ニガウリ

Better Melon  
ゴーヤー ツルレイシ

沖縄県民の長寿の秘訣といわれているニガウリは、独特の苦みを持ち健康維持に適した野菜として人気があります。また、ニガウリ特有のツルが、暑さ対策の緑のカーテンとして栽培されることもあります。

ニガウリとは?

●基本情報
ウリ科ツルレイシ属に属する一年草の植物です。
ゴツゴツとしたイボのある独特の見た目と、特有の苦みが最大の特徴です。
深い緑色をしているため緑黄色野菜と思われがちですが、淡色野菜に分類されます。
青果店で販売しているものは緑色の未熟なニガウリで、中には苦みの強いワタと種が入っています。
ニガウリを収穫せずに育て続けると緑色の皮が黄色く熟し、皮が破れて真っ赤なゼリー状のものに包まれた種が出てきます。この赤い種には甘みがあり、ダイエットに効果的であるといわれています。また、翌年の春には植えることもできます。
毎日のようにニガウリ料理を常食する沖縄の人たちは、100歳以上の人口が全国平均の約3倍と高く、ガンや心臓病、糖尿病での死亡率が低いことから、長寿の秘訣はニガウリを多く食べているためであると考えられるようになりました。

●ニガウリの歴史
ニガウリは、インドやボルネオなどの熱帯アジアが原産の野菜です。
15~16世紀頃に中国へ伝わり、日本へは16世紀頃に伝来したといわれています。
当時は沖縄県や九州などの南の地域で食べられていましたが、1993年に沖縄県の作物が日本全国に出荷されるようになり、ニガウリも普及するようになりました。
ニガウリは、その栄養価の高さに注目が集まり、1990年代から始まった沖縄料理のブームがきっかけで、夏バテ予防や健康維持のために食べられるようになりました。

●ニガウリの生産地
最もニガウリの出荷量が多い県は沖縄県で、国内出荷量の32%を占めています。次いで宮崎県が18%、鹿児島県が14%、熊本県が10%と7割以上が南日本で生産されています。(2008年)
生産されたニガウリはお茶やサプリメントなどの加工品としても広く利用されています。

●ニガウリの品種
ニガウリの品種は数多く存在しますが、大きくは一般的な長果型と太さが8㎝前後になる短果型に分かれます。
宮崎県や鹿児島県で栽培されているものはやや細長い形で苦みが強く、沖縄県で栽培されているものはずんぐりとした形をしており果肉が厚く苦みが少ないという特徴があります。
以下はニガウリの主な品種です。

・中長ゴーヤー
一般的に流通している品種で、長さは25㎝前後です。ゴーヤーチャンプルーや天ぷらなどの揚げ物に向いています。

・太レイシ
イボにやや丸みがあり、長さが15㎝程度の太くずんぐりした形をしています。肉厚でみずみずしく、食べごたえがあります。苦みは控えめです。

・白レイシ
全体が真っ白で、丸みを帯びたイボがついています。苦みが少ないため、薄く切って生で食べることもできます。
別名サラダゴーヤーとも呼ばれています。

・なめらかゴーヤー
果皮の色が薄く、イボが少ないため表面がなめらかでサイズは25㎝程です。一般的なニガウリに比べ、苦みが少なく食べやすいことが特徴です。

・ミニゴーヤー
長さが10~15㎝程の小さいサイズのニガウリです。苦みは少なめですが、品種によっては非常に苦みの強いものもあります。

●美味しいニガウリの見分け方
全体に鮮やかな緑色をしており、重量感のあるものを選びます。色が濃いと苦みが強いといわれているため、苦みの苦手な人は薄めの色のニガウリを選ぶようにします。
イボが尖っていてハリがあるものが新鮮なニガウリです。イボが黒ずんでいたりつぶれているものは鮮度が落ちている証拠です。一説では、イボの小さい方が強い苦みを持っているといわれています。

<豆知識①>ゴーヤーチャンプルーは理想的なメニュー
ニガウリを美味しく食べるには、最大の持ち味である苦みを生かして調理することが大切です。しかし、苦みがあまりにも強すぎると食べにくくなってしまいます。
ニガウリの苦みは、油を使って高温で調理することにより抑えることができますが、うまみ成分であるイノシン酸と組み合わせることでより苦みが和らぎ、ニガウリのうまみが引き出されます。
イノシン酸は肉や魚などに含まれています。豚肉やかつお節を材料としてつくられる沖縄の代表料理ゴーヤーチャンプルーは、ニガウリのうまみを最大限に味わえる料理といえます。
また、ゴーヤーチャンプルーには良質の植物性たんぱく質である豆腐も入っており、栄養バランスの面においても非常に理想的なメニューであるといわれています。

