マンゴスチン

Mangosteen

マンゴスチンとは、世界三大美果のひとつで、フルーツの女王ともいわれています。
果肉はコレステロールを下げる効果を持ち、果皮にはタンニンやキサントンが含まれており、免疫機能を高める効果に優れています。また、老化の原因のひとつである糖化を抑制する効果も持つとして注目が集まっています。

マンゴスチンとは?

●基本情報
マンゴスチンとは、オトギリソウ科フクギ属の常緑小高木で、マンゴー、チェリモヤとともに世界三大美果に数えられています。淡い酸味と上品な甘みが特徴で、フルーツの女王ともいわれています。これは19世紀、東南アジアを統治していた大英帝国のビクトリア女王が「わが領土にあるマンゴスチンをいつも味わえないのは遺憾である」と語ったというエピソードに由来しています。
マンゴスチンの果実は、熟すにつれて紫黒色になります。高さは15~20m程で果肉は雪白色で、みかんの袋状におよそ4~8個に分かれ、中には偏平な種子を持ちます。
マンゴスチンは、東南アジアから南アジア、一部中南米で栽培され、輸出国としてはタイが有名です。
マンゴスチンの旬は5月~9月頃ですが、日本へは冷凍して輸入されるのが一般的です。生での輸入は2003年に解禁となりましたが、まだ量が少ないため店頭ではなかなか見かけることができません。
マンゴスチンは基本的に劣化しやすく、賞味期限の短い果物です。高湿度で低温に保つことでその期間を延ばすことができますが、生産地以外では冷凍や缶詰、ジュース、ゼリーなどに加工されたものの方が比較的手軽に味わうことができます。
マンゴスチンは収穫後、多くの果物とは反対に果皮が硬化していきますが、もともと分厚く硬い皮を持つため、果肉の様子がわかりにくくなっています。劣化すると雪白色だった果肉は透明感が増して黄変し、味も衰えます。
マンゴスチンは、東南アジアで古くから自然薬として使用されていました。例えば、果皮は乾燥して粉状にしたあと、感染予防薬として、また果実をまるごと使った湿布剤は寄生虫による皮膚病の治療薬として使用されました。さらに果肉から採られたマンゴスチンのエキスは、解熱剤として用いられていました。その他にも、下痢や結核、尿路感染症、梅毒、淋病など多くの感染症にも優れた薬効を発揮することで知られていました。

●マンゴスチンの歴史
マンゴスチンの歴史は古く、古代の東インド諸島・スンダ列島とモルッカ諸島で誕生したといわれています。以来、何千年もの間、人々に珍重され続けてきました。東インド諸島では、今もなおマンゴスチンが自生しています。
1368年、中国の明の時代に記されたマンゴスチン果皮を用いた処方の記録が発見されました。
1729年には、マンゴスチンの木がイギリスのキュー植物園に運ばれました。1735年には、医師であるローレンティアーズ・ガルシンがマンゴスチンの特性について当時で最も詳しい記録を残しています。
ガルシンは、マンゴスチンを図式で表し、果物が腸の健康に役立つことを発見しました。この医師の名前は、マンゴスチンの学名であるGarcinia mangosutana(ガルシニア・マンゴスターナ)の由来になっています。
1776年には、イギリス王立協会の会員、ジョン・エリスが「Descriprion of the Mangostan and the Bread-fruit」を著し、マンゴスチンについて「これほど病人が喜び、役立つフルーツは存在しない」と紹介しています。
その後、1810年にタイで初めてマンゴスチンの栽培に成功し、これによってマンゴスチンが広まりました。
1855年、ドイツの科学者がマンゴスチンの果皮から世界で初めてキサントン(α-マンゴスチン)を発見し、1951年にマンゴスチンに含まれるキサントンの分子構造が明らかとなりました。
マンゴスチンは古くから民間療法として使用されてきましたが、研究が進められるにつれ、マンゴスチンが持つ健康効果が少しずつ科学的に立証されました。

●マンゴスチンの原産地と生産地
マンゴスチンの原産地はマレーシアで、現在では東アジアやフィリピン、タイ、ハワイ、カリブ諸島といった中南米の熱帯、亜熱帯地域で栽培が行われています。
栽培適地は狭く、熱帯の湿潤気候の限られた土壌環境で栽培されています。マンゴスチンは成長が非常に遅く、実生から結実まで8月~12年もの歳月がかかるといわれています。それに加え、生育温度25~30℃、年間降水量1500mmを想定した灌水[※1]、有機質を含み多湿かつ水分が停滞しない土壌での育成が必要となるため、日本で国産マンゴスチンを結実させるには非常に難しいと考えられています。

