マキベリー

maqui berry
パタゴニアン・ブルーベリー Aristotelia chilensis 

マキベリーは、ホルトノキ科の植物です。古くからチリのパタゴニア地方に住む原住民に愛されてきました。アントシアニンを非常に豊富に含むため、果実の中でもトップクラスの抗酸化力をもっています。そのため、炎症抑制や老化防止、ダイエットなどに効果的です。

マキベリーとは

●基本情報
マキベリーは、ホルトノキ科の植物の果実です。チリ南部のパタゴニア地方に自生しています。最大で3~5mほどの大きさになり、果実は深い紫色をしています。パタゴニア地方に住む先住民族のマプチェ族が古くから食用や薬草として利用してきたほか、出産や結婚、祈祷などの儀式の際に神様に御供えする神聖な木でもあったといわれています。マキベリーはその外観やアントシアニンが豊富に含まれている点から、「パタゴニアン・ブルーベリー」とも呼ばれています。

●マキベリーの歴史
マキベリーは、チリのパタゴニア地方の原住民であるマプチェ族によって何世紀にもわたって収穫されてきました。マプチェ族は、南米の先住民がスペイン帝国に支配される中、最後まで抵抗した民族として注目され、「マプチェ族が強靭・強壮であったのはChicha(マキベリーの発酵酒)を飲んでいたから」と記述があり、マキベリーの持つパワーが注目されるようになりました。マキベリーは大変豊富な栄養価をもっていますが、これらの効果が発見されたのはごく最近です。

●マキベリーに含まれる成分と性質
マキベリーの果実にはアントシアニンが非常に豊富に含まれています。8種類の構造の異なるアントシアニンが含まれています。 その他にビタミンC分、カリウムなども豊富でとても栄養価の高い果実だといえます。マキベリーのアントシアニンはほとんどが抗酸化力[※1]の強いデルフィニジンと知られており、他のアントシアニンではシアニジンが含まれています。マキベリーにはデルフィニジンが非常に豊富に含まれているため、抗酸化作用、抗炎症作用や抗糖尿病効果などの働きがあるといわれています。
また、マキベリーは、果物の中でも最高レベルのORAC値[※2]をもっています。

[※1:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※2:ORAC値とは、活性酸素吸収能力値のことです。米国農務省国立老化研究所で開発された、抗酸化力を示す値のことです。値が高い方が抗酸化力が強いとされています。]
マキベリーは、強力な抗酸化力を持つため、様々な効果が期待できます。

マキベリーの効果

●炎症を抑制する効果
マキベリーには、炎症を抑制する効果があります。マキベリーに含まれるアントシアニンの中でも、デルフィニジン類には強い抗酸化力があることが知られています。免疫反応に関わるマクロファージ細胞に炎症を引き起こす物質を加えると、炎症に関わるCOX-2たんぱく質が増えるのですがデルフィニジン系のアントシアニンを加えることでCOX-2の増加が抑えられることが分かっています。【1】

●老化を防ぐ効果
マキベリーは非常に強力な抗酸化作用をもっています。この作用により、老化を防ぐ効果があります。マキベリーは、体内の血液中にあるコレステロールの酸化を防ぎます。コレステロールは、心臓発作や脳卒中、動脈硬化[※3]といった血管に関する症状の原因となることがあります。つまり、コレステロールの酸化を防ぐことで、これらの症状を予防する効果もあります。また、マキベリーのもつ抗酸化作用は、老化の原因である活性酸素[※4]を取り消す働きもあります。活性酸素が体内に蓄積されると、遺伝子をDNAや細胞、組織が傷ついてしまうことがあります。これが原因で老化が起こり、慢性的な心疾患や脳卒中などの症状にもつながります。抗酸化力の強いマキベリーは活性酸素や有害な化学物質をブロックし、健康な血液環境を維持してくれます。そのため、心臓疾患の処置にも使用されています。
また、皮膚に紫外線を当てると色素沈着やシミ、しわなどの光老化が引き起こされますが、マキベリーはデルフィニジンが豊富なため、皮膚に対しても抗酸化作用を発揮し、細胞死や脂質の酸化を防ぐため光による老化を抑えることが分かっています。【2】

●血糖値を下げる効果
遺伝的に糖尿病になりやすいマウスでの実験で、マウスに高脂肪食を与えて高血糖状態にした後マキベリーのエキスを与えると、血中の糖の濃度がマキベリーを与えた量に比例して時間とともに下がることが分かっています。また、ラットの細胞を使った実験で、マキベリーエキスはインスリン[※5]の働きを助けて糖の合成を抑えるということもわかっています。糖の合成抑制及びエネルギー変換の促進の両面で、マキベリーは糖尿病予防に役立つと考えられています。【3】

[※3:動脈硬化とは、動脈にコレステロールや脂質がたまって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となります。]
[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力をもった酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※5:インスリンとは、血糖値をコントロールする作用を持ったホルモンです。]

マキベリーはこんな方におすすめ

○炎症を抑えたい方
○のどの痛みがひどい方
○いつまでも若々しくいたい方
○糖尿病を予防したい方
○肥満を防ぎたい方

マキベリーの研究情報

【1】マクロファージ細胞に炎症誘発物質(LPS)を加えると、炎症性サイトカインのシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)が顕著に増加しますが、マキベリーに多く含まれるデルフィニジンを加えた場合COX-2 の増加が抑制されました。マキベリーは抗炎症作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15963474

【2】マキベリーに多く含まれるデルフィニジンは活性酸素の一種スーパーオキシドアニオンラジカルおよびペルオキシナイトライトの消去活性が最も強く、マキベリーは高い抗酸化力を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17015281

【3】Ⅱ型糖尿病モデルマウスに、アントシアニンを多く含むマキベリーエキスを経口投与しました。その結果、投与後4、6 時間後の血中グルコース濃度がマキベリーエキス投与量の増加に従い、減少しました。マキベリーエキスの特有成分であるデルフィニジン-3-サンブビオシド-5-グルコシドが活性成分であることがわかりました。マキベリーは糖尿病予防効果を持つと考えられています。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0308814611012155

参考文献

・Hou DX, Yanagita T, Uto T, Masuzaki S, Fujii M. (2005) “Anthocyanidins inhibit cyclooxygenase-2 expression in LPS-evoked macrophages: structure-activity relationship and molecular mechanisms involved.” Biochem Pharmacol. 2005 Aug 1;70(3):417-25.

・Rahman MM, Ichiyanagi T, Komiyama T, Hatano Y, Konishi T. (2006) “Superoxide radical- and peroxynitrite-scavenging activity of anthocyanins; structure-activity relationship and their synergism.” Free Radic Res. 2006 Sep;40(9):993-1002.

・Rojo, L., Ribnicky, D., Logendra, S., Poulev, A., Rojas, P., Kuhn, P., Dorn, R., Grace, M., Lila, M. A., and I. Raskin. (2012) “In vitro and in vivo anti-diabetic effects of anthocyanins from Maqui Berry (Aristotelia chilensis).” Food Chemistry, Vol. 131, No. 2, pp. 387-396, 2012.

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