●ニガウリの生育
ニガウリはつる性の植物のため、ネットやフェンスに這わせて育てます。
つるが長く伸びるニガウリは、ベランダで日よけがわりとして育てられることもあります。病害虫に強い植物のため、安心して育てることができます。
ニガウリの旬は5月~9月頃です。

●ニガウリの保存方法
ニガウリを丸ごと1本保存する際はポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存します。
切ったニガウリを保存しておきたい場合は、ワタと種をくりぬいて水気をとり、ラップに包むか密封できる容器に入れて冷蔵保存をします。茹でて保存することも可能です。

●ニガウリに含まれる栄養素
ニガウリには独特の苦みがあります。この苦みはククルビタシンなどのフラボノイド系の成分によるもので、これらの成分には活性酸素[※1]の生成を抑制する働きがあります。また、毛細血管を丈夫にして血液の循環を良くする働きもあります。
また、ニガウリはビタミンCの含有量が非常に多く、疲労回復や夏バテにも効果的であるといわれています。
ニガウリに含まれるビタミンCには、加熱に強いという特徴があります。また、ニガウリにはβ-カロテンも含まれているため、油で炒めると消化吸収が一層良くなります。

<豆知識②>ニガウリはワタにも栄養素が詰まっている
ニガウリを調理する際、多くの場合は苦みが強いワタは取り除かれます。
しかし、果肉よりワタの方が1.7倍もの多くのビタミンCを含んでいます。
ニガウリそのものを食べる際は苦みのあるワタを取り除きますが、ニガウリの加工品であるゴーヤー茶は果肉やワタ、種を丸ごと使用しているため、ビタミンCや食物繊維などを無駄なく摂取することができます。

[※1:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

ニガウリの効果

ニガウリには、モモルデシンやチャランチン、ポリペプチド-P、ククルビタシン、ビタミンC、β-カロテン、カリウムなどの有効成分が豊富に含まれているため、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●糖尿病を予防する効果
ニガウリに含まれるモモルデシンやチャランチン、ポリペプチド-Pなどは、肝臓や筋肉、脂肪細胞といった組織におけるブドウ糖の取り込みを促進して、血糖値を低下させる働きがあることが期待されています。
また、ニガウリの種子にインスリン[※2]様物質が含まれていることが認められています。
さらに、ニガウリには糖質の代謝[※3]を改善させるビタミンB₁や糖質の吸収を抑制するといわれている食物繊維が豊富に含まれています。【1】【2】【4】

●動脈硬化を予防する効果
日常生活で体内に発生する活性酸素は、血中の脂質を酸化させ動脈硬化の原因となります。
活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持つ酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質たんぱく質DNAなどに悪影響を及ぼし、老化などの原因になるとされます。
ニガウリに含まれるβ-カロテンやビタミンCには体内の活性酸素を除去する働きがあり、血中の脂質の酸化を防ぎ血管を若々しく保ってくれるため、動脈硬化の改善や予防に効果を発揮するといわれています。
また、ニガウリのビタミンCは熱に強いため、他の野菜よりも効率的にビタミンCを摂取できます。
ニガウリの苦み成分であるククルビタシンには、毛細血管を丈夫にして血液循環を良くする働きもあるため、ニガウリには血流を改善し、動脈硬化を予防する効果があるといわれています。【3】

●高血圧を予防する効果
血圧は、血液中のカリウムとナトリウムのバランスによって正常に保たれていますが、日本人の食生活は食塩の摂取量が多くナトリウムが過剰摂取になりやすいため、高血圧になる可能性が高いといわれています。
高血圧を防ぐためには、塩分を控えるだけでなくカリウムの摂取も大切です。
ニガウリにはカリウムが紅茶の4倍と豊富に含まれているため、ナトリウムとのバランスをとって高血圧を予防する効果があるといえます。【3】【4】

●胃の健康を保つ効果
ニガウリに含まれる苦み成分でフラボノイド系のモモルデシンには、胃腸の粘膜を保護したり胃液の分泌を促す働きがあります。【5】【6】

●疲労回復効果
ニガウリに含まれるモモルデシンの働きにより胃の働きが活発になると、食欲の増進につながり、疲労回復や夏バテの防止に効果的です。
ニガウリにはビタミンCも豊富に含まれているため、さらに疲労を回復する効果が期待できます。

●美肌効果
ビタミンCはシミやしわを改善し、透明感とハリのある肌を取り戻します。
ニガウリには加熱に強いビタミンCが豊富に含まれているため、美肌効果が期待できます。

●便秘を解消する効果
ニガウリには、食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維は腸内の不要なものを吸着し、腸の動きを促進する働きがあるため、便秘の解消に効果的です。

[※2:インスリンとは、血糖値をコントロールする作用を持ったホルモンです。]
[※3:代謝とは、生体内で物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]

