メシマコブ

Phellinus linteus  
フェリナス・リンテウス

女島(メシマ)で育つコブのようなキノコです。天然のものは大変珍しいとされる薬用キノコの一種で、免疫力を高めてがん細胞の活性を抑える効果が期待されています。

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メシマコブとは?

●基本情報
メシマコブは、長崎県の男女群島の女島(メシマ)に生えているヒダナシタケ目タバコウロコタケ科のキノコで、クワの木からコブのように生えることからこう名付けられました。原産国は日本、東南アジア、北米とされています。しかし、現在では天然のメシマコブの入手は困難とされ「幻のキノコ」と呼ばれています。
摂取することによって、マクロファージ[※1] や ナチュラルキラー(NK)細胞[※2]、T細胞[※3]、B細胞[※4]などの免疫細胞が活性化するといわれています。風邪や感染症などの予防にもパワーを発揮すると期待され、糖尿病などの生活習慣病や自己免疫疾患などの予防・改善についても注目されています。

●メシマコブの歴史
中国では、笠の裏側が黄色いことからクワ黄(そうおう、サンファン)と呼ばれ、2000年以上前から珍重されており、代表的な薬草書「本草網目」にも、慢性病の諸症状に有効であることが記されています。実際に、止汗・利尿作用などがあるとされ、利用されてきました。
メシマコブは、一般によく知られるサルノコシカケの近縁種で外見もよく似ています。日本では、長崎県男女群島の女島に自生していました。昔からその地域の人々に薬用として知られていました。メシマコブは、クワの樹木に寄生しますが、強力な生命力を持っているために、寄生されたクワの樹木はやがて枯れてしまいます。 そのため、養蚕業に従事していた人は見つけ次第、すぐにメシマコブを取り除いていました。
今ではメシマコブの語源となった長崎県の女島からも姿を消し、天然のメシマコブは見つけることが難しくなっています。さらに、メシマコブは栽培が不可能であることに加えて、直径30cmの大きさに成長するまで20~30年の歳月が必要で、コブシ大の大きさになるまでには10年近くかかるといわれています。キノコが繁殖する際に出す菌系体[※5]を培養液[※6]の中で増やすバイオ技術が確立されるまでメシマコブを大量に培養することは、困難とされていました。天然物を発見することはそれ以上に難しいことだといわれています。

●メシマコブの研究
メシマコブは約40年ほど前に、国立がんセンターの研究チームにより行われた研究がきっかけです。
11種類のきのこの抗ガン効果を研究した結果、メシマコブに優れた機能があったことから、注目を浴びました。
その後、貴重な日本での研究成果をもとに、1992年に韓国の国家プロジェクトとして、メシマコブの大量培養の研究が始まりました。 そこで、メシマコブの菌糸体の培養技術が完成します。1993年、韓国で菌糸体から抽出したエキスを使用したメシマコブの成分の製剤化に成功し、それは韓国厚生省から医薬品の認可を受け、同年10月から製造・販売が開始されました。1998年にはこの研究が大変高く評価され、韓国のノーベル賞といわれる「茶山賞」を受賞しました

● メシマコブの成分と効果
韓国生命工学研究所のユウ・イクドン博士らが、世界各地から13種類のメシマコブを採取して調べたところ、韓国で採取したPL2およびPL5というメシマコブの菌株に突出した抗ガン作用があることが報告されています。PLは学名であるPhellinus linteus(フェリナス・リンテウス)の頭文字から付けられました。PL2、PL5の菌株は、製薬メーカーの韓国新薬が開発した培養技術によって量産が可能になりました。韓国では、抗ガン作用のある医薬品として、主に抗ガン剤と併用されており、優れた治験成績が報告されています。
メシマコブは抗ガン剤のように、直接細胞を攻撃するわけではありません。ガンを攻撃する免疫細胞に働きかけて、活性を増強します。まず、免疫細胞をつかさどるナチュラルキラー(NK)細胞やマクロファージを活性化させます。ガン細胞やウイルスに感染した細胞を発見すると、すかさず攻撃して、死滅させます。また、Tリンパ球、Bリンパ球の働きも活発にする作用もあります。こうして、メシマコブは免疫力レベルを全体的に押し上げる働きをします。それによってガンを抑制したり、ガンの転移を防ぐ効果があると考えられています。また、ガンを予防する効果もあると考えられています。

