みかんとは?
●基本情報
みかんはミカン科ミカン属に属する常緑低木植物[※1]です。
主に10月から1月に旬を迎え、日本の代表的な果物のひとつと考えられています。
●みかんの種類
みかんの種類は、世界で900種類以上あるといわれています。
以下は代表的な種類です。
・温州(うんしゅう)みかん
一般的に「みかん」と呼ばれている、日本人に最もなじみのある品種です。
温州みかんは約400年前、鹿児島県の長島町で突然変異により誕生しました。種がないことから縁起が悪いと敬遠され、九州の一部でしか栽培されていませんでした。その後、明治時代に入り、全国的に栽培されるようになりました。中国の有名なみかんの産地である温州府にあやかって、温州みかんと名づけられました。
日本では、和歌山県をはじめ、愛媛県や静岡県で主に生産されています。
<豆知識①>TVオレンジ
温州みかんの特徴は、オレンジなどの柑橘類に比べると皮が薄く、ナイフを用いなくてもスムーズに皮がむけることです。皮が硬いオレンジやグレープフルーツなどが主流であるアメリカやヨーロッパでは、TVを見ながら手軽に食べられるオレンジという意味を込めて、温州みかんを「TVオレンジ」と呼んでいます。
・紀州みかん
中国から日本に伝わり、熊本県で栽培され始めたといわれている品種です。ミニサイズの小みかんとして、その後各地に栽培が広まり、和歌山県が一大産地になったことから「紀州みかん」と呼ばれるようになりました。鹿児島県の特産品として桜島で生産されている桜島小みかんは、ギネスブックに認定された世界一小さなみかんです。
・ポンカン
ポンカンは温州みかんより厚い皮を持っていることが特徴です。
亜熱帯地域インドのスンダラ地方を原産とします。日本では、気候が温暖な四国を中心に栽培されており、皮を剥くとポンカン独特の香りと甘さが広がります。
・デコポン
日本では熊本県で多く栽培されています。頭部がこぶのようにでている形が特徴的な種類です。全国統一糖酸品質基準では、糖度13度以上である事や酸の量などを満たさなければ「デコポン」として出荷することができないと規定しています。果皮は粗い割にむきやすく、袋(じょうのう)も薄いため食べやすくなっています。
●みかんの利用
みかんは生のまま食べられる他、全生産量の約2割はジュースや缶詰に加工され普及しています。
北陸地方、東北地方、九州地方など地域によって様々な食べ方があり、焼きみかんといってみかんを焼いて食べる地域や、凍らせて冷凍みかんにしたり、お風呂に入れて食べる地域もあります。みかんの生産量が多い愛媛県の一部の地域では、学校給食にダシの代わりにみかんジュースをいれて炊飯する「みかんごはん」という炊き込みご飯のようなメニューもあります。
また、みかんの皮を乾燥させた陳皮は、生薬として利用されています。手足の冷えや肩こり、腰痛の改善、疲労の回復などに良いとされ、入浴時の入浴剤などに利用されています。
●みかんに含まれている成分と性質
みかんには、ビタミンCや葉酸などのビタミン類、カリウムなどのミネラル類、β-カロテン、クエン酸、オレンジ色の色素成分であるβ-クリプトキサンチンなど様々な成分が豊富に含まれています。β-カロテンは、体内で必要な量だけビタミンAに変換され、ビタミンAとして働きます。ビタミンAは脂溶性のビタミンであるため、その性質上、過剰摂取に対し注意が必要な成分ですが、β-カロテンは体内で必要な量しかビタミンAに変換されないため、過剰摂取の心配がありません。
みかんに含まれるビタミンCやβ-カロテンには、強い抗酸化作用があります。
抗酸化作用とは、紫外線や喫煙、ストレスなど生活の様々な場面で発生する活性酸素[※2]を除去し、体が酸化することを防ぐ働きのことです。
人間の体内に活性酸素が過剰に発生し酸化が起こると、病気や老化、肌トラブルが引き起こされます。みかんに含まれる抗酸化物質が体内で強い抗酸化力を発揮して酸化から体を守ることで、病気や老化、肌トラブルを予防することができます。
また、みかんに豊富に含まれるビタミンCは、丈夫な血管や筋肉、骨、肌などをつくるコラーゲンの合成に必要不可欠な成分です。そしてβ-カロテンは髪や爪、目などを健康に保つ働きがあるため、丈夫で健康的な体づくりに役立ちます。
みかんの実だけではなく、袋やスジにもヘスペリジンや食物繊維であるペクチンなど優れた成分が豊富に含まれています。
ヘスペリジンはビタミンPとも呼ばれるポリフェノールの一種で、強い抗酸化作用や末梢血管を強化する働きが広く知られています。特に未熟なうちに収穫する青みかんの皮やスジに多く含まれ、その量は完熟みかんの十数倍にものぼることが明らかになっています。
<豆知識②>みかんの食べすぎによる柑皮症
みかんを大量に食べすぎると手指や手のひらなどの皮膚が黄色くなることがあります。この症状を柑皮症といいます。これは、脂溶性であるみかんの色素β-クリプトキサンチンが脂肪にくっつき、角質層や表皮に沈着するために起こります。しかし、一時的なものなので、健康に影響はありません。
