タコとは?
●基本情報
タコは八腕形上目のタコ目に分類される軟体動物です。頭のように見える丸い部分はタコの胴体にあたる部分で、中には内臓などの器官が収まっています。実際の頭は目や口器のある部分であるため、頭から直接足が生えていることになり、これらの仲間を頭足類[※1]といいます。
タコは日本では人気の食材ですが、食用としている国は少なくメキシコ、イタリア、ギリシャ、スペインなど一部の地域で食されているのみです。また、タコを食用としない西欧などの地域では「デビルフィッシュ(悪魔の魚)」と呼ばれています。
タコ類としては世界中で約250種類が知られており、日本近海では約60種類が確認されています。その中でも食用とされるのは5~10種類程で、日本ではマダコ、ミズダコ、イイダコがよく利用されます。
●タコの種類
・マダコ
タコ類の中でも最も一般的で、本州以南の地方でタコといえばマダコをさすほどよく知られています。全長60cmの世界各地でみられる種で、日本では東北地方以南の沿岸地域で水揚げされます。中でも瀬戸内海の明石沖で獲れるものはアカシダコと呼ばれます。国内での漁獲量は以前に比べ格段に減っており、市場に出回っているものの多くは、アフリカ北西海岸などで獲れた外国産です。旬は夏です。
・ミズダコ
全長3m、体重20kgにも達する世界最大のタコで、水深200m以浅の砂礫底や岩礁域に生息してします。日本では東北地方北部から北海道、千島列島に、またアリューシャン列島を経て北アメリカの西海岸まで広く分布しています。身がやわらかく、水っぽいことからミズダコと名付けられました。味はマダコに比べると劣るため、多くは加工用として利用されます。旬は初夏です。
・イイダコ
全長20cm程度の小さなタコで、煮物などにして丸ごと食べられます。主な産地は日本周辺から朝鮮半島、東シナ海の浅海で、全身は小イボで被われています。卵は冬から早春に熟し、その米粒状の卵が体内に詰まっている様子から「飯蛸」と名付けられました。旬は冬から春です。
●タコの歴史
タコは日本では古くから食されており、弥生時代の遺跡からはタコ壺形の土器が出土しています。平安時代の「延喜式」[※2]にはタコの干物やイイダコの熟鮨(ナレズシ)の名があり、タコ料理についての記録が残されています。また江戸時代の料理書『料理物語』(1643年)には、桜煎、駿河煮、なます、かまぼこといったタコ料理が記載されており、江戸時代中期には一般的な武士の食事にもタコが出されていたといわれています。
●タコの産地
日本では世界で水揚げされる3分の2にあたる、年間約16万tのタコを消費しています。しかし日本での年間の漁獲量は約4万t程度のため、外国産のものが多く出回っており、中でもモーリタニア、モロッコなどのアフリカ北西部からの輸入が過半数を占めています。日本での水揚げ量は北海道が最も多く、次いで兵庫県、香川県となります。
●タコの選び方と保存法
生のタコは吸盤の吸いつきがよく、弾力のあるものを選びます。新鮮なものにはそばかすのような斑点があります。ゆでダコはきれいな小豆色で、弾力とつやのある皮がしっかりしたものを選びます。表面に粘りがあるものや、皮がはがれているものは避けましょう。
保存する際は塩でぬめりをとったあとに柔らかく茹で、冷ましてからラップなどに包んで冷蔵庫で保存します。
●タコを食べる際の注意点
タコは食べ過ぎるとかゆみが出ることがあるため、過敏体質の場合は注意が必要です。腐敗したものは腸炎ビブリオなどによる食中毒を引き起こすことがあるので、新鮮なうちに食べるようにします。
また、消化率は高いですが、消化に時間がかかるため、胃の弱い人や、胃の調子がよくないときは食べ過ぎに注意が必要です。
●タコに含まれる成分と性質
タコにはビタミンB2、ナイアシン、ビタミンEなどのビタミン、鉄、亜鉛、などのミネラルに加えて、アミノ酸の一種のタウリンを豊富に含んでいます。タウリンは魚介類に多く含まれる成分で、動脈硬化予防や肝機能強化のほか、網膜細胞の機能を正常に保つ働きがあり、目の疲れにも効果を発揮します。
[※1:頭足類とは、軟体動物のなかでも内臓塊が体後部に押しやられ、足が体の最前部に位置して頭に直接ついた形になっているものをさします。]
[※2:延喜式(えんぎしき)とは、平安時代中期に施行された格式のことです。三大格式のひとつであり、ほぼ完全な形で今日に伝えられている唯一の格式といわれ、日本古代史研究に不可欠な文献です。]
タコの効果
●生活習慣病の予防・改善効果
タコにはアミノ酸の一種であるタウリンが豊富に含まれています。タウリンは交感神経[※3]の働きを抑制するため、血圧の上昇を抑制し高血圧を改善する作用があります。また、血中のコレステロール値を下げる働きがあることから、高血圧が原因で引き起こされる、脳卒中、動脈硬化、高コレステロール血症、心不全などの生活習慣病の予防に効果を発揮します。【2】
他にも、タコには抗酸化力[※4]のあるビタミンEも含まれるので、心臓病や脳梗塞、ガンの予防にも効果があります。
●肝機能を高める効果
タコに含まれるタウリンには、肝臓での胆汁酸[※5]の分泌量を増加させる作用があります。胆汁酸にはコレステロールを分解して体外に排出させる働きがあることから、体内のコレステロールを減少させます。肝機能を高めて解毒作用を強化するので、コレステロールが原因となる胆石症を防ぎます。【1】
●血行を促進する効果
タコにはナイアシンやビタミンEが含まれています。ナイアシンには毛細血管を広げる作用があり、血行をよくして脳神経の働きを助けます。ビタミンEにも血行を促進する作用があるため、食欲減退、二日酔いの改善の他、血行障害からくる肩こり、頭痛、冷え症にもの効果があります。
また、タコには血液の循環をよくするミネラル亜鉛、鉄、マグネシウムも含まれています。
[※3:交感神経とは、生命を維持している自律神経の一種です。不安・恐怖・怒りなどストレスを感じている時に働きます。]
[※4:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※5:胆汁酸とは、胆汁に含まれている物質です。消化管内で食物の脂肪や脂溶性ビタミンをより吸収しやすくする働きをします。]
タコは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○肝臓の健康を保ちたい方
○コレステロール値が気になる方
○生活習慣病を予防したい方
○血圧が高い方
○血流を改善したい方
タコの研究情報
【1】エビ、イカ、タコを食べることにより、肝臓のコレステロールレベルを下げることが示された。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9720219
【2】シーフドを食べることにより冠疾患危険因子のリスクを下げることが可能となる。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8671552
参考文献
・吉田企世子 松田早苗 安全においしく食べるためのあたらしい栄養学 高橋書店
・本多京子 食の医学館 株式会社小学館
・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社
・中嶋洋子 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社
・食材図典 小学館
・池上保子 おいしくてクスリになる食べ物栄養事典 日本文芸社
・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社
・Tanaka K, Sakai T, Ikeda I, Imaizumi K, Sugano M. (1998) “Effects of dietary shrimp, squid and octopus on serum and liver lipid levels in mice.” Biosci Biotechnol Biochem. 1998 Jul;62(7):1369-75.
・Sato S, Iso H, Naito Y, Kiyama M, Kitamura A, Iida M, Shimamoto T, Komachi Y. (1996) “Plasma fibrinogen and its correlates in urban Japanese men.” Int J Epidemiol. 1996 Jun;25(3):521-7.