ノニとは?
●基本情報
ノニとは、アカネ科ヤエヤマアオキ属に属する常緑小高木植物[※1]です。樹高は5~10mで、種をまいてから8ヵ月程度で白い花を咲かせ実をつけます。ゴツゴツとした硬い果実は、熟すにつれ緑色から黄色に変化し、チーズのような特有のにおいを放ちます。
ノニの原産地はインドネシアのモルツカ諸島(現在のマルク諸島)です。ハワイやポリネシア諸島などの太平洋の島々、オーストラリア、インドなどの熱帯・亜熱帯地域を中心に自生しています。日本では沖縄の八重山諸島などで見ることができます。ノニは冬場を除きほぼ1年を通して収穫が可能な果物です。
ノニという名前はハワイの呼称で、フィリピンやタヒチでは「ノノ」、沖縄では「ヤエヤマアオキ」などと呼ばれています。
●ノニの歴史
ノニは約2000年も昔から、果実を絞ったジュースが万病に効くとされ、ポリネシア諸島の人々の間で「驚異のフルーツ」と呼ばれ重宝されてきました。また、「ハーブの女王」や「神からの贈り物」とも呼ばれ、古来より鎮痛・炎症・下痢など、様々な場面で万能薬として役立てられてきました。
1700年代後期に、ヨーロッパの探検家であるキャプテン・ジェームズ・クックとその一行が航海の際にタヒチなどの島々を発見し、旅行記にノニについて記したことがきっかけで、徐々に広まっていったといわれています。また、ノニは強い生命力を持ち、海流に乗った種子が東南アジアや沖縄などに漂着し自生するようになったともいわれています。
沖縄では琉球王朝時代からノニを薬用や染料に利用していましたが、特有の強いにおいのため食用としては普及していませんでした。
近年、ノニの高い栄養価が注目されノニジュースが健康食品として販売される他、ノニの持つ健康効果についてさらなる研究が進められています。
●ノニの利用法
ノニは果実を絞ってジュースがつくられたり、サプリメントなどに加工され利用されています。生の果実が食べられることもありますが、特有の強いにおいと味があるためあまり好まれていません。
また、ノニを酒に浸して薬用酒にすることも多く、特に筋肉痛や背中の痛みに効くとされています。他にもノニの葉を煎じてお茶にしたり、インドネシアでは新鮮な葉が野菜代わりに食べられることもあります。
●ノニに含まれる成分と性質
ノニには、ビタミンCやビタミンB群などのビタミン類、カリウムやカルシウムなどのミネラル類、アミノ酸、β-カロテン、プロキセロニン、スコポレチンに加え、根に多く含まれているモリンジン、芳香成分であるテルペン、オレイン酸、リノール酸など140種類以上もの有効成分が含まれています。
β-カロテンは体内で必要な分のみビタミンAに変換されます。脂溶性のビタミンでもあるビタミンAは油との相性が良く、油と一緒に摂取することで吸収率が上がります。
ビタミンCやβ-カロテンには強い抗酸化作用があり、紫外線や喫煙、ストレスなど生活の様々な場面で発生する活性酸素[※2]を除去し、体が酸化することを防ぐ働きがあります。鉄クギを放置し空気中にさらしておくと鉄クギがサビついてしまいます。この現象が酸化であり、人間の体内で酸化が起こると、病気や老化、肌トラブルの原因となってしまいます。ノニに含まれるビタミンCやポリフェノールが体内で強い抗酸化作用を発揮して酸化から体を守ることで、病気や老化、肌トラブルが予防されます。
ノニに豊富に含まれるビタミンCは、丈夫な血管や筋肉、骨、肌などをつくるコラーゲンの合成に必要不可欠な成分です。ノニには骨の形成成分であるカルシウムやマグネシウム、弱った細胞の再生を促し細胞の機能を正常に保つ働きがあるプロキセロニンや、亜鉛、髪や爪、目などを健康に保つβ-カロテンなども豊富に含まれています。
そのため、骨を丈夫にしたり、味覚を正常に保つほか、血管から出血しやすくなる壊血病[※3]の予防に効果的に働きかけるといわれています。
また、人間に必要不可欠なたんぱく質のもととなるアミノ酸も豊富に含まれています。ノニには体内でつくり出せず、食事から補わなければならない全ての必須アミノ酸が含まれており、健康な体をつくります。【1】
[※1:常緑小高木植物とは、1年中葉を落とすことなく常に緑を見ることができる植物のうち、樹高が5m以上10m未満の植物のことです。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]
ノニの効果
ノニには、ビタミンCやビタミンB群などのビタミン類、カルシウムやカリウムなどのミネラル類、アミノ酸、β-カロテン、プロキセロニン、スコポレチン、モリンジン、テルペンなど多くの有効成分が含まれており、これらの成分には以下のような健康に対する効果が期待されます。
●生活習慣病の予防・改善効果
血液中の悪玉(LDL)コレステロールが増加すると、血管の内壁が脂質で分厚くなり、こぶのようにせり出して血管を狭めるため、高血圧や動脈硬化などが引 き起こされます。ビタミンCをはじめとするノニに含まれる様々な成分には、血中の悪玉(LDL)コレステロールを減少させる働きがあります。さらに、ノニ に含まれるスコポレチンには血管を拡張し弾力を持たせる働きがあり、カリウムにはナトリウムの排泄を促し、血圧の上昇を抑える働きがあります。そのため、 ノニは高血圧を防ぎ、動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果的であると考えられています。
