牛乳

milk

牛乳とは牛の乳のことでカルシウムが豊富に含まれていて、骨をつくったり強化したりするのにとても良いといわれています。また良質なたんぱく質、ビタミン類がバランスよく含まれており、体の調子を整え、体力向上に効果的です。

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牛乳とは?

●基本情報
牛乳とは牛の乳のことを指し、カルシウムが豊富に含まれているため骨を強くしたりイライラを抑制したりと様々な効果を持ちます。また良質のたんぱく質やビタミンをバランスよく含んでいるため体調を整えて、健康な体を作ります。牛乳は、牛の品種によって種類が異なり、品種により適した加工法で加工、販売されます。最も一般的な牛乳は成分無調整牛乳で搾った生乳をそのまま加熱殺菌しています。またその他にも乳脂肪分を0.5~1.5%ほどに調整した低脂肪乳や、乳脂肪分が3.8%以上の特濃牛乳があります。

<豆知識>牛乳を加熱すると表面に張る膜
牛乳を電子レンジや鍋で温めると表面に薄い膜ができます。これは牛乳のたんぱく質と脂肪が熱せられることによってたんぱく質が熱変性を起こして固まり、そこに脂肪が結合することで表面に浮き上がり、空気で冷やされて膜のようになったものです。このような現象をラムスデン現象といいます。また豆乳を温めても同じ現象が起きますが、豆乳の場合は出来た膜のことを湯葉といいます。

<豆知識>牛乳をたくさん飲むとおなかを下す理由
牛乳を飲むとお腹を下す人がいますが、その原因のひとつとして牛乳の中に含まれるラクトース[※1](乳糖)を分解する酵素が少ない、または存在していないことが考えられます。ラクトースを分解する酵素のことをラクターゼといいますが、赤ちゃんは基本的には母乳の中に含まれるラクトースを分解するためにラクターゼを持っています。このラクターゼは年齢と共に減少していきます。これは日常的にラクトースを摂ることが少なくなるためです。しかしアフリカや中央アジアなど、昔から牧畜を行い、日常的に動物の乳を摂取していた人たちはラクターゼが減少する傾向が少ないといわれています。

●牛乳の歴史
動物の乳は人類最古の文明といわれるメソポタミア文明の頃から利用されているといわれています。それは古代エジプトに受け継がれ、「旧約聖書」の「乳と蜜の流れる土地」という言葉は豊かな恵まれた土地を表すものとして知られています。日本では現在、動物の乳として牛乳が最も広く出回っていますが、他にも馬や山羊、ヤク等様々な動物の乳が利用されています。日本に牛乳が伝えられたのは、大化の改新が行われた西暦645年頃に呉国から渡ってきた知聡がもたらした医学書に牛乳の薬効が記されており、この知聡の子である善那が孝徳天皇に牛乳を加工してつくられた酥(そ)(牛乳を煮詰めて濃くしたもので、現在の練乳に近いもの)を献上したことが始まりといわれています。その後、酥や醍醐という現在のチーズやバターに近いものが平安時代末期まで貴族を中心に利用されていました。江戸時代には8代目の徳川将軍である徳川吉宗が白牛3頭を輸入し白牛酪という製品を作ったのが日本の近代酪農の始まりだといわれています。乳製品が一般に広まったのは明治以降で、第二次世界大戦後の学校給食に牛乳が取り入れられたことから一般的になりました。

●乳牛の品種
牛乳はその乳牛の品種によって加工方法が異なります。種によって乳脂肪分やたんぱく質含量等が異なるためバターやチーズなどの加工用に向いている品種から飲用に向いている品種まで様々です。

・ホルスタイン種
日本で飼育されている乳牛の内99.5%がこのホルスタイン種です。ホルスタイン種は乳用種中で乳量が最も多く搾乳速度も早いことから多くの酪農家で飼育されています。ホルスタイン種は乳用牛の代表的品種で、オランダで乳牛としても肉牛としても利用されるようになった後、ドイツのホルスタイン地方を経由してアメリカに導入されたことからホルスタイン種と名付けられました。その後、日本には1880年頃に導入されました。ホルスタイン種から搾乳された乳は加熱殺菌され成分無調整牛乳や低脂肪乳として利用されます。

