真珠

freshwater clams
pearl
しんじゅ

真珠とは、貝から採れる宝石の一種で、カルシウムをはじめとするミネラル類や、アミノ酸などが豊富に含まれています。古代エジプトの女王クレオパトラはその美を誇示するために、真珠をすり潰してぶどう酒に溶かして飲んだといわれています。抗酸化作用や細胞を活性化させる作用、保湿作用に優れており、美容に効果的な成分です。

真珠とは

●基本情報
真珠とは、アコヤ貝[※1]などの二枚貝によって生成される宝石で、生体鉱物(バイオミネラル)とも呼ばれています。貝殻成分を分泌する外套膜(がいとうまく)[※2]が、貝の体内に入り込むことで天然の真珠がつくられるため、真珠の成分は貝殻とほぼ等しいといえます。
真珠は、その95%がカルシウムで構成されており、他にはコンキオリンという17種類のアミノ酸から成るたんぱく質でつくられています。コンキオリンは真珠のカルシウムとカルシウムをつなぐ働きをしており、抗酸化作用や細胞分裂の活性化作用、保湿作用に優れており、美容成分として化粧品にも多く利用されています。
また、真珠に含まれるカルシウムは、その他のカルシウムと比較すると非常に吸収が良いことから、真珠はサプリメントにも多く利用されています。

<豆知識①>宝石としての真珠
真珠は、一般的に宝石として利用されています。冠婚葬祭などで多く利用され、最近ではワンポイントアクセサリーとしても親しまれています。真珠は宝飾品以外にも、古くから中国やエジプト、インドなどで「珍珠粉(真珠粉)」として珍重されてきました。真珠は、パワーストーンとしても知られており、6月の誕生石のひとつです。健康や富、困難の克服、災難除け、邪気からの保護、創造性、貞節、純粋、美、難産除けなどの開運暗示の意味を持ちます。真珠は、プレッシャーに弱い方や、積極的な性格になりたい方、受験勉強のお守りがほしい方、美しくなりたい方、ダイエットをやり抜きたい方、良妻賢母になりたい方、粘り強くなりたい方などにお守りとされる宝石です。「真珠は苦しみの中で生み出される」といわれており、貝の内部に砂利などの異物が入ると、それを生体が防御するために粘液などを出して固めることでつくられることから、このような真珠の生成過程が「痛みからの保護」や「困難の克服」などの真珠の宝石の意味につながっています。真珠は水に弱く汗がついたまま放置することで、特有の光沢が失われてしまうため、真珠のアクセサリー使用後は柔らかい布で拭くなどして手入れすることでその光沢を保つことができます。

●真珠の歴史
真珠は、紀元前3200年頃のエジプトですでに知られていたといわれています。真珠は他の宝石とは異なり、磨かなくても輝くため、人々には天界の雫だと信じられていました。真珠が薬として珍重されるようになったのは、後の時代といわれており、古代エジプトの女王・クレオパトラは美と富を誇示するため、すり潰した真珠をぶどう酒や酢に溶かして飲んでいたと、プリニウスの「博物誌」で伝えられています。また中国、唐朝時代の楊貴妃や清朝時代の西太后も、玉のように美しい肌を保つ秘訣として、真珠粉を酢などに溶かし、飲み続けていたといわれています。
中国では紀元前2300年頃、ペルシャでは紀元前7世紀頃、ローマでは紀元前3世紀頃から真珠が宝飾品や薬として用いられていたといわれています。
日本においては、日本書紀や古事記、万葉集に真珠について書かれており、魏志倭人伝にも邪馬台国の台与が白珠(真珠)を送ったことが記されています。
真珠は、養殖されるようになるまでは、偶発的に天然の貝の中から発見されなければ入手できなかったため、希少価値が非常に高く、一部の王侯貴族しか手にすることができませんでした。
しかし、明治時代に入り、日本人の手によってアコヤ貝による真珠の養殖技術が確立されたことで、一般の人々も手にすることができるほど、ポピュラーなものとなりました。
現在は、日本の真珠養殖の技術が世界中に広まり、南洋ではマベ貝[※3]や白蝶貝[※4]・黒蝶貝[※5]、中国では湖水真珠も量産されていますが、本真珠と呼ばれる日本産のアコヤ貝の真珠は、もっともフォーマルで格調の高い品種とされています。

●真珠の成分と働き
真珠は主にカルシウムたんぱく質からつくられています。
真珠の95%はカルシウムでできており、そのカルシウムをつなぐ役目をしているのが、たんぱく質であるコンキオリンです。
真珠には、他のカルシウムと比較すると非常に吸収の良いイオン化カルシウムが含まれています。また、真珠粉に含まれるリンとの比率が理想的な1:1であるため、カルシウムの吸収をさらに高める働きがあります。たんぱく質であるコンキオリンは、17種類のアミノ酸からできており、血行促進や保湿、美白効果などが期待できます。

