オートミール

avena sativa
エンバク オーツ麦 オートムギ カラスムギ

オートミール(オーツ)とは、(日本語名:燕麦 エンバク)を脱穀して、調理しやすくするために加工したものです。イネ科カラスムギ属の穀類の一種で、欧米では朝食用シリアルのオートミールとして親しまれています。また燕麦は英語名で「Oat」ということから、オートムギ、オーツ麦、オートとも呼ばれています。ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富に含まれていることから、コレステロール値を下げたり、便秘を解消する効果があるといわれています。

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オートミールとは

●基本情報
オーツ麦と呼ばれる麦を食べやすく加工したシリアル食品のことです。「oats(オーツ麦)」と「meal(食事)」という英単語を掛け合わせて「オートミール」と呼ばれるようになりました。オーツ麦は日本では燕麦(えんばく)といわれていますが、小麦や麦、とうもろこしなどと同じ穀物の一種です。オーツは中央アジアを原産地とするイネ科カラスムギ属の穀物の一種で、栽培には、寒冷な気候が適しており、主にアメリカ、カナダ、フランス、西ドイツなどで多く生産されています。寒地では4月~5月に種を蒔き、8月に収穫、暖地では秋に種を蒔き、翌年の6月~7月に収穫します。欧米ではシリアルとして朝食によく食べられており、製粉したものはビスケットやクッキーの材料として利用されています。小麦よりもたんぱく質と脂質が多く含まれ、精白処理は行われていません。そのため果皮、種皮、胚、胚乳表層部などに食物繊維やミネラルが残り、高い栄養価が保たれています。

●オートミールの歴史
オートミールは紀元前から栽培されていました。原産地は中央アジアといわれており、元々は雑草でしたが、紀元前1000年ごろから中央ヨーロッパで栽培され始め、一部を除いては家畜のエサとして用いられていました。その後イギリスにオーツ麦が伝わりオートミールが開発されると、その栄養価の高さが認められました。17世紀にアメリカに伝わるとさらにブレイクし、朝食メニューとして定着し始めました。日本にオートミールが伝わったのは明治時代で、当時は北海道でオーツ麦が大量に生産されていました。オートミールが食用として販売されるようになったのは1933年からです。19世紀後半から押し麦機が発明されたことで調理がしやすくなり20世紀初めにかけて欧米で広く食べられるようになりました。また、欧米でなじみのあるオートミールへの加工はスコットランドで始まりました。しかし、オートミールが一般的に認知されだしたのは、ここ数年の健康ブームやダイエットブームで取り上げられてからになります。

●オーツの種類
オートミールはオーツ麦の加工の仕方によってタイプが変わり、調理法や調理時間も変わってきます。

○グランドオーツ(グローツ)
オーツの外皮を取り除き精白したあと十分に乾燥させ、炒り、ローラーとローラーの間に炒ったオーツを挟み粉砕させたものです。

○ロールドオーツ
オーツの外皮(もみ殻)を取り除き精白したあと蒸し、ローラーで押しつぶして平らにし乾燥させたものです。薄く加工されているので調理しやすく、「クイックオーツ」という名称でも知られています。長期保存も可能で入手しやすく、日本で消費者向けに売られているオートミールのほとんどがこのタイプです。

〇オートグローツ
オーツ麦からもみ殻を取り除いたものです。
全粒穀物の一種で、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を豊富に含みます。
お米でいうと玄米のような状態ですが、非常に調理しづらく、日本ではほとんど販売されていません。

〇スティールカットオーツ
オーツ麦のもみ殻を取り除いて2~3等分に切ったものを指します。
熱処理等の事前加工がされていないため、調理に時間がかかりますが、胚芽や外皮が残っているので栄養価が高いことが特徴といえます。日本ではあまり流通されていませんが、アイルランドやスコットランドでは古くから食べられているようです。

●オートミールの保存方法
オートミールは基本的には消費期限が長く保存がきく食品ですが、メーカーによっては数カ月のものから2年ほどと幅があります。ただし消費期限は未開封の状態での期日なので、開封後は早めに食べることをおすすめします。保存場所としては高温多湿、直射日光が当たるところを避け空気を抜いて封をしっかり閉めてください。

●オートミールに含まれる成分と性質
オーツには骨の強化を助けてくれるマグネシウムや糖質のエネルギー代謝を促してくれるビタミンB1、腸のぜん動運動[※1]を促す食物繊維などが含まれています。また、コリンという神経伝達に働きかける物質を豊富に含んでいます。

食物繊維
食物繊維は人間の消化酵素では消化されず、腸内では老廃物の運搬係として働き、不要な物質を体外へ排出する役割があります。また、コレステロール値低下作用や糖質の吸収抑制作用など、様々な生理機能を持つ優れた成分です。
オートミールには100gあたり9.4gの食物繊維が含まれており、玄米は100gあたり約3.0gなのでオートミールのほうが2倍以上も多く含まれています【1】。