・ジャージー種
平均体重、乳量共にホルスタイン種の70%程度で、搾乳量の少なさから生産効率が悪いため日本での飼育頭数はあまりありません。しかし乳脂肪分が5%程度あるため、牛乳としてそのまま飲まれる以外に、バターやクリームなどの加工食品としても利用されます。

・ガーンジー種
乳脂肪分が5%程度と非常に高いあるため、バターやチーズに加工されるのが一般的です。体格はジャージー種よりやや大きく、黄色みのある牛乳を出すことが特徴です。また乳量はホルスタイン種の50%程度です。

●牛乳の種類
・成分無調整牛乳
生乳を加熱殺菌し、成分調整を行っていない牛乳を指します。最も一般的に飲用されています。

・濃厚牛乳
特濃牛乳等と示されることもあり、無脂乳固形分[※2]が8.5%以上で乳脂肪分が3.8%以上の牛乳を指します。

・低脂肪乳
無脂乳固形分が8.0%以上で、乳脂肪分が0.5~1.5%の部分脱脂乳と加工乳でつくられた乳飲料のことを指します。この低脂肪乳は脂肪分が少ないことからローファットミルクともいわれています。

・無脂肪乳
ノンファットミルクともいわれていて、無脂乳固形分が8.0%以上で、脱脂乳と乳脂肪分が0.5%未満の加工乳で作られた乳飲料です。

・特選牛乳
無脂乳固形分が8.5%以上の牛乳のことで、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳で乳脂肪分が3.5%以上のもののうち、細菌数など一定項目をクリアしている牛乳を指します。

・低温殺菌牛乳
62℃~65℃で30分間の低温殺菌された牛乳を指します。

・牛名称付牛乳
これは特定の牛の品種を商品名として利用している牛乳です。この牛名称付牛乳は当該牛の乳を80%以上使用していると表記することができます。またこの他にも産地限定牛乳という特定の原産地の牛乳だけを用いた牛乳や、メラトニンミルクと呼ばれる睡眠導入時に効果的な牛乳もあります。

●牛乳の殺菌方法
牛乳の殺菌方法には5種類あります。
①低温保持殺菌法:62~65℃で30分間保持する方法です。生乳の品質に優れたものに用いられます。この方法は低い温度で殺菌できることから生乳の風味を損ないにくい方法とされていて近年日本でも導入され始めている方法です。
②高温保持殺菌法:75℃以上で15分間保持する方法です。
③高温短時間殺菌法:71~75℃で15~40秒または75~85℃で15~20秒加熱殺菌する方法です。
④超高温短時間殺菌法:120~130℃で2~3秒間加熱殺菌する方法です。この方法は現在日本で最も多く用いられています。
⑤超高温滅菌法:140~150℃で3~5秒加熱殺菌をする方法です。これはロングライフ(LL)牛乳に利用されている殺菌方法で、常温でも長期間保存できる牛乳に使用されています。

[※1: ラクトースとは、乳糖とも呼ばれる糖の一種です。母乳や牛乳などに含まれています。]
[※2: 無脂乳固形分とは、牛乳から水分と乳脂肪分を取り除いた時のたんぱく質やミネラル、ビタミンなどのその他の栄養のことを指します。]

牛乳の効果

●骨や歯を丈夫にする効果
牛乳には骨の強化や骨をつくるための骨芽細胞[※3]の生成に不可欠なカルシウムが豊富に含まれています。カルシウムは吸収されにくいミネラルのひとつですが、牛乳にはカルシウムの吸収を助ける乳糖やカゼインホスホペプチドが含まれているため、牛乳を飲むことで効率よくカルシウムを摂取することができます。そのため牛乳は骨や歯を丈夫にする効果を持ち、子どもの成長時の骨の形成や骨粗しょう症[※4]の予防に繋がります。

●腸内環境を整える効果
牛乳には便通を改善する効果があります。
牛乳に含まれるラクトースは乳酸菌の餌になります。そのため、善玉菌である乳酸菌が増えて腸内環境が改善され、便通を改善することにつながるとされています。【3】

●高血圧を予防する効果
牛乳には高血圧を予防する効果があります。これは牛乳に含まれるオリゴペプチドが関係しています。オリゴペプチドは種類にもよりますが、血圧上昇に関係しているホルモンの生成を抑制するため高血圧を予防する効果があるといえます。また、この他にも牛乳に含まれるオピオイド[※5]関連ペプチドにもラットにおいて高血圧を予防する効果があると報告されています。

