パパイヤとは?
●基本情報
パパイヤは、パパイヤ科パパイヤ属に属する植物です。樹高は2~10mで、まっすぐに伸びた茎の先には、掌状[※1]に切れ込んだヤツデの葉に似た大きな葉をつかせます。
果実は、品種により大きさが様々で、熟すにつれて緑色から黄色に変化します。果実の中央部分には黒色の種子が100~1000個程入っています。味や食感は柔らかい柿に似ており、一般的に果実が大きいほど甘みは薄くなります。未熟なうちに収穫された青パパイヤは、酵素が豊富で野菜として利用されています。
●パパイヤの木
パパイヤの木は高さ1.5m程になると実をつけ始めます。他の植物であれば、実をつけ始めると果実に栄養を送るため、木の成長は止まります。しかし、パパイヤの木は実をつけても成長は止まらず、どんどん大きく成長し続けます。パパイヤの木の幹は、繊維質で硬いスポンジのような構造をしているため、あまり頑丈ではありません。
●パパイヤの名前の由来
パパイヤという名前は、カリブ海沿岸での呼び名である「アババイ」がなまったものであるといわれています。
スペイン人が初めてパパイヤをみた時、果実が幹の上部から垂れ下がる様子が赤ん坊にお乳を飲ませる乳房のように見えたため「これは母(ママ)の乳房のようだ」といったことから、スペインやポルトガルでは「ママオ」と呼ばれることもあります。
日本では、パパイヤの茎や葉、果実などあらゆるところに乳液が多く含まれていることから「乳瓜(ちちうり)」と呼ばれることもあります。
他にも、木になる瓜という意味から「木瓜(もっか)」という別名もあります。
●パパイヤの品種
ハワイなどで多く生産され、日本に輸入されるパパイヤの多くがソロと呼ばれる品種のパパイヤです。
果肉は黄色く、ねっとりとした食感が特徴です。一年中安定して輸入されているため、いつでも店頭で見かけることができます。また、日本ではあまり出回っていませんが、果肉が赤色のサンライズなどの品種もあります。
●パパイヤの原産地・生産地
パパイヤの原産地は、熱帯アメリカです。
一般に日本の市場で見かけるほとんどのパパイヤはフィリピンから輸入さています。
日本国内では、沖縄や鹿児島などの気候が温暖な地域で生産され5月~8月に旬を迎えますが、パパイヤの木は台風に弱く生産量が不安定なため国内産のパパイヤはあまり出回っていません。
●パパイヤの歴史
メキシコのユカタン半島にあるマヤの人々がつくったとされるピラミッドの周辺には、パパイヤが群生しており、マヤの人々は食用や薬用にパパイヤを利用していたと考えられています。
16世紀の大航海時代、パパイヤはアメリカ大陸を発見した探検家であるコロンブスによって発見されました。隊の一員が胃痙攣で倒れた際、原住民が差し出したパパイヤを食べるとすぐに治ったことに驚いたコロンブスは、パパイヤを魔法の木の実として持ち帰りました。スペイン領であるマジョルカ島に植えられたパパイヤは、ヨーロッパ各地に広まりました。特に未熟な果実である青パパイヤは、保存性が良く、船乗りたちの大切な栄養源として重宝されていました。その後、キリスト教の宣教師等によってアフリカやアジアに伝えられました。
日本には明治時代に伝えられ、沖縄や小笠原諸島、鹿児島などで栽培され始めました。外国から輸入されるようになってからは市場でもよく見かけるようになりました。
●パパイヤの用途
パパイヤは、デザートとして生で食べたり、ドライフルーツなどに加工され食べられます。牛乳と果肉をミキサーにかけて混ぜたパパイヤ牛乳は、台湾の名物として販売されています。
沖縄やフィリピン、タイなどでは、未完熟な青パパイヤが野菜として料理に利用されています。青パパイヤの千切りの袋詰めがスーパーマーケットで売られたり、総菜や弁当の具としても使用されています。
青パパイヤを傷つけると出てくる白い液体に多く含まれるたんぱく質分解酵素には、肉を柔らかくする効果があります。そのため、パパイヤの果汁に肉をつけるなどして肉料理に使用されます。
●パパイヤに含まれる成分と性質
パパイヤは、ビタミンCを豊富に含んでいます。果肉が熟したパパイヤはカロテンやリコピンを多く含んでいます。熟すにつれてカロテンやリコピンの含有量は増加し、特にカロテンは未熟なパパイヤの4倍以上にもなります。これらの成分は強い抗酸化力[※2]を有しています。
他にも、パパイヤにはビタミンB群、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸、カリウムやリンなどのミネラル類、食物繊維であるペクチンなどが含まれています。
