ムチン

mucin

ムチンとは、糖とたんぱく質が結合してできた多糖類の一種です。
ツバメの巣などのネバネバした食材に含まれるほか、人間の体内にも存在し、涙や胃腸や鼻などの粘膜に含まれています。
粘膜を保護することで様々な病気を予防する効果もあります。

LINEスタンププレゼント!お友達登録はこちら。配信期間2025/01/23

ムチンとは?

●基本情報
ムチンとは、胃液のような動物粘液の主成分である、2 種類の O 型糖鎖を「多数」含んだ糖
タンパク質 のことです。 日本では 「ねばねば成分=ムチン」という誤った認識が広がってお
り、オクラや山芋などのねばねばもムチンと勘違いされることが多いですが、実際は動物界
だけに存在する、動物より分泌される粘質物一般のことを指します。【4】【5】【6】

●ムチンの働き
ムチンは涙に含まれる成分のひとつであり、優れた保水力を持つことで知られています。
目の表面を覆う涙は、油層、水層、ムチン層の3層によって構成されています。水層を油層とムチン層で挟みこむことによって、水分を角膜に密着させ、蒸発を防ぎ、目の潤いを保つ働きを担っています。

また、ムチンには粘膜を保護する作用があります。
胃の粘膜にはムチンが含まれているため、強い酸性を持つ胃酸[※1]から自らを守る機能を果たしています。
消化器の粘膜のほかにも、鼻や口など呼吸器の粘膜にもムチンが含まれています。ムチンは、風邪やインフルエンザなどのウイルスの侵入を防ぐ抗ウイルス作用を発揮します。

さらに、ムチンはたんぱく質の吸収を促進するという働きがあります。
たんぱく質は、筋肉や臓器、皮膚、髪、爪などの体の組織をつくる材料となるだけではなく、体を動かすエネルギー源にもなる重要な栄養素です。

●ムチンを摂取する上での注意
ムチンは熱に弱いという性質があるため、食品からムチンを摂取する際には加熱しすぎないよう注意が必要となります。
また、ムチンは水溶性の成分であり、加熱調理するとムチンが食材の外へ出てしまいます。
そのため、汁ごと食べられるように調理することで、効率良くムチンを摂取することができます。

[※1:胃酸とは、胃液に含まれる強い酸性の消化液のことです。]

ムチンの効果

●ドライアイを予防する効果
涙は目の乾きを防ぐだけではなく、目に入ってきたゴミなどの異物を洗い流し、殺菌するなどの重要な働きを担っています。
しかし、何らかの原因で涙の量が減ったり、涙の質が低下したりすることによって、目の表面が乾き、様々な異常が発生するドライアイが引き起こされてしまいます。
例としては、パソコンやテレビ、スマホの使用や細かい作業によってまばたきの回数が減少したり、コンタクトレンズを長時間つけることで涙の量が低下したりすることがドライアイの原因であるといわれています。

しかし、涙の量が正常であっても、涙の性質が変化し、質が悪くなることによってもドライアイが引き起こされてしまいます。
涙の性質が低下すると、油層、液層の2層からなる涙の働きが不安定になってしまいます。
​これにより、涙が均等に目の表面を覆うことができないと異物や雑菌が目に入りやすくなり、様々な目の病気を引き起こす可能性が高まってしまうのです。
このように、涙の性質が低下して発生するドライアイのケースは、「BUT短縮型ドライアイ」と呼ばれます。
特に、パソコンを使って作業をすることが多いオフィスワーカーやコンタクトレンズの使用者の間で、BUT短縮型ドライアイの患者が増加しているといわれています。
このBUT短縮型ドライアイは、涙に含まれるムチンの状態に異常が発生することが原因のひとつとして考えられています。
ムチンは、目の角膜に最も近いムチン層に含まれており、涙を目に繋ぎ止めるために必要となる成分です。
​ムチンを補うことによって涙の働きを安定させることができるため、ドライアイの改善効果が期待されています。
この効果を利用して、ドライアイを治療するための目薬には、ムチンが配合されているものがあります。

●胃炎や胃潰瘍を予防する効果
ムチンが粘膜を保護する作用は、胃炎や胃潰瘍などの病気の予防に役立ちます。
胃腸は心理的な変化の影響を受けやすい臓器だといわれており、ストレスなどによる緊張状態が続くことによって、粘液の分泌が低下してしまいます。また、暴飲暴食、喫煙、飲酒、香辛料などの刺激物やカフェインの過剰摂取といった生活習慣も、胃炎や胃潰瘍を引き起こす要因となります。
胃の粘液がうまく分泌されていないと、粘膜の働きが低下し、強い酸性を持つ胃酸からのダメージを受けやすくなります。
ムチンを摂取することによって、胃の粘膜を正常に保ち、胃炎や胃潰瘍の発生を防ぐことができます。【1】

●肝機能・腎機能を高める効果
ムチンには、肝臓や腎臓の機能を高める効果があると考えられています。
肝臓は、栄養素の代謝[※3]や有害物質の解毒、胆汁[※4]の分泌などを行う重要な臓器です。
肝臓の機能が低下してしまうと、毒素や老廃物が体内に溜まりやすくなり、疲れやすくなるほか、病気の原因にもつながります。
肝臓の病気には、肝炎や脂肪肝、肝硬変などが挙げられますが、肝臓は病気の自覚症状が現れにくく、症状が出た時には、すでに病気が進行しているケースが多いため、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。
肝臓の病気の原因は、ウイルスによる感染が最も多いといわれていますが、喫煙や飲酒、塩分の過剰摂取、運動不足などの生活習慣によって、病気が引き起こされる原因となることがあります。

