なめことは
●基本情報
なめこはモエギタケ科スギタケ属のキノコです。日本原産のキノコで、中国や台湾などでも見られますが、食用とされているのは日本だけです。
天然のなめこは広葉樹の倒木に群生するかたちで自生していますが、最近では袋や瓶におがくずにふすまや米ぬかなどの栄養剤を混ぜて固めた床に、なめこの菌を植え付けて育てる菌床栽培や、ブナやトチなどの樹木を用いて育てられる原木栽培によって生産されています。
原木なめこは天然のなめこに引けを取らない味と香りを持ちます。また菌床栽培のものは肉質が軟らかく色とぬめりが薄いことが特徴です。
●なめこの歴史
日本が原産のなめこは、昭和の初期までは主にブナなどの広葉樹の倒木や切り株に自生している、天然のなめこが食用とされていました。最近は人工栽培で生産されていますが、なめこの原木栽培が始まったのは大正時代といわれており、菌床栽培の技術が確立されたのは第二次世界大戦後です。現在スーパーなどで売られているなめこは、ほとんどが菌床栽培によって生産されたものです。
なめこの名前は、特有のぬめりから「滑らっ子(ヌメラッコ)」となり、そこから「なめこ」といわれるようになりました。
●なめこの生産地
なめこは栽培種が主流のため、年間を通して店頭に並びますが、天然のなめこの収穫時期は9月~11月です。中でも最も多く出回りおいしく食べることのできる旬は、10月~11月中旬です。
主な生産地は、新潟県、長野県、山形県であり、原木栽培では山形県で特に多く生産されています。
●なめこの選び方・保存方法
なめこは小粒で傘が開いており、肉厚で全体的にツヤのあるものを選びます。また粒の大きさが揃っており、ぬめりの濁っていないものが新鮮です。
基本的には冷蔵庫で保存ができますが、他のキノコよりも傷みが早く日持ちがしないため、袋から出したものは密封容器などに入れて、1~2日を目安に使い切るようにしましょう。また、足付きなめこはポリ袋に小分けにして、冷凍保存することができます。
●なめこの調理方法
古くから日本で親しまれてきたなめこは、みそ汁の具などに使用されます。なめこのぬめりには栄養が多く含まれるので、水で洗う際はぬめりを落としすぎないように気をつけましょう。また、なめこはあまり消化がよくないため、消化を促してくれる消化酵素を多く持つ大根など合わせて調理をすると、効率よく栄養を摂取することができます。
●なめこに含まれる成分と性質
なめこのぬめりは、水溶性食物繊維のペクチンといわれる成分によるものです。ペクチンはオクラや山芋にも豊富に含まれており、粘膜[※1]を保護する作用があることから、ドライアイや胃潰瘍などの予防に役立ちます。
また、ペクチンにはコレステロールや糖類の吸収を抑制する働きや、腸内環境を整える作用があることも分かっています。
他にも、β-グルカンによる免疫力増強などの効果が期待できます。
[※1:粘膜とは、消化管・呼吸器・排出器・生殖器などの内壁で、常に粘液で湿っている部分のことを指します。]
なめこの効果
●コレステロール値を下げる効果
なめこのぬめり成分であるペクチンにはコレステロール値を下げる効果があります。ペクチンは体内で胆汁酸や食物中のコレステロールが吸収されるのを防ぎ、コレステロール値を下げます。コレステロール値が低下すると、動脈硬化[※5]や高血圧を予防につながります。
高コレステロール血症の成人27名を対象にした研究によると、グレープフルーツペクチン15g/日を16週間摂取させたところ血漿コレステロールが7.6%、悪玉(LDL)コレステロール[※6]濃度が10.8%、悪玉(LDL)コレステロール/善玉(HDL)コレステロール[※7]が9.8%低下したという結果が出ています。【1】【2】
●免疫力を高める効果
なめこをはじめ、キノコに多く含まれる不溶性食物繊維のβ-グルカンには、免疫力の増強や、ガンの増殖を抑制する作用、生活習慣病予防などの働きがあります。
β-グルカンは、体内で免疫機能をつかさどるマクロファージ[※5]やナチュラルキラー細胞[※6]などの働きを活性化させる働きや、インターフェロン[※7]の分泌を促す作用があります。これらの因子を活性化し免疫力を高めることでガン細胞の増殖も抑制することができます。β-グルカンのガンに対する働きから、キノコのβ-グルカンを利用した抗ガン剤も開発されています。
免疫システムが正しく働くようにコントロールする作用を持つことから、β-グルカンはアレルギーや生活習慣病などの予防や治療に役立つとして注目されています。
●腸内環境を整える効果
不溶性食物繊維のβ-グルカンなど、なめこには豊富に食物繊維が含まれています。水溶性食物繊維は水に溶ける性質をもち、腸内でコレステロールや糖質が吸収されるのを防ぐ効果があります。
