モズク

水雲 海雲 藻付

モズクには、健康に良いといわれるネバネバ成分フコイダンとアルギン酸が豊富に含まれており、血液をサラサラにすることにより生活習慣病の予防に効果があると期待されています。また、胃の粘膜を保護しピロリ菌から体を守る働きも持っており、免疫力を高めてくれます。

モズクとは?

●基本情報
モズクとはモズク科またはナガマツモ科に属する褐藻です。糸状で細く、枝が多い構造をしており、長さは30~40cm程です。表面には粘質物が多く、健康になれる食品として人気です。
モズクは他の海藻(も)に付着して生息することから、「藻に付く」という意味でモズクと呼ばれるようになりました。
保存性を高めるために、塩蔵品や味付モズクに加工され市場に出回ります。生のものと比べても栄養価はあまり変わりません。

●モズクの生産地
モズクは100%国産の海藻で、4月~7月に旬を迎えます。
1977年に沖縄県の恩納村漁業研究グループと水産業改良習及所の共同研究により、初めてモズクの養殖に成功しました。現在では天然のモズクはあまり流通しておらず、ロープなどに付着させて育てた養殖のモズクが一般的です。最も生産量が多い都道府県は沖縄県で日本の生産量の90%を占めています。

<豆知識>モズクの日
2003年の4月20日(第3日曜日)にモズクの生産量が最も多い沖縄県勝連町が、モズクを全国に広めるためにモズクの日を宣言しました。
それ以来、毎年4月の第3日曜日はモズクの日とされ、沖縄県ではモズクの記念イベントなどが行われています。

●モズクの種類
モズクは大きく3種類に分けられます。それぞれモズク科かナガマツモ科に属します。

・イトモズク
モズク科に属し、北陸以南の各地の沿岸で海藻の一種ホンダワラ類に付着し自生しています。細い繊維の表面にぬめりがあります。

・フトモズク
ナガマツモ科に属するモズクで、オキナワモズクなどの総称です。奄美大島や沖縄沿岸の特産品です。
太い繊維の中心には空洞があり、ネバネバ成分が詰まっています。
海藻ではなく海底の石などに付着します。

・イシモズク
ナガマツモ科に属し、日本海沿岸に分布しています。イシに張り付いて育つことからイシモズクと名付けられました。
ぬめりが少なくシャキッとした歯ごたえが特徴で、食べると磯の香りが広がります。

●モズクに含まれる成分と性質
モズクに含まれる特徴的な栄養素は、水溶性食物繊維の一種であるネバネバ成分のフコイダンやアルギン酸です。他にも、食物繊維やカリウム、カロテノイドの一種フコキサンチンが含まれ、生活習慣病の予防や便秘の改善などに働きかけます。
特にモズク酢として酢と一緒に摂取すると、モズクの繊維質が柔らかくなり、モズクの栄養素の吸収が促進されるためさらに健康への効果が期待できます。
また、フコイダンは加熱により体内で使用されやすい形になるため、天ぷらやみそ汁などに使用することも効果的です。

モズクの効果

モズクは、水溶性食物繊維のフコイダンやアルギン酸、カロテノイドの一種フコキサンチン、食物繊維、カリウムなどの栄養素が豊富に含まれているため、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●免疫力を高める効果
​​ウイルスなどの異物が体内に侵入してきた際には免疫機能が働きます。
まず、体内に入ってきた異物は、白血球[※1] であるマクロファージにより有益なものか有害なものかが判断されます。その後、マクロファージは体内の免疫機能の指揮をとるヘルパーT細胞に、異物が侵入してきたことを伝えます。知らせを受けたヘルパーT細胞は異物を排除するため、ウイルスに感染した細胞を破壊するキラーT細胞や、腫瘍細胞[※2]などを傷害する作用があるNK(ナチュラルキラー)細胞に命令を下します。また、ヘルパーT細胞はリンパ球の一種であるB細胞にも異物が侵入してきたことを伝えます。B細胞は伝えられた情報をもとに、異物を捕まえるための特別なたんぱく質(抗体)をつくります。
この3種類の細胞により、体内に異物を侵入させないための免疫機能が働いています。
モズクに含まれるフコイダンには、NK細胞を活性化させる働きがあることが報告されています。このためモズクを摂取することは、免疫機能を高めることにつながると考えられます。【1】【2】

●胃の健康を保つ効果
ピロリ菌が胃壁の弱っているところに付着することで胃潰瘍が発病します。
発展途上国に感染者が多いとされていますが、先進国である日本の中でも感染率が非常に高いといわれています。
モズクに含まれるフコイダンにはピロリ菌が胃壁に付着することを阻止し、胃潰瘍や胃炎を予防するだけでなく、できてしまった胃潰瘍を修復する働きがあります。

