アンコウ

anglerfish
鮟鱇 monkfish  goosefish

古くから東西の冬魚として有名なアンコウは、背骨以外はすべて食べることができる魚です。「東のアンコウ西のフグ」といわれるほど珍味として重宝されています。中でもあん肝とよばれるアンコウの肝は、ビタミン類や不飽和脂肪酸を豊富に含むため、心身のバランスを整え若さを保つ栄養素の宝庫といえます。

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アンコウとは?

●基本情報
アンコウ類はタラ類の近縁にあたる魚です。
アンコウ類は17科270種ほどが知られており、日本近海には約60種が存在することが知られています。そのうち食用とされるのは、アンコウ科およびフサアンコウ科に属するものです。
アンコウ類は水深200m~500mの砂泥状の海底に生息し、腕のように変形した胸びれで海底を移動します。
アンコウ類の魚類全体に対して海底生活のイメージが持たれていますが、アンコウ類のうちチョウチンアンコウなどは深海域の200m~800mの中層域に生息するものもいます。アンコウの体長は大きなもので2m近く、重さも60kg近い種類もあります。
古くから東西の冬魚として有名で、「東のアンコウ西のフグ」とよばれる珍味として有名です。
アンコウは、江戸時代から水戸藩から将軍家へ献上された記録もあるなど、東の代表格の魚でしたが、現在は関東地方だけではなく日本全国で食べられています。

●アンコウの習性
アンコウは肉食性で、擬餌状体という誘引突起による待ち伏せ型の捕食動作をとる魚です。口が大きく、歯が発達しており、海底に潜んで他の魚を襲うのに適するため口はやや上を向いています。頭には2本のアンテナ状の突起があり、長い方には皮がついています。アンコウは泳ぎが下手なため、魚を追い回しても逃げられてしまいます。そこで、海底の砂に潜り、その突起の皮を水面で揺らし、これをエサだと思って寄ってきた魚を、丸呑みにして捕食します。
この習性から、「釣りをする魚」という意味の英名Anglerfishが付けられました。
アンコウは主に小魚やプランクトンを捕食しますが、種類によっては小さなサメ、スルメイカ、カレイ、蟹、ウニ、貝などを捕食するものもあります。まれに水面に出て海鳥を襲うこともあり、解体した際に胃の中にカモメやウミガラス、ペンギンなどが入っていたという報告もされています。

●アンコウの種類
・クツアンコウ(Lophiomus setigerus)
太平洋とインド洋の温帯域に分布し、水深200m以浅の海底に住むアンコウです。
全長は1mほどで、春に産卵するため浅所に移動し、浮遊性の卵塊を生みます。
冬が旬で、底引網などで漁獲されます。あんこう鍋やあん肝などで食べられます。

・キアンコウ(Lophius litulon)
東北地方の沿岸を中心に、北海道南部から東シナ海に生息しています。
春から秋に接岸し、秋から冬には水深200m前後の深場へ移動します。全長は約1.5mにもなります。
一度に体重の3分の1あまりの餌を食べるといわれており、しばらくは食事を摂らなくても生存できるといわれています。あんこう鍋やあん肝などで食べられます。
クツアンコウとキアンコウは良く似ていますが、クツアンコウの口中は白っぽいのに対して、キアンコウの口中は黒地に黄白色の水玉模様であることで見分けることができます。

・ニシアンコウ(Lophius piscatorius)
北大西洋のアイルランドからポルトガル、モロッコ、西サハラの沿岸と地中海の沿岸に分布するアンコウです。
体長1m前後でクツアンコウに外見が似ていることから、近年多く食されるようになりました。

●アンコウに含まれる成分と性質
アンコウの肉は柔らかく、約85%が水分であるため低カロリーで良質のたんぱく質を豊富に含みます。
アンコウの肝臓は俗にあん肝とよばれ、脂質が非常に多く、ビタミンAビタミンEEPADHAが豊富に含まれています。
また、ひれや皮にはコラーゲンが多く、煮ることによりゼラチン化して柔らかくなり肝の次に美味しいといわれています。