一方、不溶性食物繊維は水に溶けず、腸内で水を含んで膨張し、腸を刺激してぜん動運動[※8]を活発にするため、腸内の不要なものの排出を促します。
腸内に不要なものを排出し、乳酸菌などの善玉菌[※9]を増やす食物繊維の働きにより、腸内環境を良い状態に保ちます。
[※3:たんぱく質分解酵素とは、たんぱく質を分解して細かく複数個のアミノ酸などにして、体内に吸収されやすくする酵素のことです。]
[※4:ドライアイとは、何らかの原因で涙の量が減る、もしくは涙の質が低下することによって、目の表面が乾き、さまざまな異常が起こる病気です。]
[※5:マクロファージ、白血球の一種です。免疫機能を担う細胞のひとつで、生体内に侵入したウイルスや細菌、または死んだ細胞を捕食し、消化する働きを持ちます。]
[※6:ナチュラルキラー細胞とは、リンパ球に含まれる免疫細胞のひとつで、生まれつき(ナチュラル)外敵を殺傷する(キラー)能力を備えています。ガン細胞やウイルス感染細胞などの異常細胞を発見して退治してくれます。]
[※7:インターフェロンとは、体内にウイルスや病原菌などの異物が侵入すると、分泌されるたんぱく質のことです。免疫力を高めたり、異物の増殖を抑える効果を持っています。]
[※8:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]
[※9:善玉菌とは、ヒトの腸内に住む細菌の一種です。健康に役立つ働きを行っており、もともと大腸に住んでいる腸内ビフィズス菌や乳酸菌、腸球菌などが善玉菌といわれます。]
なめこは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○免疫力を向上させたい方
○生活習慣病を予防したい方
○胃の健康を保ちたい方
○ドライアイでお悩みの方
○腸内環境を整えたい方
○便秘でお悩みの方
なめこの研究情報
【1】高コレステロール血症 (血漿コレステロール値275mg/dL以上) で冠動脈心疾患リスクが高い成人27名 (27~69歳、アメリカ) を対象とした二重盲検クロスオーバー試験において、グレープフルーツペクチンを1日あたり15 gの量で16週間の摂取したところ、血漿コレステロールが7.6%、LDL-コレステロール濃度 が10.8%、LDL-コレステロール/HDLコレステロールが9.8% 低下したことから、ペクチンは高脂血症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3229016
【2】心疾患に罹患していない成人573名 (女性269名、男性304名、40~60歳、アメリカ) を対象とした前向きコホート研究において、内膜中膜複合体厚 (IMT) と種々の食物繊維摂取量を調査したところ、ペクチン摂取量が多いほどIMTが低値であったことから、ペクチンは動脈硬化予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14668268
参考文献
・本多京子 食の医学館 株式会社小学館
・中嶋洋子 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社
・中村丁次 栄養の基本がわかる図解辞典 成美堂出版
・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社
・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 株式会社主婦の友社
・Ike K, Kameyama N, Ito A, Imai S. 2012 “Induction of a T-Helper 1 (Th1) immune response in mice by an extract from the Pleurotus eryngii (Eringi) mushroom.” J Med Food. 2012 Dec;15(12):1124-8.
・Li H, Lu X, Zhang S, Lu M, Liu H. 2008 “Anti-inflammatory activity of polysaccharide from Pholiota nameko.” Biochemistry (Mosc). 2008 Jun;73(6):669-75.
・Li H, Zhang M, Ma G. 2010 “Hypolipidemic effect of the polysaccharide from Pholiota nameko.” Nutrition. 2010 May;26(5):556-62.