●抜け毛を予防する効果
人の毛母細胞[※3]に、毛髪が適当な時期に抜けるようコントロールしていると考えられているたんぱく質(NT-4)を加えると、加えない場合に比べ毛母細胞の細胞死(アポトーシス)[※4]が8倍に上昇しました。さらに、毛乳頭[※5]では男性ホルモンがNT-4遺伝子を作動させ、NT-4が過剰に生産されていることが確かめられました。
これらの結果から、NT-4は男性ホルモンによって働き、毛母細胞を不必要に細胞死(アポトーシス)させることで脱毛を加速していると考えられています。
NT-4の働きを抑える物質として、生薬や植物、海藻など約300種類の成分を調査した結果、オキナワモズク(太モズク)の抽出成分を塗布することが有効であることが明らかになりました。マウスを使用した実験でもこの成分を体に塗ることで同じような有効性があることが確認されています。
このような研究結果から、モズク抽出物は近年育毛剤にも使用されるようになりました。

●糖尿病を予防する効果
モズクに含まれるフコイダンと水溶性食物繊維の一種であるアルギン酸には、体内に入ると糖質の吸収を緩やかにする働きがあります。この働きにより、モズクには血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。
また、酢にも血糖値の上昇を抑制する働きがあるため、モズク酢は糖尿病の予防に適したメニューと考えられています。

●動脈硬化を予防する効果
モズクに含まれている食物繊維の一種であるアルギン酸は、人間の消化液では消化されず、腸内細菌によってわずかに分解される程度です。アルギン酸には、一緒に摂取した食物中のコレステロールを包み込み、そのまま体外へ送り出す働きがあります。この働きにより、腸でのコレステロール吸収が妨げられ血中のコレステロール値が下がります。
モズクには、カロテノイドの一種であるフコキサンチンが含まれています。フコキサンチンには体内の活性酸素[※6]を除去する働きがあり、血液中の脂質の酸化を抑える効果があります。
豊富な栄養素を含んでいるモズクを摂取することにより、動脈硬化の予防効果が期待できます。
さらに、モズク酢にして食べると酢酸とフコイダンの相乗効果で血液をサラサラにするパワーが増します。

●高血圧を予防する効果
モズクに含まれるアルギン酸は、体内のナトリウムと結合しアルギン酸ナトリウムとなり体外へ排出されます。高血圧の原因となるナトリウムを排出するため、血圧を安定させる効果が期待されます。また、モズクにはカリウムが豊富に含まれており、互いに協力して血圧を低下させます。

●便秘・下痢を解消する効果
モズクには2種類の食物繊維が含まれています。
水溶性食物繊維は体内で水分を抱え込んでヌルヌルとしたゲル状になり、余分なものの吸収を和らげる役割をします。一方、不溶性食物繊維は、水に溶けない食物繊維で、水分を吸収して数十倍に膨らみ、体内を刺激して余分なものを押し出す腸のぜん動運動を活発にします。ぜん動運動が活発になると、不要なものが排出されやすくなります。
また、モズクに含まれる水溶性食物繊維の一種フコイダンは、便秘気味の人に作用するだけでなく、習慣的に下痢の症状を繰り返す人に対しても排便回数の抑制と便を硬化させることにより、下痢の症状を緩和する働きが示唆されました。

●痛風を予防する効果
尿は腎臓により生産され、体外に排出されます。尿には老廃物を体外に排出する働きと、体内の浸透圧を調節する働きがあります。
尿のpH[※7]は体調や時間によってある程度は変化しますが、高血圧や痛風、高脂血症、耐糖能異常、肥満などが合併するメタボリックシンドロームの患者の多くはpH6.0未満の酸性尿です。これは、メタボリックシンドロームにより体液が酸性に傾き、尿中に尿酸が溶けにくくなることにより、体内に尿酸が蓄積していくためであると考えられています。血中の尿酸値が上昇すると、体内で尿酸ナトリウムの結晶が生成され、この結晶が痛みの原因となり痛風の症状が引き起こされます。
モズクに含まれるフコイダンには、尿のpHを上げることにより、酸性尿改善の効果があることが明らかになり、痛風のリスクを低減することがわかりました。

●関節痛の症状を緩和する効果
変形性関節症は、軟骨の組織を合成する能力の低下や、過度な運動による機械的な摩擦の結果として起こるといわれています。
モズクに含まれているフコイダンを摂取すると、摂取しなかった時と比べ、損傷した部位が補われることが実験により証明されました。
この働きにより、モズクに含まれているフコイダンには関節痛の症状を緩和する働きがあることが明らかになっています。

●二日酔いを防ぐ効果
飲酒後または飲酒中に気分が悪くなり、頭痛や吐気などの症状を引き起こす原因物質のひとつが、エタノールの分解物質であるアセトアルデヒドであるといわれています。
飲酒前にモズクに含まれているフコイダンを摂取することにより、飲酒4時間後の呼気中のアセトアルデヒドと飲酒6時間後の血清中アセトアルデヒド、飲酒2時間後の呼気中エタノール濃度と血中エタノール濃度が有意に低下していることが証明されました。
この実験結果により、飲酒前にモズクに含まれるフコイダンを摂取すると体内のアルコールの分解が促進されると考えられています。

