烏龍茶

oolong tea

烏龍茶は、中国発祥のお茶で、「烏龍」「鉄観音」「水仙」「色種」などの品種があります。烏龍茶は発酵を途中で止めた半発酵茶で、深みのある味と香りが特徴的です。脂肪の吸収を抑える効果や、虫歯を予防する効果などがあり、伝統的に親しまれているお茶です。

烏龍茶とは

●基本情報
烏龍茶は中国が本場といわれ、「烏龍」「鉄観音」「水仙」「色種」などの品種があります。
「烏龍茶」という名前は、茶葉が烏の羽のように黒褐色で、龍のように曲がった形をしていることに由来しているといわれています。また、烏龍茶の龍は皇帝を表す言葉であることから、その高い品質と高貴さが知れます。
烏龍茶は、中国茶のうち青茶(チンチャア)と分類され、発酵を途中で止め半発酵させた茶です。
青は中国語で「黒っぽい藍色」を指します。
中国茶には1000種以上ともいわれるほど、多くの種類がありますが、これらはツバキ科の多年性植物である「カメリア・シネンシス」という植物からつくられており、茶葉の発酵度の違いによってお茶の違いが生まれます。発酵の度合いが低い順に「緑茶」「白茶」「黄茶」「青茶」「紅茶」「黒茶」に分類されます。
烏龍茶は、中程度の発酵を受けており、発酵させずにつくる緑茶とも異なる独特の性質を持ちます。

●烏龍茶の歴史
烏龍茶は中国南部にある福建省武夷山で16世紀に誕生しました。昼夜の気温差があり、霧もよくかかる天候状況や、ミネラルを豊富に含む土壌を有する福建省武夷山は、宋の時代から銘茶の産地として有名でした。
清の時代には烏龍茶の製法が確立され、福建省南部の安渓や広東省潮州、台湾に伝来され、現在四大中国茶と呼ばれる武夷岩茶、安渓鉄観音、鳳凰単叢、台湾茶の製茶が広がっていきました。かつては嗜好品として貿易に利用されていましたが、近年健康茶としての有効性が研究され、注目されています。

●烏龍茶を飲用する際の注意点
烏龍茶には体を冷やす作用があるため、冷たい烏龍茶は体を冷やします。体への刺激は少ないですが、飲みすぎにならないように、一度にたくさん飲むのではなく、何回かに分けて、継続的に飲用する方が良いといえます。

烏龍茶の効果

●脂肪の吸収を抑える効果
烏龍茶には緑茶にも含まれるカテキンの他に、ウーロン茶ポリフェノールが含まれます。ウーロン茶ポリフェノールは茶葉を半発酵する過程でカテキンが重合[※1]して出来る烏龍茶特有の成分です。
ある研究において、高脂肪・高ショ糖食にウーロン茶ポリフェノールを添加した飼料を与えたマウスの体重と脂肪量の増加が抑えられたという研究結果があります。これは、ウーロン茶ポリフェノールが、食品中の脂肪を分解・吸収する酵素のはたらきを抑えるためです。
食べ物から摂取した脂肪は、胃を経由し、小腸へ向かい、体内でリパーゼという消化酵素によって分解され、吸収されます。ウーロン茶ポリフェノールは、リパーゼの働きを阻害し、リパーゼの働きを受けなかった脂肪は吸収されることなく、そのまま腸を通り、排泄されます。
このように、烏龍茶にはウーロン茶ポリフェノールが含まれ、脂肪の吸収を抑えます。【1】

●生活習慣病の予防・改善効果
烏龍茶に含まれるカテキンには、肝臓で作られる胆汁酸[※2]の排泄を促進するため、血中のコレステロールの増加を抑制する効果があります。
コレステロールの過剰な増加は、動脈硬化や高脂血症の要因となり、生活習慣病を引き起こします。
烏龍茶には、コレステロールの増加を抑制し、生活習慣病を予防する効果があります。【2】【4】

●虫歯を予防する効果
烏龍茶には、歯垢の沈着を抑制し、虫歯を予防する効果があります。
烏龍茶に含まれるウーロン茶ポリフェノールには、虫歯の原因となる歯垢が、歯茎と歯の間に沈着することを抑制する効果があります。
ウーロン茶ポリフェノールの虫歯予防について研究結果があります。
18~43歳の男女31名に、試験開始前に口腔内診査と歯面清掃を行い、歯垢を除去した後、2グループに分け、一方にはミネラルウォーターを、もう一方のグループには烏龍茶を4日間、食事中と就寝前に飲ませ、4日目に歯垢の沈着状況を検査するという研究が実施されました。この間、歯磨きやマウスウォッシュなどの口腔内清掃を止め、また、緑茶や紅茶、コーヒー、お酒の飲用も控えた上で行いました。
この研究の結果、ミネラルウォーターよりも烏龍茶を飲用していたグループの方が、歯垢の沈着が抑制されることがわかりました。さらに、ミネラルウォーターを飲用したグループよりも烏龍茶を飲用したグループの方が、歯垢がはがれやすくなっているということがわかりました。
このように、烏龍茶には、ウーロン茶ポリフェノールが含まれており、歯垢の沈着を抑制し、虫歯を予防する効果があります。【3】【6】

●美肌効果
烏龍茶には、美肌効果があります。
烏龍茶に含まれるウーロン茶ポリフェノールには、活性酸素を除去するSOD酵素を活性化させる効果が期待されています。活性酸素はもともと人間の体内に存在する物質で、外界から侵入してきたウイルスや細菌を撃退する力をもっていますが、喫煙やストレス、不規則な生活習慣などの原因で活性酸素が過剰に増殖すると、体内のたんぱく質や脂質、DNAなどを傷つけるといわれており、結果的に活性酸素は肌細胞を劣化させ、肌荒れや老化の原因になると考えられています。
烏龍茶には、SOD酵素を活性化させるウーロン茶ポリフェノールが含まれ、活性酸素を除去することによる美肌効果があります。【7】【8】