<豆知識①>日本人とキノコ
日本に自生するキノコ類だけでも約1000種類はあるといわれています。日本のキノコを食する習慣について、はっきりしたことはわかっていませんが、古くから国内各地で食べられていたと考えられています。縄文時代の土器に、キノコの形に似ているものがあり、その時代には既に食べられていたと考えられています。
また万葉集には「まつたけ」が、今昔物語には「ひらたけ」が登場します。そのことからも、日本人が古くからキノコを食べていたことがわかります。
現在約20種類のキノコ類が国内の市場で販売されています。栄養成分としては、食物繊維やビタミンB群、ビタミンDが多く含まれ、ミネラルもバランス良く含まれています。栄養素が豊富なキノコ類は積極的に日々の食事に取り入れることが望ましいといわれています。しかし、メシマコブのような入手が難しい品種は、一般のキノコと比べて、栄養価や免疫効果も高いのですが、食品としての摂取は困難です。サプリメントの活用も有効です。

[※1:マクロファージとは、白血球の一種です。免疫機能を担う細胞のひとつで、生体内に侵入したウイルスや細菌、または死んだ細胞を捕食し、消化する働きを持ちます。]
[※2:ナチュラルキラー(NK)細胞とは、リンパ球に含まれる免疫細胞のひとつで、生まれつき(ナチュラル)外敵を殺傷する(キラー)能力を備えています。ガン細胞やウイルス感染細胞などの異常細胞を発見して退治してくれます。]
[※3:T細胞は、免疫機能に関わる細胞であり、B細胞が抗体をつくる力を促進し、侵入してきた異物を攻撃します。]
[※4:B細胞は、免疫機能に関わる細胞であり、その異物特有の抗体をつくり、その情報を記憶することで、次に同じ異物が侵入してきた時に速やかに対処することができます。]
[※5:菌糸体とは、キノコ類の円形(立体的には球形)の形をしている部分です。]
[※6:培養液とは、培養のために調製された液体のことです。]

メシマコブの効果

メシマコブの大きな効果としては、PL2およびPL5という菌株に、秀でた抗ガン効果があることです。韓国では、すでに医療の現場で、抗ガン剤と併用され、その効果が報告されています。

●免疫力を高める効果
免疫機能に深く関わるNK細胞やマクロファージを活性化させることで、ガン細胞やウイルスに感染した細胞を発見すると、すぐに攻撃して、死滅させる効果が高まります。そのため、ウイルスや細菌が原因となる様々な病気の予防効果も期待できます。また、T細胞、B細胞の働きが活発になるよう働きかけ、免疫システムを全体的に増強します。それによってガンを抑制したり、ガンの転移を防ぐ効果があります。
ヒトでの臨床試験では、消化器系のがんの手術後の患者93人に、抗がん剤とメシマコブを併用させると、このうち90名でガンの再発が起きなかったという報告があります。
また、マウスを使った研究では、腫瘍を移植したマウスにメシマコブを与えると、19日後も腫瘍の大きさがほとんど変わらず、抗がん剤投与群とほとんど同じ傾向を示しました。さらにメシマコブは正常細胞に影響を与えず、細胞に対して毒性を持たないことが示唆されています。【1】【2】【3】【6】

●アレルギー症状を緩和する効果
メシマコブにはアレルギーの原因となる体内のIgE[※7](免疫グロブリンE)値を抑制する効果と、ヒスタミン[※8]を遊離させる効果が備わっており、この2つの効果によって高い抗アレルギー作用をもたらすことが研究によって判明しています。膠原病は自己免疫のメカニズムが誤作動を起こし発生する病気です。メシマコブは、免疫システムを正常に導き、病気を改善する効果があるといわれています。【1】【2】【3】【4】【6】

●糖尿病を予防する効果
メシマコブに含まれるプロテオグリカンには、自己免疫疾患を調整する働きがあり、Ⅰ型糖尿病などの自己免疫疾患性糖尿病の予防に役立ちます。またアルドース還元酵素阻害作用も持つため、糖尿病合併症の予防に役立つという研究も報告されています。【4】【5】

