peach
Prunus persica

桃はバラ科サクラ属の植物です。果実だけでなく蕾や種子、葉にも健康成分が豊富に含まれています。果実には食物繊維、カリウム、クエン酸などが豊富に含まれているため、腸内環境を整える効果や疲労回復効果があります。また近年の研究により、糖尿病を予防する効果も期待できます。

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桃とは

●基本情報
桃はバラ科サクラ属の落葉性の植物です。中国北部が原産で、古代中国では、桃には長寿の効果があると考え、仙薬にしていました。そのため「長生の実」「仙果」とも呼ばれ、邪気を払う果物として使われていました。日本では、山梨県や福島県、長野県での生産が多く、品種は約100種類にのぼります。

●桃の歴史
桃は中国が原産地です。日本に伝わったのは弥生時代ごろといわれており、日本最古の歴史書である「古事記」[※1]や「日本書紀」にも記載されています。平安時代になると、水菓子と呼ばれ珍重されていました。現在栽培されている種類は明治の初期に中国から伝わったものだといわれています。それ以降、品種改良が盛んに行われ今では約100種類もの品種が生産されています。

●桃の種類
現在、桃には約100種類もの品種があります。大きく分けると、果肉が白色の白肉桃と黄色の黄肉桃の2種類に分類することができます。どちらの種類にも抗酸化作用[※3]を持つ成分が含まれ、ビタミンEと協力して活性酸素[※4]をブロックする効果があります。
白肉桃は、果汁が多く柔らかいため多くが生で食べられます。白肉桃には、フロボノイドが豊富に含まれています。代表的な品種は早生の日川白鳳、ちよひめ、中生の白鳳、あかつき、清水白桃、晩生の川中島白桃、白桃などがあります。
黄肉桃は、弾力性がありシロップ漬けの缶詰めやジャムなどの加工用によく使われます。β-カロテンが豊富に含まれています。

●桃を選ぶ際のポイント
桃は縦横のバランスがよく、全体的に丸みのある形がよいといわれています。果皮が鮮やかな赤色やピンクのものが甘く、果皮の表面に産毛が残っているものがより新鮮でおいしくいただけます。
甘味を保つために食べる2~3時間前までは室温で保存し、保存する際は日光や風から守るため紙などに包むとよいでしょう。そうすることで乾燥を防ぎ、新鮮な状態でいただけます。また、水で洗うと鮮度が落ちるため食べる直前に洗うべきです。

●桃に含まれる成分と性質
桃は果実の部分だけでなく、蕾や種子、葉も漢方薬として利用され、以下のような働きがあります。

・果実
桃の果実は主に糖質で占められています。また食物繊維のペクチンが多いため、腸をきれいにしてくれる働きがあります。また、カリウムやクエン酸、カテキン、タンニン、イノシトールなどの成分を含まれています。

・蕾(つぼみ)
桃の蕾は桃花とも呼ばれ、利尿作用や便秘の解消の働きがあります。これは、蕾に含まれるケンフェロールという配糖体[※4]が細胞の中のミトコンドリア[※5]を活性する作用があるためです。さらに、蕾にはクマリンやナリンゲニンも含まれています。

・種子
種子は桃仁とも呼ばれ、血流のめぐりを助け、鎮痛作用や消炎作用、解毒作用などがあります。種子の中にある仁から抽出した油は桃カーネルオイルと呼ばれ、美容用として使用されます。桃カーネルオイルの主成分はオレイン酸で、皮膚への刺激がほとんどありません。そのため、使用する人の肌質を選ばず、敏感肌の方でも使用することができます。また、べたつかないためフェイスマッサージ用としてよく使用されます。

・葉
葉は桃葉とも呼ばれ、解熱、殺虫などの働きがあります。そのため、葉の煎じ汁はあせもや湿疹によいとされており、桃の葉風呂や炎症を取る際に、桃の葉を煎じた汁を患部に使うことがあります。

[※1:古事記(こじき)とは現存する日本最古の歴史書のことです。上・中・下の3巻から成ります。]
[※2:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素です。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※4:配糖体とは、糖と様々な種類の成分が結合した有機化合物のことです。生物界に広く分布し、植物色素であるアントシアニンやフラボン類などがあげられます。]
[※5:ミトコンドリアとは、細胞内の構造のひとつで、生命活動に必要なエネルギーを作り出す役目を担っています。]

桃の効果

●腸内環境を整える効果
桃には水溶性と不溶性の両方の食物繊維を豊富に含んでいます。水溶性食物繊維[※6]は腸内の便を柔らかくすることによって便通を促す働きがあります。不溶性食物繊維[※7]は水分を吸収して便の量を増やし、腸を刺激します。腸が刺激されるとぜん動運動[※8]が活発になり、便通を促進してくれます。これらの働きがあるため、便秘がちの方には効果的な食品です。
また、腸の環境がよくなるとコレステロールや余分な老廃物も排出されるため動脈硬化や糖尿病の予防効果も期待できます。