●マンゴスチンに含まれる成分と性質
マンゴスチンの果皮には、ポリフェノールの一種であるキサントンが含まれています。キサントンはフラボノイドに似た構造をしており、自然界では200種類程が発見されています。マンゴスチンには、約40種類ものキサントンが含まれており、その中でもα-マンゴスチンやγ-マンゴスチンがよく研究されています。
キサントンは非常に高い抗酸化力[※2]を持っており、活性酸素[※3]を抑制する力に優れています。
またそれ以外にもカテキンやミネラル類、ビタミン類など様々な成分が含まれています。
マンゴスチンの果実には、ビタミンB1やビタミンEが多く含まれています。ビタミンB1は、糖質がエネルギーに変わる時に必要な成分です。また、たんぱく質分解酵素[※4]を含んでいるため、肉料理のデザートに向いています。

<豆知識>おいしいマンゴスチンの見分け方と保存方法
おいしいマンゴスチンは、果皮に水分があり、程良い弾力があるものが良いとされています。
果皮が乾燥しているものは、収穫されてから時間が経ったものです。また、サイズは大きいほうが果肉が多く詰まっています。
マンゴスチンは非常に傷みやすい果物のため、購入後は乾燥を防ぐために少し湿らせた新聞紙などで包んで、冷蔵庫で保存します。購入後3~5日以内に食べるとおいしく召し上がれます。
また、マンゴスチンの生の果実が市場に出回るのは6月頃で、この時期を逃すと日持ちのしないマンゴスチンの生の果実はほとんど食べることができません。

[※1:灌水(かんすい)とは、植物の発芽や生育を正常に進めるために、人為的に水を与えることをいいます。]
[※2:抗酸化力とは、体内で発生した活性酸素を抑制する力のことです。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※4:たんぱく質分解酵素とは、たんぱく質を分解して細かく複数個のアミノ酸などにして、体内に吸収されやすくする酵素のことです。]

マンゴスチンの効果

●糖化を防ぐ効果
糖化とは、体内のたんぱく質と糖が反応し、AGEs(エージーイー)といわれる物質を体内につくり出すことをいいます。糖化は近年、老化の原因のひとつであるといわれており、AGEsが体内に蓄積されると、体が硬くなったり、骨がもろくなったり、血管が硬くなったりしてしまいます。また、糖化が肌で起こるとしわやシミ、くすみの原因となります。
マンゴスチンエキスを使用した研究では、マンゴスチンエキスを摂るとAGEsの蓄積が抑えられることが明らかとなっており、抗糖化作用により肌の弾力が改善したという発表もなされています。

●免疫力を高める効果
最近の研究により、マンゴスチンには免疫力を高める力があることが明らかとなりました。
免疫とは、体外から入ってきたウイルスや細菌などの異物を認識し、NK(ナチュラルキラー)細胞やT細胞といった免疫細胞が異物を攻撃し、体を守ることをいいます。
マンゴスチンに含まれるキサントンは、NK細胞などの免疫細胞を活性化させることが研究によって明らかとなりました。【1】

●老化を防ぐ効果
活性酸素は本来、体内に侵入してきた細菌などを攻撃して体を守る働きがあるため、人間にとって必要不可欠な物質です。しかし、ストレスや紫外線で体内に活性酸素が過剰に発生すると、正常な細胞にまで攻撃を加えてしまい、老化を促進させたり、疾病につながるなどしてしまいます。
また、肌で活性酸素が発生すると肌のコラーゲンを硬く弾力のないものへと変え、しわなどの原因となってしまいます。さらに、悪玉(LDL)コレステロールを過酸化脂質[※5]に変えることで動脈硬化などの生活習慣病の原因にもつながります。
マンゴスチンはキサントンをはじめ、ポリフェノールの一種であるアントシアニンやカテキンなど、様々な抗酸化物質を含んでいます。そのため、体内に過剰に発生した活性酸素の発生を抑制し、老化を予防する効果があるといえます。【3】

●ガンを予防および抑制する効果
体内でガン細胞が発生する要因のひとつに活性酸素が挙げられます。この活性酸素によって、細胞の持つ遺伝子にエラーが起こってしまうのです。このため、強い抗酸化力を持つマンゴスチンに含まれるキサントンは、ガンを予防する効果があると考えられています。
現在までの研究では、キサントンの一種α-マンゴスチンに大腸ガンを抑制する効果があることがわかっています。α-マンゴスチンはガン化した細胞だけを死なせる働きを持ち、ガン細胞の増殖を抑制する効果があるといわれています。

●その他の効果
マンゴスチンに含まれるキサントンには、糖尿病を予防する効果や炎症を抑制する効果、コレステロール値を低下させる効果、結核を予防する効果、白血病を予防する効果、潰瘍を予防する効果など、様々な効果を持っています。【6】

[※5:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]

食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○糖化を予防したい方
○免疫力を向上させたい方
○風邪をひきやすい方
○老化を防ぎたい方
○ガンを予防したい方

マンゴスチンの研究情報

【1】多様なビタミンおよびミネラルを含んでいるマンゴスチンエキスの健康正常人に対
する免疫機能について調べました。マンゴスチンエキスの30日間の摂取は、ヘルパーT細胞を増加させ、血清中C反応性タンパク質を低下させました。さらに、血清中のC3、C4補体濃度は、プラセボと比べて有意に増加しました。このことから、マンゴスチンエキスはヒトの免疫機能を高める働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19697997

