オオムギ

barley
Hordeum vulgare

オオムギは、中央アジア原産で、世界で最も古くから栽培されていたといわれているイネ科の一種です。オオムギは胚乳の部分に食物繊維を、胚芽の部分にビタミンを多く含みます。胚乳には食物繊維のほか、でんぷんやたんぱく質を含みます。中国では漢方としても利用されています。

オオムギとは

●基本情報
オオムギ(大麦)は、イネ科オオムギ属の一種です。世界中で栽培が行われており、小麦、稲、とうもろこしに次いで世界第4位の生産量の穀物とされています。もともとオオムギは厳しい環境下においても適応できる能力を持っているため、高原地域や砂漠のように半乾燥地帯においても栽培がされています。オオムギは高さ1mほどに成長し、根は50cm~70cmの深さまで成長します。
日本では、種まきが秋に行われ、冬の間にじっくりと成長をさせ、穂が実る春に収穫をし、田植えまでに収穫を完了させます。
オオムギは胚乳の部分に食物繊維を、胚芽の部分にビタミンを多く含みます。胚乳には食物繊維のほか、でんぷんやたんぱく質を含みます。
オオムギは穂の形状によって、六条種と二条種に分類できます。穂を上から見た場合、穀粒が2列に並んでいるものが二条大麦で、6列に並んでいるものが六条大麦です。二条種はビールのうまみを出すために用いられ、六条種は押し麦などに加工され、米と一緒に炊いて食されます。
日本でオオムギは、加熱後柔らかくしたものをローラーで平たくした押し麦、オオムギを精白[※1]した丸麦、精白した白麦などが販売されています。日本で最も一般的なものは押し麦です。現在では、健康食材としての品種開発が進んでいます。
中国では脚気(かっけ)[※2]に働く漢方薬としても利用されています。
オオムギの若葉は、ミネラルやビタミン、酵素を豊富に含むことから、健康食品に多用されています。

●オオムギの歴史
オオムギは約1万年前から西アジアから中央アジアで栽培されていた世界最古の穀物といわれており、古代エジプトのツタンカーメン王の墓からも副葬品としてオオムギが発見されています。日本へ中国から伝来したのは1800年前ほど前、3世紀頃だといわれており、小麦よりも1世紀早く伝来しました。奈良時代には、日本の各地ですでに栽培が広まっていました。平安時代からはお米とオオムギを混ぜた「オオムギごはん」として食されるようになりました。

●オオムギを調理する際に注意する点
一般的に精白されたオオムギはビタミン類が減少するため、ビタミンB1などが強化した強化精麦を利用すると良いといわれています。
オオムギは、とろろ汁をかけて食べる「麦飯」が有名です。麦飯の米と麦の割合は8:2が理想とされています。
また、六条麦は、殻つきのまま炒って、熱湯で煮出した六条麦茶の原料としても活用されています。オオムギは非常に消化が良く、白米のおよそ3分の1の時間で消化されるといわれています。
ただし、オオムギは体を冷やす作用があるため、冷え性の人は摂取しすぎないように注意する必要があります。

[※1:精白とは、穀物をつくことで表皮をとり、全体的に白くさせることです。]
[※2:脚気(かっけ)とは、ビタミンB1の欠乏症です。心不全や末梢神経障害などが起こります。]

オオムギの効果

●腸内環境を整える効果
オオムギは、食物繊維を多く含むため、腸内環境を整える効果があります。オオムギは、体内で水分を吸収し、排便を促進する不溶性食物繊維と、摂取したものをゆっくりと腸へ移動させ、急激な血糖値の上昇を抑制する水溶性食物繊維をバランスよく含んでいます。
さらに、白米は精白すると食物繊維が大幅に減少するのに対して、オオムギでは精白しても精白米よりも10倍以上もの食物繊維を含んでいるといわれており、効率よく摂取することができます。【1】【3】【4】

●生活習慣病の予防・改善効果
オオムギには、β-カロテンが含まれており、β-カロテンは余分なコレステロールの消化や吸収をサポートし、血糖値の上昇を抑制するといわれています。また、オオムギにはβ-グルカンが含まれており、β-グルカンはコレステロールを低下させる効果があります。
余分なコレステロールの増加は、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの危険性を高めます。
オオムギはコレステロール値の上昇を抑制し、生活習慣病を予防する効果があります。【2】【5】

