胡椒

pepper
Piper nigrum

香辛料の一種であり、世界中で幅広く利用されていることから「スパイスの王様」とも呼ばれています。体を温めるほか、食欲増進、栄養の吸収を高めるなどの効果が期待されています。

LINEスタンププレゼント!お友達登録はこちら。配信期間2025/01/23

胡椒とは

●基本情報
胡椒は、コショウ科コショウ属のつる性植物であり、果実が香辛料として利用されています。
強い辛味とさわやかな香りが特徴的であり、数多く存在する香辛料の中でも人気が高く、様々な料理に用いられています。黒胡椒(ブラックペッパー)と白胡椒(ホワイトペッパー)の2種類は有名ですが、他にもピンクペッパーやグリーンペッパーなどもあり、いずれも同じ植物から採れますが、製法が異なります。黒胡椒(ブラックペッパー)は直径5~6mmの球形粗粒で、白胡椒は滑らかな灰白色の表面をしていて大きさは同じです。香味は黒胡椒(ブラックペッバー)の方が強く、食欲をそそります。

●胡椒の歴史
胡椒の英語名である「ペッパー」は、サンスクリット語で長胡椒を意味する「ピッパリー」という言葉に由来しています。原産地であるインドでは、紀元前500年代にはすでに胡椒の栽培が始まっていたといわれており、古代ギリシャでは医薬品として、ローマ帝国では貨幣のひとつとして使われていました。その後、東インド会社[※1]によって、胡椒はヨーロッパに持ち込まれました。中世になると、調味料として利用されるようになりましたが、原産地であるインドから長い期間と労力をかけて運ばれていたため、胡椒は大変貴重なものとして扱われていました。また、聖武天皇の遺物が納められた「正倉院御物」に胡椒が含まれていたため、少なくとも西暦749年以前には日本に胡椒が伝えられたと考えられています。

●胡椒の生産地
胡椒の原産地はインドの南西部にあるマラバル地方です。その他、マレーシア、インドネシア、ブラジル、ベトナムなどでも生産されています。

●胡椒の種類と特徴

・黒胡椒(ブラックペッパー)
成熟した胡椒の実を皮ごと乾燥させたものです。
刺激的な辛味が特徴であり、肉料理をはじめ、多くの西洋料理に使われています。

・白胡椒(ホワイトペッパー)
収穫した胡椒の実を10日ほど水につけ、皮を取り除いてから乾燥させたものです。
穏やかな辛味が特徴であり、白身魚・鶏肉・卵などの比較的淡白な素材の料理に用いられています。

・緑胡椒(グリーンペッパー)
未熟な胡椒の実を乾燥させたり、フリーズドライさせたものです。
辛味や香りに加えて色合いを楽しむことができ、主にひき肉料理などに使われます。叩き潰さず実のまま用いられることが大半だといわれています。

黒胡椒や白胡椒の実をそのまま使うのは、肉やピクルスの漬け汁、煮込み料理などであり、ほとんどの料理にはペパーミル(胡椒挽き)で挽いたものが使われます。
また、近年ではカラフルペッパー(ミックスペッパー)という黒胡椒、白胡椒、緑胡椒を混ぜたものも様々な料理に用いられています。

●胡椒に含まれる成分と性質
胡椒に含まれる辛味成分はピペリンであり、黒胡椒に多く含まれています。
ピペリンの他に、シャビシン、ピペラニンなどの物質がありますが、胡椒に含まれている大部分の辛味成分はピペリンです。
ピペリンは、抗菌作用や防腐作用、抗酸化作用[※2]などがあることで知られています。

●胡椒を保存する際の注意点
胡椒に含まれるピペリンは、紫外線の影響によってイソピペリンやイソシャビシンといった辛味の少ない物質へと変化してしまいます。
そのため、長期保存する場合には紫外線を避けるなどの注意が必要です。

[※1:東インド会社とは、1600年から1858年の間にアジアとの貿易独占権を与えられた特許会社のことです。]
[※2:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]