【2】緑茶・白茶、マンゴスチンおよびザクロ抽出物で構成されるスキンクリームまたはプラセボクリームを35-65歳の女性の肌に1日2回2週間塗布しました。眼窩周囲皮膚をPRIMOS画像で計測した結果、スキンクリームは肌表面を改善しましたが、プラセボは肌荒れが増加しました。また、スキンクリームは肌のキメを正常にしました。このことから、スキンクリーム(緑茶・白茶、マンゴスチンおよびザクロ抽出物)は、皮膚の加齢変化を改善する働きがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18038502

【3】マンゴスチンのLDL酸化に対する作用について調べました。マンゴスチンはLDL中で生成されるチオバルビツール反応性物質(TBARS)を阻害しました。また、マンゴスチンは銅誘発の酸化LDLも阻害しました。これらのことから、マンゴスチンは、LDLの抗酸化活性があると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7581813

【4】ドキソルビシン(Dox)誘発された神経毒性に対する、マンゴスチンのキサントン誘導体の保護的効果について調べました。キサントンはDoxによる腫瘍壊死因子α(TNFα)のレベルが増加することを制御しました。その他、キサントンは、Dox誘発障害の指標を抑制することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21074598

【5】マンゴスチンの鎮痛作用についてその成分とメカニズムについて調べました。マンゴスチンエタノール抽出物(CEM)0.5、1、3g/kgを用いて酢酸およびホットプレートによって誘発される痛みを引き起こす試験で調べました。0.5、1および3 g/kgの用量でのマンゴスチン抽出物は、有意に炎症性メディエーターを阻害しました。このことから、CEMは中枢神経の抗痛覚作用を有することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20064550

【6】マンゴスチンに含まれるキサントンの抗炎症作用・抗酸化作用について調べました。キサントンはLPS誘発ヒト脂肪細胞炎症に対して抑制する働きがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20181789

【7】アミロイドβ誘発-神経細胞毒性に対するマンゴスチンの作用について調べました。マンゴスチンは400μg/mlでアミロイドβ誘発-神経細胞毒性を防ぐことがわかりました。またマンゴスチン(400μg/ml)はアミロイドβ誘発カスパーゼ3の活性化を抑制しました。このことから、マンゴスチンは、アルツハイマーの重症化を防ぐ働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20232907

もっと見る 閉じる

参考文献

・久郷晴彦 奇跡の健康フルーツ「マンゴスチン」 株式会社コスモトゥーワン

・野間佐和子 旬の食材 四季の果物 株式会社講談社

・食材図典 生鮮食材篇 小学館

・本多京子 食の医学館 小学館

・Tang YP, Li PG, Kondo M, Ji HP, Kou Y, Ou B. (2009) “Effect of a mangosteen dietary supplement on human immune function: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial.” J Med Food. 2009 Aug;12(4):755-63.

・Hsu J, Skover G, Goldman MP. (2007) “Evaluating the efficacy in improving facial photodamage with a mixture of topical antioxidants.” J Drugs Dermatol. 2007 Nov;6(11):1141-8.

・Williams P, Ongsakul M, Proudfoot J, Croft K, Beilin L. (1995) “Mangostin inhibits the oxidative modification of human low density lipoprotein.” Free Radic Res. 1995 Aug;23(2):175-84.

・Tangpong J, Miriyala S, Noel T, Sinthupibulyakit C, Jungsuwadee P, St Clair DK. (2011) “Neuroscience. 2011 Feb 23;175:292-9. Epub 2010 Nov 11.

・Cui J, Hu W, Cai Z, Liu Y, Li S, Tao W, Xiang H. (2010) “New medicinal properties of mangostins: analgesic activity and pharmacological characterization of active ingredients from the fruit hull of Garcinia mangostana L.” Pharmacol Biochem Behav. 2010 Apr;95(2):166-72. Epub 2010 Jan 11.

・Bumrungpert A, Kalpravidh RW, Chuang CC, Overman A, Martinez K, Kennedy A, McIntosh M. (2010) “Xanthones from mangosteen inhibit inflammation in human macrophages and in human adipocytes exposed to macrophage-conditioned media.” J Nutr. 2010 Apr;140(4):842-7. Epub 2010 Feb 24.

・Moongkarndi P, Srisawat C, Saetun P, Jantaravinid J, Peerapittayamongkol C, Soi-ampornkul R, Junnu S, Sinchaikul S, Chen ST, Charoensilp P, Thongboonkerd V, Neungton N. (2010) “Protective effect of mangosteen extract against beta-amyloid-induced cytotoxicity, oxidative stress and altered proteome in SK-N-SH cells.” J Proteome Res. 2010 May 7;9(5):2076-86.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