メリロートとは
●基本情報
メリロートとは、マメ科シナガワハギ属の植物で、ヨーロッパからアジアまで幅広く分布しています。多年草で、高さは1mほどです。
ハーブとして古くから使用されており、主にはメリロートの葉や花の部分を使用しますが、それ以外にも茎、果実、種子など利用可能な部分の多いハーブです。また、葉と種子はウォッカの香味付けとして用いられたり、チーズやタバコなどにも用いられています。その匂いから別名「スイートクローバー」とも呼ばれています。
●メリロートの歴史
メリロートは、古代ギリシャでは炎症を抑える湿布薬として使用されていたなど、古代からハーブとして役立ってきました。
日本では、帰化植物[※1]として江戸時代後期に、品川周辺で野生化したものが見かけられたことから「シナガワハギ」という名前が付けられたといわれています。
●メリロートの使用用途
メリロートは、炎症性やうっ血性の浮腫[※2]に対して静脈の正常な流れを促すとともに、リンパ液の循環を調節して浮腫を改善します。そのため、外用としてはこむら返りや打撲、ねんざなどに対応する湿布薬としてします。
その他にも、茶剤として服用したり、軟膏などでも用いられます。
メリロートを茶剤として服用する際は、細切りにしたメリロートをティースプーン山盛り1〜2杯に熱湯150mℓを注ぎ、5〜10分間抽出したものを1日3回服用します。
<豆知識>むくみの原因
むくみは、悩みを持つ方が多い症状のひとつです。
まぶたが腫れぼったい、夕方になると靴がきつくなる、靴下の跡が取れにくくなるなどの症状が現れます。
むくみの主な原因は、水分や塩分の摂り過ぎであるといわれています。
また、長時間の立ち仕事やデスクワークなど、同じ姿勢を維持した場合も全身の血行が悪くなり、血行が阻害されることで、ふくらはぎのむくみや足首の痛みなどの症状が出る場合もあります。
体の中でも、足は心臓から遠いため、むくみが出やすい場所です。足の血液は、ふくらはぎの筋肉が、重力に逆らって足の血液を心臓に戻すことを手伝っています。が、足の筋肉の疲労などにより、血流が悪くなります。また、女性は男性よりも筋肉の量が少ないため、むくみが起きやすいといわれています。
足などの一定の場所に水分が溜まるという症状は、足のむくみだけでなく、顔のむくみの場合であってもほぼ原理は同じであると考えられています。
むくみの主な原因には、アルコールの摂取や、塩分の取りすぎ、ミネラル不足などの生活習慣の乱れや、新陳代謝の低下、腎機能の低下などが考えられます。
●メリロートを摂取する際の注意点
メリロートは、お茶や湿布薬から通常用いられる量を摂取する場合は安全ですが、大量に摂取した場合、軽度の肝臓障害や頭痛の可能性があります。
また、抗凝血薬やそれに準ずる作用のあるサプリメントと併用すると出血を招く恐れがあり、血液凝固障害のある方や、その病歴のある方は注意が必要です。
●メリロートに含まれる成分と性質
メリロートには、抗酸化作用[※3]のあるクマリンのほかに、草が発酵すると生成される抗血液凝固作用のあるジクマロール、クマリン誘導体のメリロートシド、サポニン類、フラボノイド類であるケンフェロールやクエルセチンを含みます。
[※1:帰化植物とは、植物が自生地から他の地域に移り、野生化して繁殖するようになったもののことです。]
[※2:浮腫とは、手足や顔など、末端の水分による痛みを伴わない腫れ。いわゆる「むくみ」のことです。]
[※3:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
メリロートの効果
●血流を改善する効果
メリロートの中に含まれているクマリンによって血液の凝固を防いで血行をよくします。
収縮した血管を弛緩させる効果があることが分かっています。
●むくみを予防・改善する効果
私たちの体に起こるむくみは、立ち仕事やデスクワークにより長時間同じ姿勢をしたために、血行やリンパの流れが悪くなり引き起こされます。動脈は心臓から強く送り出されるため血流が滞ることはあまりありませんが、静脈には心臓のような働きをする部位が無いため、しばしばむくみが現れてしまいます。メリロートに含まれるクマリンが血流やリンパの流れを改善し、むくみの改善へとつながります。【1】【2】
メリロートは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○血流を改善したい方
○体のむくみを改善したい方
メリロートの研究情報
【1】 メリロートは術後における斑状出血や浮腫を減少するはたらきを持つことから、メリロートはむくみ改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18418648
【2】メリロートは経口摂取で慢性的な静脈機能不全 (脚の痛みと重苦しさ、夜中の脚の痙攣、かゆみと腫れ、血栓性静脈炎の補助的治療、リンパの停滞、血栓症後症候群、痔核) に対し、有効性が示唆されています。
参考文献
・林真一郎 編 メディカルハーブの事典 東京堂出版
・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社
・吉川敏一 炭田康史 最新版 医療従事者のためのサプリメント・機能性食品事典 講談社
・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・Xu F, Zeng W, Mao X, Fan GK. (2003) “The efficacy of melilotus extract in the management of postoperative ecchymosis and edema after simultaneous rhinoplasty and blepharoplasty.” Aesthetic Plast Surg. 2008 Jul;32(4):599-603.