また、未熟果である青パパイヤには、たんぱく質分解酵素[※3]であるパパインをはじめ、脂質や炭水化物を分解する酵素が豊富に含まれています。
[※1:掌状とは、指を開いた手のひらのような形のことです。]
[※2:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※3:たんぱく質分解酵素とは、たんぱく質を分解して細かく複数個のアミノ酸などにして、体内に吸収されやすくする酵素のことです。]
パパイヤの効果
パパイヤには、ビタミンCやカロテン、リコピン、ビタミンB群、有機酸、ミネラル類、食物繊維、酵素が豊富に含まれており、これらの成分は以下のような健康に対する効果が期待できます。
●胃の健康を保つ効果
未熟果である青パパイヤには、パパインをはじめとする三大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)の分解を促進して消化させやすくする酵素が豊富に含まれています。そのため、食べ物を消化する胃の負担が減り、胃もたれの予防・改善に効果的です。
●生活習慣病の予防・改善効果
血液中の悪玉(LDL)コレステロールが増加すると、血管の内壁が脂質で分厚くなり、こぶのようにせり出して血管を狭めるため、高血圧や動脈硬化などが引き起こされます。パパインには、血中の悪玉(LDL)コレステロールを減少させる働きがあります。さらに、パパイヤには、カリウムが豊富に含まれているため、ナトリウムの排泄を促し、血圧の上昇を抑える働きがあります。そのため、これらの成分がバランス良く含まれているパパイヤは高血圧を防ぎ、動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果的であると考えられています。【3】
●ダイエット効果
青パパイヤに含まれるパパインをはじめとする酵素には、消化を促進させる働きがあります。体内では消化酵素と代謝酵素は一定量しかつくられません。食べ過ぎなどにより体内の消化酵素が大量に使われると、体内でつくられる酵素の多くが消化酵素となり、糖質や脂肪をエネルギーに変換する代謝酵素が不足するため、体脂肪が溜まりやすくなります。青パパイヤには、消化酵素が豊富に含まれているため、体内の消化酵素を補い代謝酵素の不足を防ぐため、脂肪燃焼に効果があります。さらに、ビタミンB群やペクチンなどが含まれるパパイヤには太りにくい体づくりをサポートする働きもあるため、肥満を予防する効果が期待できます。
●便秘を解消する効果
ペクチンなどが豊富にふくまれているパパイヤには、腸内でビフィズス菌などの善玉菌[※4]を増やし、腸内環境を良くする働きがあります。さらに、ペクチンが持つ強い粘性で腸内の有害物質を吸着して体外に排泄する作用もあるため、便秘の解消に効果があります。
●美肌効果
ビタミンCやリコピン、カロテンなどが豊富に含まれているパパイヤには、シミやそばかすを予防し、ハリのある若々しい肌を保つ効果があります。
日光に当たり続けると、紫外線が原因となってつくられるチロシンと呼ばれるメラニン色素が生成されます。このメラニン色素が皮膚に沈着することでシミやそばかすが発生します。
ビタミンCやリコピンには、チロシンをつくりだす酵素であるチロシナーゼの働きを抑制しメラニン色素の沈着を防ぐ働きがあるため、シミ・そばかすの予防に効果的です。さらに、パパイヤに含まれている酵素であるパパインには毛穴の奥にある汚れや、不要な角質をおだやかに取り除く働きがあり、シミやニキビ、肌荒れの予防・改善に効果が期待できます。
●感染症の予防・改善効果
パパイヤにはビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCは白血球の働きを高め、体外から侵入してきた細菌やウイルスなどの撃退に関与しています。また、ビタミンCそのものにも細菌やウイルスに対抗する力があるため、ビタミンCの積極的な摂取は免疫力を高め、風邪などの感染症を予防し、病気の回復を早める効果があります。
さらに、リコピンの働きによって、呼吸器系細菌の増殖が抑制されるため、のどの痛みや咳、風邪などの感染症の予防・改善にも効果が期待できます。【1】
●傷の治りを早める効果
青パパイヤに豊富に含まれているパパインには、殺菌作用や傷ついた箇所の修復を促進させる働きがあります。そのため、原産地では、傷や火傷をパパイヤの葉で包んだり、うすく切ったパパイヤの果肉を傷口に当てる民間療法があります。欧米や日本の医学界においてもパパインの殺菌効果が注目され、傷や火傷の治療薬としても期待されています。【4】
●疲労回復効果