<豆知識③>揉むと甘くなるみかん
みかんを揉んだり、両手でやさしくキャッチボールをすると、みかんが甘くなるといわれています。これはみかんに衝撃を与えると、みかんの酸味成分であるクエン酸が傷の修復に利用され、酸味が減少した分、甘みが強く感じられるためです。
[※1:常緑低木植物とは、幹や枝に一年中葉がついていて、成長しても樹高が約3m以下の植物のことです。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]
みかんの効果
みかんには様々な有効成分が豊富に含まれており、これらの成分には以下のような健康に対する効果が期待できます。
●血流を改善する効果
みかんの袋やスジ、皮に豊富に含まれる「ヘスペリジン」
には、血流を改善する効果があります。
血液は全身に酸素や栄養はもちろん、温度を運ぶ役割も担っています。そのため、毛細血管などが縮むことで血流が悪くなり、末梢まで血液が運ばれなくなると体の冷えが生じます。
ヘスペリジンには、毛細血管を広げ血液が流れやすいように働きかけ、温度を末梢血管まで運ぶため、体を温める効果が期待できます。
日本では古くから天日干ししたみかんの皮をお風呂に入れると体が温まることが生活の知恵として知られています。みかんの皮に含まれているヘスペリジンが血流を改善し、体を温める効果の有効的な活用例であるといえます。【5】
●感染症を予防する効果
みかんにはビタミンCやβ-カロテンなどが豊富に含まれています。
ビタミンCは、血液中の白血球、特に細菌やウイルスと闘う好中球の活性を高め、体外から侵入してきた細菌やウイルスなどを撃退します。ビタミンCは白血球の働きを高める作用があることに加え、ビタミンC自体も細菌やウイルスに対抗する力を持っています。さらに、β-カロテンにも免疫力を高める働きがあります。そのため、みかんには免疫力を高め風邪などの感染症を予防したり、病気の回復を早める効果があるといわれています。現在、温州みかんだけに含まれるシネフィリンが風邪の予防に効果的である可能性が高いとして研究が行われています。【8】
●むくみを予防・改善する効果
毛細血管には体の組織に栄養や酸素を運ぶ役割があり、毛細血管の透過性は、悪すぎても良すぎても体にとっては悪く、適度に保たれている必要があります。透過性が良くなりすぎるとむくみなどの症状を引き起こします。みかんの袋やスジ、皮に多く含まれるヘスペリジンには、この透過性の亢進を抑え、毛細血管を強くする働きがあります。さらに、みかんに含まれるカリウムには、体内の余分な水分を排出する働きがあります。そのため、みかんには、むくみの予防・改善に効果があるといわれています。
●高血圧を予防する効果
みかんにはカリウムが豊富に含まれています。
味の濃い食事などによって過剰に塩分を摂り続けると血液中のナトリウムが増え、高血圧を引き起こす原因となります。カリウムは体内でナトリウムとバランスを取り合って存在しており、ナトリウムを体外に排泄する働きがあるため、みかんは高血圧の予防効果が期待されています。
●動脈硬化を予防する効果
血液中の悪玉(LDL)コレステロールが増加すると、血管の内壁が脂質で分厚くなり、こぶのようにせり出して血管を狭めるため、高血圧や動脈硬化などが引き起こされます。ビタミンCをはじめ、ヘスペリジンやβカロテン、ペクチンなどみかんに含まれる様々な成分には、血中の悪玉(LDL)コレステロールを減少させる働きがあります。そのため、みかんは動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果的であると考えられています。
●美肌・美白効果
シミ・そばかすの原因となるメラニン色素は、アミノ酸の一種であるチロシンから生成されます。みかんに豊富に含まれているビタミンCやβ-クリプトキサンチンは、チロシンを生成する酵素であるチロシナーゼの働きを抑制し、メラニン色素の沈着を防ぐ働きがあります。そのため、シミ・そばかすの予防につながるとされています。【2】
●ストレスをやわらげる効果
みかんに含まれるビタミンCには、ストレスをやわらげる副腎皮質[※3]ホルモンと、心地良さなどの感情をつくり出すドーパミンや気持ちを落ち着かせるGABA(ギャバ)などの神経伝達物質[※4]の合成をサポートする働きがあります。そのため、みかんにはストレスをやわらげたり、イライラを鎮め精神状態を安定させる効果があると考えられています。
●疲労回復効果
みかんには、クエン酸が豊富に含まれます。
激しい運動やストレス、不規則な生活によって細胞が酸欠状態になると、体内に疲労物質である乳酸が溜まります。クエン酸には乳酸を分解しエネルギーに変える働きがあるため、疲労の蓄積を抑え、疲労を回復させる効果があります。
●便秘を解消する効果
みかんには水溶性食物繊維であるペクチンが豊富に含まれています。ペクチンは腸内で善玉菌[※5]のエサとなり、腸内環境を整える働きがあります。そのため、便秘の改善に効果があります。
