オルニチン

ornithine

オルニチンはもともと体内に存在する非必須アミノ酸の一種で肝臓の働きをサポートし、疲労を回復する効果があります。「二日酔いにはしじみ汁が良い」といわれているのは、しじみに多く含まれるオルニチンが肝臓の健康に働きかけるためです。

オルニチンとは

●基本情報
オルニチンはもともと体内に存在する非必須アミノ酸[※1]の一種で肝臓の働きをサポートし、疲労を回復する効果があります。オルニチンはアミノ酸の中でも肝臓や筋肉にとどまらず、血液中を循環する「遊離アミノ酸」に属します。
オルニチンは血液中に溶け込み、体内を循環し、肝臓で有害なアンモニアの解毒を行い、肝臓の働きをサポートします。肝臓は、約3000億個の細胞からなり、成人で1~1.5kgと体重の約50分の1を占める人体で最も大きな臓器です。
「二日酔いにはしじみ汁が良い」といわれているのは、しじみに多く含まれるオルニチンが肝臓の健康に働きかけるためです。

●オルニチンの歴史
日本ではオルニチンの健康効果よりも先にしじみの健康効果が知られ、江戸時代にはしじみ売りが籠をもち、しじみを売っていたといわれています。
現在ではシジミの健康成分であるオルニチンの健康効果について研究が進められており、サプリメントなどの健康食品に多く配合されています。

●オルニチンを含む食品
オルニチンはシジミに多く含まれます。他にも、チーズ、ひらめ、パンなどにも含まれています。
食材から摂取すると非常に多くの量を摂取する必要があるため、サプリメントなどの健康食品を活用すると効率よく摂取できます。

●オルニチンを摂取する際の注意点
オルニチンはしじみなどの身近な食材に含まれ、摂取目安量は1日500mg~1000mgと考えられています。臨床試験では、1日当たり1g~2gで投与される場合もあります。

<豆知識>効率的なオルニチンの摂取方法
オルニチンはしじみに多く含まれます。しじみは、一度冷凍してから調理すると生のしじみに比べて、オルニチンの量が7~8倍に増加するということがわかっています。
また、オルニチンは肝臓の働きをサポートしますが、生活の中で肝臓を酷使している場合は生活習慣を見直す必要があります。飲酒の多い方は肝臓に負担がかかるため、肝炎や肝硬変などの肝臓の病気にかかりやすくなります。
健やかな肝臓を保つためにも、過度の飲酒は控え、肝臓にとって必要な栄養素であるオルニチンやウコン、セサミンなどを摂取し、バランスの良い食生活を心がける必要があります。

[※1:非必須アミノ酸とは、体内で合成が可能なアミノ酸のことです。グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、システイン、チロシン、プロリンの11種類が存在します。]

オルニチンの効果

●疲労回復効果
オルニチンは、体にとって有害なアンモニアを肝臓で分解する「オルニチンサイクル」に働きかけ、疲労回復効果が期待できます。
アンモニアは、人間がエネルギーを生み出す時に出る老廃物のひとつで、アンモニアが体内に過剰に発生すると、全身の疲労を感じやすくなります。
有害なアンモニアは、肝臓で無害化されます。この過程は「オルニチンサイクル」と呼ばれ、アンモニアを無害な毒素に変換するものです。
さらに、オルニチンを摂取することで、ストレスが軽減し、睡眠や気分などの自覚症状が改善するということがわかっています。日頃から疲労を感じている人が、オルニチンを摂取すると、睡眠の改善効果や、気分を鎮静化する効果があることが示唆されており、その結果、オルニチンを摂取しているとストレスの状態が低いということが判明しています。【1】

●肝機能を高める効果
オルニチンは肝機能を高める効果があります。
肝機能要注意者9名と健常者1名を対象に、毎夕食前にオルニチンが多く含まれるしじみエキスの粉末220mgのカプセルを6粒摂取させ、13週間後には毎朝夕食事前に6粒ずつ1日計12粒を摂取しました。
試験が始まったころから2週間ごとに血液検査を実施し、肝機能の指標となる数値を確認したところ、肝機能の働きが高まっているということがわかっています。【2】

●新陳代謝を活発にする効果
オルニチンには、筋肉や骨をつくる働きのほか、肌の調子を整える成長ホルモンの分泌を促す働きがあります。
そのため、肌の細胞の生まれ変わりを促進し、代謝[※2]をサポートします。
オルニチンには、成長ホルモンの分泌を促す働きがあり、細胞の生まれ変わりである新陳代謝を活発にする効果があります。【3】

[※2:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]

オルニチンは食事やサプリメントから摂取できます

オルニチンを多く含む食品

○しじみ
○ひらめ
○チーズ
○パン

こんな方におすすめ

○お酒をよく飲む方
○肝臓の健康を保ちたい方
○美肌を目指したい方

オルニチンの研究情報

【1】健常成人17名を対象に、オルニチンを1日あたり6g の量で7日間摂取させたところ、運動疲労によるケトン体や尿中アンモニアの量が改善し、疲労感も改善されたことから、オルニチンは運動疲労軽減効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19083482

【2】肝障害ラットを対象に、オルニチン-アスパラギン酸を2g/kg の量で10日間摂取させたところ、肝障害が改善されたことから、オルニチンは肝臓保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21189911

【3】健常成人17名を対象に、トレーニングとともにオルニチンならびにアルギニンを摂取させたところ、成長ホルモンならびにインスリン様成長因子の増加が見られたことから、オルニチンは成長促進作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20300016

【4】アルギニンは、創傷治癒に必要なコラーゲン合成を促進することが知られています。オルニチンは尿素回路を通じて、アルギニンにも変換されることから、オルニチンは肌保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12175982

【5】成人男性22名を対象に、トレーニングと供にオルニチンとアルギニン4g/日 (L-オルニチン2g含有) 、5日間摂取させたところ、筋力と除脂肪体重が増加し、尿中ヒドロキシプロリン値が低下したことから、オルニチンは筋力増強および筋力維持効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2770269

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参考文献

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・Peck Ritter 著 リッター生化学 東京化学同人

・Sugino T, Shirai T, Kajimoto Y, Kajimoto O. 2008 “L-ornithine supplementation attenuates physical fatigue in healthy volunteers by modulating lipid and amino acid metabolism.” Nutr Res. 2008 Nov;28(11):738-43.

・Najmi AK, Pillai KK, Pal SN, Akhtar M, Aqil M, Sharma M. 2010 “Effect of l-ornithine l-aspartate against thioacetamide-induced hepatic damage in rats.” Indian J Pharmacol. 2010 Dec;42(6):384-7.

・Zajac A, Poprzecki S, Zebrowska A, Chalimoniuk M, Langfort J. 2010 “Arginine and ornithine supplementation increases growth hormone and insulin-like growth factor-1 serum levels after heavy-resistance exercise in strength-trained athletes” J Strength Cond Res. 2010 Apr;24(4):1082-90.

・Shi HP, Fishel RS, Efron DT, Williams JZ, Fishel MH, Barbul A. 2002 “Effect of supplemental ornithine on wound healing.” J Surg Res. 2002 Aug;106(2):299-302.

・Elam RP, Hardin DH, Sutton RA, Hagen L. 1989 “Effects of arginine and ornithine on strength, lean body mass and urinary hydroxyproline in adult males.” J Sports Med Phys Fitness. 1989 Mar;29(1):52-6.

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