[※1:白血球とは、血液に含まれる細胞のひとつです。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する役割があります。]
[※2:腫瘍細胞とは、組織、細胞が生体内の制御に反して過剰に増殖することによってできる細胞組織のことです。]
[※3:毛母細胞とは、毛乳頭周辺の組織細胞です。毛乳頭から栄養素や酸素を受け取り、細胞分裂を繰り返すことで髪の毛を生成しています。]
[※4:アポトーシスとは、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、プログラムされた体内の細胞死のことです。]
[※5:毛乳頭とは、毛球の下面のへこみ部分のことです。髪の成長に必要な栄養素や酵素を毛母細胞に送り出し、指示を出す役割を果たしています。]
[※6:活性酸素とは普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※7:pHとは、水素イオン濃度のことで0から14までの数値で物質の酸性度、アルカリ性度を表します。pH 7.0が中性で7.0以上がアルカリ性、7.0以下が酸性です。]

モズクは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○免疫力を向上させたい方
○脱毛を予防したい方
○胃の健康を保ちたい方
○糖尿病を予防したい方
○動脈硬化を予防したい方
○高血圧を予防したい方
○便秘・下痢でお悩みの方
○痛風を予防したい方
○関節痛でお悩みの方

モズクの研究情報

【1】オキナワモズクから抽出されたアセチルフコイダン(CAF)はマクロファージの分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)や細胞外シグナル調節キナーゼを活性化させました。このことから、CAFは、免疫力をより強くすることができると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19219547

【2】担がんマウスにフコイダンを4日間経口投与したところ、生存期間が延長し、正常マウスに投与するとNK(ナチュラルキラー ) 細胞活性やT細胞のIFN-γ産生が高まりました。このことから、フコイダンは、免疫力を増強することで、がん細胞を抑制する働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12929574

【3】モズク抽出フコイダンが、ヒト腫瘍細胞から発生する活性酸素を抑えることがわかりました。また、モズク抽出フコイダンは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP:細胞侵入を助ける酵素)の活性を抑えることにより、ヒト線維肉腫細胞の正常な細胞への侵入を抑制しました。さらに、フコイダンは、血管新生成長因子(VEGF)の活性を抑えることで、血管新生を抑制しました。以上の作用によりモズク抽出フコイダンは抗腫瘍活性を有することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19003051

【4】沖縄で栽培したモズクから抽出したフコイダンがC型肝炎ウイルス(HSV)に対して有効に働くかどうかを検討しました。フコイダンはHCV感染細胞のHCVの増殖を抑えたことがわかりました。また、フコイダン(0.83g/日)を12ヵ月慢性肝炎患者に与え続けると、8~10ヵ月後でフコイダン摂取前よりもHCVのRNAは有意に低下していました。このことから、フコイダンは、HCV関連の慢性肝炎疾患患者に有効に働くと考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22611316

【5】オキナワモズクから抽出したフコイダンの経口摂取がN-ニトロソジエチルアミン(DEN)誘発肝線維症を抑制するかどうかを調べました。DEN誘発による肝線維症ラットにフコイダンを経口投与しました。フコイダンの投与によって肝臓のヒドロキシプロリン濃度およびトランスフォーミング増殖因子β1(線維症のマーカー)が低下することがわかりました。このことにより、オキナワモズクから抽出されたフコイダンは、肝線維症を抑制することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20880181

もっと見る 閉じる

参考文献

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・本多京子 食の医学館 小学館

・Ye J, Li Y, Teruya K, Katakura Y, Ichikawa A, Eto H, Hosoi M, Hosoi M, Nishimoto S, Shirahata S. (2005) “Enzyme-digested Fucoidan Extracts Derived from Seaweed Mozuku of Cladosiphon novae-caledoniae kylin Inhibit Invasion and Angiogenesis of Tumor Cells.” Cytotechnology. 2005 Jan;47(1-3):117-26.

・Mori N, Nakasone K, Tomimori K, Ishikawa C. (2012) “Beneficial effects of fucoidan in patients with chronic hepatitis C virus infection.” World J Gastroenterol. 2012 May 14;18(18):2225-30.

・Nakazato K, Takada H, Iha M, Nagamine T. (2010) “Attenuation of N-nitrosodiethylamine-induced liver fibrosis by high-molecular-weight fucoidan derived from Cladosiphon okamuranus.” J Gastroenterol Hepatol. 2010 Oct;25(10):1692-701. doi: 10.1111/j.1440-1746.2009.06187.x.

・Teruya T, Tatemoto H, Konishi T, Tako M. (2009) “Structural characteristics and in vitro macrophage activation of acetyl fucoidan from Cladosiphon okamuranus.” Glycoconj J. 2009 Nov;26(8):1019-28.

・Maruyama H, Tamauchi H, Hashimoto M, Nakano T. (2003) “Antitumor activity and immune response of Mekabu fucoidan extracted from Sporophyll of Undaria pinnatifida.” In Vivo. 2003 May-Jun;17(3):245-9.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