胡椒の効果

●冷えを改善する効果
胡椒に含まれるピペリンには、エネルギー代謝を上げる働きと、血管を広げて血流をスムーズにする働きによって、冷えを改善する効果が期待できます。
ピペリンは神経伝達物質である「アドレナリン(エピネフリン)」の放出を促し、体の中で熱やエネルギーを生み出す酵素の働きを促進すると考えられています。【1】

●栄養の吸収を促進する効果
栄養素が体の中で効率的に利用されるためには、吸収された栄養素を体のすみずみまで運ぶ血液の濃度を高めることが重要となります。
胡椒に含まれるピペリンには、血中濃度を高める作用があるため、栄養の吸収を促進する効果が期待されています。【2】

その他、胡椒に含まれるピペリンは食欲増進効果があることでも知られています。

胡椒はこんな方におすすめ

○冷え性の方
○疲労を回復したい方
○食欲を増進させたい方

胡椒の研究情報

【1】高脂血症ラットを対象に、胡椒機能性成分ピペリンを摂取させたところ、高脂血症によるLDLコレステロールの増加、HDLコレステロールの低下、アポタンパク質ならびに甲状腺ホルモン、テストステロン値の低下が緩和されたことから、ピペリンを含む胡椒は、高脂血症、動脈硬化予防効果ならびに甲状腺疾患予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16910313

【2】黒胡椒抽出物の機能性成分ピペリンとコエンザイムQ10 を摂取させたところ、コエンザイムQ10 単体摂取時より、コエンザイムQ10 の血中濃度が増加したことから、黒胡椒抽出物は栄養素の吸収を促進させるはたらきを持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10715596

【3】高脂肪食摂取ラットを対象に、黒胡椒(0.25, 0.5g/kg) またはピペリン(0.02g/kg )の量で10週間摂取させたところ、SODやグルタチオンなどの抗酸化酵素の減少が緩和されたことから、黒胡椒は生活習慣病による酸化ストレス緩和効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15231065

【4】ヒト腫瘍細胞を用いて、黒胡椒抽出物を投与したところ、炎症関連酵素COX-1, 2, NF-κBの活性が緩和されたことから、胡椒は抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20839630

【5】胡椒の葉部には、5α-レダクダーゼ阻害作用を持つ機能性成分ピペリンが含まれていることから、胡椒は毛髪関連の男性ホルモン関連疾患予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18057734

【6】胡椒の機能性成分ピペリンはMAO阻害作用を持つことから、ピペリンを含む胡椒はパーキンソン病予防効果を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23102654

もっと見る 閉じる

参考文献

・Vijayakumar RS, Nalini N..2006 “Piperine, an active principle from Piper nigrum, modulates hormonal and apo lipoprotein profiles in hyperlipidemic rats.” J Basic Clin Physiol Pharmacol. 2006;17(2):71-86.

・Badmaev V, Majeed M, Prakash L. 2000 “Piperine derived from black pepper increases the plasma levels of coenzyme Q10 following oral supplementation.” J Nutr Biochem. 2000 Feb;11(2):109-13.

・Vijayakumar RS, Surya D, Nalini N. 2004 “Antioxidant efficacy of black pepper (Piper nigrum L.) and piperine in rats with high fat diet induced oxidative stress.” Redox Rep. 2004;9(2):105-10.

・Liu Y, Yadev VR, Aggarwal BB, Nair MG. 2010 “Inhibitory effects of black pepper (Piper nigrum) extracts and compounds on human tumor cell proliferation, cyclooxygenase enzymes, lipid peroxidation and nuclear transcription factor-kappa-B.” Nat Prod Commun. 2010 Aug;5(8):1253-7.

・Hirata N, Tokunaga M, Naruto S, Iinuma M, Matsuda H.2012 “Testosterone 5alpha-reductase inhibitory active constituents of Piper nigrum leaf.” Biol Pharm Bull. 2007 Dec;30(12):2402-5.

・Al-Baghdadi OB, Prater NI, Van der Schyf CJ, Geldenhuys WJ. 2012 “Inhibition of monoamine oxidase by derivatives of piperine, an alkaloid from the pepper plant Piper nigrum, for possible use in Parkinson’s disease.” Bioorg Med Chem Lett. 2012 Dec 1;22(23):7183-8.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