[※3:副腎皮質とは、腎臓の上に位置する臓器である副腎の周辺部分のことです。副腎皮質からはアドレナリンなどの様々なホルモンが分泌され、生命を維持するために欠かせない臓器です。]
[※4:神経伝達物質とは、神経細胞の興奮や抑制を他の神経細胞に伝達する物質のことです。]
[※5:善玉菌とは、ヒトの腸内にすむ細菌の一種です。健康に役立つ働きを行っており、もともと大腸にすんでいる腸内ビフィズス菌や乳酸菌、腸球菌などが善玉菌といわれます。]
みかんは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○血流を改善したい方
○冷え性の方
○血圧が高い方
○風邪をひきやすい方
○美肌を目指したい方
○ストレスをやわらげたい方
○手足のむくみが気になる方
○疲労を回復させたい方
○便秘でお悩みの方
みかんの研究情報
【1】ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病ラットの大動脈にみられる内皮機能障害
に対する温州みかんの作用について調べました。温州みかんの10週間の投与では、アセチルコリンに誘発される内皮の弛緩が認められました。この結果から、温州みかんはSTZ誘発糖尿病マウスの大動脈内皮細胞の保護効果があると示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15684481
【2】発酵温州みかん(S-CPE)が、UVA照射誘発ヒト皮膚線維芽細胞障害に対して保護作用をもつかどうか調べました。S-CPEは、UVA照射による間質コラゲナーゼの発現を抑制したことがわかりました。S-CPEはコラーゲンの生合成活性を有し、S-CPEが有効な化粧品成分である可能性があることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22422675
【3】Ⅳ型アレルギーマウスモデルであるピクリル塩誘導接触皮膚炎(PC-CD)の耳朶腫脹に対する温州みかん50%エタノール抽出物(CU)の作用について検討しました。CU経口投与およびプレドニゾロン皮下投与によって、PC-CD誘発耳朶腫脹を抑制しました。CUとプレドニゾロンの併用でアレルギー反応が抑制されたことが示されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18404324
【4】ウンシュウミカンのもつ、一酸化窒素(NO)の生成阻害作用について検討しました。いくつかの候補成分を分離した結果、ノビレチンがNOおよびスーパーオキサイドアニオンを抑制することがわかりました。また、ノビレチンは、炎症性パラメーターも減少させました。このことから、温州みかん抽出物から精製したノビレチンが抗酸化および抗炎症作用として働くことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11016629
【5】ヘスペリジンは柑橘類に多く含まれ,末梢血管強化作用が知られています。ヘスペリジンによる,冷え症女性に対する影響について検討しました。冷えを訴える女性11名を対象に酵素処理ヘスペリジン(250 mg/日)またはプラセボを摂取させ単回摂取40分後と7日間継続摂取後、手掌部に冷却負荷を与え,その後の皮膚表面温,皮膚血流量,血管幅の変化を評価しました。酵素処理ヘスペリジン単回摂取時は,プラセボに比べて冷却負荷後の温度変化量,血流変化率が有意に高く,酵素処理ヘスペリジン継続摂取時においても,冷却負荷後の温度変化量,血流変化率が有意に高値を示しました。酵素処理ヘスペリジンを摂取することで,末梢の血流量が増加し、皮膚表面温度を回復させることが考えられました。継続的に摂取することでその効果が維持され,冷えを緩和する可能性があることが示唆された。
http://ci.nii.ac.jp/naid/10024794479
【6】肥満細胞が放出するケモタキシンは、自己および他の肥満細胞の遊走を促進し、ひいてはアレルギーを促進させます。ヘスペリジンのアレルギーに対する作用について調べました。ヘスペリジン投与により遊走した肥満細胞の数は減少し、また、p38活性・炎症性サイトカイン活性が抑制しました。これらのことから、ヘスペリジンは、アレルギーに対して有効であることが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21559359
【7】ヘスペリジンのラットへの投与(50mg/kgまたは100mg/kg皮下投与)はカラギナン誘発の浮腫をそれぞれ47%、63%抑制しました。また100mg/kgのヘスペリジン投与ではデキストラン誘発浮腫を約33%まで抑制することがわかりました。これらの結果から、シトラスから抽出したヘスペリジンはゆるやかな抗炎症作用を有することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8021799
