パプリカとは
パプリカは、ナス科トウガラシ属の植物で、赤や黄色、橙色など鮮やかな色合いと甘味が特徴です。
国や地域によって様々な呼び名がありますが、辛味の少ない甘トウガラシの一種です。
未成熟のものであるピーマンに比べて、完熟したパプリカは肉厚で、鮮やかな色とみずみずしい甘さを持ちます。
また、パプリカは辛味の強さによって甘口、甘辛、辛口などに分類されているほか、トマトのような丸形、長さ15cm以上の長大形など品種によって様々な形状が見られます。
パプリカは鮮やかな色と甘味を持つことから様々な料理に用いられるほか、実を乾燥させて粉末状にしたものがスパイスとして利用されています。
●パプリカの歴史
パプリカは、スペインの航海者達によってヨーロッパへ持ち込まれ、その後ハンガリーで品種改良されたという歴史があります。
パプリカという名前は、マジャール語[※1]でペッパーを意味する言葉であり、スペイン語でピメントン、イタリア語ではピメントと呼ばれています。
パプリカが注目されるようになったきっかけは、1937年にノーベル賞を受賞したハンガリーのスザント・ゲオルギー博士の研究結果です。ゲオルギー博士は、パプリカの果肉に柑橘類よりも多くのビタミンCが含まれていることを発見しました。この研究結果を機に、パプリカが健康に良い食材であることが知られるようになり、急速に消費量が増加したといわれています。
●パプリカの生産地
中南米を原産とするパプリカは、現在では主にオランダ産のものが輸入されているほか、韓国などからも輸入されています。
●パプリカに含まれる成分と性質
パプリカに含まれている成分の種類は、ピーマンとほぼ同じではありますが、含有量では未成熟のピーマンよりも多いといわれています。
パプリカの鮮やかな色は、カロテノイドの一種であるカプサンチンによるものです。カプサンチンには活性酸素[※2]から体を守る強い抗酸化作用[※3]があります。
また、パプリカにはビタミンCが豊富に含まれています。その量はピーマンと比べると約2倍であり、ビタミンCが豊富な柑橘類よりも多く含まれているといわれています。
さらに、果肉には若返りのビタミンと呼ばれるビタミンEも豊富に含まれているほか、ビタミンCを熱や酸化から守る働きを持つビタミンPが含まれています。
[※1:マジャール語とは、ハンガリー人の主流をなすモンゴル系一族の言語です。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]
[※3:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
パプリカの効果
●生活習慣病の予防・改善効果
カロテノイドは、植物が紫外線によって発生する活性酸素のダメージから自らの身を守るためにつくり出している抗酸化物質です。人間の体内においても、同様の抗酸化作用を発揮することによって、主に細胞の保護などの働きを行っています。
パプリカに含まれるカロテノイドの一種であるカプサンチンは、抗酸化作用によって余分なコレステロールの増加を抑え、生活習慣病の予防効果が期待できます。【1】
●美白効果
パプリカに含まれているビタミンCは、シミを予防する働きがあるため美白効果が期待されています。
人間の皮膚は、紫外線からのダメージを受けることによって、これは、アミノ酸のひとつであるチロシンがメラニンという黒い色素に変化します。チロシナーゼという酵素の働きによるものです。このメラニン色素が沈着することによってシミやそばかすが発生します。
ビタミンCは、シミやそばかすの発生原因となるチロシナーゼの働きを阻害することでメラニン色素の沈着を防ぎ、透明感のある肌を維持する効果が期待できます。【3】
●免疫力を高める効果
パプリカに含まれるビタミンCには、免疫力を高めて風邪をひきにくくする効果があります。
ビタミンCは、体内に侵入した病原菌を攻撃する白血球の働きを高め、さらにビタミンC自体も病原菌を攻撃して免疫力を高めることができます。
また、ビタミンCはコラーゲンの生成にも関わる成分であり、細胞がしっかりと固められることによって、風邪などのウイルスを体内に侵入させにくくする働きがあります。【4】
●老化を防ぐ効果
パプリカにはビタミンEが豊富に含まれています。ビタミンEは、強力な抗酸化作用を持ち、老化の原因となる活性酸素によるダメージを防ぐことから「若返りのビタミン」と呼ばれています。
このビタミンEの働きにより、老化を遅らせる効果が期待されています。
パプリカはこんな方におすすめ
○生活習慣病を予防したい方
○シミ、そばかすが気になる方
○風邪をひきやすい方
○いつまでも若々しくいたい方
パプリカの研究情報
【1】ラットにパプリカ粉末を2週間飲用させた結果、飲用していない群と比較して有意に血中のHDLコレステロールを上昇させました。パプリカは生活習慣病予防効果および高脂血症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19646292
【2】パプリカの種子水抽出物から抗菌作用のある成分を精製した結果、酵母菌のサッカロマイセス・セレビシエの増殖を強く抑制しました。パプリカは抗菌作用を有すると期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002790574
【3】ヒト黒色腫細胞にビタミンCを投与すると、NO産生および誘導性NO合成酵素(eNOSおよびiNOS)が阻害され、メラニン形成が抑制されました。パプリカはビタミンCを豊富に含むことから、美白効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21656367
【4】アレルギー性喘息マウスにビタミンCを1日当たり130mg/kg の量で5週間摂取させたところ、好酸球の浸潤が抑制されました。また免疫物質インターフェロン、IL-5が増加しました。パプリカはビタミンCを豊富に含むことから、抗アレルギー作用と免疫力向上作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19831405
参考文献
・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社
・食材図典 小学館
・高柳 勉、矢嶋 瑞夫、奥田 徹、松土 俊秀、横塚 弘毅 (1995) “パプリカ種子由来の抗菌性物質の性質 : 食品” 日本農藝化學會誌 69(臨時増刊), 325, 1995-07-05
・Aizawa K, Inakuma T. (2009) “Dietary capsanthin, the main carotenoid in paprika (Capsicum annuum), alters plasma high-density lipoprotein-cholesterol levels and hepatic gene expression in rats.” Br J Nutr. 2009 Dec;102(12):1760-6.
・Chang HH, Chen CS, Lin JY. (2009) “High dose vitamin C supplementation increases the Th1/Th2 cytokine secretion ratio, but decreases eosinophilic infiltration in bronchoalveolar lavage fluid of ovalbumin-sensitized and challenged mice.” J Agric Food Chem. 2009 Nov 11;57(21):10471-6.