鉄は、必須ミネラルのひとつで赤血球を構成する成分となり、全身の細胞や組織に酸素を運ぶ役割をしています。

たんぱく質
たんぱく質は人間の臓器や筋肉、皮膚、髪などの組織を構成しており、人間の体の基礎をつくる重要な成分です。また、免疫力を高めたり、血液を正常に保ったりと様々な働きをもちます。

ビタミンB₁
ビタミンB₁は水溶性のビタミンB群の一種で、「疲労回復のビタミン」とも呼ばれています。
また、エネルギーをつくる手助けをすることで、神経や筋肉の機能を正常に保つ効果があります。

ビタミンB₂
ビタミンB₂は酢要請のビタミン群の一種です。脂肪を燃焼させ、エネルギー代謝や細胞の新陳代謝を促進し、健康な皮膚や髪、爪をつくるなど、発育や美容に関わるビタミンです。

<豆知識①>オートミールの栄養バランスをもっとよくするための工夫
オーツには含まれるたんぱく質は白米の約2倍と豊富ですが、リジンメチオニンなどの必須アミノ酸の量は少ないため牛乳を加えて食べるとこれらの必須アミノ酸が補え、栄養バランスが整います。

[※1:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]

<豆知識②>GI値とは
オートミールを調べると「低GI値」という言葉がよく出てきます。
GI値とは「グリセミック指数」とも呼ばれており、炭水化物が分解されて糖分に変わるまでのスピードを表した値です。人間は食事をした時に食べ物の糖分が血管内に取り込まれて肝臓に運ばれ、この時に血糖値が上がります。上がってしまった血糖値を下げるために膵臓からインスリンが分泌され、その働きによって血管内の糖分が細胞内に取り込まれて血糖値が下がってきます。
オートミールを食べた後は急激な血糖値の上昇が起こらずに、徐々に血糖値が上がっていきます【2】。その結果、食事の満足感を得ることができるのでドカ食いや間食を防いだり、糖質が脂肪に変わってしまうことを防いだりと、ダイエットの手助けをしてくれます。

オートミールの効果

●コレステロール値を下げる効果
オーツにはコレステロール値を下げる効果があります。オーツにはβ-グルカンが豊富に含まれています。β-グルカンは、不溶性食物繊維の一種で、体内で消化されることなく腸まで届くため、コレステロールを吸着して体外へ排泄する働きがあります。また、コレステロールの吸収を阻害する働きもあるため、体内のコレステロール値上昇を抑える効果があります。【5】【6】【7】

●便秘を解消する効果
オーツの種皮には食物繊維が豊富でその量は白米の20倍、玄米の3倍ともいわれています。食物繊維は水溶性・不溶性ともに、腸内に溜まった不要な老廃物を体外へ排出する働きを持つ上、善玉菌[※2]を増やす作用もあるため、腸内の環境を整える効果があります。そのため便秘の解消には効果的だといえます。
また、食物繊維が豊富なことから心疾患の予防にも効果が期待できます。1997年には「心疾患のリスクが軽減できる」旨の健康強調表示がFDA(食品医薬品局)[※3]で認められています。【8】

●記憶力を高める効果
オーツにはコリンという成分が含まれています。コリンは、水溶性のビタミン様物質[※4]の一種で、人間の体の中では神経伝達物質[※5]であるアセチルコリンの元となる物質として存在します。脳内コリン濃度を高めると記憶力を向上させる効果が期待できます。また、高血圧や動脈硬化[※6]の予防も期待できます。

●血糖値の上昇を抑える効果
オーツには血糖値を下げる効果があります。血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の量を表す数値です。
肥満や運動不足などの生活習慣の乱れが原因で、血糖値が正常に保てなくなると、糖尿病となります。
糖尿病が悪化すると、全身の血管や神経などに悪影響を及ぼし、合併症や動脈硬化を引き起こします。オーツの全粒粉はグリセミック指数[※7]が低く体内での糖質の吸収が穏やかだといわれています。そのため体内での急激な血糖値の上昇を抑えてくれます。また、満腹感を与えてくれるため食欲のコントロールにも役立ちます。【3】【4】

●湿疹やかぶれなどを抑える効果
オーツには亜鉛やケイ酸が豊富に含まれています。そのため、湿疹やかぶれ、水痘、日焼けなどの炎症を伴ってかゆみを感じる皮膚症状を緩和させる効果があります。オーツの藁を煎じてお風呂に一緒に入れて使用します。