ニガウリは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○糖尿病を予防したい方
○動脈硬化を予防したい方
○高血圧を予防したい方
○胃の健康を保ちたい方
○疲労を回復したい方
○美肌を目指したい方
○便秘でお悩みの方

ニガウリの研究情報

【1】in vitroで、ニガウリから分離されたサポニンの抗糖尿病活性について調べました。サポニンおよび溶媒と一緒にβ細胞を培養した結果、サポニンの添加によってインスリンの分泌が亢進されました。このことから、ニガウリの摂取は、糖尿病に対して有効に働く可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22133295

【2】ニガウリ(MCE)の血糖降下作用および抗高脂血症に対する活性について調べました。アロキサン一水和誘発糖尿病ラットに対し、MCEを150、300、600、4mg/kg、30日間経口投与し、7、14、21,30日目にそれぞれ血糖を調べました。MCE投与群は、グルコースの取り込を促進し、肝蔵におけるグリコーゲンの分解を阻止しました。また、血清コレステロール値、グリセリドの減少が認められました。このことから、MCEはランゲルハンス島のインスリン分泌を促進させることが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17892543

【3】乳酸菌発酵豆乳とニガウリの高脂血症に対する働きについて調べました。高脂血症ハムスターで、ニガウリは血清コレステロールおよびアテローム硬化症の発生を抑え、またLDL/HDLコレステロールの比が低下しました。このことにより、乳酸菌発酵豆乳とニガウリの併用は、動脈硬化の予防となる可能性があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19216552

【4】ニガウリの抗高血糖作用についてストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルラットを用いて検討しました。ニガウリの経口投与は、濃度依存的に血糖値を下げました。また、高血圧発症ラットにニガウリ抽出物を静脈投与した結果、血圧が下がることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17117226

【5】ニガウリの抽出物が胃潰瘍、十二指腸潰瘍に及ぼす作用を検討しました。ニガウリ抽出物100mg/kg、500mg/kgの経口投与がラットの胃潰瘍および十二指腸潰瘍を予防する可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19501279

【6】ラットエタノール誘発性潰瘍誘発モデルを用いてニガウリの抗潰瘍作用について調べました。その結果、ニガウリのエタノール抽出物が抗潰瘍活性を有することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10904148

【7】ウサギ創傷治癒に対するニガウリクリーム(MC)の局所作用について検討しました。ウサギ皮膚切開部分に、28日間、MCを塗布し、組織病理学的検査を行いました。炎症細胞は、MC群で減少しました。繊維芽細胞の数は、MC塗布群で一番高いことがわかりました。また、MC群は血管、コラーゲン線維の中間密度および高い成熟繊維芽細胞密度を示しました。これらのことから、MCは創傷治癒作用を有することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22812507

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参考文献

・野間佐和子 旬の食材 春‐夏の野菜 講談社

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・本多京子 食の医学館 小学館

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・Keller AC, Ma J, Kavalier A, He K, Brillantes AM, Kennelly EJ. (2011) “Saponins from the traditional medicinal plant Momordica charantia stimulate insulin secretion in vitro.” Phytomedicine. 2011 Dec 15;19(1):32-7. Epub 2011 Nov 30.

・Fernandes NP, Lagishetty CV, Panda VS, Naik SR.(2007) “An experimental evaluation of the antidiabetic and antilipidemic properties of a standardized Momordica charantia fruit extract.” BMC Complement Altern Med. 2007; 7: 29.

・Tsai TY, Chu LH, Lee CL, Pan TM. (2009) “Atherosclerosis-preventing activity of lactic acid bacteria-fermented milk-soymilk supplemented with Momordica charantia.” J Agric Food Chem. 2009 Mar 11;57(5):2065-71.

・Ojewole JA, Adewole SO, Olayiwola G. (2006) “Hypoglycaemic and hypotensive effects of Momordica charantia Linn (Cucurbitaceae) whole-plant aqueous extract in rats.” Cardiovasc J S Afr. 2006 Sep-Oct;17(5):227-32.

・Alam S, Asad M, Asdaq SM, Prasad VS. (2009) “Antiulcer activity of methanolic extract of Momordica charantia L. in rats.” J Ethnopharmacol. 2009 Jun 25;123(3):464-9. Epub 2009 Mar 26.

・Gürbüz I, Akyüz C, Yeşilada E, Sener B. (2000) “Anti-ulcerogenic effect of Momordica charantia L. fruits on various ulcer models in rats.” J Ethnopharmacol. 2000 Jul;71(1-2):77-82.

・Pişkin A, Altunkaynak BZ, Tümentemur G, Kaplan S, Yazıcı OB, Hökelek M. (2012) “The beneficial effects of Momordica charantia (bitter gourd) on wound healing of rabbit skin.” J Dermatolog Treat. 2012 Jul 19. [Epub ahead of print]

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