とは、体内で十分に合成できないため、食品から摂取することが必要なアミノ酸のことです。9種類のアミノ酸が該当し、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、スレオニン、ヒスチジン、トリプトファン、リジン、メチオニンがあります。]
[※3:水酸化とは、水素と酸素でできたイオン-OHが結合することです。]
[※4:ヒドロキシリジンとは、必須アミノ酸の一種であるリジンが水酸化したものです。]
プロリンの効果
●関節痛を改善する効果
関節痛の原因のひとつに、骨と骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨が擦り減ってしまうことが挙げられます。軟骨の約50%はコラーゲンで構成されており、軟骨に含まれるコラーゲンの代謝 [※5]が悪くなると、軟骨の弾力性が失われて固くなり、軟骨は少しの衝撃で潰れたり、擦り減ったりします。軟骨が擦り減ると、骨同士が直接こすれ合うため、それが痛みとなって現れます。この症状がひどくなると、激痛で歩くことも困難な状態を引き起こす場合もあります。
プロリンには、コラーゲンの合成を高める働きがあるため、軟骨そのものの新陳代謝を活発にし、関節痛をやわらげる効果があるといわれています。【1】
●美肌効果
肌を形成する際に必要とされるコラーゲンは、歳を重ねるごとに体内から失われやすくなります。
プロリンには、体内に吸収されたたんぱく質やアミノ酸からコラーゲンの合成を促進させる働きがあります。さらに、一度破壊されたコラーゲンを修復させる役割も担っています。
これらの働きにより、プロリンを摂取することで紫外線などの影響でダメージを受けた肌のコラーゲンが再生され、シミやしわ、そばかすを防ぎ、美しい肌を導く効果があると考えられています。
肌に存在するプロリンが多いほど、肌の弾力やハリを保つことができるといわれています。また、強い美肌効果を持つビタミンCと一緒に摂ることで、さらにコラーゲンの再生や肌荒れの予防、肌の潤いを保持するなどの効果が高まります。このようにプロリンは美肌効果があるとして、多くの化粧品に天然保湿成分として配合されています。【1】
●脂肪を燃焼させる効果
プロリンには、脂肪を燃焼させる効果があるといわれています。
胃やすい臓の消化酵素であるリパーゼには、脂肪を分解しエネルギー源として消費しやすくすることで、内臓脂肪や皮下脂肪を減少させる働きがあります。プロリンにはリパーゼを活性化させる働きがあるため、脂肪の燃焼を助け、内臓脂肪や皮下脂肪を減少させる効果があると期待されています。
運動時にプロリンを摂取することで、脂肪を燃焼させる効果がさらに高まると考えられています。【2】
[※5:代謝とは、生体内で物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることです。]
プロリンは食事やサプリメントで摂取できます
プロリンを含む食品
○豚肉
○動物性ゼラチン質:ゼリー、マシュマロ
○小麦たんぱく:焼き麩
○大豆たんぱく:湯葉、高野豆腐
こんな方におすすめ
○関節痛でお悩みの方
○美肌を目指す方
○肥満を防ぎたい方
プロリンの研究情報
【1】ヒト真皮線維芽細胞に、プロリンを含むコラーゲンジペプチドを200nM 投与したところ、ヒアルロン酸が3.8倍、皮膚線維芽細胞が1.5倍に増加しました。プロリンを含むコラーゲンペプチドは、皮膚細胞を活性する他、肌の弾力に欠かせないヒアルロン酸を増加させることにより、美肌効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20507402
【2】脂肪細胞(3T3-L1細胞)に、プロリンを含むコラーゲンペプチドを投与すると、脂肪細胞内の脂肪滴の割合が低下していたことから、プロリンを含むコラーゲンペプチドは脂肪減少効果を持つと考えられています。
参考文献
・Ohara H, Ichikawa S, Matsumoto H, Akiyama M, Fujimoto N, Kobayashi T, Tajima S. (2010) “Collagen-derived dipeptide, proline-hydroxyproline, stimulates cell proliferation and hyaluronic acid synthesis in cultured human dermal fibroblasts.” J Dermatol. 2010 Apr;37(4):330-8.
・沢谷里江、小山洋一、永易彩、保坂真善、植田弘美、眞船直樹、竹花一成 (2008) “3T3-L1脂肪前駆細胞の分化に対するプロリルヒドロキシプロリンの影響” J. Rakuno Gakuen Univ., 33 (1) :13~18(2008)
・日経ヘルス サプリメント事典 第4版 日経BP社