[※1:重合とは、1種類以上の単位物質の分子が結合して、もとのものより分子の大きい化合物を生成することです。]
[※2:胆汁酸とは、胆汁に含まれている物質です。消化管内で食物の脂肪や脂溶性ビタミンをより吸収しやすくする働きをします。]

烏龍茶は食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○体型が気になる方
○生活習慣病を予防したい方
○歯の健康を保ちたい方
○美肌を保ちたい方

烏龍茶の研究情報

【1】豚膵臓リパーゼを用いて各食品およびサプリメントの抽出物のリパーゼ活性に及ぼす影響を調べた結果、黒烏龍茶にリパーゼ活性抑制作用が見られたことから、烏龍茶は抗肥満作用を持つと考えられています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006392211

【2】12名の健常人に対して、38g油脂(食後30分後19gのポテトチップスを10日間:1日×3回)を与えました。その後、750mlのプラセボまたは烏龍茶を与え、8、18、25、35日の血液を調べました。プラセボ群よりも烏龍茶摂取群では、有意に脂質とコレステロールの排泄量が高くなったことから、烏龍茶に抗肥満作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16804556

【3】健常者9名を対象に、烏龍茶やコーヒーに含まれるカフェインを27日間摂取させたところ、歯周病原因菌であるPrevotella属の発育が減少したことから、カフェインを含む烏龍茶は歯周病予防効果ならびにオーラルケアに役立つと考えられています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110009489298

【4】高血圧自然発生ラットまたはマウスを対象に、烏龍茶(500 mg/kg または1000 mg/kg)飲用させたところ、血中のトリアシルグリセリドが約53%(500mg/kg)および約76%(1000mg/kg)減少したことから、烏龍茶は抗肥満作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17420597

【5】烏龍茶を4週間飲用したマウスは、肝臓のG6PアーゼおよびPEPCKを抑制されたことから、烏龍茶は生活習慣病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21812644

【6】18~43歳の男女31名を対象に、烏龍茶(食事中:最低200ml、就寝前:最低100ml)を4日間摂取させたところ、歯科プラーク指数が改善されたことから、烏龍茶は虫歯予防効果が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/10030558894

【7】ESRにて分析した結果、烏龍茶には、フリーラジカルの一種であるスーパーオキシドアニオンを補足する抗酸化作用を持つことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17928673

【8】ラットに30週間烏龍茶、プーアル茶、紅茶、または緑茶を摂取させた結果、烏龍茶を飲用した群が、最もラット体重の増加を抑制しました。また、すべてのお茶の飲用群においてSOD活性の上昇が認められたことから、烏龍茶は抗肥満作用ならびに抗酸化作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15656692

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参考文献

・大森正司 ワイド版 日本茶紅茶中国茶健康茶 日本文芸社

・藤田紘一郎 知識ゼロからの健康茶入門 幻冬舎

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・榮 昭博、関崎 悦子 (2006) “食品およびサプリメント中の膵リパーゼ活性阻害物質” 桐生短期大学紀要 17, 11-18, 2006-12-06

・Hsu TF, Kusumoto A, Abe K, Hosoda K, Kiso Y, Wang MF, Yamamoto S. (2006) “Polyphenol-enriched oolong tea increases fecal lipid excretion.” Eur J Clin Nutr. 2006 Nov;60(11):1330-6.

・大川 勝正 (2012) “就寝前の加温カフェインによる連続洗口は健常者の口腔内細菌叢を変化させる” 口腔衛生学会雑誌 62(4), 357-364, 2012-07-30

・Toyoda-Ono Y, Yoshimura M, Nakai M, Fukui Y, Asami S, Shibata H, Kiso Y, Ikeda I. (2007) “Suppression of Postprandial Hypertriglyceridemia in Rats and Mice by Oolong Tea Polymerized Polyphenols” Biosci Biotechnol Biochem. 2007 Apr;71(4):971-6.

・木曽良信 (2009) “Effect of oolong tea polymerized polyphenol (OTPP)-enriched oolong tea on postprandial serum triacylglyceride elevation in healthy humans.” The 4th International Conference on Polyphenols and Health (ICPH), 2009 Dec 8-10, Harrogate International Centre, North Yorkshire(UK)

・Yasui K, Miyoshi N, Tababe H, Ishigami Y, Fukutomi R, Imai S, Isemura M. (2011) “Effects of oolong tea on gene expression of gluconeogenic enzymes in the mouse liver and in rat hepatoma H4IIE cells.” J Med Food. 2011 Sep;14(9):930-8. doi: 10.1089/jmf.2010.1396. Epub 2011 Aug 3.

・永山佳代子、稲垣暁子、藤田一世、高島由紀子、Arifah Chieko Ardin、仲野道代、大嶋隆 (2012) “ウーロン茶によるデンタルプラーク沈着抑制効果の検証” 小児歯科学雑誌 50(2), 286, 2012-04-25

・Shimamura T, Fujimura Y, Ukeda H. (2007) “Electron spin resonance analysis of superoxide anion radical scavenging activity with spin trapping agent, diphenyl-PMPO.” Anal Sci. 2007 Oct;23(10):1233-5.

・Kuo KL, Weng MS, Chiang CT, Tsai YJ, Lin-Shiau SY, Lin JK. (2005) “Comparative studies on the hypolipidemic and growth suppressive effects of oolong, black, pu-erh, and green tea leaves in rats.” J Agric Food Chem. 2005 Jan 26;53(2):480-9.

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