[※7:IgEとは、アレルゲンに対して働く抗体のことです。別名、「免疫グロブリンE」とも呼ばれています。免疫グロブリンとは、免疫の中で主要な役割を担っているたんぱく質のことです。IgEの値を知ることにより全体的なアレルギーの程度を知ることができます。]
[※8:ヒスタミンとは、アレルギー反応や炎症の原因となる化合物のことです。体内の細胞で合成され、外部からの刺激により放出されます。これにより、炎症やアレルギーという症状が現れます。]

メシマコブは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○免疫力を向上させたい方
○ガンを予防したい方
○風邪をひきやすい方
○糖尿病を予防したい方

メシマコブの研究情報

【1】胃がん手術後患者67名にメシマコブを1日あたり3.3g 、4カ月間摂取させたところ、免疫細胞の指標となるNK細胞やADCC活性が上昇し、患者の無病生存率の上昇が確認されたことから、メシマコブに免疫力向上作用が確認されました。

【2】胃がん手術後患者45名にメシマコブを1日当たり3.3g 、7カ月間摂取させたところ、免疫細胞であるT細胞ならびにT4細胞の数に回復が見られたことから、メシマコブの免疫力向上効果が確認されました。

【3】がん患者22名において、治療薬とメシマコブ3.3g を摂取させたところ、免疫細胞のヘルパーT細胞と免疫力の指標であるリンパ球増殖反応が増強したことから、メシマコブに免疫力向上効果が確認されました。

【4】Ⅰ型糖尿病マウスにおいて、メシマコブを摂取させたところ、血糖値が低下し、炎症性物質であるIL-2やTNF-αの増加が抑制されました。メシマコブには多糖類であるプロテオグリカンが含まれており、抗炎症作用とともに、自己免疫性糖尿病や自己免疫性疾患の予防に役立つと示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19811769

【5】メシマコブには、プロトカテキ酸やエラグ酸が豊富に含まれており、それらに糖尿病関連酵素であるアルドース還元酵素を阻害するはたらきがあるため、メシマコブには抗糖尿病効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18379080

【6】マウスに治療薬とメシマコブを投与したところ、癌細胞に対する増殖抑制効果がありました。過剰投与しても、細胞毒性も見られなかったことから、メシマコブは免疫療法として有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10102797

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参考文献

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社

・吉川敏一 辻智子 医療従事者のための機能性食品(サプリメント)ガイド―完全版 講談社

・吉川敏一 炭田康史 最新版 医療従事者のためのサプリメント・機能性食品事典 講談社

・Cho SH, Kim JH, Park BK, Park SJ, Ahn SH, Jung HC, Rho JK, Kim BS, Rho SH. 1997“The Effects of Mesima-Ex, the Immunomodulator in Curatively Resected Gastric Cancer.  ” J Korean Cancer Assoc. 1997 Oct;29(5):800-806. Korean.

・Kim JP, Lee KY, Yu HJ, Yang HK. 1997 “Immunoregulatory Effect of Mesima (R) as an Immunotherapeutic Agent in Stage III Gastric Cancer Patients after Radical Gastrectomy.  ” Korean Cancer Assoc. 1997 Jun;29(3):383-390. Korean.

・Kim S. 1991 “nti-tumor effects of mesima EX in various types of cancer patients.  ” J Korean Cancer Assoc. 1991 Jun;23(2):211-217. Korean.

・Kim HM, Kang JS, Kim JY, Park SK, Kim HS, Lee YJ, Yun J, Hong JT, Kim Y, Han SB. 2010 “Evaluation of antidiabetic activity of polysaccharide isolated from Phellinus linteus in non-obese diabetic mouse.” Int Immunopharmacol. 2010 Jan;10(1):72-8.

・Lee YS, Kang YH, Jung JY, Kang IJ, Han SN, Chung JS, Shin HK, Lim SS. 2008 “Inhibitory constituents of aldose reductase in the fruiting body of Phellinus linteus.” Biol Pharm Bull. 2008 Apr;31(4):765-8.

・Han SB, Lee CW, Jeon YJ, Hong ND, Yoo ID, Yang KH, Kim HM. 1999 “The inhibitory effect of polysaccharides isolated from Phellinus linteus on tumor growth and metastasis.” Immunopharmacology. 1999 Feb;41(2):157-64.

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