また、ノニには脂肪を燃焼させる成分も多数含まれているため、生活習慣病の原因となる肥満の予防や改善にも効果があるといわれています。【1】
●感染症を予防する効果
ノニにはビタミンCやプロキセロニンなどが豊富に含まれています。
ビタミンCは、血液中の白血球、特に好中球[※4]の活性を高め、体外から侵入してきた細菌やウイルスなどを撃退します。ビタミンCは白血球の働きを高める作用があることに加え、ビタミンC自体も細菌やウイルスに対抗する力を持っています。さらに、プロキセロニンは体内でキセロニンに変換され、人間が持つ自然治癒力を高める働きをします。そのため、ノニには免疫力を高め風邪などの感染症を予防したり、病気の回復を早める効果があるといわれています。【2】
●美肌・美白効果
シミ・そばかすの原因となるメラニン色素は、アミノ酸の一種であるチロシンから生成されます。ノニに豊富に含まれているビタミンCはチロシンを生成する酵素であるチロシナーゼの働きを抑制し、メラニン色素の沈着を防ぐ働きがあるため、シミ・そばかすの予防につながるとされています。ビタミンCはメラニン色素を素早く分解する働きも持ち、日焼けした肌を早くもとの状態に戻す美白効果も期待できます。さらに、亜鉛やプロキセロニンには新陳代謝[※5]を活発にする働きがあるため、肌のターンオーバー[※6]を正常に導き美しい肌をつくり出す効果も期待されています。【3】
●ストレスをやわらげる効果
ノニに含まれるビタミンCには、ストレスを和らげる副腎皮質[※7]ホルモンと、心地良さなどの感情をつくり出すドーパミンや気持ちを落ち着かせるGABAなどの神経伝達物質[※8]の合成をサポートする働きがあります。さらに、スコポレチンやテルペンには精神状態を安定させる働きがあります。そのため、ノニにはストレスをやわらげ、イライラを鎮め精神状態を安定させる効果があると考えられています。【4】
●むくみを予防・改善する効果
ノニに含まれるカリウムには、体内の余分な水分を排出する働きがあります。そのため、細胞間に溜まる水分が原因で起こるむくみの予防や改善に効果を発揮します。
●炎症を抑制する効果
ノニに含まれているスコポチレンやプロキセロニン、モリンジンなどには強力な抗菌作用があるため、体内での炎症を抑制する効果が期待できます。また、スコポチレンは鎮痛作用があるとされ、抗ヒスタミン剤[※9]としても利用されています。【6】
[※3:壊血病とは、ビタミンCの不足によって体内の各器官に出血性の障害が生じる疾患のことです。]
[※4:好中球とは、体内に存在する白血球の40%~60%占める白血球の一種です。急性的な炎症に対して中心となって血液中の細菌やウイルスと闘います。]
[※5:新陳代謝とは、古い細胞や傷ついた細胞が、新しい細胞へ生まれ変わることを指します。]
[※6:ターンオーバーとは、肌が生まれ変わる周期のことです。ターンオーバーは20歳頃までは28日前後で生まれ変わるといわれていますが、ターンオーバーは年齢とともに遅れていき、40歳を過ぎると40日以上かかるようになります。年齢とともに肌の透明感やハリが失われる原因のひとつです。]
[※7:神経伝達物質とは、神経細胞の興奮や抑制を他の神経細胞に伝達する物質のことです。]
[※8:副腎皮質とは、腎臓の上に位置する臓器である副腎の周辺部分のことです。副腎皮質からはアドレナリンなどの様々なホルモンが分泌され、生命を維持するために欠かせない臓器です。]
[※9:抗ヒスタミン剤とは、体内でのヒスタミンの反応を抑制する薬のことです。体内でヒスタミンが大量に生じるために起こるじんましんや鼻炎、喘息(ぜんそく)などのアレルギー症状の治療に用いられます。]
ノニは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○生活習慣病を予防したい方
○丈夫な体をつくりたい方
○肥満を防ぎたい方
○風邪をひきやすい方
○美肌を目指したい方
○ストレスをやわらげたい方
○手足のむくみでお悩みの方
ノニの研究情報
【1】高脂肪食摂取マウスに、発酵ノニ果汁を12週間摂取させたところ、体重の増加、糖新生が抑制されました。ノニは肝臓のグルコース代謝を調節し、Ⅱ型糖尿病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22011624
【2】ノニの葉は、過酸化脂質、一酸化窒素および活性酸素を抑制する働きが知られており、ノニが抗酸化作用および抗菌作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21548805
【3】健常人25名を対象に、ノニの葉抽出物を塗布したところ、紫外線による紅斑が緩和されたことから、ノニが紫外線から肌を守る働きを持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19283442
