メロン

melon
Cucumis melon L.

「果物の王様」と呼ばれるメロンは、糖質やカリウムを豊富に含んでいます。
糖質はすばやくエネルギー源となり、またカリウムにはむくみや高血圧の予防効果が期待できます。かつては高級フルーツの代名詞でしたが、近年は多くの品種が出回るようになりました。種のまわりのわたの部分にも有効成分が含まれています。

メロンとは

●基本情報
メロンは、ウリ科キュウリ属のつる性の一年草[※1]で、旬の時期は5月~7月です。
メロンの原産地はアフリカで、中近東で栽培化されて東西に伝わっていきました。東へ伝わったものを東洋系メロン、西へ伝わったものを西洋系メロンと呼びます。
日本に古くからあるマクワウリやシロウリなどの東洋系メロンは、2000年以上前に朝鮮半島や中国から日本に伝わったと考えられ、縄文~弥生時代の遺跡から種子がみつかっています。さらに明治時代になると欧米から網目のあるネットメロンなどの西洋系メロンの品種が多く導入されました。

●メロンの種類
・マクワウリ
「マクワ」の名前は当時の美濃国真桑村が特産地として知られたことによるものです。昭和30年代までは庶民の夏の果物として広く栽培されていましたが、現在では産地といえるほどの栽培地はありません。果形は丸型から円筒型、俵型、偏円型など様々で重さも300gから1kgにわたります。甘さや香りは控えめですが、さわやかな風味があります。

・プリンス型メロン
マクワウリと南ヨーロッパの品種であるキャンタロープの交配種です。マクワウリにはない高級感から、たちまち消費者に受け入れられ栽培が全国に広がりました。それまで高嶺の花であったメロンを一般大衆のものとしたさきがけの品種といえます。

・ハウスメロン(ノーネット型)
ネットと呼ばれる果皮の網目がない品種です。果肉は白肉か緑肉のものが主流で、果皮と果肉が白色で糖度が高く肉質も良いホームランスターや、黄色い皮のキンショーなどがあります。

・温室メロン
温室メロンの一種であるアールス・フェボリットは、「果物の王様」という地位を確立しています。やや香気に乏しいものの、麝香(ムスク musk)に似ているとされるその芳香からマスクメロンとよばれています。現在、一年を通して同じ外観・品種のメロンを栽培することができるようになったのは、温室メロンは長期にわたり改良されてきたためともいえます。入念な温度管理と水分管理のもと、1株あたり1果実のみが収穫されます。栽培が難しく、高価であるので、主に贈答用や業務用に利用されています。生産地は静岡県と愛知県です。

・ハウスメロン(ネット型)
ネット(網目)が密に入る高級感のある外観で、食味や日持ちに優れたアンデスや、表面に縦筋ができ、高糖度で肉質の優れたアムスや、現在ハウスメロンの中心です。またネット型ハウスメロンは品種改良が進み、栽培が簡単で、生産の主流となっています。

・ハウスメロン(ネット型赤肉系)
代表品種は北海道の夕張メロンです。赤肉系メロンには、緑黄色野菜[※2]のほうれん草に匹敵する多量のβ-カロテンが含まれています。

●メロンの食べ頃
おいしいメロンは、色が均一でずっしり重く、網がくっきりとしています。メロンの底の部分を押し少しへこんだら食べ頃です。かたい時は、室温でさらに熟すとよいです。しかし熟しすぎると、かえって味が落ちるので、食べごろになったら冷蔵庫に入れて、早めに食べきるようにしましょう。なお、メロンは冷やすと甘味が増しますが、冷やしすぎは胃に負担をかけるので注意すべきです。

<豆知識>メロンの食べ合わせ
・メロン+ヨーグルト
メロンはビタミンCが豊富なので、たんぱく質の豊富なヨーグルトと組み合わせることでバランス良く栄養をとることができます。またヨーグルトの酸味でメロンをおいしく食べることもできます。
・メロン+生ハム
イタリア料理の前菜でよく目にする組み合わせです。これはハムのナトリウムを排出し、減塩効果を高めるカリウムの効果を生かすためにも好ましい食べ合わせといえます。またメロンには、たんぱく質分解酵素を含んでいるので肉の消化をよくする働きもあります。

●メロンに含まれる成分と性質
体内でビタミンAに変わるβ-カロテンや食物繊維などの有効成分の多くは、メロンの種に近いワタの部分に存在します。
またワタの周辺には、血液をサラサラにするアデノシンという成分が含まれており、脳卒中や心臓病予防に役立つと考えられています。できるだけワタの部分は、捨ててしまわずに食べるべきです。
さらにメロンには、ほてりを冷まして炎症を鎮める効果や、胃腸の働きを活発にして食欲を増進させる効果も期待できます。

