マジョラムとは
●基本情報
マジョラムは、ラベンダー、ローズマリー、タイム、バジルといったアロマテラピーで馴染みのある芳香植物です。
マジョラムの色は淡い黄色から琥珀色をしていて、少しスパイシーですがナッツのような薬草のような強めの香りが特徴です。
学名のOriganum とはギリシャ語の「oros=山」と「ganos=輝き」の2つの言葉から成り立っており、「山の装飾」という意味があります。この名の由来は、山の斜面に咲き誇るの花々が陽を受けて光り輝く姿からきています。また、majorana はラテン語の「major=大きい」に由来しています。また、和名ではマジョラムは「茉夭刺那(マヨラナ)」と書きます。
●マジョラムの歴史
マジョラムの原産は地中海地方からエジプト、北アフリカ地方ですが、精油の生産は主にフランスで行われています。マジョラムは、愛と美の女神ヴィーナスが海の水からつくり、太陽の光をたくさん浴びて良く育つようにと、一番高い山に植えられたと伝えられています。
古代ギリシャでは、結婚する新郎新婦の頭につくった花冠をのせて、先祖の墓地にマジョラムを植えると、先祖の魂に平安をもたらす助けができるといわれていました。また、マジョラムは幸せを象徴するハーブとして知られていました。
他にも、伝説があり、トルコの南の東地中海に位置するキプロスの王キニュラスに仕えていた少年アマラコスが、高価な香料がたくさん入った瓶を運んでいた際に、王の前で瓶を落とすという失態をしてしまいました。少年アマラコスはショックから気を失い、粉々のガラスの破片の上で息絶えてしまいました。その後、彼の葬られた所から香り高い食物が生えたといわれております。その植物がマジョラムだといわれ、何世紀の歴史の中で、アマラコス→マヨナラ→マジョラムという名前に変わったという話もあります。
●マジョラムのオイル
マジョラムは体を温め、香りは心を穏やかにするので、主にエステなどでマッサージオイルとして使用されています。マジョラムはシソ科植物の中でも、ラベンダーと並んで最も香りが柔らかいエッセンシャルオイルです。
●オイルの抽出方法
まず、花が開いた状態の葉と花の先端部分を乾燥させます。オイルの抽出方法は水蒸気蒸留によって抽出されます。抽出は通常1時間半、蒸留釜でゆっくり時間をかけて行います。蒸留釜の圧力と温度が少しでも強すぎると、マジョラムの繊細な香りは台無しになってしまうからです。そこから採れるマジョラムのオイルの収油率は0.5~0.8%です。
●マジョラムを摂取する際の注意点
マジョラムには、催眠作用があるので、車の運転前などの集中力が必要な時の使用は避ける必要があります。
マジョラムの効果
●リラックス効果
マジョラムには、怒りを鎮め、悲しみや孤独感を追いやり、リラックスや眠りに導く効果があります。また、興奮した精神を沈める効果もあります。特に寝る前にお茶として飲むとぐっすりと眠れるので、風邪気味や不眠に悩まされている時におすすめのハーブです。
●食欲増進効果
エッセンシャルオイルのマジョラムにも、神経を覚醒させる作用があります。神経と連動している胃腸の働きに刺激を与えることができるので、食欲と消化を促します。【1】
●痛みを軽減する効果
マジョラムには、ストレスからくる不眠や、生理痛、月経前症候群の緩和に有効です。鎮静作用や麻酔作用があるため、筋肉痛や頭痛・リウマチ通などを和らげます。冷え性にも効果的です。
ハーブティーのマジョラムには、体の中の毒素を排出してくれる効果もあり、肝臓を強化する働きもあるためお酒を飲む人にもおすすめです。【2】
●美肌効果
マジョラムは、穏やかなアロマオイルなので、にきびや肌荒れがある時にも使用できます。マジョラムのアロマオイルは血行を促すので、しもけや内出血、くすみなどの緩和にも効果的です。【3】
マジョラムはこんな方におすすめ
○リラックスしたい方
○食欲不振の方
○血流を改善したい方
マジョラムの研究情報
【1】胃潰瘍モデルマウスを対象に、マジョラム抽出物を250, 500mg/kg の量で摂取させたところ、胃酸分泌が軽減し、胃粘膜の保護、マロンジアルデヒドの増加が抑制されたことから、マジョラムは胃潰瘍予防効果や健胃作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19606513
【2】金属毒性ラットを対象に、マジョラム抽出物を5mg/kg の量で28日間摂取させたところ、金属中毒による腎臓、肝臓毒性が軽減したことから、マジョラムは腎臓・肝臓保護作用ならびに金属中毒に有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21858388
【3】マジョラムは病原性細菌や真菌に対する育成阻害作用を持つことから、マジョラムは抗菌作用、抗真菌作用、感染症予防が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17718003
【4】PC12細胞を対象に、マジョラムを投与したところ、アミロイドβによる神経毒性が軽減したことから、マジョラムは神経保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11911474
【5】ヒト血小板を対象に、マジョラム抽出物を0.2mg/kg の量で投与したところ、血小板凝集が抑制されたことから、マジョラムは循環器系疾患予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18069068
【6】薬物誘導糖尿病ラットを対象に、マジョラム葉抽出物を投与したところ、糖化反応が阻害され、LDLコレステロールの酸化や糖化が阻害されたことから、マジョラムは抗糖化作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23008741
【7】アルツハイマー病予防に有益なハーブ139種類を調査したところ、マジョラムはアセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有することがわかりました。マジョラムの機能性成分はウルソール酸であると考えられ、認知症予防やアルツハイマー病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11355692
参考文献
・Al-Howiriny T, Alsheikh A, Alqasoumi S, Al-Yahya M, ElTahir K, Rafatullah S. 2009 ” Protective Effect of Origanum majorana L. ‘Marjoram’ on various models of gastric mucosal injury in rats.” Am J Chin Med. 2009;37(3):531-45.
・Shati AA. 2011 ” Effects of Origanum majorana L. on cadmium induced hepatotoxicity and nephrotoxicity in albino rats.” Saudi Med J. 2011 Aug;32(8):797-805.
・Leeja L, Thoppil JE. 2007 ” Antimicrobial activity of methanol extract of Origanum majorana L. (Sweet marjoram).” J Environ Biol. 2007 Jan;28(1):145-6.
・Heo HJ, Cho HY, Hong B, Kim HK, Heo TR, Kim EK, Kim SK, Kim CJ, Shin DH. 2002 “Ursolic acid of Origanum majorana L. reduces Abeta-induced oxidative injury.” Mol Cells. 2002 Feb 28;13(1):5-11.
・Yazdanparast R, Shahriyary L. 2008 ” Comparative effects of Artemisia dracunculus, Satureja hortensis and Origanum majorana on inhibition of blood platelet adhesion, aggregation and secretion.” Vascul Pharmacol. 2008 Jan;48(1):32-7.
・Perez Gutierrez RM. 2012 “Inhibition of Advanced Glycation End-Product Formation by Origanum majorana L. In Vitro and in Streptozotocin-Induced Diabetic Rats.” Evid Based Complement Alternat Med. 2012;2012:598638. Epub 2012 Sep 12.
・Chung YK, Heo HJ, Kim EK, Kim HK, Huh TL, Lim Y, Kim SK, Shin DH. 2001 “Inhibitory effect of ursolic acid purified from Origanum majorana L on the acetylcholinesterase.” Mol Cells. 2001 Apr 30;11(2):137-43.