腎臓は、塩分や有害物質、老廃物、余分な水分など、体内の不要なものを排泄する重要な器官です。
また、体内の水分のバランスを調節し、血圧を正常に保つ役割を担っています。
塩分やカリウムの過剰摂取などによって腎臓の機能が低下すると、余分な塩分が体内に溜まり、むくみや高血圧のほか、腎不全などの病気が引き起こされます。

●免疫力を向上させる効果
ムチンが粘膜の働きを高め、ウイルスの侵入を防ぐことによって、様々な病気を予防する効果があります。
ウイルスの侵入を最初に防ぐのは、のどや鼻の粘膜と皮膚です。
​ここで防げなかった菌は、血液中の食細胞[※5]によって取り込まれます。
​それでも防ぎきれなかった場合には、白血球[※6]によって攻撃されます。
しかし、免疫機能は生活習慣によって左右されるといわれているため、過労や不規則な生活習慣が続くと、この免疫機能が正常に働かなくなり、病原菌やウイルスに抵抗する力が低下し、病気にかかりやすくなってしまいます。
ムチンはのどや鼻の粘膜に含まれている成分であり、ウイルスから体を守り、風邪などの感染症にかかりにくくする効果が期待できます。【2】

また、ムチンの腸内環境を整える働きは、免疫力の向上に役立ちます。
​腸管の粘膜には、免疫細胞であるリンパ球[※7]が多数存在しており、体の免疫機能と深い関わりがあるため、ムチンが腸の粘膜に存在することによって、免疫力を高めることができると考えられています。

●疲労回復効果
ムチンには、たんぱく質を分解する酵素が含まれており、食べ物から摂取したたんぱく質を吸収されやすくする働きがあります。
これにより、たんぱく質をエネルギー源として効率良く利用することができるため、疲労を回復させる効果が期待できます。

[※3:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです、また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
[※4:胆汁とは、肝臓でつくられるアルカリ性の液体です。胆汁酸などを含み、脂肪酸の吸収を助ける作用があります。]
[※5:食細胞とは、細菌やウイルスなどを捕らえて消化・分解する細胞のことです。]
[※6:白血球とは、血液に含まれる細胞のひとつです。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する役割があります。]
[※7:リンパ球とは、白血球の成分のひとつです。]

ムチンは食事やサプリメントで摂取できます

ムチンを多く含む食品

○ツバメの巣

こんな方におすすめ

○ドライアイでお悩みの方
○胃腸・肝臓・腎臓の健康を維持したい方
○免疫力を向上させたい方
○疲労を回復したい方

ムチンの研究情報

【1】ヒトのミルクの高分子成分であるミルクムチンを単離し、動物モデルにおける効果を調べました。結果として、ヒトのミルクムチン複合体に高い抗ウイルス活性が示されました。ヒトのミルクムチンは効果的にロタウイルスに結合し、増殖を抑制する効果が示唆され、ロタウイルスによる胃腸炎を抑制する可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1331178

【2】ヒト唾液腺に存在する低分子ムチン(MG2)と虫歯の関係:(ひいては、好中球と細菌の相互作用)について調べました。MG2と結合している好中球は虫歯の中から分離され、好中球が生体内でムチンと相互作用していることがわかりました。また、MG2は菌の受容体と結合することがわかりました。口腔内の細菌18種類のうち6種類の細菌は、MG2と結合することがわかりました。これらのことから、MG2の存在は、好中球による菌の貪食作用を促す働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10346903

【4】胃液のような動物粘液の主成分が糖タンパク質で,それをムチンと呼ぶことは科学的に正当であるが,唯一わが国だけでは,野菜や根菜類全般の「ねばねば成分」をムチンと呼ぶ誤った用法が蔓延しており,消化器官の健康解説,調理レシピ,食材や健康食品の効能紹介,地方特産野菜広告など,媒体を問わず,多数の掲載例があるとされています。科学的には,ムチンは動物界(Kingdom of Animalia)だけに存在し,植物やキノコ類には見いだされていないのが現状とされています。
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9701/9701_kaisetsu.pdf

【5】日本食品工業学会編の食品工業辞典の「むちん[ムチン]」の解説について、現在の科学的知見から、ムチンとは「動物より分泌される粘質物一般」を指すということが示されました。
https://jsfst.smoosy.atlas.jp/ja/notices/71

【6】北里大学理学部化学科 丑田 公規  教授によると、『日本では、山芋、オクラ、納豆などのねばねば物質を見た目で「ムチン」と呼ぶ習慣があり、広く流通している辞典などにも記載があるが、これらの多くは別の物質で、構造からもムチンではない』ということが研究で明らかになりました。
https://www.mt-ib-ja.or.jp/news/post-7953.html

参考文献

・本多京子 食の医学館 小学館

・中村丁次 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・井上正子 新しい栄養学と食のきほん事典 西東社

・Xiao XY, Liu ZG. (2012) “[Abnormal of tear lipid layer and recent advances in clinical study of dry eye].” Zhonghua Yan Ke Za Zhi. 2012 Mar;48(3): 282-5.

・Yolken RH, Peterson JA, Vonderfecht SL, Fouts ET, Midthun K, Newburg DS. (1992) “Human milk mucin inhibits rotavirus replication and prevents experimental gastroenteritis.” J Clin Invest. 1992 Nov;90(5):1984-91.

・Prakobphol A, Tangemann K, Rosen SD, Hoover CI, Leffler H, Fisher SJ. (1999) “Separate oligosaccharide determinants mediate interactions of the low-molecular-weight salivary mucin with neutrophils and bacteria.” Biochemistry. 1999 May 25;38(21):6817-25.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