リン

phosphorus
P  燐

リンは、カルシウムの次に体内に多く存在するミネラルで、成人の体重の約1%を占めています。このうち約80%はカルシウムやマグネシウムと結合し、骨や歯を形成しています。また、エネルギーの貯蓄など、細胞の生命活動に欠かせない栄養素です。

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リンとは

●リンの基本情報
リンは、体を構成するミネラルのひとつであり、筋肉、神経、脳、肝臓などすべての組織に含まれています。体内に含まれるリンは体重の約1%で、体内に豊富に含まれる多量ミネラルです。体内のリンの約80%はカルシウムやマグネシウムと結合し、骨や歯を形成しています。残りの15%の大部分はたんぱく質や脂質、糖質などと結合し、細胞膜[※1]のリン脂質として、DNAやRNAなどの核酸の構成成分として、あらゆる細胞に存在しています。また、ATP(アデノシン3リン酸)[※2]の構成成分でもあり、生命活動を支える重要な役割を担っています。また、脳への働きも重要で、リン脂質となって脳をつくるために欠かせないミネラルでもあります。
リンが欠乏すると歯や骨が弱くなりますが、リンは日常食様々なものに含まれているので、通常の生活で不足することはありません。

●リンの歴史
リンは原子番号15の元素で、ドイツの錬金術師[※3]のヘニッヒ・ブラントが1669年に人間の尿から分離させたことで初めて発見されました。よく燃える性質を持ち、マッチにも利用されています。
リンは英語でphosphorusといいますが、これは、ギリシャ語のphos(光)とphoros(運び屋)が語源とされています。

●リンを多く含む食品
リンを含む一般的な食品としては、プロセスチーズや煮干し、卵黄やアーモンドなどの乳製品や魚介類などが挙げられます。その他、リンは品質改良剤や結着剤[※4]とする目的で、多くの加工食品に使用されています。食品添加物にリンが使用されている食品には、「リン酸塩」や「ピロリン酸」、「ポリリン酸」といった表示があります。

●リンの過剰摂取
リンの摂り過ぎによって血液中のリン濃度が上昇すると、体内でカルシウムとのバランスがくずれます。すると、骨から血液中にカルシウムが放出されるため、骨のカルシウム量が減少し、骨が弱くなったり、肝機能の低下、副甲状腺機能[※5]の亢進をきたし、腎臓に負担がかかることがあります。理想的にはリン1対カルシウム2の比率がいいといわれていますが、日本人はカルシウム摂取量が不足しており、反対にリンを摂取しすぎる傾向にあります。リンは、食品添加物として加工食品に含まれ、清涼飲料水やインスタント食品、スナック菓子などの酸味のもととしても使用されているため、これらの食品を採り過ぎると、リンの過剰摂取につながります。リンの1日の耐容上限量は約3000mgとされています。

●リンの働き
リンは体内でビタミンB₁やビタミンB₂と結合して補酵素となり、糖質の代謝を促進します。

<豆知識>理想的なリンのバランス
リンとカルシウムはバランスよく摂取することが大切です。牛乳や乳製品に含まれるリンはカルシウムとのバランスがよく、効率的に骨を強化することができます。一方、肉や魚、卵はカルシウムに比べて圧倒的にリンの割合が高いので、リンのとりすぎには注意が必要です。

[※1:細胞膜とは、:細胞の内外を隔てる膜のことです。細胞膜があることにより、細胞内部の環境を一定に保つことができます。また特定の物質以外侵入させないためのバリア機能もあります。]
[※2:ATP(アデノシン3リン酸)とは、細胞の中に存在し、生命活動で利用されるエネルギーを保存・利用する上で必要な物質です。]
[※3:錬金術師とは、鉛などの卑金属を金などの貴金属に変換することを目的とする学問もしくは発明される技術を行っていた人々のことです。]
[※4:結着剤とは、ハムやソーセージ、魚肉練り製品の製造時に肉の結着性や保水性を高める目的で用いる物質のことです。]
[※5:副甲状腺は、別名を上皮小体ともいい、ホルモンを分泌している甲状腺の裏側にある米粒の半分くらいの大きさの臓器です。]

リンの効果

●骨や歯を丈夫にする効果
リンは、カルシウムと結合してリン酸カルシウムとなり、骨や歯をつくる主材料となります。丈夫な骨や歯を保つために必要不可欠な成分です。骨ではカルシウムの次に多く含まれるミネラルで、骨の強度を保っています。

●エネルギーを蓄える効果
リンはATP(アデノシン3リン酸)の構成成分で、体の中でエネルギーを蓄える役割があります。ATPはアデノシンという物質にリン酸が3つ結合したもので、分解されてリン酸が結合から外れるときにエネルギーを放出します。食事で摂った糖質や脂質、たんぱく質などは代謝を受けてATPとなることでエネルギーを生み出すため、リンは生命活動を支える重要な役割を担っています。

●神経や筋肉の機能を正常に保つ効果
リンは様々な生理機能の維持に必要です。遺伝をつかさどる核酸を構成したり、細胞膜の構成成分として、細胞の成長と分化やエネルギーの運搬を行い、神経の伝達の補助や筋肉の収縮を補助します。リンが不足すると、新陳代謝が低下し筋肉の衰えや体のだるさを引き起こします。正常な生理機能の維持に働いています。

リンは食事やサプリメントで摂取できます

リンを多く含む食品

○プロセスチーズ
○煮干し
○干しきびなご
○凍り豆腐
○わかさぎ
○卵黄
○アーモンド

こんな方におすすめ

◎骨や歯を強くしたい方

リンの研究情報

【1】生体内のリンは約80%がカルシウム塩として存在し、骨や歯の成分となっています。
その他のリンは、生体膜のリン脂質、DNAやRNAといった核酸の成分、また、ATPなど高エネルギーリン酸化合物として、エネルギー代謝や脂質代謝などに重要な役割を担っています。

【2】リンは欠乏すると横紋筋変性に由来する心筋症や、溶血性貧血、骨格筋症  、骨強度の低下 、くる病 などがおこります。

参考文献

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・上西一弘 栄養素の通になる第2版 女子栄養大学出版部

・本多京子 食の医学館 小学館

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・鈴木ヤヱ, 松田智恵子 からだのことを考えた食べもの・食材・かんたんレシピ 新星出版社

・中村 丁次 監修 栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版

・専門領域の最新情報 最新栄養学 第8版:建帛社

・木村修一 最新栄養学 第7版  建帛社

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