有機ゲルマニウム

germanium

ゲルマニウムは、無機ゲルマニウムと有機ゲルマニウムに分けることができ、有機ゲルマニウムは炭素と結合したゲルマニウムのことです。
有機ゲルマニウムには免疫機能を高めたり、抗酸化作用を発揮したりする効果があります。

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有機ゲルマニウムとは

●基本情報
ゲルマニウムは、原子番号32、Geという元素記号で表されます。周期表では、14族に属す元素であり、「炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛」と並んでいます。金属と非金属の中間の性質を持つ半導体として知られています。ゲルマニウムは、無機ゲルマニウムと有機ゲルマニウムに分けることができます。無機ゲルマニウムは、ゲルマニウムの酸化物や硫化物などで、天然に存在しており、主に工業面で利用されています。有機ゲルマニウムは、炭素で構成された化合物の構造中にゲルマニウムを含むもので、天然に存在することが推測されていますが、まだ明らかになっていません。さらに有機ゲルマニウムは、カルボキシエチルゲルマニウムという化学名でよばれることもあります。
有機ゲルマニウムは、超微量元素です。超微量元素とは、体内にごくわずかな量しか存在せず、人における必須性は認められていませんが体の機能維持や向上に役立つミネラルのことです。免疫機能を高めたり、抗酸化作用[※1]を発揮したりすることが次々に明らかにされ、有機ゲルマニウムの重要性が高まっています。有機ゲルマニウムの欠乏症としてははっきりしませんが、老化に伴う退行疾患にかかりやすくなると考えられています。
なお、有機ゲルマニウムのうちプロパゲルマニウムは医薬品としてのみ使用されています。

●有機ゲルマニウムの歴史
ゲルマニウムは1870年ロシアの化学者メンデレーエフが「ケイ素の次に来る元素」として、将来発見されることを予言し、1885年にドイツの化学者ウィンクラーが銀鉱石アルジロダイト(Ag8GeS6)から単離することに成功した元素です。ウィンクラーの母国の旧名が「ゲルマニア Germania」だったことから、「ゲルマニウム」と命名されました。ゲルマニウムの単体は、金属ゲルマニウムと呼ばれ、現在は主に太陽電池などに利用されています。一方、浅井一彦は石炭の木質部や漢方薬やある種の薬草植物にゲルマニウムが比較的多く含まれていることに気づき、それは植物が生育の必要上から組織に有機体として取り込んだ結果ではないかと考えました。そして1967年金属ゲルマニウムから有機ゲルマニウムを化学的に合成することに成功し、有機ゲルマニウムに抗腫瘍作用をはじめ多くの生理作用があることを実証しました。有機ゲルマニウムの研究は、この浅井一彦が行った研究から盛んにされるようになりました。

●植物と有機ゲルマニウム
有機ゲルマニウムは、古来生薬として用いられてきた朝鮮人参やキノコの一種であるマンネンタケをはじめ、ある種の植物に含まれています。これらの植物は、土壌中に含まれている酸化した無機ゲルマニウムを、水に溶けやすい形で吸収しています。それが細胞壁[※2]の安定化や、植物体の成長に役立っているのではないかと推測されています。

●有機ゲルマニウムの利用法
有機ゲルマニウムは、医薬品やサプリメントとして利用されるだけでなく、ゲルマニウム温浴での利用やネックレスとして身に着けられることもあります。

[※1:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※2:細胞壁とは、細胞の外側にあり、細胞を守る層です。]

有機ゲルマニウムの効果

●免疫力を高める効果
私たちの体には、自己とは異なる物質(病原体や毒素などの抗原)に対して、体内に抗体ができて発病を抑える免疫システムが備わっています。免疫の主役は白血球です。白血球は、骨髄中の「幹細胞」という万能な細胞から、直接免疫を担当するリンパ球となります。リンパ球の中でも、B細胞は抗体をつくって侵入した細菌に対抗する働きをもつのに対し、T細胞はサイトカイン[※3]を産生してB細胞が抗体をつくるのを補助したり、過剰な抗体の産生を抑制したり、ウイルスに感染した細胞を殺したりする働きがあります。ウイルスに感染した細胞は、インターフェロン[※4]という物質を放出します。これにより、体を防御する働きをもつマクロファージ[※5]やナチュラルキラー(NK)細胞[※6]が活性化され、感染細胞を攻撃するようになります。有機ゲルマニウムは、インターフェロンを産生し、ナチュラルキラー細胞やマクロファージを活性化します。これらの効果から有機ゲルマニウムはB型ウイルスによる慢性肝炎の治療薬としても利用されており、免疫力を高める効果も期待できます。【1】【3】