[※1:アコヤ貝とは、ウグイスガイ目ウグイスガイ科に分類される二枚貝の一種で、別名を真珠貝ともいいます。]

[※2:外套膜(がいとうまく)とは、軟体動物の体表が伸びて、体の全部または一部をおおう膜のことです。外面に石灰質を分泌して殻をつくります。]

[※3:マベ貝とは、ウグイスガイ目ウグイスガイ科に分類される二枚貝の一種です。ペンギンが羽を広げたような形に見えることから、 その学名は Pteria Penguin (プテリア ペンギン/ペンギン鳥の翼)と名付けられています。]

[※4:白蝶貝とは、ウグイスガイ目ウグイスガイ科に分類される二枚貝の一種で、殻はボタンや工芸用品に利用されています。殻表は黄褐色、内面は真珠色をしているのが特徴です。]

[※5:黒蝶貝とは、ウグイスガイ目ウグイスガイ科に分類される二枚貝の一種で、殻の表面は黒緑色で白斑があります。]

真珠の効果

●美肌効果
真珠に含まれるたんぱく質コンキオリンは、抗酸化作用を持つといわれています。
抗酸化作用とは、紫外線やストレスなどにより、体内に過剰に発生した活性酸素[※7]を除去する力のことをいいます。この活性酸素が増えることで、老化が促進され、疾病などの原因にもなってしまいます。肌では活性酸素が増えることで、真皮[※8]中のコラーゲンが破壊され、しわの原因となります。
また、コンキオリンは細胞の生まれ変わりを助ける作用も持ちます。肌の細胞は、20歳くらいだと28日前後で生まれ変わるといわれています。この生まれ変わりを「ターンオーバー」といい、このサイクルは年齢とともに衰え、次第に肌の生まれ変わりは遅くなります。真珠に含まれるコンキオリンは、細胞の生まれ変わりに働きかけ、細胞を活性化させる働きがあります。コンキオリンは17種類のアミノ酸から生成されており、特にグリシンを多く含み、次いでアラニンを多く含んでいます。この構成は、肌の中心構造であるコラーゲンのアミノ酸組成に類似しています。
また、皮膚の角質層に存在するNMF(天然保湿因子)はアミノ酸を豊富に含み、皮膚の潤いを保っています。真珠に含まれるコンキオリンは、NMFの働きを助け、保湿作用を持ちます。
真珠は活性酸素を除去し、細胞を活性化させ、保湿作用を持つことから、美肌に対して非常に効果的であるといえます。

●美白効果
真珠は美白に対しても効果的だといわれています。
肌はターンオーバーを行うことで、シミやそばかすなどを垢として落とし、きれいな肌を保つことができます。しかし、年齢とともにターンオーバーのサイクルが遅くなることで、肌の表面の老廃物がうまくはがれ落ちることができなくなり、すでにできてしまったシミやそばかすの跡がいつまでも残ってしまうのです。真珠に含まれるコンキオリンは、肌の生まれ変わりを助ける作用を持ち、肌のターンオーバーを活性化させることから、美白に対して効果的が期待できます。

●骨粗しょう症を予防する効果
真珠には、豊富なカルシウムが含まれているため、骨粗しょう症に効果的であるといえます。
骨粗しょう症とは、骨の中のカルシウムが血中に溶けだすことで、骨がスカスカになる病気のことです。骨をつくり出す骨芽細胞と、骨を破壊する破骨細胞のバランスは、女性ホルモンによって保たれているため、骨粗しょう症は特に閉経を迎えた女性に多い病気です。骨粗しょう症になり、大腿骨などを骨折してしまうと、それがきっかけで寝たきりの生活になる可能性もあります。真珠には、吸収の良いカルシウムが豊富に含まれるため、摂取することで骨粗しょう症を予防する効果があるといえます。【1】

[※7:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

[※8:真皮とは、表皮の下にあり、肌の弾力を保っている部分です。コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などが存在しています。]

真珠はこんな方におすすめ

○美肌を目指したい方
○シミ、そばかすが気になる方
○乳製品を摂取する機会の少ない方
○骨粗しょう症を予防したい方

真珠の研究情報

【1】閉経後の女性50名を対象に、真珠粉末 (カルシウム260 mg 相当) 及びビタミンD3 666 IUを6カ月間摂取させたところ、骨密度が増加したことから、真珠が骨粗しょう症予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19950759/

参考文献

・Vujasinović-Stupar N, Novković S, Jezdić I. 2009 “Supplementation with bio-calcium from shells Pinctada maxima in postmenopausal women with decreased mineral bone density.” Srp Arh Celok Lek. 2009 Sep-Oct;137(9-10): 518-23.

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