マイタケ

Hen of the Woods  舞茸

マイタケに含まれるβ-グルカンの生成物であるMD-フラクションやX-フラクションには、免疫力を高めたり、生活習慣病の予防や改善に効果があることが証明されています。
また、ビタミンDの前駆体であるエルゴステロールが豊富に含まれ、骨や歯の代謝をサポートします。

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マイタケとは

●基本情報
マイタケは、サルノコシカケ科のキノコです。独特の香りと食感、うまみを持ち食用として人気があります。
野生のマイタケは秋にミズナラやクリ、ブナなどの広葉樹[※1]の根本周辺に生えますが、非常に数が少ないため昔から「幻のキノコ」と呼ばれ、マツタケと同等もしくはそれ以上に珍重されています。現在では、販売しているマイタケのほとんどが人工栽培されているものです。
マイタケという名前は、「思わず踊りだしてしまう」ほど味がいいことから、「舞茸」の名がついたとされています。

●マイタケの歴史
マイタケは、アジアやアメリカ、ヨーロッパをはじめ日本にも古くから自生していました。周期的にマイタケが生育するミズナラなどの木はマイタケの採集者によって極秘とされ、家族にもその場所は明かされなかったといわれる程、貴重なキノコとして扱われていました。
1983年頃から人工栽培で大量に生産されるようになり、食用として普及しました。
マイタケの自然栽培は、しいたけやなめこのように直接原木に種菌を接種しても育たないことから困難とされていました。しかし、原木を殺菌して栽培する方法が開発されてからは、大型で、より天然に近いマイタケが栽培できるようになりました。
さらに、1990年代頃から菌床栽培法が普及し始め、日本での生産量は年々増加しています。

●マイタケの栽培方法
マイタケは原木栽培と菌床栽培の2種類の方法で栽培されています。

・原木栽培
原木栽培とは、枯れた丸太に直接種菌を植え付ける栽培方法です。マイタケを栽培する際にはミズナラ、コナラ、ブナ、クリ等の天然の広葉樹が原木に利用されます。

・菌床栽培(おがくず栽培)
菌床栽培とは、おがくずに米ぬかやふすまなどの栄養剤を加えたブロック状、または円筒形の培地を使って行われる栽培方法です。袋栽培とビン栽培があり、それぞれに適した品種があります。

●マイタケの生産地
日本でのマイタケ生産量のトップは新潟県で、国内生産量の60%を占めています。次いで静岡県、福岡県と続きます。

●マイタケの種類
マイタケは、色によって2種類に分けられます。

・マイタケ
かさの部分は茶褐色で平たい扇状のかさが何重にも重なっています。香りと歯ごたえの良さが特徴で、煮物や揚げ物など様々な料理に向いています。

・白マイタケ
アクが少なく、マイタケと違い調理時に色落ちしないという特徴を持っています。含まれている栄養素はマイタケとほぼ同じです。

●マイタケの選び方、保存方法
軸は白く硬めでハリがあるもの、かさは厚みがあり触れると折れてしまうほどパリッとしているものが美味しいマイタケです。古いマイタケはかさが湿ってきます。
1~2日で色が黒ずみ風味が落ちます。水気を切ってペーパータオル等で包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存すると、2~3日持ちます。

●マイタケに含まれる成分と性質
マイタケにはカルシウムの吸収を高め、骨や歯の代謝のサポートをするエルゴステロールや、便秘の改善に効果のある不溶性食物繊維・水溶性食物繊維、血行の促進に働くナイアシン等が豊富に含まれています。
エルゴステロールはビタミンDの前駆物質で、紫外線が当たることでビタミンDに変化します。
また、マイタケには免疫力を高める成分である水溶性食物繊維の一種β-グルカンが、キノコ類の中で群を抜いて多く含まれています。
近年、マイタケに含まれているグルカンから、MD-フラクションやX-フラクションと呼ばれる成分が発見されました。
MD-フラクションは、細胞性免疫を活性化する効果が期待されており、X-フラクションは血液・血管系の生活習慣病に有効であるという研究結果が報告されています。
マイタケのうまみ成分や栄養素は水溶性のため、茹でると流れ出てしまいます。味噌汁や炊き込みご飯など煮汁ごと食べることができる料理に入れると、無駄なく栄養素を摂取することができます。

