松樹皮抽出物とは
●基本情報
松樹皮抽出物とは、海洋性の松の樹皮から抽出したもののことです。中でもフランス海岸の松樹皮抽出物が特に有名です。松樹皮抽出物の中には、プロアントシアニジンや数種類もの有機酸を含むフラボノイド類が含まれています。これらは、細胞がエネルギー生成を行う過程で生まれる活性酸素を防いでくれる抗酸化作用や抗炎症作用などを持つといわれています。
●松樹皮抽出物の生育環境
松樹皮抽出物は1年のうちのほとんどが晴天という天候のもとで育ちます。非常に強い紫外線にさらされる中で、自身を守るためにその樹皮には多くの抗酸化物質を蓄えるようになったといわれています。
特にフランス海岸松樹皮抽出物の効果は、同じ抗酸化作用を持つといわれるビタミンEの約170倍、ビタミンCなら約340倍といわれています。実際にヨーロッパでは「フランス海岸松樹皮抽出物は飲む化粧品」と呼ばれる程人々に親しまれている天然成分です。
●松樹皮抽出物の歴史
松樹皮抽出物は日本でも知られるようになってきましたが、歴史の始まりは16世紀フランスの探検家ジャック・カルティエとそのチームの記録から始まっています。その記録の内容は、ビタミンC不足による無力症、出血・貧血などを伴って起こる「壊血病」の症状緩和のために、現地のインディアンから松の樹液を薦められたところ、それによって命を救われたというものでした。松樹皮抽出物は民間薬としての歴史を経て、ここ30年程の間に欧米各地で本格的薬効作用についての研究が進んだという天然成分です。
その研究では、40年以上に渡り世界中で研究が重ねられ、安全性データに加え、280以上の研究論文が発表されています。中でも、ヒト臨床試験は実に95以上も実施されており、被験者数は7,000人を超えるなど、機能性食品(ハーブ)の中で最もエビデンス(有効性確認)が蓄積されています。
●松樹皮抽出物の働き
人間が取り込んだ酸素のうち、約1~2%は活性酸素に形を変えています。
ストレスや紫外線の照射、タバコ、アルコール、電磁波、化学物質、病原菌、排気ガスというような私たちの生活をとりまく様々な要因により、体内に大量に発生してしまうといわれ、ある許容範囲を超えるとこの活性酸素は、細胞を傷つけ様々な病気や症状を引き起こしたりするようになります。抗酸化作用をもつ松樹皮抽出物は、この活性酸素による悪影響を最小限に抑える役割を果たします。
ただし、妊娠・授乳中の方、またお子様に関しては使用を控える必要があります。
松樹皮抽出物の効果
●生活習慣病の予防・改善効果
松樹皮抽出物の成分の中で特に注目されているのが、「プロアントシアニジン」です。「プロアントシアニジン」には、強力な抗酸化作用、抗炎症作用が認められております。実際フランスでは、血管の病気に広く用いられてきました。この働きは血管の動脈、静脈、血管細胞にいたるまで、体中の血管機能維持に好結果を示しているためです。松樹皮抽出物には活性酸素を抑制する、強力な抗酸化作用があります。活性酸素は血管内の悪玉(LDL)コレステロールを悪玉に変え、動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞、高血圧といった生活習慣病につながってきます。松樹皮抽出物に含まれるプロアントシアニジンが悪玉(LDL)コレステロールの酸化を抑制し、生活習慣病を予防します。【1】
●女性特有の悩みを改善する効果
松樹皮抽出物は「女性の救世主」としての期待も高い成分で、強い抗酸化力は肌の老化を抑え、血流を促進して目のクマや肌のくすみを改善し、美肌づくりを助けます。
また、生理痛や更年期障害、冷え症、関節痛にも働きかけてくれます。【2】
松樹皮抽出物はこんな方におすすめ
○シミ、そばかすが気になる方
○美肌を目指したい方
○ストレスをやわらげたい方
○生活習慣病を予防したい方
○女性らしさを維持したい方
松樹皮抽出物の研究情報
【1】軽度および中度高血圧併発、Ⅱ型糖尿病患者48名を対象に、松樹皮抽出物を1日あたり125mg の量で12週間摂取させたところ、降圧剤投与量を半減しても血圧が良好にコントロールされ、血中エンドセリン-1 (血管内皮細胞由来の血管収縮物質) 、糖化ヘモグロビン (HbA1c) 、LDLコレステロール値、空腹時血糖値の低下がみられたことから、松樹皮抽出物は高血圧予防効果、生活習慣病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19083426
【2】健康成人男性16名を対象に、松樹皮抽出物を1日あたり180mg の量で2週間摂取させたところ、アセチルコリンに対する前腕血流反応が増加したため、松樹皮抽出物は血流改善効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18037769
【3】女性116名を対象に、松樹皮抽出物を1日あたり60mg の量で生理周期2周期期間摂取させたところ、月経困難患者における鎮痛薬の摂取量や利用日数の減少が認められてことから、松樹皮抽出物は鎮痛作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18567279
【4】高齢者101名を対象に、松樹皮抽出物を一日あたり150mg の量で3ヵ月間摂取させたところ、作業記憶の改善および血漿中F2-イソプロスタン (酸化ストレスマーカー) の減少が認められたことから、松樹皮抽出物は記憶力改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18701642
【5】軽度の変形性膝関節症患者100名を対象に、松樹皮抽出物を1日あたり150mg の量で3ヶ月間摂取させたところ、WOMAC (Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index、関節疼痛や機能性の指標) 、VAS (Visual Analog scale、痛みの指標) の改善が見られたことから、松樹皮抽出物は鎮痛作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18570266
参考文献
・Zibadi S, Rohdewald PJ, Park D, Watson RR. 2008 “Reduction of cardiovascular risk factors in subjects with type 2 diabetes by Pycnogenol supplementation.” Nutr Res. 2008 May;28(5):315-20.
・Nishioka K, Hidaka T, Nakamura S, Umemura T, Jitsuiki D, Soga J, Goto C, Chayama K, Yoshizumi M, Higashi Y. 2007 “Pycnogenol, French maritime pine bark extract, augments endothelium-dependent vasodilation in humans.” Hypertens Res. 2007 Sep;30(9):775-80.
・Suzuki N, Uebaba K, Kohama T, Moniwa N, Kanayama N, Koike K. 2008 “French maritime pine bark extract significantly lowers the requirement for analgesic medication in dysmenorrhea: a multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled study.” J Reprod Med. 2008 May;53(5):338-46.
・Ryan J, Croft K, Mori T, Wesnes K, Spong J, Downey L, Kure C, Lloyd J, Stough C. 2008 “An examination of the effects of the antioxidant Pycnogenol on cognitive performance, serum lipid profile, endocrinological and oxidative stress biomarkers in an elderly population.” J Psychopharmacol. 2008 Jul;22(5):553-62.
・Cisár P, Jány R, Waczulíková I, Sumegová K, Muchová J, Vojtassák J, Duraćková Z, Lisý M, Rohdewald P. 2008 “Effect of pine bark extract (Pycnogenol) on symptoms of knee osteoarthritis.” Phytother Res. 2008 Aug;22(8):1087-92.