<豆知識>アンコウの「吊るし切り」と「七つ道具」
アンコウの身は非常に柔らかくぶよぶよとしているため、まな板の上ではさばくことができません。
そのため、下そぎあごの下から皮を裂きます。皮を剥ぎとり肉を裂き、肝と腸を取り出して切り離します。
さらに胃袋を裂き、えらをはずし、身をそぎ、尾びれを切り落とします。
このようにアンコウはさばかれ、アンコウは背骨を除き、ほぼ捨てるところがないことも特徴的です。
アンコウの可食部位(肝・とも(手羽・腕・または胸びれ・尾びれ)・ぬの(卵巣)・柳肉(身肉・ほお肉)・水袋(胃)・えら・皮)を称して「七つ道具」となかでも、肝(あん肝)が最も重宝されています。
アンコウは、背骨以外全て食べることができます。
そのため、コラーゲンやDHAなど様々な栄養素を一度に摂ることができ、栄養価の高い食材といえます。

アンコウの効果

●美肌効果
肌は、表面に近いところから表皮・真皮・皮下組織の3つの組織に分けられます。コラーゲンは真皮の部分に含まれ、真皮全体の約70%を占めています。線維状のコラーゲンが網の目のように交差し、エラスチンヒアルロン酸とともに肌を内から支え、肌のハリと弾力を保っています。
コラーゲンを摂取することによって体内のコラーゲン合成が活発になり、肌にハリや弾力を与え、しわやたるみを防ぐ効果があると期待されています。
また、アンコウの肝に豊富に含まれるビタミンAは、皮膚や粘膜を構成する上皮細胞をつくることに関わり、その機能維持に欠かせない成分で、免疫作用など全身の健康維持を支えています。特に皮膚、目の角膜や粘膜、口、鼻、のど、胃腸、肺、気管支、膀胱、子宮などを覆う粘膜を健康に保つ働きがあります。
アンコウのひれや皮にはコラーゲンが含まれおり、肝にはビタミンAが豊富に含まれているため、アンコウを食べることにより美肌効果が期待できると考えられています。【1】

●記憶力学習能力を高める効果
アンコウの肝に含まれるDHAは脳を構成する約140億個の脳細胞の膜に存在し、脳内でも特に記憶や学習に関わる海馬に多く集まっています。DHAは脳を活性化する働きがあるため、海馬のDHA量が頭の良さに関わっているといわれており、脳の栄養素とも呼ばれています。
また、DHAは神経細胞の発育を活性化させ、機能維持に重要な役割を果たしています。DHAは記憶や学習能力を向上させるために必要不可欠な成分です。
アンコウの肝にはDHAが豊富に含まれているため記憶力、判断力を向上させる働きがあるといわれていますが、プリン体も豊富に含まれているため食べ過ぎないよう注意する必要があります。【2】

●生活習慣病の予防・改善効果
アンコウの肝に含まれるDHAには、血管壁の細胞膜を柔らかくする働きがあるため、血流を改善する効果があるといえます。また、勢いよく血液が流れても血圧が高くなるのを防ぐ働きもあります。同時に赤血球の細胞膜も柔らかくするため、血流が改善され血液がサラサラの状態になります。
また、DHAは悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪を減らし、善玉(HDL)コレステロールを増やす働きもあります。これらの働きにより、血流を改善し、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞、高血圧、高脂血症などの生活習慣病を予防できると大きく期待されています。
さらに、アンコウの肝にはEPAも豊富に含まれています。EPAには高い血小板凝集抑制効果があり、血栓をつくらせない働きがあります。心筋梗塞や虚血性心疾患など、生活習慣病予防の効果があります。善玉(HDL)コレステロールを増やし、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪を減らす働きもあり、血液をサラサラにしてくれます。高血圧の予防や改善に効果的です。
また、アンコウの肝には、抗酸化力が非常に強いビタミンE、ビタミンAも豊富に含まれています。
生活習慣病の中でも、血管が老化し血流が悪化する動脈硬化は、高血圧や心筋梗塞、脳卒中など死亡率が高いとされる様々な病気を引き起こすといわれています。ビタミンEやビタミンAは、抗酸化作用[※1]によって体内の酸化を防ぎ、生活習慣病の予防や改善に役立ちます。
これらの成分を含むため、アンコウの肝には生活習慣病を改善する働きがあるといわれています。
ただし、コレステロールも多く含むため、食べ過ぎには注意が必要です。【3】