<豆知識>マイタケに含まれる酵素
マイタケにはマイタケプロテアーゼというたんぱく質分解酵素が多く含まれるため、生のまま茶碗蒸しに入れると茶碗蒸しが固まりません。茶碗蒸しに入れる場合は、この酵素を失活させるため加熱してから用いると良いでしょう。
また、細かく刻んだ生のマイタケを肉にまぶして調理すると、マイタケプロテアーゼの働きにより硬い肉も柔らかくなり、うまみも増します。

[※1:広葉樹とは、葉が広く平たい、サクラやケヤキ、ブナなどの植物に属する木のことです。]

マイタケの効果

マイタケには、β-グルカンやエルゴステロール、食物繊維などの栄養成分が豊富に含まれるため、以下のような健康への効果が期待できます。

●免疫力を高める効果
ウイルスなどの異物が体内に侵入してきた際には免疫機能が働きます。
まず、体内に入ってきた異物は、白血球[※2] であるマクロファージにより有益なものか有害なものかが判断されます。その後、マクロファージは体内の免疫機能の指揮をとるヘルパーT細胞に、異物が侵入してきたことを伝えます。知らせを受けたヘルパーT細胞は異物を排除するため、ウイルスに感染した細胞を破壊するキラーT細胞や、腫瘍細胞[※3]などを傷害する作用があるNK(ナチュラルキラー)細胞に命令を下します。また、ヘルパーT細胞はリンパ球の一種であるB細胞にも異物が侵入してきたことを伝えます。B細胞は伝えられた情報をもとに、異物を捕まえるための特別なたんぱく質(抗体)をつくります。
この3種類の細胞により、異物が体内に侵入しないための免疫機能が働いています。
マイタケに含まれるMD-フラクションには、ヘルパーT細胞の増加やNK細胞を活性化させる働きがあることが報告されています。このため、マイタケを摂取することは、免疫機能を高めることにつながると考えられます。【1】【2】【3】【5】【6】

●動脈硬化や生活習慣病の予防・改善効果
体内に入った栄養素は、肝臓などに存在する様々な酵素によってコレステロールやブドウ糖、たんぱく質などにつくり変えられます。マイタケに含まれるX-フラクションには、コレステロールをつくる酵素の働きを阻害する作用があり、さらにコレステロールが胆汁酸に分解されて排泄されることを促進する働きがあると考えられています。
また、マイタケに豊富に含まれる不溶性食物繊維が血中のコレステロール値を下げ、血中脂肪の上昇を抑える働きを持つことが研究により明らかになっています。
これらの働きにより、マイタケには動脈硬化を予防する効果があるといわれています。
また、マイタケには血圧を下げる効果があることもわかっています。
マイタケにはナイアシンが含まれているため、血管を拡張し血圧を下げる働きがあります。
マイタケの摂取には、生活習慣病を予防、改善する効果があることが様々な実験により明らかにされています。
【4】【7】【11】【12】

●糖尿病を予防する効果
マイタケの摂取により、糖尿病の発症につながる耐糖能[※4]異常を改善できることが判明しています。
また、マイタケの成分がα-グルコシダーゼ[※5]の働きを阻害することにより炭水化物の吸収スピードが遅くなり、急激な血糖値の上昇を防ぐ効果があるという実験結果も出ています。
これらの働きから、マイタケには糖尿病を予防する効果があると考えられます。【8】【9】【10】

●便秘を解消する効果
健康な生活に必要不可欠な食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。
水溶性食物繊維は体内で水分を抱え込んでヌルヌルとしたゲル状になり、余分な脂肪や老廃物の吸収をやわらげる役割をします。一方、不溶性食物繊維は、水に溶けない食物繊維で、水分を吸収して数十倍に膨らみ、体内を刺激して老廃物を押し出す腸のぜん動運動を活発にします。ぜん動運動が活発になると、溜まっていた老廃物の排出が促進されます。
マイタケには水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が豊富に含まれており、便秘解消に効果があると考えられています。

