マコモダケとは
●基本情報
マコモダケは池や沼などの水辺に生える、イネ科の多年草です。秋になるとお米のような実をつくります。この実の部分とは、マコモという植物の肥大化した茎の部分のことをいいます。マコモは東アジアを原産とし、葦(あし)の仲間の植物です。大きな稲のような姿をしており、2m以上の草丈まで成長します。その成長したマコモの茎の部分に黒穂菌(くろぼきん)とよばれる菌が寄生し、茎の根元を肥大させます。これをマコモダケと呼び、食用として食されています。
●マコモダケの歴史
マコモは漢字で「真菰」と書きます。その名前の由来はマコモが多く群生する三重県菰野町(こものちょう)が由来といわれています。また古くからの諸説には、お釈迦様がマコモの葉を編んでムシロをつくり、その上で病人の治療をしたという話と、お釈迦様がとても可愛がっていた象に、食べさせたのがマコモの葉という話もあります。マコモというのは、お米よりも古い歴史ある穀物で、古代は「六穀」にも含まれていたといわれております。日本では、日本最古の書物である「古事記」や「日本書紀」にも記載されている程です。使われていたものとしては、島根県の出雲大社などでは、しめ飾りなどの神事にも使われてきました。他の地方でも、マコモでお盆に使われるきゅうりやなすなどの馬は「送り馬」「かつぎ馬」をつくっていたとのことです。
「かつぎ馬」の「かつぎ」という言葉は、「マコモ」の方言か、古語かともいわれています。
また、アメリカの先住民ネイティブアメリカンが食糧としていた「ワイルド・ライス」が、マコモだといわれているものが、コロンブスの新大陸発見の以前から、アメリカインディアンの食糧となっていました。形はタイ米よりも細長い形をしていて、黒っぽい色をしているのが、北アメリカ産のマコモの実になります。マコモの実の生育領域の所有を巡って、戦争になったこともあります。マコモは食用や薬用として、中国、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジアで使用されております。日本では主にお粥として食べられていました。また、東アジアではマコモは油とよく合うため、中華料理に利用されたりしています。
●マコモの育ちやすい環境
マコモには水質浄化の働きと多くの生物の生育環境をつくってくれるといわれています。対象には、霞ヶ浦や琵琶湖を始め、ラムサール条約に指定されている伊豆沼・内沼(宮城県)があります。
マコモの柔らかい芽や茎の回りは餌場、産卵場所、そして隠れ場所として様々な水棲生物に活用されています。冬は白鳥などの水鳥が餌としてついばみにやってきます。
しかし最近では、環境破壊が進んだことで、湖、沼や河川の生態系が徐々に崩れていき、河川や田んぼなどの水路はコンクリートなどで覆われてしまう環境の増加で、マコモが減少しているという現状です。
<豆知識①>マコモダケの浄化作用
マコモは水を腐らせる湯垢や体から出る老廃物を、マコモの耐熱菌が分解して浄化することにより起こっているといわれています。
例えば、マコモの葉やマコモの粉は漆のつや出しや、粽(ちまき)、羊羹(ようかん)をマコモの葉で巻く、そしてマコモの根を粉末状にしてお風呂に入れると、水が腐らないなどといわれています。
また、マコモはすぐれた体内浄化作用も持ち合わせているので、アトピーや切り傷などに最適だともいわれています。
●マコモダケに含まれる成分と性質
マコモは日本の米に比べて食物繊維、たんぱく質、ビタミンやミネラルを含んだ食材です。
食物繊維は消化を促進し、腸内の善玉菌を増やすことで、腸内環境をスムーズにします。また、善玉菌が増えることにより、慢性疾患の予防、血圧や血糖値の低下、そして免疫力の強化などにも働きかけてくれます。
特に腸内の不要なものを排出する働きを持つ、食物繊維の働きが注目成分になります。
マコモダケの効果
●腸内環境を整える効果
食物繊維は、第6の栄養素ともいい、野菜や果物、海藻、キノコなどに多く含まれている成分です。
マコモダケには便通を促す食物繊維が含まれており、腸内環境をスムーズにして、美容の大敵である便秘の解消に役立ちます。また、食物繊維は腸内に溜まった不要なものを排出するだけでなく、余分なコレステロールを体外へと運び出したり、糖質の吸収抑制作用など、生活習慣病の予防にも働きかけたりと、様々な生理機能を持つ優れた成分です。
●デトックス効果
マコモダケに含まれるカリウムは、人間にとって欠かせない成分のひとつです。
カリウムは、多くの酵素を活性化させる働きを持っており、筋肉のエネルギー代謝や神経伝達、そして筋肉の収縮を間接的に補助する働きがあります。
また、カリウムは肝臓における老廃物の排出を促し、むくみをとる働きがあるともいわれています。利尿作用を持ち、体内の不要なものや余分な水分を排出する働きがあるため、デトックス効果が期待できます。
これらの機能性のほかにも最近の研究により、マコモダケには神経細胞に働きかける作用のほか、骨粗しょう症予防効果も報告されており、マコモダケの研究が進んでいます。【1】【2】
マコモダケはこんな方におすすめ
○腸内環境を整えたい方
○便秘でお悩みの方
○コレステロール値が気になる方
マコモダケの研究情報
【1】マウス神経膠腫細胞を対象に、マコモダケの有効成分Makototindoline を投与したところ、マウスス神経膠腫の細胞増殖を抑制したことから、マコモダケは神経細胞調節作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22672800
【2】マコモダケには、破骨細胞抑制作用を持つ機能性成分が含まれていることから、マコモダケは骨の健康、更年期障害予防効果を持つことが期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17090930
【3】マコモダケは乳白色で柔らかく,タンパク質やビタミンB2を含む風味の良い野菜として中国料理で利用されています。豚肉や鶏肉とのいため物が美味しく、最近では日本でも特産品として栽培が始まっている。
参考文献
・内村修一. 2001 “世界の野菜日本の野菜 (80) マコモダケ編 世界のマコモダケと日本のマコモダケ” 野菜園芸技術, 2001, Vol.28, No.5, Page4-6.
・Suzuki T, Choi JH, Kawaguchi T, Yamashita K, Morita A, Hirai H, Nagai K, Hirose T, Omura S, Sunazuka T, Kawagishi H. 2012 “Makomotindoline from Makomotake, Zizania latifolia infected with Ustilago esculenta.” Bioorg Med Chem Lett. 2012 Jul 1;22(13):4246-8.
・Kawagishi H, Hota K, Masuda K, Yamaguchi K, Yazawa K, Shibata K, Uzuka N, Matahira Y. 2006 “Osteoclast-forming suppressive compounds from Makomotake, Zizania latifolia infected with Ustilago esculenta.” Biosci Biotechnol Biochem. 2006 Nov;70(11):2800-2.