●疲労回復効果
オオムギはビタミン類を多く含むため、疲労を回復する効果があります。オオムギには疲労回復に働きかけるナイアシンなどのビタミンB群が多く含まれます。そのほか、オオムギは鉄や亜鉛などのミネラルも含むため、体全体の健康をサポートします。
このように、オオムギはビタミンB群を多く含み、疲労を回復する効果があります。

オオムギは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○腸内環境を整えたい方
○コレステロール値が気になる方
○疲れやすい方

オオムギの研究情報

【1】潰瘍性大腸炎患者に対し、オオムギを含む食品GBF(20-30g/日)またはコントロールを4週間摂取させました。4週間後、GFB摂取群は、コントロール群と比較して、クリニカルスコアが減少し、また、ビフィズス菌が増加していたことから、オオムギは腸内環境を整える働きがあると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12572869

【2】オオムギ若葉エキスをⅡ型糖尿病患者に15g(ビタミンC200㎎、VE200mg併用)4週間与えた結果、LDLコレステロール酸化および活性酸素が緩和されたことから、オオムギは生活習慣病予防ならびに抗酸化作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11976562

【3】成人男女20,630名において、性別や摂取栄養素、ライフスタイルと排便回数との関係を調査した結果、食物繊維が多い人ほど、排便回数が多いことが確認されました。オオムギは食物繊維を豊富に含むことから、腸環境を整えるはたらきが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14972075

【4】英国人220名を対象に、食物繊維摂取量と便通回数と大腸疾患の関係を調査したところ、食物繊維を1日18g 摂取すると、適度な便通を促すことにより大腸疾患の予防に役立つことがわかりました。オオムギは食物繊維を豊富に含むことから、腸内環境を整え、大腸疾患予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1333426

【5】妊娠期の野性ラットに対してβ-カロテンを投与すると、胎盤中のLDL受容体関連たんぱく質の転写の低下が認められました。β-カロテンの摂取はLDLコレステロールの低下を促進することがわかりました。オオムギはβ-カロテンを豊富に含むことから、動脈硬化予防および生活習慣病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22739378

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参考文献

・本多京子 食の医学館 株式会社小学館

・Kanauchi O, Suga T, Tochihara M, Hibi T, Naganuma M, Homma T, Asakura H, Nakano H, Takahama K, Fujiyama Y, Andoh A, Shimoyama T, Hida N, Haruma K, Koga H, Mitsuyama K, Sata M, Fukuda M, Kojima A, Bamba T. (2002) “Treatment of ulcerative colitis by feeding with germinated barley foodstuff: first report of a multicenter open control trial.” J Gastroenterol. 2002 Nov;37 Suppl 14:67-72.

・Yu YM, Chang WC, Chang CT, Hsieh CL, Tsai CE. (2002) “Effects of young barley leaf extract and antioxidative vitamins on LDL oxidation and free radical scavenging activities in type 2 diabetes.” Diabetes Metab. 2002 Apr;28(2):107-14.

・Sanjoaquin MA, Appleby PN, Spencer EA, Key TJ. (2004)  “Nutrition and lifestyle in relation to bowel movement frequency: a cross-sectional study of 20630 men and women in EPIC-Oxford.” Public Health Nutr. 2004 Feb;7(1):77-83.

・Cummings JH, Bingham SA, Heaton KW, Eastwood MA. (1992) “Fecal weight, colon cancer risk, and dietary intake of nonstarch polysaccharides (dietary fiber)” Gastroenterology. 1992 Dec;103(6):1783-9.

・Wassef L, Shete V, Hong A, Spiegler E, Quadro L.(2012) “β-Carotene supplementation decreases placental transcription of LDL receptor-related protein 1 in wild-type mice and stimulates placental β-carotene uptake in marginally vitamin A-deficient mice.” J Nutr. 2012 Aug;142(8):1456-62. doi: 10.3945/jn.112.162677. Epub 2012 Jun 27.

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