[※2:善玉菌とは、人間の腸内にすむ細菌の一種です。健康に役立つ働きを行っており、もともと大腸に住んでいる腸内ビフィズス菌乳酸菌、腸球菌などが善玉菌といわれます。]
[※3:FDA(食品医薬品局)とは、Food and Drug Administrationの略で食品や医薬品、さらに化粧品、医療機器、動物薬、玩具など、消費者が通常の生活を行うに当たって接する機会のある製品について、その許可や違反品の取締りなどを専門的に行うアメリカの政府機関のことです。]
[※4:ビタミン様物質とは、ビタミン類には含まれず、ビタミンと似た働きを持つ栄養素の総称です。]
[※5:神経伝達物質とは、神経細胞の興奮や抑制を他の神経細胞に伝達する物質のことです。]
[※6:動脈硬化とは、動脈にコレステロールや脂質がたまって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となります。]
[※7:グリセミック指数(GI値)とは、炭水化物が消化されて糖に変わるまでの速さのことです。基準の食品を100として比較し、相対的に表す指標のことです。血糖値の上昇度を測ることができます。]

オートミールは食事で摂取できます

こんな方におすすめ

○コレステロール値が気になる方
○お通じを改善したい方
○集中力や記憶力を向上させたい方
○あせもや湿疹を予防したい方
〇ダイエットしたい方
〇美容に気を付けている方

オートミールの研究情報

【1】2001〜2010年の全国健康栄養調査のデータを分析して、19歳以上の成人(n = 22,823)におけるオートミール消費量と栄養素摂取量、食事の質、および生理学的測定値との関係を評価したところ、オートミールの消費者は、2010年の健康的な食事指数が高く、体重、胴囲、肥満度指数が低いことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26494025/

【2】オートミールのような全粒穀物を1日あたり16 g程度摂取することは、2型糖尿病のリスクが男性11%、女性7%低くなることに関連していました。男性の場合、調査したすべての全粒穀物タイプ(小麦、ライ麦、オーツ麦)の摂取は、2型糖尿病のリスクの低下に関連していましたが、女性の場合、小麦とオーツ麦の摂取のみが関連していました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30016529/

【3】Ⅱ型糖尿病患者13名 (平均61±9歳、アメリカ) を対象としたランダム化クロスオーバー試験において、高食物繊維食 (水溶性25 g+不溶性 25 g =総量50 g) を6週間摂取させたところ、血糖値、尿中グルコース量、血糖値とインスリン濃度の24時間曲線下面積、総コレステロール値、中性脂肪値、VLDL値が低下しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10805824

【4】インスリン非依存性糖尿病男性患者8名 (平均45歳、カナダ) を対象としたクロスオーバー比較試験において小麦パン19 g/日またはオートブラン34 g/日を24週間摂取させたところ、オートブラン摂取群で血糖値曲線下面積、インスリン曲線下面積、総コレステロール値、LDLコレステロール値、LDLコレステロール/HDLコレステロール比が低下しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8948386

【5】男女850名 (15~77歳、平均34歳、中国) にオートムギ100 g/日を3日間摂取させたところBMIおよび血圧の低下、HDLコレステロール濃度の上昇が認められました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7840076

【6】高コレステロール血症の男性20名 (平均61±2歳、アメリカ) にオートブランまたは小麦ブランを21日間摂取させたところ、オートブラン摂取群において総コレステロール値、LDLコレステロール値、アポリポタンパクB-100値、中性脂肪値の低下が認められました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1654739

【7】成人の高コレステロール血症患者におけるLDLコレステロール低下作用を、米ぬかを摂った場合とβグルカンを摂った場合で比較した結果、β-グルカンを摂ったほうが、LDLコレステロール低下作用は高いと示されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21505506

【8】健康なイギリス人220名を対象に、食物繊維摂取量と便通回数と大腸疾患の関係を調査したところ、食物繊維を1日18g 以上摂取すると、適度な便通を促し、大腸疾患の予防に役立つと示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1333426

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参考文献

日本食品標準成分表2020年版(八訂)
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html

THE UNIVERSITY OF SYDNEY「GI FOODS ADVANDED SEARCH」
http://www.glycemicindex.com/index.php

Fulgoni VL 3rd, Chu Y, O’Shea M, Slavin JL, DiRienzo MA. Oatmeal consumption is associated with better diet quality and lower body mass index in adults: the National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES), 2001-2010. Nutr Res. 2015 Dec;35(12):1052-9. doi: 10.1016/j.nutres.2015.09.015. Epub 2015 Oct 5. PMID: 26494025.

Kyrø C, Tjønneland A, Overvad K, Olsen A, Landberg R. Higher Whole-Grain Intake Is Associated with Lower Risk of Type 2 Diabetes among Middle-Aged Men and Women: The Danish Diet, Cancer, and Health Cohort. J Nutr. 2018 Sep 1;148(9):1434-1444. doi: 10.1093/jn/nxy112. PMID: 30016529.

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