●抗菌・抗ウイルス効果
牛乳には抗菌作用があります。これは牛乳に含まれるラクトフェリンが細菌の増殖に必要な鉄を利用してしまって細菌が増殖するための鉄が少なくなるためです。そのため細菌が増殖しにくくなり、抗菌作用があるといえます。【6】

[※3:骨芽細胞とは、骨組織の表面に存在し、新しい骨をつくる働きをもつ細胞です。カルシウムを沈着させ、新しく丈夫な骨を再生していきます。]
[※4:骨粗しょう症とは、骨からカルシウムが極度に減少することで、骨の内部がスカスカになった症状であり、非常に骨折しやすくなることで知られています。高齢者に多い症状で、日本では約1000万人の患者がいるといわれており、高齢者が寝たきりになる原因のひとつです。]
[※5:オピオイドとは、鎮痛薬のことです。]

牛乳はこんな方におすすめ

○骨や歯を強くしたい方
○体調を整えたい方
○腸内環境を整えたい方
○血圧が高い方
○便秘でお悩みの方

牛乳の研究情報

【1】放課後牛乳を飲用する習慣を身につけた子どもたちを対象に調査した結果、空腹感を抑制し、間食が少なくなった、マナーや落ち着きが高くなったということが分かりました。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110009395745

【2】女子大学生23名を対象に4週間牛乳または食品添加物を飲用した結果を比べると、牛乳群のみ体脂肪率が減少したことが分かりました。この理由としては、カルシウムだけではなく、牛乳中の他の成分、生物活性物質等が体脂肪の減少に貢献する可能性が考えられました。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110009462379

【3】牛乳には、約4.5%のラクトースが含まれています。近年、発酵乳を生産する上で、効率的なラクトース発酵は工業的に重要であり、乳酸菌によるラクトース資化には、多くの関心が寄せられています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/40017261520

【4】ピロリ菌感染患者150名において、治療薬とともにラクトフェリンを1日400mg を摂取させたところ、ピロリ菌の除菌率が向上していたことより、ラクトフェリンはピロリ菌の除菌に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12702979

【5】小児呼吸器感染症患者にラクトフェリンとクルクミンを摂取させたところ、感染症患者が減少しており、免疫細胞のT細胞が活性化していました。このことより、ラクトフェリンには免疫活性化作用があることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19589293

【6】新生児において、ラクトフェリンを1日100mg (153名)、ラクトフェリンと乳酸菌を1日100mg (151名) 摂取させたところ、細菌感染症による敗血症のリスクを軽減することが確認されました。これらの結果より、ラクトフェリンに抗菌作用があることが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19809023

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参考文献

・大山光晴監修 なぜ?どうして?科学のお話 6年生 p125,126 学研教育出版

・本田洋之 乳酸菌のラクトース資化の特徴
http://ci.nii.ac.jp/naid/40017261520

・井村裕夫 内因性オピオイド及び関連ペプチドの生理的・臨床的意義に関する研究
http://kaken.nii.ac.jp/d/p/60440053.en.html

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・食材図典 小学館

・Di Mario F, Aragona G, Bò ND, Ingegnoli A, Cavestro GM, Moussa AM, Iori V, Leandro G, Pilotto A, Franzè A. (2003) “Use of lactoferrin for Helicobacter pylori eradication. Preliminary results.” J Clin Gastroenterol. 2003 May-Jun;36(5):396-8.

・Zuccotti GV, Trabattoni D, Morelli M, Borgonovo S, Schneider L, Clerici M. (2009) “Immune modulation by lactoferrin and curcumin in children with recurrent respiratory infections.” J Biol Regul Homeost Agents. 2009 Apr-Jun;23(2):119-23.

・Manzoni P, Rinaldi M, Cattani S, Pugni L, Romeo MG, Messner H, Stolfi I, Decembrino L, Laforgia N, Vagnarelli F, Memo L, Bordignon L, Saia OS, Maule M, Gallo E, Mostert M, Magnani C, Quercia M, Bollani L, Pedicino R, Renzullo L, Betta P, Mosca F, Ferrari F, Magaldi R, Stronati M, Farina D; Italian Task Force for the Study and Prevention of Neonatal Fungal Infections, Italian Society of Neonatology. (2009) “Bovine lactoferrin supplementation for prevention of late-onset sepsis in very low-birth-weight neonates: a randomized trial.”

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