●ガンを予防および抑制する効果
マイタケの摂取の結果、ガン組織の縮小や症状の改善が見られたという実験結果が報告されています。
また、マイタケに含まれるMD-フラクションには、免疫細胞であるNK細胞を活性化させる働きがあることが証明されています。この結果により、マイタケを摂取することによってガンを予防する働きがあると期待されています。
また、抗ガン剤とマイタケを併用すると、抗ガン剤だけを使用した場合に比べ免疫力が20~60%高まることも確認されました。さらに、抗ガン剤による吐き気や脱力感、脱毛などの副作用を軽くする効果もあるといわれています。【1】【2】【3】【5】【6】

●骨や歯を丈夫にする効果
マイタケには、ビタミンDの前駆体であるエルゴステロールが豊富に含まれています。
エルゴステロールは紫外線が当たることによりビタミンDに変化します。ビタミンDには、カルシウムの吸収を促進し、骨や歯の形成をサポートする働きがあります。

●美肌効果
シミやそばかす、くすみの原因となるメラニン色素は、アミノ酸のチロシンがチロシナーゼという酵素によって反応することにより発生します。
マイタケには、チロシナーゼ阻害物質メラニン色素の発生を抑制する効果があります。
この働きによりメラニン色素の産生が抑制され、シミやそばかす、くすみを予防することができます。

[※2:白血球とは、血液に含まれる細胞のひとつです。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する役割があります。]
[※3:腫瘍細胞とは、組織、細胞が生体内の制御に反して過剰に増殖することによってできる細胞組織のことです。]
[※4:耐糖能とは、血糖値を正常に保つ働きのことです。食物を摂取した際、通常であればホルモンの一種であるインスリンの働きによって血糖値は一定に保たれますが、インスリンがうまく働かないと血糖値のコントロールができなくなり、糖尿病の原因となります。]
[※5:α-グルコシダーゼとは、ブドウ糖のもとになる糖質が消化・分解される過程で働く酵素のことです。]

マイタケはこんな方におすすめ

○免疫力を向上させたい方
○動脈硬化を予防したい方
○糖尿病を予防したい方
○生活習慣病を予防したい方
○便秘でお悩みの方
○ガンを予防したい方
○骨や歯を強くしたい方
○美肌を保ちたい方

マイタケの研究情報

【1】乳腺胆癌マウスにおいて、マイタケ機能性成分(D-Fraction)を3日間腹腔内投与すると、免疫細胞のひとつNK細胞が活性化し、免疫物質IL-12 の産生が増加したことから、マイタケが免疫向上作用を有することが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15706424

【2】マイタケ機能性成分(MD-Fraction)にはβ-グルカンが豊富に含まれており、骨髄細胞(BMC)にMD-Fraction を50-100μg/mL 添加すると、骨髄細胞の生存率が増加するとともに、骨髄細胞から白血球細胞マクロファージへの成長も促進しました。この結果より、マイタケには免疫力向上効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21954187

【3】マイタケ機能性成分(D-Fraction)にはβグルカン含まれており、白血球細胞ヘルパーT細胞を活性化することから、マイタケに免疫力向上作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11995941

【4】Ⅰ型糖尿病ラットに、マイタケ抽出物(SX-Fraction)を2.5g/kg を摂取させると、血糖値が低下し、インスリン感受性が向上しました。同時に、血圧を上げる物質レニン-アンジオテンシン系の活性が抑制され、血圧低下効果も示しました。マイタケに糖尿病予防効果とともに高血圧予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22873755

【5】マイタケ抽出物とアシュワガンダを摂取することにより、免疫細胞マクロファージが活性化し、ストレスによる免疫物質IL-6, IL-12, IFN-γの産生低下が抑制されました。マイタケに抗ストレス作用、免疫向上効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22540105

【6】正常マウスに、マイタケ機能成分(D-Fraction)を17日間腹腔内投与すると、免疫細胞マクロファージやヘルパーT細胞、免疫物質であるIFN-γ, IL-4, IL-10が増加したことから、マイタケに免疫向上作用と感染症予防が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22583406

【7】動脈硬化マウスに、マイタケ3%含有粉末を摂取させたところ、血清コレステロールが低下し、動脈硬化指数に改善が見られたことから、マイタケに動脈硬化予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19083429