【8】ヘスペリジンをマウスへ腹腔内投与し、3時間後、チフス菌を感染させ敗血症を引き起こさせましたが、ヘスぺリジンの用量依存的にマウスは回復しました。加えて肝臓・脾臓の細菌が減少しただけでなく、血漿中のTNFαなどの炎症因子が減少しました。これらのことからヘスペリジンンの投与は、急性敗血症によるショック状態からもいち早く回復させる可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15133244
参考文献
・本多京子 食の医学館 小学館
・Kamata K, Kobayashi T, Matsumoto T, Kanie N, Oda S, Kaneda A, Sugiura M. (2005) “Effects of chronic administration of fruit extract (Citrus unshiu Marc) on endothelial dysfunction in streptozotocin-induced diabetic rats.” Biol Pharm Bull. 2005 Feb;28(2):267-70.
・Bae JT, Ko HJ, Kim GB, Pyo HB, Lee GS. (2012) “Protective Effects of Fermented Citrus Unshiu Peel Extract against Ultraviolet-A-induced Photoageing in Human Dermal Fibrobolasts.” Phytother Res. 2012 Mar 15. doi: 10.1002/ptr.4670.
・Fujita T, Shiura T, Masuda M, Tokunaga M, Kawase A, Iwaki M, Gato T, Fumuro M, Sasaki K, Utsunomiya N, Matsuda H. (2008) “Anti-allergic effect of a combination of Citrus unshiu unripe fruits extract and prednisolone on picryl chloride-induced contact dermatitis in mice.” J Nat Med. 2008 Apr;62(2):202-6. Epub 2007 Nov 8.
・Murakami A, Nakamura Y, Torikai K, Tanaka T, Koshiba T, Koshimizu K, Kuwahara S, Takahashi Y, Ogawa K, Yano M, Tokuda H, Nishino H, Mimaki Y, Sashida Y, Kitanaka S, Ohigashi H. (2000) “Inhibitory effect of citrus nobiletin on phorbol ester-induced skin inflammation, oxidative stress, and tumor promotion in mice.” Cancer Res. 2000 Sep 15;60(18):5059-66.
・YOSHITANI Kayo、MINAMI Toshiko、TAKUMI Hiroko、KAGAMI Yoshiaki、SHIRAISHI Koso (2008) “Effect of α-Glucosylhesperidin on Poor Circulation in Women” Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science 61(5), 233-239, 2008-10-10
・Jeong HJ, Choi Y, Kim KY, Kim MH, Kim HM. (2011) “C-kit binding properties of hesperidin (a major component of KMP6) as a potential anti-allergic agent.” PLoS One. 2011 Apr 29;6(4):e19528.
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・Kawaguchi K, Kikuchi S, Hasunuma R, Maruyama H, Yoshikawa T, Kumazawa Y. (2004) “A citrus flavonoid hesperidin suppresses infection-induced endotoxin shock in mice.” Biol Pharm Bull. 2004 May;27(5):679-83.