ムクナ豆

Velvetbean Mucuna pruriens
八升豆 おしゃらくまめ ビロード豆

ムクナ豆は、つる性の植物で、1つの花房から数本がぶら下がるようにさやが付き、豆には豊富に栄養が含まれています。豆は黒・白・黄褐色をしており、L-ドーパを豊富に含むことが知られています。このことからムクナ豆はパーキンソン病に効果があるとして期待されています。

ムクナ豆とは?

●基本情報
ムクナ豆とは、マメ科の蔓性の一年草です。ムクナ豆は夏に大きく生長し、3~18mにまでなります。白から濃い紫の藤に似た花をつけます。一つの花房から数本がぶら下がるようにさやが実ります。豆は黒・白・黄褐色をしており、たんぱく質、炭水化物・脂質・ミネラルを含んでいます。ムクナ豆は、Lドーパ[※1]を豊富に含むことが知られています。L-ドーパとは神経伝達物質であるドーパミンの材料で、摂取後体内でドーパミンに変換されます。植物の中にはL-ドーパを含むものがありますが、ムクナ豆に多く含まれており、特に豆の部分に多く含まれています。
ムクナ豆は成長力が強く、地面にそって種を播くと土地を覆い尽くすほどに成長します。気候が温暖であれば土地を選ばないことから、土壌保全のための植物として利用されることもあります。また茎や葉はそのまますき込めば緑肥としても使えます。
ムクナ豆には多くの種類がありますが、日本で品種改良されたものは八升豆と呼ばれています。この名前はムクナ豆が八丈島より伝来したためことが由来であるといわれています。

●ムクナ豆の歴史
ムクナ豆は、ネパールなどヒマラヤ山脈の近縁が、原産地とされており、「植物界のシーラカンス」と呼ばれるほど、起源の古い植物です。日本へは東南アジアから台湾を経由して伝えられたといわれ、江戸時代には食料として栽培されていました。ムクナ豆は古くから有効利用されており、数千年の歴史を持つインドの医学書「アーユルヴェーダ」にも記されており、古くから利用されてきました。

●ムクナ豆の四季
春に種を植え付けたムクナは発芽したての頃は大豆のような状態です。初夏につるが伸び始め、周囲のものに巻きつき勢いよく生長します。盛夏の太陽と雨を受けて勢いよく生長し、大きな葉は人の手のひらより大きくなるものもあり、支柱を立てた場合は植物全体もこんもりとした緑の塊のような状態になります。晩夏には花芽をつけて結実しますが、花芽は雨や風に弱いので、その時期は台風には十分な注意が必要です。秋にはさやが大きく育ち中で豆が成熟します。

●ムクナ豆の利用
ムクナ豆は、煮豆やきな粉にして食べたり、茎や葉をお茶にして飲んだりします。
ムクナ豆は、「アク」が強いため、必ずあく抜きをして加熱調理して適量を食べる必要があります。
また、ムクナ豆は研究者の間で他感効果[※4]のある物質として良く知られています。広葉の雑草の育成を阻害しますが、トウモロコシなどのイネ科植物は阻害しないといわれており、ムクナ豆は果樹・野菜等の栽培時の雑草除去に利用されます。

[※1:Lドーパとは、神経伝達物質であるドーパミンの材料のことです。自然界で産生され、ある種の食物や薬草に含まれます。]
[※2:他感効果とは、植物の生産する物質が他の個体あるいは他の生物に及ぼす効果のことをいいます。]

ムクナ豆の効果

●パーキンソン病を改善する効果
パーキンソン病とは、神経伝達物質であるドーパミンの生成量が減少し、脳からの指令が筋肉に十分に届かず、運動機能に障害が発生する病気です。
ドーパミンの生成量が減少する理由は、脳の中でドーパミンを作る黒質細胞[※4]が減少することに関係があります。ドーパミンをそのまま摂取しても、脳内に届かないため、L-ドーパを代わりに摂取します。L-ドーパは脳に届き、脳でドーパミンに変換されてはたらきを示します。
ムクナ豆はLドーパを豊富に含んでいることから、パーキンソン病などに有効であると考えられています。【1】【3】

●生活習慣病を予防する効果
糖尿病ラットを用いた動物実験により、ムクナ豆に食後の血糖値上昇を抑制するはたらきが確認されています。ムクナ豆に糖尿病予防に役立つと考えられています。【2】

●疲労回復効果
ムクナ豆はL-ドーパのほかにも、必須アミノ酸を豊富に含んでいます。
必須アミノ酸は動物の成長や生命維持に必要であるにも関わらず体内で合成されないため、食物から摂取しなければいけません。ムクナ豆はソラマメやいわしに匹敵するほど必須アミノ酸を含んでおり、疲労回復効果や成長促進に役立つと考えられています。

ムクナ豆は食事やサプリメントから摂取できます

こんな方におすすめ

○手足の冷えが気になる方
○疲れをとりたい方

ムクナ豆の研究情報

【1】ムクナ豆はパーキンソン病に処置に使われる民間薬である。ムクナ豆の主要成分、L-ドーパはドーパミンニューロンにはたらきかけることから、ムクナ豆はパーキンソン病予防効果に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19384573

【2】糖尿病モデルラットを対象に、ムクナ豆を投与したところ、食後血糖値の上昇が抑制されたことから、ムクナ豆は糖尿病予防効果を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21914541

【3】動物実験において、ムクナ豆はパーキンソン病予防効果と神経保護効果を示した。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17622977

【4】パーキンソン病の患者にムクナ豆のパウダーを摂取してもらったところ、白髪が黒くなった。これらはメラニンがDOPAの代謝物であることが原因ではないかと考えられる。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23392330

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参考文献

・Kasture S, Pontis S, Pinna A, Schintu N, Spina L, Longoni R, Simola N, Ballero M, Morelli M. (2009) “Assessment of symptomatic and neuroprotective efficacy of Mucuna pruriens seed extract in rodent model of Parkinson’s disease.” Neurotox Res. 2009 Feb;15(2):111-22.

・Majekodunmi SO, Oyagbemi AA, Umukoro S, Odeku OA. (2011) “Evaluation of the anti-diabetic properties of Mucuna pruriens seed extract.” Asian Pac J Trop Med. 2011 Aug;4(8):632-6.

・Tharakan B, Dhanasekaran M, Mize-Berge J, Manyam BV. (2007) “Anti-Parkinson botanical Mucuna pruriens prevents levodopa induced plasmid and genomic DNA damage.” Phytother Res. 2007 Dec;21(12):1124-6.

・Munhoz RP, Teive HA. (2013) “Darkening of white hair in Parkinson’s disease during use of levodopa rich Mucuna pruriens extract powder.” Arq Neuropsiquiatr. 2013 Feb;71(2):133.

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