●ガンを予防および抑制する効果
有機ゲルマニウム自体にガン細胞を直接死滅させる働きはありませんが、ガンのなくなった状態を維持していこうとする維持療法や発生しかかっている次のガンを予防する効果があることが明らかにされています。実際に化学療法や放射線療法などで、ガン病変を無くすことに成功した肺小細胞ガンの患者に対して、有機ゲルマニウムを投与することにより、投与しなかったグループよりも生存率が高まり、治癒に向かった人もいたという報告があります。有機ゲルマニウムは、体の免疫細胞の機能の活性化により、間接的にガンの不活性化、弱小化、転移の抑制する効果があります。よって有機ゲルマニウムにはガンの見かけ上の消滅もしくは治癒への効果が期待できます。【2】

●骨粗しょう症を予防する効果
骨粗しょう症[※7]は骨の主要材料であるカルシウムが不足することでおこります。骨は骨吸収と骨形成を繰り返しています。一度形成された骨のカルシウムは一生その場所にいるわけではありません。すべての骨のカルシウムが入れ替わるのには、約3年かかるといわれています。この骨吸収には破骨細胞が関わります。またカルシウムは、リン酸と化合物をつくり、コラーゲン上に沈着することで骨を形成します。この骨形成には、骨芽細胞が関わります。さらに骨吸収と骨形成は、ホルモンによって調節されています。有機ゲルマニウムには、バランスを崩している骨代謝調節ホルモンのバランスを調節し、破骨細胞の活性を抑え、骨芽細胞の活性を高めているとともに、カルシウムの骨への定着、骨の石灰化を促進して骨の量を増やし、骨を丈夫にする効果があります。よって有機ゲルマニウムには骨粗しょう症を予防する効果が期待できます。

[※3:サイトカインとは、細胞から分泌されるたんぱく質のことです。]
[※4:インターフェロンとは、体内にウイルスや病原菌などの異物が侵入すると、分泌されるたんぱく質のことです。免疫力を高めたり、異物の増殖を抑える効果を持っています。]
[※5:マクロファージとは、白血球の一種です。免疫機能を担う細胞のひとつで、生体内に侵入したウイルスや細菌、または死んだ細胞を捕食し、消化する働きを持ちます。]
[※6:ナチュラルキラー細胞とは、リンパ球に含まれる免疫細胞のひとつで、生まれつき(ナチュラル)外敵を殺傷する(キラー)能力を備えています。ガン細胞やウイルス感染細胞などの異常細胞を発見して退治してくれます。]
[※7:骨粗しょう症とは、骨からカルシウムが極度に減少することで、骨の内部がスカスカになった症状であり、非常に骨折しやすくなることで知られています。高齢者に多い症状で、日本では約1000万人の患者がいるといわれており、高齢者が寝たきりになる原因のひとつです。]

有機ゲルマニウムは食事やサプリメントから摂取できます

有機ゲルマニウムを多く含む食品

○むつ
○にしん
○ししゃも
○干しひじき
○小麦発芽

こんな方におすすめ

○免疫力を向上させたい方
○生活習慣病を予防したい方
○骨や歯を強くしたい方

有機ゲルマニウムの研究情報

【1】ゲルマニウムは10年以上に及ぶ研究から、抗がん作用、抗炎症作用、骨粗しょう症予防効果を持つことが知られており、免疫細胞NK細胞やT細胞を活性化することから、免疫力向上作用を持つことも知られており、高い機能性が注目されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3043151

【2】ラットを対象に、有機ゲルマニウムを一ヵ月間投与したところ、発がん物質によるがん化が抑制されてことから、有機ゲルマニウムは抗がん作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2153512

【3】マウスを対象に、有機ゲルマニウムを事前に投与したところ、薬物誘導肝炎が緩和されました。有機ゲルマニウムは免疫細胞マクロファージにはたらきかけ、炎症物質TNF-αの産生を阻害することから、有機ゲルマニウムは肝臓保護作用ならびに抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9874494

参考文献

・中嶋 洋子、阿部 芳子、蒲原 聖可 食べ物栄養事典 主婦の友社

・吉田企世子、松田早苗 あたらしい栄養学 高橋書店

・石田名香雄 木村郁朗 有機ゲルマニウムの科学 東洋医学舎

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・独立行政法人国立栄養研究所 “「健康食品」の安全性・有効性情報 「健康食品」の素材情報データベース”

・Goodman S. 1988 “Therapeutic effects of organic germanium.” Med Hypotheses. 1988 Jul;26(3):207-15.

・Jao SW, Lee W, Ho YS. 1990 “Effect of germanium on 1,2-dimethylhydrazine-induced intestinal cancer in rats.” Dis Colon Rectum. 1990 Feb;33(2):99-104.

・Ishiwata Y, Yokochi S, Hashimoto H, Ninomiya F, Suzuki T. 1998 “Protection against concanavalin A-induced murine liver injury by the organic germanium compound, propagermanium.” Scand J Immunol. 1998 Dec;48(6):605-14.   

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