ナリンギンとは?
●ナリンギンの基本情報
ナリンギンはかんきつ類の代表であるグレープフルーツやはっさくなどのミカン科の果実に含まれるポリフェノールの一種で水溶性のフラボノイドです。
グレープフルーツの苦み成分で、果肉よりも果皮に多く含まれます。
ナリンギンの結晶は、鋭い針状になっています。グレープフルーツを食べると舌や唇がヒリヒリするのは、このためといわれています。
●ナリンギンの歴史
ナリンギンは1930年代に初めて研究論文が発表されている成分ですが、研究が盛んになり多くの論文が発表されるようになったのは1980年代頃からです。比較的新しい成分であることが知られています。
<豆知識①>フラボノイドの性質
ナリンギンはフラボノイドの一種です。フラボノイドとは野菜や果物など植物に含まれる色素で黄色からオレンジ、無色のものまで4000種類以上あります。化学構造の違いで、フラボノール類、フラボン類、イソフラボン類、フラバノン類の大きく4つに分けられます。代表的な働きとしては抗酸化作用[※1]で、活性酸素を強力に抑制します。
1日の必要量については、現在は決められていませんが水溶性のため多く摂り過ぎてしまっても不要分は体外に排出されてしまうため、摂りすぎの心配はありません。
●ナリンギンを摂取する際の注意点
ナリンギンは薬の作用を阻害する恐れがあるため、ナリンギンの豊富なグレープフルーツと薬を同時に服用することは避けたほうが良いとされます。
また高血圧の治療薬と一緒に摂ると、薬の効能を強くして血圧が下がり過ぎるほか、心拍数が早くなりすぎるといった副作用を引き起こす可能性があります。そのため、高血圧の治療薬を服用している場合、医師への相談が必要になるほか、そのほかの薬も飲み合わせが懸念されるため、事前に医師に相談することが望ましいです。
●ナリンギンを多く含む食べ物
ナリンギンが含まれている有名な食べ物は、グレープフルーツです。
グレープフルーツはさわやかな酸味と適度な苦みをあわせもつ柑橘系の果実として知られています。グレープフルーツはブンタンの仲間で、果皮が薄く果肉がやわらかいという特徴があります。つやのある葉をつけ、白い花を咲かせる植物です。生で食べるほか、ジュースにもよく利用されます。グレープフルーツは、18世紀の西インド諸島で発見され、グレープフルーツという名前の由来は、果実がぶどうの房のように実ることから名付けられました。
果皮にハリがあって、手に取るとずっしりとした重みがあるものが良いとされ、冬は室温でも問題ありませんが、夏は冷蔵庫で保管することをおすすめします。
それにより、ナリンギンを失うことなく摂取することができます。
●ナリンギンの働き
ナリンギンは食欲を抑える効果や抗酸化作用を持ちます。ナリンギンのアグリコン[※2]であるナリンゲニンを摂取することによって脳の血管性疾患のリスクが低下したという報告もあります
[※1:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※2:アグリコンとは、配糖体から糖を除いた部分のことです。例として、配糖体のアントシアニンから糖が外れるとアグリコンであるアントシアニジンとなります。]
ナリンギンの効果
●ダイエット効果
ナリンギンは食欲抑制作用や抗酸化作用があり、また満腹感を得やすくなることから、グレープフルーツにはダイエット効果が期待されます。食べるだけでなく、グレープフルーツの香りを嗅ぐだけでも独特の苦い香りが食欲を抑えてくれるという効果・効能があります。
しかし、薬との飲み合わせなども懸念されるため、薬を服用している人は医師に相談する必要があります。【3】
●血流を改善する効果
グレープフルーツの苦み成分はナリンギンであり、独特の苦みと酸味には血栓を防止し、血中脂肪酸を分解する作用があります。また血管の抵抗力を高め、血管を構成している細胞と細胞の結合組織を丈夫にする働きがあります。そのため、血流を改善しむくみをとる効果があります。【1】【2】
●アレルギーを抑制する効果
ナリンギンは抗アレルギー作用を持ち、花粉症の症状を緩和するとともに免疫力を高めます。
また毛細血管を強くし出血性の疾患を防ぐほか、ウイルスへの抵抗を高め、アレルギーの抑制をします。
●生活習慣病の予防・改善効果
ナリンギンが持つ抗酸化作用は、活性酸素の増加を抑え、生活習慣病の予防に役立ちます。
活性酸素の増加が生活習慣病を引き起こすといわれています。活性酸素は、ストレス・紫外線・喫煙・過剰な運動などが原因で増加します。本来活性酸素は、体の中に入ってきた細菌やウイルスを退治してくれる働きを持つため、私たちの体にとって必要なものですが、増えすぎるとその強力なパワーにより細胞を傷付けてしまうことがあります。また、活性酸素はコレステロールを酸化させ、生活習慣病を引き起こす原因にもなります。
ナリンギンは抗酸化作用を持ち、また、コレステロール値を抑える効果があることが研究されています。
ナリンギンは食事やサプリメントで摂取できます
ナリンギンを含む食材
○グレープフルーツ
○はっさく
こんな方におすすめ
○ダイエット中の方
○血流やむくみを改善したい方
○アレルギー症状を予防・緩和したい方
○生活習慣病を予防したい方
ナリンギンの研究情報
【1】高脂肪食ラットにナリンギン摂取させたところ肝機能不全の改善と、血漿脂質の濃度が減少したという報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23446977
【2】グレープフルーツに含まれるナリンギンはアテローム性動脈硬化症に対して効果があるとされています。マウスを使った実験において、抗動脈硬化効果を確認したところその効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21684135
【3】ナリンギンとレッドグレープフルーツをラットに摂取させたところ血漿脂質の改善と血漿の抗酸化活性が上昇しました。そのため、ナリンギンには抗酸化作用と血流改善効果が期待されます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15826081
参考文献
・中嶋洋子 栄養の教科書 新星出版社
・日経ヘルス サプリメント事典 日経BP出版センター
・食材図典 小学館
・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社
・工藤秀機 蒲池桂子 栄養を知る事典 日本文芸社
・大澤 俊彦 監修 抗肥満食品・素材の開発と応用展開―メタボリックシンドロームにおけるバイオマーカーの確立と応用 シーエムシー出版
・Alam MA, Kauter K, Brown L. (2013) “Naringin improves diet-induced cardiovascular dysfunction and obesity in high carbohydrate, high fat diet-fed rats.” Nutrients. 2013 Feb 27;5(3):637-50.
・Chanet A, Milenkovic D, Deval C, Potier M, Constans J, Mazur A, Bennetau-Pelissero C, Morand C, Bérard AM. (2012) “Naringin, the major grapefruit flavonoid, specifically affects atherosclerosis development in diet-induced hypercholesterolemia in mice.” J Nutr Biochem. 2012 May;23(5):469-77.
・Gorinstein S, Leontowicz H, Leontowicz M, Krzeminski R, Gralak M, Delgado-Licon E, Martinez Ayala AL, Katrich E, Trakhtenberg S. (2005) “Changes in plasma lipid and antioxidant activity in rats as a result of naringin and red grapefruit supplementation.” J Agric Food Chem. 2005 Apr 20;53(8):3223-8.
・Tereschuk ML, Baigorí MD, De Figueroa LI, Abdala LR. (2004) “Flavonoids from Argentine Tagetes (Asteraceae) with antimicrobial activity.” Methods Mol Biol. 2004;268:317-30.