【8】マイタケ発酵エキスにはバナジウムが豊富に含まれており、薬物誘導糖尿病ラットにおいて、糖化ヘモグロビン(HBA1c)の増加を抑制し、アドレナリンによる血糖値上昇も抑制されました。このことより、マイタケには糖尿病予防効果ならびに、血糖値低下作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19283341

【9】糖尿病誘発ラットに、マイタケ抽出物を摂取させると、血糖値上昇と血中トリグリセリドの上昇が改善されたことから、マイタケは耐糖能を改善し、糖尿病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18457360

【10】Ⅱ型糖尿病マウスに、α-グルカンを含むマイタケ抽出物を150, 450mg/kg を摂取させると、肝臓重量、空腹時血糖値、血中インスリン濃度、血中トリグリセリドやコレステロール値を改善されました。また抗酸化酵素であるSODやGSHpx、及び肝臓グリコーゲンを増加し、肝臓におけるインスリン感受性を高め、インスリンを分泌する膵臓に対する保護作用が見られました。マイタケはインスリン感受性を高めることで、糖尿病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17430642

【11】ラットを40匹に、マイタケ抽出物(SX-Fraction, D-Fraction)を摂取させると、収縮期血圧の上昇が抑制され、血圧上昇に関与する酵素アンジオテンシン変換酵素(ACE)の活性も抑制され、血圧降下が見られました。また、炎症関連物質TNF-αも抑制されたことから、マイタケは高血圧予防効果と抗炎症作用を有することが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7820117

【12】高血圧ラットにおいて、マイタケを摂取させると、総コレステロールが減少し、またLDLコレステロールが減少しました。これらの結果より、マイタケには動脈硬化予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3443885

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参考文献

・本多京子 食の医学館 小学館

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・Kodama N, Asakawa A, Inui A, Masuda Y, Nanba H. 2005 “Enhancement of cytotoxicity of NK cells by D-Fraction, a polysaccharide from Grifola frondosa.” Oncol Rep. 2005 Mar;13(3):497-502.

・Lin H, She YH, Cassileth BR, Sirotnak F, Cunningham Rundles S. 2004 “Maitake beta-glucan MD-fraction enhances bone marrow colony formation and reduces doxorubicin toxicity in vitro..” Int Immunopharmacol. 2004 Jan;4(1):91-9.

・Inoue A, Kodama N, Nanba H. 2002 “Effect of maitake (Grifola frondosa) D-fraction on the control of the T lymph node Th-1/Th-2 proportion.” Biol Pharm Bull. 2002 Apr;25(4):536-40.

・Preuss HG, Echard B, Fu J, Perricone NV, Bagchi D, Kaylor M, Zhuang C. 2012 “Fraction SX of Maitake Mushroom Favorably Influences Blood Glucose Levels and Blood Pressure in Streptozotocin-Induced Diabetic Rats.” J Med Food. 2012 Aug 8. [Epub ahead of print]

・Vetvicka V, Vetvickova J. 2011 “Immune enhancing effects of WB365, a novel combination of Ashwagandha (Withania somnifera) and Maitake (Grifola frondosa) extracts.” N Am J Med Sci. 2011 Jul;3(7):320-4.

・Xu T, Beelman RB, Lambert JD. 2012 “The Cancer Preventive Effects of Edible Mushrooms.” Anticancer Agents Med Chem. 2012 May 2. [Epub ahead of print]

・Mori K, Kobayashi C, Tomita T, Inatomi S, Ikeda M. 2008 “Antiatherosclerotic effect of the edible mushrooms Pleurotus eryngii (Eringi), Grifola frondosa (Maitake), and Hypsizygus marmoreus (Bunashimeji) in apolipoprotein E-deficient mice.” Nutr Res. 2008 May;28(5):335-42.

・Cui B, Han L, Qu J, Lv Y.. 2009 “Hypoglycemic activity of Grifola frondosa rich in vanadium.” Biol Trace Elem Res. 2009 Nov;131(2):186-91.

・Lo HC, Hsu TH, Chen CY. 2008 “Submerged culture mycelium and broth of Grifola frondosa improve glycemic responses in diabetic rats.” Am J Chin Med. 2008;36(2):265-85.

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・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

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