●疲労回復効果
桃に含まれるクエン酸には疲労回復効果があります。クエン酸は有機酸[※9]の一種で、疲労物質である乳酸[※10]の代謝分解を促し、乳酸が筋肉へ蓄積するのを防ぎます。

●高血圧を予防する効果
桃には、カテキンやカリウムが豊富に含まれています。カテキンは脂質の酸化を防ぎ、血圧や血糖値[※11]が上がるのを抑制します。また、カリウムには血圧を下げる働きがあります。カリウムは、必要量摂ることによりナトリウムの排出を促し、高血圧になるリスクを軽減する働きがあります。これらのカテキンやカリウムの働きにより、高血圧を予防する効果があると考えられます。

●コレステロール値を下げる効果
桃に含まれるイノシトールにはコレステロールを下げる効果があります。イノシトールは水溶性のビタミンで、脂肪の代謝[※12]を促し肝臓に脂肪が蓄積するのを防ぐ働きがあります。そのため、肝機能を強くする効果も期待できます。

●糖尿病を予防する効果
桃には糖尿病[※13]を予防する効果もあります。近年の研究により桃にはインスリン[※14]の働きを高める効果があることが分かっています。

[※6:水溶性食物繊維とは、腸内で水分を吸収しながら、同時に有害物質も吸着して排泄する働きのある食物繊維のことです。水に溶け、ヌルヌルしているという特徴があります。]
[※7:不溶性食物繊維とは、便のかさを増やして、腸を内側から刺激し、腸の動きを活発させる働きのある食物繊維のことです。飲み込んだ時の形をほとんど変えず、消化・吸収されずに腸まで移動します。]
[※8:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]
[※9:有機酸とは、酸の性質を持つ有機化合物の総称です。]
[※10:乳酸とは、筋肉疲労の原因物質のことです。]
[※11:血糖値とは、血液中にブドウ糖がどれくらいあるのかを示すものです。ブドウ糖が血液中にあふれてしまうと血糖値が高くなります。]
[※12:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることです。]
[※13:糖尿病は、インスリンの不足などによって糖代謝がうまくいかなくなる病気です。もともとインスリンが不足している場合と、年齢や生活習慣によってインスリンが不足していく場合があります。]
[※14:インスリンとは、血糖値をコントロールする作用を持ったホルモンです。]

桃はこんな方におすすめ

○便秘でお悩みの方
○腸内環境を整えたい方
○疲労を回復したい方
○血圧が高い方
○コレステロール値が気になる方
○糖尿病を予防したい方

桃の研究情報

【1】桃抽出物を投与したマウスでは肝機能障害の指標となる血中トランスアミナーゼ値や過酸化脂質の上昇を抑制しました。このことからシスプラチンによる化学療法を受けているがん患者の肝臓保護に対して、桃が有効の可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17886225

【2】果物・野菜の摂取と頭頸部扁平上皮がんとの関連について約49万人を対象に調べた大規模な米国の疫学調査では、桃を含むリンゴやナシ等のバラ科果物の摂取量が最も多いグループではリスクが0.6まで低下していました 。桃は抗がん作用を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18092323

【3】桃を含むリンゴやオレンジなど9種類の果実ジュースについて、これら果実を摂取した後の血中抗酸化能をヒトで検討した結果、梨以外の果実では摂取後90分まで血中抗酸化能が維持されました。桃は高い抗酸化作用を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15857208

参考文献

・奥田弘道 健康・栄養食品事典 機能性食品・特定保健用食品2004-2005改訂新版 東洋医学舎

・川鍋亮 フルーツ薬効学 中公新書

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・山田豊文 植物油の事典 毎日コミュニケーションズ

・蔵敏則 食材図典 小学館

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社

・Lee CK, Park KK, Hwang JK, Lee SK, Chung WY. (2008) “The extract of Prunus persica flesh (PPFE) attenuates chemotherapy-induced hepatotoxicity in mice.” Phytother Res. 2008 Feb;22(2):223-7.

・Freedman ND, Park Y, Subar AF, Hollenbeck AR, Leitzmann MF, Schatzkin A, Abnet CC. (2008) “Fruit and vegetable intake and head and neck cancer risk in a large United States prospective cohort study.” Int J Cancer. 2008 May 15;122(10):2330-6.

・Ko SH, Choi SW, Ye SK, Cho BL, Kim HS, Chung MH. (2005) “Comparison of the antioxidant activities of nine different fruits in human plasma.” J Med Food. 2005 Spring;8(1):41-6.

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