●老化を防ぐ効果
アンコウの肝には、一緒に摂ることで相互に作用を高め合う抗酸化ビタミン「ビタミンACE (エース)」が含まれており、ビタミンAとビタミンEは特に豊富に含まれています。
ビタミンAは、抗酸化物質を含むビタミンであるビタミンEと一緒に摂ることで体の酸化を防ぐパワーが増し、悪玉 (LDL)コレステロールの酸化防止に強く働きかけて、若さと健康を保つことに役立ちます。
ビタミンEは、強力な抗酸化作用によって細胞の酸化を防ぐことから「若返りのビタミン」と呼ばれ、老化を遅らせる効果が期待されています。
また、アンコウの皮や身には肌にハリや弾力を与え、しわやたるみを防ぐ効果があるコラーゲンが豊富に含まれています。肌のハリや弾力は若々しさを保つためにとても重要です。
このため、アンコウには老化を防ぎ若々しさを保つ働きがあるといわれています。

[※1:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]

アンコウは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○美肌を目指したい方
○記憶力や学習能力を高めたい方
○生活習慣病を改善したい方
○老化を予防したい方

アンコウの研究情報

【1】コラーゲンペプチドは、紫外線照射による皮膚の障害が緩和されたことから、コラーゲンが紫外線保護作用を持つと考えられています。アンコウはコラーゲンを豊富に含むことから、皮膚保護作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19352014

【2】DHAには認知機能や痴ほう症予防の効果が期待されています。アンコウはDHAを豊富に含むことから、認知症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22057027

【3】DHAは血中脂質の状態を改善し、生活習慣病予防効果が期待されています。アンコウはDHAを豊富に含むことから、生活習慣病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22113870

【4】アンコウ科からのランゲルハンズ島細胞からは、インスリンの他に神経伝達物質を調整するホルモンが分泌されていることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1681734

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参考文献

・蔵敏則 発行 食材図典 小学館

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・Tanaka M, Koyama Y, Nomura Y. (2009) “Effects of collagen peptide ingestion on UV-B-induced skin damage.” Biosci Biotechnol Biochem. 2009 Apr 23;73(4):930-2. Epub 2009 Apr 7.

・Bernstein AM, Ding EL, Willett WC, Rimm EB (2011) “A meta-analysis shows that docosahexaenoic acid from algal oil reduces serum triglycerides and increases HDL-cholesterol and LDL-cholesterol in persons without coronary heart disease.” J Nutr. 2012 Jan;142(1):99-104. doi: 10.3945/jn.111.148973. Epub 2011 Nov 23.

・Arnaud J, Bost M, Vitoux D, Labarère J, Galan P, Faure H, Hercberg S, Bordet JC, Roussel AM, Chappuis P; Société Francophone d’Etudes et de Recherche sur les Eléments Toxiques et Essentiels. (2007) “Effect of low dose antioxidant vitamin and trace element supplementation on the urinary concentrations of thromboxane and prostacyclin metabolites.” J Am Coll Nutr. 2007 Oct;26(5):405-11.

・Milgram SL, McDonald JK, Noe BD. (1991) “Neuronal influence on hormone release from anglerfish islet cells.” Am J Physiol. 1991 Oct;261(4 Pt 1):E444-56

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