パパイヤには、クエン酸などの有機酸が豊富に含まれます。
クエン酸は、体内でエネルギーに変換されるため、疲労を軽減します。さらに、パパイヤに含まれるビタミンB群には、糖質などの代謝に関わりエネルギーを効率よく生産し、神経や筋肉へエネルギーを運ぶ働きがあるため、疲労回復に効果があります。
[※4:善玉菌とは、ヒトの腸内に住む細菌の一種です。健康に役立つ働きを行っており、もともと大腸に住んでいる腸内ビフィズス菌や乳酸菌、腸球菌などが善玉菌といわれます。]
パパイヤはこんな方におすすめ
○消化を促進したい方
○胃の健康を整えたい方
○肥満を防ぎたい方
○生活習慣病を予防したい方
○シミ、そばかすが気になる方
○美肌を目指したい方
○便秘でお悩みの方
○傷を早く治したい方
○疲労を回復したい方
パパイヤの研究情報
【1】パパイヤの免疫細胞に対する作用を調べたところ、パパイヤはT細胞による免疫系を調整し、炎症物質であるIL-1の活性を抑制しました。このことから、パパイヤは免疫力を調整する働きがあると示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21520494
【2】パパイヤ抽出物を各種細菌へ添加した結果、各種細菌の増殖を抑制しました。パパイヤの抗菌作用は、セレウス菌 >大腸菌 >フェカリス菌 >ブドウ球菌 > ブルガリス菌>フレキシネル赤痢菌の順に強くなりました。このことから、パパイヤ抽出物は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌を抑制する働きがあることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15040064
【3】パパイヤに含まれるパパイン酵素で加水分解した肉と通常の肉を摂取した場合で比較すると、パパイン酵素処理を行った肉の摂取ではLDLコレステロール、およびVLDLコレステロール値は低いことがわかりました。このことからパパインは、ステロイドの吸収にかかわることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8780972
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10934598
参考文献
・野間佐和子 旬の食材 四季の果物 講談社
・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館
・Abdullah M, Chai PS, Loh CY, Chong MY, Quay HW, Vidyadaran S, Seman Z, Kandiah M, Seow HF. (2011) “Carica papaya increases regulatory T cells and reduces IFN-γ+ CD4+ T cells in healthy human subjects.” Mol Nutr Food Res. 2011 May;55(5):803-6. doi: 10.1002/mnfr.201100087. Epub 2011 Mar 24.
・Dawkins G, Hewitt H, Wint Y, Obiefuna PC, Wint B. (2003) “Antibacterial effects of Carica papaya fruit on common wound organisms.” West Indian Med J. 2003 Dec;52(4):290-2.
・Morimatsu F, Ito M, Budijanto S, Watanabe I, Furukawa Y, Kimura S. (1996) “Plasma cholesterol-suppressing effect of papain-hydrolyzed pork meat in rats fed hypercholesterolemic diet.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 1996 Apr;42(2):145-53.
・Rakhimov MR. (2000) “[Pharmacological study of papain from the papaya plant cultivated in Uzbekistan].” Eksp Klin Farmakol. 2000 May-Jun;63(3):55-7.