[※1:一年草とは、種をまいてから一年以内に発芽・生長・開花・結実・枯死する草のことです。]
[※2:緑黄色野菜とは、緑色や黄色、赤色が濃く中まで色がついており、可食部(食べることができる部分)100g中にカロテンが600㎍以上含まれている野菜のことです。ただし、600㎍未満でも日常の摂取頻度が多いトマトやピーマン等は緑黄色野菜に含まれます。]

メロンの健康効果

●疲労回復効果
メロンに多く含まれているのが、果糖、ショ糖、ブドウ糖などの糖質です。これらは、同じエネルギー源でも脂質やたんぱく質と比べて、体内ですばやくエネルギーに変わります。そのため夏バテの回復には効果的です。またメロンにはクエン酸も含まれています。クエン酸は、糖の代謝を活発にし、乳酸[※3]を燃焼させてエネルギーにかえる働きがあります。これらのことからメロンは疲労回復効果の高い食べ物であるといえます。

●高血圧を予防する効果
メロンには、すいかの約3倍のカリウムが含まれています。カリウムには、余分なナトリウムを排出し、体内の水分バランスを整える働きがあり、高血圧の予防やむくみの解消に有効です。さらに夏場は汗をかくことでカリウムが失われやすいので、初夏が旬のメロンはよい供給源になります。また血圧を下げる効果があるとされるGABA(ギャバ)も多く含まれています。【1】【3】

●免疫力を高める効果
メロンには、β-カロテンが含まれています。β-カロテンは、必要なだけ体内でビタミンAに変換され、残りは体内で抗酸化作用[※4]を発揮します。ビタミンAは粘膜を保護し、ウイルスの侵入を防ぐ効果があります。またβ-カロテンは発がん物質がDNAを傷つけるのを防いだり、傷ついたDNAを修復する力を高めたり、活性酵素[※5]の働きを弱めて酸化を防ぐなどの効果があります。またメロンには抗酸化酵素SODも含まれており、β-カロテンと同様に、酸化ストレスを予防し、免疫力維持に役立ちます。さらにメロンに含まれる食物繊維には、発がん物質を体外に排出する効果があります。これらの効果により免疫力を高め、がんやかぜの予防に期待ができます。【2】

[※3:乳酸とは、筋肉疲労の原因物質のことです。]
[※4:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※5:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]

メロンは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○疲労を回復したい方
○血圧が高い方
○手足のむくみでお悩みの方
○免疫力を向上させたい方

メロンの研究情報

【1】高脂血症ラットを対象に、メロンを28日間摂取させたところ、総コレステロールならびにLDLコレステロールや動脈硬化指数が低下し、HDLコレステロールが増加したことから、メロンは高脂血症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23023565

【2】マウスを対象にメロン抽出物を投与したところ、炎症促進物質INF-γが緩和されました。メロンはSOD活性に優れるだけでなく、抗炎症作用物質IL-10の生成を促進したことから、抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15261965

【3】高脂血症ラットを対象に、メロン抽出物を50-300mg/kg の量で投与したところ、甲状腺機能障害ならびに高血糖ならびに糖尿病症状が緩和されたことから、メロンは高脂血症、甲状腺機能障害、糖尿病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19276533

参考文献

・五訂増補 日本食品成分表

・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・蔵敏則 食材図典 生鮮食材篇 小学館

・平野敦之 森由香子監修 病気にならない!免疫力を高める野菜 青春出版

・吉田企世子 棚橋伸子監修 旬の野菜と魚の栄養事典 エクスナレッジ

​・本多京子 食の医学館 小学館

・Bidkar JS, Ghanwat DD, Bhujbal MD, Dama GY. (2012) “Anti-hyperlipidemic activity of Cucumis melo fruit peel extracts in high cholesterol diet induced hyperlipidemia in rats.” J Complement Integr Med. 2012 Sep 24;9:Article 22.

・Vouldoukis I, Lacan D, Kamate C, Coste P, Calenda A, Mazier D, Conti M, Dugas B. (2004) “Antioxidant and anti-inflammatory properties of a Cucumis melo LC. extract rich in superoxide dismutase activity.” J Ethnopharmacol. 2004 Sep;94(1):67-75.

・Parmar HS, Kar A. (2008) “Possible amelioration of atherogenic diet induced dyslipidemia, hypothyroidism and hyperglycemia by the peel extracts of Mangifera indica, Cucumis melo and Citrullus vulgaris fruits in rats.” Biofactors. 2008;33(1):13-24.  

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