【4】水晶体混濁マウスに、ノニを摂取させたところ、水晶体混濁関連酵素アルドース還元酵素のはたらきが抑制され、水晶体の混濁が抑制されたことから、ノニが水晶体予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21570444
【5】健忘症マウスに、ノニ果実抽出物を3日間摂取させたところ、脳血流が維持され、記憶力維持に関係する酵素アセチルコリンエステラーゼに働きかけ、記憶障害が改善されました。ノニが記憶力維持、認知症予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22107832
【6】ノニの果汁は、炎症促進物質シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し、プロスタグランジンE2の産生を抑制する働きを持つことから、ノニが抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20858541
参考文献
・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館
・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社
・Nerurkar PV, Nishioka A, Eck PO, Johns LM, Volper E, Nerurkar VR. 2012 “Regulation of glucose metabolism via hepatic forkhead transcription factor 1 (FoxO1) by Morinda citrifolia (noni) in high-fat diet-induced obese mice.” Br J Nutr. 2012 Jul;108(2): 218-28.
・Serafini MR, Santos RC, Guimarães AG, Dos Santos JP, da Conceicão Santos AD, Alves IA, Gelain DP, de Lima Nogueira PC, Quintans-Júnior LJ, Bonjardim LR, de Souza Araújo AA. 2011 “Morinda citrifolia Linn leaf extract possesses antioxidant activities and reduces nociceptive behavior and leukocyte migration.” J Med Food. 2011 Oct;14(10): 1159-66.
・West BJ, Deng S, Palu AK, Jensen CJ. 2009 “Morinda citrifolia Linn. (Rubiaceae) leaf extracts mitigate UVB-induced erythema.” J Nat Med. 2009 Jul;63(3): 351-4.
・Gacche RN, Dhole NA. 2011 “Profile of aldose reductase inhibition, anti-cataract and free radical scavenging activity of selected medicinal plants: an attempt to standardize the botanicals for amelioration of diabetes complications.” Food Chem Toxicol. 2011 Aug;49(8): 1806-13.
・Pachauri SD, Tota S, Khandelwal K, Verma PR, Nath C, Hanif K, Shukla R, Saxena JK, Dwivedi AK. 2012 “Protective effect of fruits of Morinda citrifolia L. on scopolamine induced memory impairment in mice: a behavioral, biochemical and cerebral blood flow study.” J Ethnopharmacol. 2012 Jan 6;139(1): 34-41.
・Dussossoy E, Brat P, Bony E, Boudard F, Poucheret P, Mertz C, Giaimis J, Michel A. 2011 “Characterization, anti-oxidative and anti-inflammatory effects of Costa Rican noni juice (Morinda citrifolia L.).” J Ethnopharmacol. 2011 Jan 7;133(1): 108-15.